ヒカリとの事は、あっという間に全校に知れ渡り、女子は目をキラキラさせチャンスを

狙っている様だし、男子は恨めしそうに僕を監視している。ごく一部の男子(女子にもて

ている連中)は気にするなと言ってくれるけど、あまり感じのいいものじゃない。

 

 アスカは僕らの関係に入り込もうとしている女子の駆除!に躍起になってるし、ヒカリ

はとにかくニコニコして僕の側を離れない。

 

 トウジはそんなヒカリの様子を見て、

「いいんちょがニコニコしてるんで安心したわ。でもあん時からとはな〜。」

 と言って僕の肩をポンポンと叩いた。

 

 ケンスケは自分も後輩と付き合っているせいか、

「単なる独り者の連中のやっかみだから、そのうちに収まるよ。」

 と言って余裕を見せている。

 

 本当にそうだと良いんだけれど。

 

 

 そんなある日、僕・アスカ・ヒカリとで帰宅しようと校門まで行くと(レイは食事当番

で先に帰った)、男子連中の人山が出来ていた。僕らは顔を見合わせ何だろうと近づいて

いった。

 

 そこには同年代であろう女の子がガードレールの座っていた。スタイルは抜群で、胸な

どは爆乳と言っていいほどの盛り上がりの上、白のハーフ丈のTシャツでさらに強調して

いた。アスカは小さな声で負けた・・・と独り言を呟いた。

 下は薄茶のパンツに高めのサンダルを履いている。頭にはベースボールキャップを被り

大きめのサングラスを掛けている。口元のホクロが印象的だ。髪はロングのストレートで

よく手入れをしているようで非常に綺麗でさらさらしている。

 

 声を掛けている連中は、自称ナンパ師ばかりで一般生徒は遠巻きに見ていた。そんな中

に第一中の時に一緒のクラスだった奴が居たので声を掛けてみた。

 

「さすがにみんな躍起になってるね。」

「よお碇、そりゃそうさ!あのレベルじゃ声を掛けなきゃ失礼ってなもんだ。」

「はは、そうだね。じゃあもう声を掛けたんだ?」

「そうだけど、彼女ニコニコしてるだけで、てんで要領を得ないんだ。」

「ふーん。」

 

 そんな会話をしていると、横から耳を引っ張られた。

 

「痛いよアスカ。」

「バカ話してないで帰るわよ!」

「判ったから離してよ。」

 

 いつものアスカの嫉妬が炸裂して僕が痛い目に遭っているのを、あっと言ってガードレ

ールの彼女が見つけ、僕らに近づいてきた。

 

 僕は涙目で彼女を見つめたが、アスカは警戒心丸出し、ヒカリはすーっと僕の隣りに来

たかと思うと素早く腕を絡ませた。

 

 その彼女は、おやと言う風な表情をしたが、すぐにニコッと笑い僕らに話し掛けてきた。

 

「お久しぶり、碇君、アスカさん、ヒカリさん。」

 

 聞き覚えのある声だが、僕には思い出せなかった。アスカもヒカリも同様だった。僕ら

が首を捻っていると、再び彼女が声を掛けた。

 

「やっぱりわからないですか。私、山岸マユミです!」

 

 そう言って彼女はサングラスを取った。確かに山岸さんだった。

 

 数秒の沈黙の後、僕達と元第一中の面々の驚愕の声が校門に響きわたった。

 

「「「「「ええ〜っ!!!」」」」」

 

5000HIT記念

はいすくーる ラプソディ 第2話 再会しちゃった

 

 

 部活をしていたトウジがその声を聞きつけて校門までやって来た。

 

「どないしたんや、シンジ?」

 

 トウジが僕に話し掛けてくると、山岸さんがトウジに気付いた。

 

「鈴原君ですね、お久しぶりです!」

「誰や?」

 

 トウジはぶっきらぼうに言ったつもりだったが、やっぱり胸に視線が行っていた。

 

「トウジ、ほら山岸さんだよ。ボーカルやってもらった・・。」

「なんやて・・・、ほんまや!」

 

 トウジは穴が空くほど山岸さんを見て、ようやく納得いったようだ。やはり口元のホク

ロが決め手だったみたいだ。

 

「それにしても変わったもんやな〜。」

「うんうん。」

 

 僕はトウジの隣で頷いていたが(当然邪な事!)、アスカとヒカリに悟られたらしく、

左右から耳を引っ張られた。

 

「ふ、二人とも痛いよ!!」

「アンタが何考えてるか、わかってんだから!」

「ううっ・・・。」

「相変わらずセンセは尻に敷かれとんな。」

 

