15週目−(10月6日)

腹帯の儀式の巻

5ヶ月に入る一週間前の戌の日に、腹帯の儀式を行うために病院へ行く。 もちろん、腹帯には科学的根拠はないらしいけど、初産だし、 妊娠なんて一生のうちに何回もする物ではないから、経験できることはやっておきたかった。
受付を済ませた後、母が水天宮で買ってきてくれた腹帯を看護婦さんへ渡す。 しばらくして名前を呼ばれ診察室脇にある小部屋へ通される。 腹帯を持った看護婦さんが入ってきて「本日は、おめでとうございます。」と、一礼をされる。 先ほど渡した腹帯には「祝」と、名前、日付が達筆で書かれていた。 その横には、病院名の大きなハンコ(会社は社判って言うね)が押してあり、 「こんな大きいハンコ、A4の書類じゃはみ出るから、絶対に腹帯用だ。」と、 病院の商魂を垣間見たような気がした。
腹帯についての話をしながら、慣れた手つきで5メートルのサラシを、 私のお腹にクルクルと巻き付けていった。それは5分もかからなかった。 「はい、出来ました。巻き方は、分かりますね?」と言われて、「ヘッ?もう終わり?」と面食らった。 「腹帯の儀式」だから、神主さんとか病院に呼んで、お払いのひとつもしてくれるかと思ったのに、 怪しげな小部屋で、看護婦さんと二人きりで、終わってしまうなんて…。 それだったら、彼も呼んであげればよかった。

体重のはなし

最後に「何か体調とかで気になることがありますか?」と聞かれ、妊娠初期から気になっていた 「体重の増加」について聞いてみた。
私「あの、5ヶ月直前なんですけど、体重が増えたりするのは、よくないですか?」
看「そうね〜、つわりが軽い人とかは御飯を食べ過ぎたりして、この時期でも太るらしいけれど、 子供はまだ小さいし、この時期から太るのは、後の体重管理が大変なのよ。 ただの脂肪太りになっちゃうわ。」(ケラケラ笑っている)
私「あ〜、やっぱりそうですか。まずいですか〜」(かなりしょぼくれている私)
看「あら、ニシザワさんは大丈夫よ。普通よこれくらいのお腹は。」
私「やっぱり、やっぱりぃ。ほ〜ら私は平均なのよ。」(心の中でつぶやき、顔は自信満々)
看「だって、5キロも6キロも太ったわけじゃあないでしょう?」
と、最後の一声で、私は、たった今まで持っていた自信を全て失った。 そう、私は5キロも太っていたのだった。 よく考えてみると、妊娠前の体重は平均体重を下回っていて、洋服のサイズも平均以下。 だから、5キロ増えていても、 妊娠前体型を知らない看護婦さんにしてみれば「標準」に見えるのだろう。 でも、世間の妊婦から比べると、今の私は「脂肪太り」になるらしい。 そういえば、自宅にある脂肪計付き体重計でも、めきめき脂肪率がアップしている。 でも、「ん〜、これは、羊水のせいだっ。」と、都合よく決め付けていた。 でも、この体重増加は、自分の予想以上にマズイ事態になっていたようだ。
脂肪太りのレッテルを貼られた私は、ショックに打ちひしがれたまま、待合室にいた彼の元へ行く。 「ねね、聞いてよ〜。私ね、体重増えすぎみたいなの。ショックでかいよ〜。」と、訴えた。 彼は一言「うん、そう思っていたよ。気づかなかったの?」と、冷ややかだった。 「教えてくれれば良かったのにぃ」と言うと、「いや、つわりを押さえるために食べているから、 言ったら可哀相だと思って…。」
彼の優しさと自分の甘さのせいで、体重が増えていたらしい。 「つわりがおさまったら体重コントロールしてやるぅ!!」と決心。
腹帯の儀式で、3420円なり。