ゼーレとの最終決戦の時、初号機から発生した白い光が世界を覆った後、気付くとそこ

はかなり変化した世界だった。

 

 ミサトさんは腹部を撃たれて出血多量で死んだと本人も思っていたのに、傷一つなく首

を捻っていた。もっともあの約束!はしっかりと覚えていたので、ないしょよんと続きを

教えてくれて、僕の初めての女(ひと)になってくれた(ううっ恥ずかしい・・・)。

 

 リツコさんは、僕の父さんに射殺されたはずなのに・・・と言っていたが地下のケイジ

に仰向けに浮かんでいたそうだ。それでも父さんの事を諦めきれず、なんと母さん公認の

愛人になってしまった(僕はちょっと複雑・・・)。

母さんは、

「りっちゃんも父さんの事すごく愛してしまったの。父さんは今迄の罪滅ぼしをしなくて

 はいけないし。りっちゃんの気持ちは痛いほど判るから。」

とニコニコしながら言うものだから変に納得してしまった。母さんの内心はどうだか知ら

ないけど。

 

 青葉さんや日向さん、マヤさんもLCL化したのを記憶していたのに、気付いたら五体

満足だったから、不思議だよと僕に語ってくれた。

 

 父さんも初号機に頭から貪り食われたのを覚えていたが、目が覚めたときはヘブンズド

アの前に倒れていたらしい。母さんと二人で(もっともこれは母さんから聞いたことだけ

ど)。

 

 ビックリしたのは加持さんがひょっこり現れたことだ。俺は死んだはずなんだがなと笑

いながら僕の頭をくしゃくしゃにした。ミサトさんに抱きつかれわんわん泣かれた後、ビ

ンタをくらっていたっけ。でも次の日ミサトさんの機嫌がすごく良かったのを見ると、ど

うやらプロポーズをしたらしい。

 

 他のネルフの人たちも戦自に殺された記憶があるのにピンピンしている自分が不思議で

ならなかったそうだ。

 

 アスカは、量産型エヴァにバラバラにされたはずの弐号機(完全に元へ戻っていた)の

エントリープラグの中でアスカのお母さん(キョウコさんっていう)に抱かれて眠ってい

た。精神崩壊なんてどっか行っちゃったみたいで、今は元気一杯に僕に迷惑!を掛けてい

る。

 

 綾波はみんながぽーっとしている時に、ひょっこり発令所に顔を出したそうだ。綾波自

体は記憶がないのと言っていた。その後母さんが正式に綾波を引き取り、今は碇レイとな

った(当然母さんの娘だし僕の妹でもあるから)。僕も今ではレイと呼んでいる。最近は

徐々に感情が表に現れ始め、よく顔を真っ赤にしたりしているのを見ると何だか微笑まし

い感じがする。

 

 そうそう僕自身のことがまだだった。僕自身は初号機のエントリープラグの中で目を覚

ました。はっと気付くと精神的に強くなっているのを自覚した。そう辛い事から逃げよう

とするのではなく、立ち向かおうとする様に思っていたからだ。女性への苦手意識もミサ

トさんが女を教えてくれたのが幸いして、大分余裕を持って接する事が出来るようになっ

た。アスカに何か怪しいわね〜と睨まれているがこればっかりは内緒だ。

 

 僕らはそれぞれの家族と一緒に生活を始めた。僕は父さん・母さん・レイと、アスカは

キョウコさんと。ちなみに同じマンションの隣同士だ。以外だったのは母さんもキョウコ

さんも家事がまったく駄目だったという事だ。しかたなく碇家・惣流家の家事を一切僕が

引き受けることになった。食事も効率を考えて両家合同で取ってもらうことにした。賑や

かでいいんだけれど、いい加減覚えて欲しいものだと思ってる。最近はレイが手伝ってく

れるので少し負担が軽くなった。その様子を見てアスカはいつも機嫌が悪くなるんだけど

、それなら一緒にやればいいのに。

 

ミサトさんは加持さんと暮らし始めた。ミサトさんの料理のコーチに僕が選ばれて週に3

日程数ヶ月続けたら、ようやく人並みになって加持さんが涙を流して感謝していた。加持

さんからはこの後色々加持流のテク(まあ女性に対してのと言っておこう)を教わったが

とても僕では実践できないだろう。とりあえず加持さんは僕の師匠となった。

 

