陣痛室1日目

出産までの長い道のり

3月28日午前3時
病院へ到着した。出迎えてくれた看護婦さんと一緒に陣痛室へと行く。 3つあるベッドには誰もいなくて、私が寝るためのベッドだけがセッティングされていて、 足元には入院準備セット、枕元にはモニタ装置が置かれていた。。
病院で用意されたレントゲン撮影の時に着るような寝巻きに着替え、 まずは流れ出ている液体が羊水かどうかの判定。液体を採取しリトマス試験紙(たぶん)に付ける。 色の変化から液体がアルカリ性であることが判明。 羊水はアルカリ性なので、破水していることに間違いはないとの事。 体温を計り、内診、問診とすすむ。問診の時に「信仰している宗教はありますか?」 と聞かれたので「そんなことまで聞くんだ。」と意外に思った。 たぶん、輸血や万が一何かあった時のためになんだろう。その他にも両親や兄弟は健在か、 遺伝的病気はないか、仕事の有無、 16週目に受けたトリプルマーカー検査 についての動機など細々としたことを聞かれる。
破水は感染症の可能性があるので、抗生物質のカプセルを手渡され、 出産までの毎食後に飲むように言われる。 その後、お約束のグリセリン浣腸をされる。(妊婦に恥も人権もないことをこの時に知らされる) トイレへ行った後に、モニタを装着し、胎児の心音と陣痛の様子を見る。
3月28日午前4時
一緒に病院に来た彼は、私が入院する個室の方で荷物の整理などをしてくれていたが、 ひと通りの診察が終わった私の元へ来てくれた。 「やっぱり破水だって。このまま入院だよ。陣痛がないから時間かかっちゃいそうなんだ。」 と診察の内容を説明した。
看護婦さんから「陣痛もないし初産だから、出産までに時間がかかるから、 ご主人様は自宅へ戻り休まれた方がいいですよ。」と言われたので、とりあえず帰ってもらうことにした。
3月28日午前5時
彼が帰ってから一人になり、5分感覚で鈍い腹痛はあったが、ウトウトと軽く睡眠をとる。 陣痛室のくもりガラスが明るくなってきて、夜が明けたのが分かる。
3月28日午前6時15分
モニタをはずされてトイレ休憩。モニタを付けていると寝返りも自由に出来なくて、 同じ姿勢で寝ているのでとても疲れる。
3月28日午前7時
看護婦さんの内診の結果、子供の頭が少し下がってきているとのこと。 しかし、子宮口も開いてないし、陣痛も弱いので、出産まではまだまだ時間がかかるらしい。
3月28日午前8時
入院してから始めてのご飯。パン、ボイルウインナー2本、野菜いためと低カロリーでかなり薄味。 あまり美味しくはなかったが、他に食べる物もないので、仕方なく全部食べる。 お腹と腰の鈍い痛みを感じるようになる。食後に、モニタ装着。
3月28日午前9時30分
彼が来てくれた。私も熟睡はしていないので眠かったが、彼も眠そう。 部屋の空調のせいか、のどが乾いていたのでジュース、ヒマつぶしに新聞を売店で買ってきてもらう。
3月28日午後12時
出産までには時間がかかりそうなので、彼は自宅へと戻った。 モニタをはずされ昼食をとる。
3月28日午後1時
モニタ装着。ヒマでやることがないので、本や新聞を読み、少し睡眠をとる。 陣痛が5分感覚になっているが、弱いので出産になるような陣痛ではないとのこと。 少しづつだが痛みが強くなってきた。
3月28日午後3時
看護婦さんの内診の結果、子宮口が開きかけていて、子供が下がっているので、 早ければ明朝までには生まれるかもしれないとのこと。陣痛は5分感覚で30秒ほど続く。 我慢できない痛みではなく、本や新聞が読める程度。
3月28日午後5時30分
身の回りの物の買物をして彼が来てくれる。水筒やジュース、雑誌などいろいろと買い揃えてくれた。 モニタが外され、夕飯を食べる。
3月28日午後7時30分
モニタ装着。
3月28日午後9時
消灯のため、彼が帰宅。モニタがはずされる。 唯一、気がまぎれるFMを流していたラジカセも止められてしまった。 静まりかえった暗い部屋は空調の音だけが聞こえ、その静けさが今の私には気に障ってしょうがなかった。 このまま一晩過ごすと平常心を保てないような気がしたので、看護婦さんに 「小さい音にするからラジカセを枕元で聞いていいですか?」と尋ねると 「本当は消灯過ぎたら消すのが規則だけど今日は部屋に一人しかいないし、 廊下に音が漏れない程度に聞けばいいわよ。」と許可をもらい、病院のラジカセを貸してもらうことにした。
3月28日午後11時30分
モニタ装着。午後3時の内診の時に「明朝までには生まれるかも」といわれたが、 その後、変化がないため、明日の昼以後の出産になりそうだとのこと。 陣痛は強くなってきているが我慢できる程度。5分間隔で40秒ほど続く。
いつ出産になるかという目処もたたないまま、28日が終わろうとしている。 電気の消された人のいない陣痛室に一人でいると、ずっとこの状態が続くのでは… という不安感と絶望感を感じた。