あなたのお名前は?
「モエナ」と呼べば…
最近、ヨメが実家に遊びに行った時に、ヨメのお母さん(モエナの御ババ)が、「モエナちゃーん」と呼ぶと、
ちゃんとそっちに振り向いたそうだ。
(これは、この先に書いてあることがわかった後で聞いた話)
「ほらぁ、もう知恵がちゃんとついてるのよ。自分の名前がわかって来てるんだから。」と言われて、
「そっかそっか、賢くなってるんだ。良かった良かった」とヨメも喜んだそうだ。
(これも後で聞いた話)
いつも通り遅くも早くもなく帰った時(夜9時くらい。これが普通なんだ)に、
ボクはご飯を食べて、テーブルの向かいでモエナはヨメにミルクを飲ませてもらってた。
先に食事が終わったモエナは、ボクとヨメの顔を交互に見てたりしたんだけど、
ボクが食べ終わってご馳走サマを言った後に、「モエちゃん、ごちそうさま」って言ったら、
こっちを向いたんだ。で、すぐによそ見をしてたから、「モエちゃん」って呼んだら、
またくるっと振り向いて、「にまぁ」っと笑った。
うちのムスメは「タナカ」さん?
「ほおぉ、名前呼ばれるとわかるようになったんだ」とわかって嬉しくなっちゃったボクは、
その後何回も、テーブルを挟んでヨメに抱かれたモエナがよそ見するたびに、
「モエちゃん」って呼んで、振り向くモエナに「こんにちわ〜」って言って、
「にへらぁ〜」って笑う顔を見て喜んでた。
それをやっぱり嬉しそうな顔して見てたヨメも、ボクのほうを向いてるモエナを、
「モエちゃん」って呼んでは振り返らせて喜んでた。要するに、オヤ馬鹿二人+ムスメで、
「モエちゃん」「にへらぁ〜」「モエちゃん」「にへらぁ〜」を、
それこそ馬鹿みたいに何回も繰り返していたわけ。
そのうち、ボクがふと思うところあって、
モエナがヨメのほうを見て笑ってる時(つまりボクの番の時)に、
おんなじ口調で「タナカさん」って呼んでみた。そしたら、これが予想通りって言うか、
期待を裏切ってっていうか、やっぱり振り返って「にへらぁ〜」って笑った。一応、念のためと言うか、
確認のためと言うか、もう一回「タナカさん」って呼んだら、やっぱり振り向いて笑う。
これを見ていたヨメは、大笑いで、当然ボクも大笑い。モエナもワケもわからないくせに、
つられて大はしゃぎ。結局、まだ自分の名前なんかは認識できていなくって、
ただ「呼びかけられた」ってことが分かってるだけだったモエナは、その後「ヤマシタさん」だの、
「アベさん」だので呼びかけられて、その度に「にへらぁ」っとして、またまたその度に笑われて、
つられて笑ってっていうサイクルを繰り返した。
で、このあたりで冒頭の話をヨメから聞いたわけ。
ま、そのうち(それもそんなに遠い将来じゃないと思うけど)に、
モエナも自分が「モエナ」なんだなってことが、きっと分かってくると思う。
上に書いたような、コドモをからかう遊びは面白いんだけど(不謹慎だとか、
何もわからないコドモが可哀想だとか怒るヒトもきっといるね)、
やっぱり自分が誰なのかわからなくなっちゃうととっても可哀想だし困るから、
コドモをちょっとからかうことは、そんなに悪いことだとは思わないけれど
(だってそれも親しみのあらわれだから)、
これからも、分かってても分かってなくても、いつも「モエナ」って呼びかけてあげよう。
でも、時々はわかってるのかいないのかの確認のためだけに、「スズキさん」とか呼んでみようとも思うよ。
余談:「タナカさん」は、日本ではごく一般的な名字なんだけど、
実は会社に、そんなような名字で嫌いなヒトがいるから、これからはそうは呼ばないつもり。へへへ。
1999.11.13