 そんなこんなで街も復興を果たし、僕らは高校2年生となっていた。

 

1000HIT記念

はいすくーる ラプソディ 第0話 登校

 

 僕の朝は早い。6時半には台所に立って、朝食と三人分のお弁当の用意を始めている。

そこにレイも目を擦りながら起きてくる。昔みたく裸でなくちゃんとピンクのパジャマを

着ているから目のやり場には困らない。もっともちゃんと着てくれるまで2ヶ月ほど掛か

ったのだけれど。

 

「レイおはよう。早く顔を洗ってきなよ。」

「・・お兄ちゃんおはよう。ちょっと待ってて、手伝うから。」

 

 そう言って洗面所に入っていった。最近はおしゃれもし始めて(アスカが強引に教えて

いる)、ドキッとするぐらいかわいい娘になった。神秘的な雰囲気は薄れたけど、僕はこ

のほうが良いと思っている。

 

 レイが制服に着替えて手伝ってくれたお陰で7時には朝食もお弁当も用意が終わった。

そこに父さん・母さん、アスカにキョウコさんが揃い、一斉に朝食が始まる。

 

 みんなを見回してみて本当に変わったと思う。アスカもレイも良く笑うようになったし、

父さんも非情な仮面を脱ぎ捨て、母さんの尻に敷かれて情けない表情をする様になった。

ようやく家族ってこういうものなのかなと実感し始めている。

 

 ちなみに父さんはネルフの司令(まだ存続している!)そのままで、冬月さんが副司令

というのは変わらない。それよりも母さんが技術部顧問、キョウコさんが副顧問になった

のがすごいと思う。アスカに言ったら、

 

「当ったり前じゃない!ママとおばさまが基礎を作ったんだから。」

 

と一蹴された。確かにエヴァの技術の基礎を研究・開発したのは母さんとキョウコさんだ

った(母さん達は全てを話してくれた)。アスカにそう言われて納得したのを昨日の事の

様に思い出した。

 

 朝食が終わり、お茶を飲んでくつろいでいると学校に行く時間となった。僕らは鞄を持

って玄関に行き、居間に向かって、

 

「「「行って来ます!」」」

 

と挨拶をする。すると、母さん達がニコニコしながら(父さんだけは無表情で)、

 

「はい、行ってらっしゃい。」

「気を付けてね。」

「うむ。」

 

と返してくれる。その後、

 

「あなた!!『うむ』ってのは何ですか!ちゃんとしなさい!」

「わ、わかったユイ。シンジ!アスカ君とレイを頼んだぞ!」

「何えばってるの!」

「いや、その・・・。」

「あ〜ら、相変わらず尻に敷かれてるのね、ゲンちゃん。」

「キョウコ君、ゲンちゃんというのはちょっと・・・。」

 

というやり取りが始まる。

 

 僕らは吹き出しそうになるのを堪えながらエレベーターに乗り込んだ。最近、父さんが

僕らに無理難題を吹っ掛けると母さんの鉄拳制裁が入る(この間は父さん、パワーボムを

食らってたっけ。良く大丈夫だな〜)のに、全然懲りずに繰り返すので一種のコミュニケ

ーションではないかと僕やアスカは推測している。

 

 マンションから出ると、決まってアスカは僕の左手に腕を絡ませてくる。それも胸が当

たる様にする。僕はこれに慣れるまでいつも顔を真っ赤にしていた。アスカはますます綺

麗になった。髪もヘッドセットはもう付けず、ブルネットだったのがブロンドに変化して

いる。背は170cm程になって、まるでモデルと言っても過言ではないプロポーション

を誇っている。僕も背だけは高校に入ってから急激に延び180cm位にはなってアスカ

より頭一つ弱高い。

 

 背に関してはアスカと釣り合いがとれてるねと言うと、

 

「アンタね〜、このアタシと釣り合う男なんてそういないんだから少しは自信持ちなさい

 よ!!」

 

と背中をバンバン叩かれた。自分では変わっていないつもりだったが、周囲から見ればそ

うとう変わったらしい。道理で僕を見る女子の目つきが違う訳だ。アスカが僕と腕を組む

のもアタシのものよっ!!と主張する為らしい。でもなんか連行されているみたいに思う

のだが。

 