 そんな僕らのやり取りを山岸さんはふふっと言いながら眺めていた。

 

「碇君とアスカさんのやり取りは、変わって無いみたいですね。」

「そ、そうね。」

 

 アスカは少しバツが悪そうに答えた。

 

「それよりも、此処じゃ落ち着けないから喫茶店でも行かない?」

 

 ヒカリが旨い事話を変えようと山岸さんに提案した。こういうタイミングの良さは流石

にヒカリだと思った。

 

「ごめんなさい、今日は皆さんの顔を見に来たんです。明後日なら大丈夫ですけど。」

「明後日は休みだから、何処かで待ち合わせない?」

「いいですよ。」

「じゃあ、第三新東京駅の噴水広場に11時に待ち合わせましょう。」

「ええ。」

 

 ヒカリがあっという間に仕切ったのを見て、僕とトウジは、

 

「見事だね。」

「相変わらず仕切るのう。」

 

 と話をしていた。そこへ山岸さんが来て、僕とトウジに話し掛けた。

 

「碇君に鈴原君、明後日に合いましょう。」

「うん、ケンスケも連れてくるよ。」

「はい。」

 

 そして山岸さんは僕の耳元で(また後で!)と囁いたかと思うと、ぱっと離れてみんなを見渡した。

 

「では明後日に!!」

 

 そう言って大きく手を振りながら、何度も振り向いて去っていった。

 

 僕自身はぽかーんとしながら、(また後でってなんだろ?)と思いながら手を振ってい

た。

 

「さて、シンジ帰るわよ!」

「うん、そうだね。じゃトウジまた明日。」

「おう、ほな明日。」

 

 そう言って僕らは下校した。その途中での話題は当然山岸さんだった。

 

 ヒカリと別れてすぐにアスカが、さっき山岸さんが僕に囁いた事を尋ねてきた。

 

「シンジ、さっきマユミに何言われたの?」

 

 顔は笑っているが、目は笑っていないのを確認した僕は、何となく嫌な予感がして内容

を変えることにした。

 

「うん、アスカが羨ましいだって。」

「ふーん。」

 

 アスカも他人に羨ましがられると悪い気はしないらしく、機嫌は目に見えて良くなって

いった。取り敢えず納得したらしい。

 

「さ、早く帰ろう、アスカ。」

「そうねっ。」

 

 僕らは腕を組みながら家に向かった。

 

 

 マンションに到着し、僕の家の玄関を開けると、父さんと母さんの靴があった。通常な

らまだ帰宅する時間では無いはずで、珍しいなと思いながらリビングに向かった。

 

「ただいま。」

「お帰りシンジ。」

「お帰りなさい、お兄ちゃん。」

「うむ。」

 

 挨拶すれば答えが返ってくるというのは、何か本当に家族してるなと思う。たったそれ

だけだが、僕にとってはとても大切な事で、これからも続いて欲しいと思っている。

 

 ふと気付いたけど、レイが夕食を作っていなかった。いつもなら、お気に入りのエプロ

ンをして僕を迎えてくれるのだが、今日は淡いブルーのワンピースを着て、上にシースル

ーのカーディガンを羽織っていた。父さんも母さんもきちんと正装している。

 

 僕はレイを姿を見てとても綺麗だと思った。

 

「レイ、よく似合うね。」

「ありがとう、お兄ちゃん。」

 

 レイは顔を赤くしてはにかみながら答えた。家の中ではかなり表情が豊かになったが、

学校ではそれ程ではない。わざと感情を抑えているようだ。まあそのせいで神秘的という

男子の評価があるのだが。

 

「ところで、三人で出かけるの?」

 

 僕がそう聞くと、父さんがいつもの如く怒鳴った。

 

「馬鹿者!お前も行くのだ!」

「何処に行くのさ?」

「良いから着替えてこい!出なければ帰れ!」

「又それじゃ判らないよ!」

 

 僕がそう言うと、スパーンと音がした。母さんがスリッパで父さんの頭を叩いた音だ。

 

「あなた!ちゃんと説明しないとシンジが判らないでしょ!」

「ユ、ユイ。何もスリッパで叩く事は無いじゃないか・・・。」

「いいからあなたは車の用意をしなさい!シンジには私から説明します!」

 

 母さんの形相に恐れをなした父さんは、しぶしぶ外へ向かった。

 

「シンジ、あのね国連の山岸大使にディナーを呼ばれてるの。それで私達は先に帰ってき

 て用意をしていたの。」

「レイよりも先に?」

「そうよ。」

「まったく、父さんも先にそう言ってくれればいいのに。」

 