 そう、今僕とアスカは恋人同士となっている。告白は中三の夏、僕の方から月の綺麗な

夜の公園で行った。普段の僕であるなら焦りまくったであろうが、その時は不思議と落ち

着いていた。

 

 

 公園にアスカを呼び出した僕は、彼女の目を真っ直ぐに見ていた。月の明かりに照らさ

れたアスカはとても綺麗で幻想的だった。

 

「何よシンジ。こんなとこに呼び出して・・・。」

「アスカ。僕は君が好きだ。今もこれからもアスカしか考えられない。」

「シンジ・・・。」

 

 そう告白すると、アスカは目を潤ませたかと思うや、突然僕に抱きついてきた。

 

「やっと、やっと言ったわねシンジ!待ってたんだからぁ。ばかぁ・・・。」

 

 後は泣き声でよく聞き取れなかった。僕はアスカの髪を撫でてこう言っていた。

 

「僕はまだ弱いけど、アスカを守れるよう強くなる。それまでは我慢してね、アスカ。」

 

 アスカはようやく泣き止んで顔を上げた。

 

「ううん、シンジはもう十分強いわ。結局今までだってシンジに守られていたみたいなも

 のだったし。」

「そうかな?」

「そうなの!でも素直になるのって、心が軽くなるのね。」

「そうかもしれない。」

 

 僕はアスカの涙を指で拭ってあげた。アスカは頬を赤く染めながら話を再開した。

 

「ママに言われてたの。意地ばっかり張ってるとシンジを誰かに取られるって。」

「それじゃあ・・・。」

「そうよ!あの日からずっ〜と待ってたのよ。」

「ごめん、遅くなって。」

「ううん、いいの。でもこれからも大切にしてね。」

「うん。」

 

 そうして僕らは二度目のキスをした。軽くて短いキスだったけれど、二人とも心が暖か

くなっていた。

 

 その後、二人で手を繋ぎながらマンションへ帰る途中、アスカが話し掛けてきた。

 

「ねえ、シンジ。」

「なに?」

「ちょっと考えたんだけど、シンジにしてはスマートすぎない?」

「そ、そうかな〜?」

「何か隠してるわね!」

 

 アスカを見るとギロリと睨んでいた。このままだとビンタモードに入るのが決まり切っ

ていたので、隠すのはやめて正直に答えた。

 

「実は師匠がいるんだ。」

「師匠?」

「そう。師匠は・・。」

「待って!!もしかして加持さんね!」

「ご正解。」

 

 アスカはやれやれといった感じで何かを考えていたが、僕の方に向き直りニコッと笑っ

た。

 

「まあいいわ。加持さんに教わったこと、アタシにだけしなさい!」

「判ってるよアスカ。」

「約束よ!」

 

 そう言って目を瞑り顔を上げたので、僕はその日二度目のキスをした。

 

 後日、加持さんはミサトさんにどつかれ、ネルフの廊下に3時間ほど転がっていたそう

だ。

 

 

 あの時のことを思い出しながら歩いていると、アスカが顔を覗き込んで尋ねてきた。

 

「何よシンジ。ニコニコして。」

「いや、告白した時のことを思い出しちゃって。」

「もう・・・。」

 

 アスカの顔が真っ赤になった。

 

「赤くなったアスカもかわいいよ。」

「ばかぁ。」

 

 そう言ってアスカはさらにぎゅっとしがみついてきた。

 

「やっぱりミサトさんに密告したのはアスカだよね。」

「そうよ。ミサトんちに行った時、それとなく匂わせたのよね〜。」

「全部話さなかったんだ。」

「当たり前じゃない!そんな事したらミサトのいい標的よ!」

「ごもっとも。」

 

 そんな話をしていると、右肩をちょんちょんとレイが叩いた。何となく悲しげな表情

は気のせいだろうか。

 

「お兄ちゃん、ゆっくり歩くのはいいけど、このままだと間に合わないわ。」

「あっ、やば。」

「急ぐわよ!シンジ!」

 

 僕らは遅刻しないよう走り始めた。結局のところ、これがいつもの登校風景なのだ。

 

 

 戦いが全て終わってからの日常。僕らはごく普通に暮らしていた。

 

 

To be continud

 

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