 結局父さんが怒鳴るのは、照れの裏返しと母さんは言っていた。もう慣れてしまったの

で、逆に普通に話されると怖い気がする。

 

「部屋にタキシードを用意しておいたわ。それに着替えなさいね。」

「タキシード!?制服じゃ駄目なの?」

「三ツ星のホテルなのよ。」

「そうなんだ。じゃあ、着替えてくるよ。」

「早めにね、シンジ。」

 

 僕は部屋に入り、置いてあった箱からタキシードを取り出し、素早く着替えた。そして、

お気に入りのコロン(アスカからの誕生日プレゼント!)を振りかけると、リビングに向

かった。

 

 着替えた僕の姿を見て、母さんはまあという感じで驚き、レイは頬を赤く染めぽーっと

してしまった。

 

「シンジ、よく似合ってるわ・・。」

「あ、ありがと母さん。レイ?」

 

 レイはまだぽーっとなったまま、僕を眺めていた。母さんはそんなレイを見てふふっと

笑うと、優しくレイを抱きしめた。

 

「シンジに見とれちゃったのね。」

「うん・・・。」

 

 ようやくレイは答えたが、顔はまだ赤かった。

 

「さて、そろそろ行きましょう。あの人を待たせ過ぎると又ひねちゃうから。」

「はは・・・。」

 

 流石は母さん、父さんの性格を把握しすぎている。もっとも僕もアスカに性格を把握さ

れているので、何となく父さんの気持ちを判らないでもなかった。

 

「あ、アスカに一言言ってこなくちゃ!」

「あら、大丈夫よ。キョウコには言っておいたから。」

「うーん、やっぱり行って来る。」

「じゃあ、先に下へ行ってるわ。」

「お兄ちゃん、早くね。」

「判った。」

 

 僕は玄関を出て、母さんとレイと別れ、アスカの家のインターホンのボタンを押した。

 

「どなた?」

 

 インターホンのスピーカーからアスカの声が聞こえた。

 

「アスカ?僕だけど。」

「ちょっと待って!」

 

 どたどたと音が近づいて来て、がちゃと鍵の開く音がすると思う間に、ドアが活きよい

良く開いてアスカが顔を出した。

 

 アスカは僕の姿を見ると、レイと同じようにぽーっとなってしまった。

 

「アスカ、これから家族で出掛けるから、ちょっと留守になるよ。」

 

 下で待たせているので、僕は用件を切り出した。

 

「ママから聞いてるわ。それにしても馬子にも衣装ってこういうことを言うのね。」

 

 そう言いながらアスカの顔は赤く染まっていた。

 

「ま、これなら何処に出しても可笑しくはないわね!合格よ!」

「何か素直に喜べないな。」

 

 僕がそう言うと、アスカは素早くキスをして、小声で僕に囁いた。

 

「シンジ、誘惑に負けるんじゃないわよ!只でさえ押しに弱いんだから!」

「判ってるよ!じゃ、行って来る。」

 

 僕達はもう一度キスをして別れた。アスカは僕が見えなくなるまで手を振ってくれてい

た。

 

 下に付くと、母さんとレイはもう車に乗っていて、父さんが外で煙草を吸っていた。

 

 僕は父さんが、

 

「乗るなら早くのれ!乗らないなら帰れ!」

 

 というかと思ったが(ちょっと期待していた)、母さんに睨まれてるのでそのまま煙草

を揉み消し、運転席へ乗った。

 

 僕はちょっと拍子抜けしたが、そのまま後部座席へ乗り込んだ。レイはニコッと僕を迎

えてくれた。そして僕らはホテルへ向かった。

 

 

 ホテルへ着き、ラウンジへ行くと、黒縁の眼鏡を掛けた知的な一人の中年男性が迎えて

くれた。山岸国連大使だった。

 

「ようこそいらっしゃいました。山岸です。」

「これはご丁寧に、碇の妻のユイと申します。本日はお招きいただきまして有り難うございます。」

「いえいえ、こちらこそご無理を言いまして。」

 

 ラウンジで僕らが自己紹介をしていると、一人の女性が近づいてきた。そちらを見てみ

ると、それは山岸さんだった。

 

 黒のロングドレスで胸元の谷間が強調されていた。そして体の線がきっちり出で、スタ

イルに自信がなければとても着れるものではないと思った。でも山岸さんにはとても似合

っていた。

 

「あ、娘が来たようです。」

「娘のマユミです、初めましておじさま、おばさま。」

「初めまして、マユミさん。」

 

 山岸さんと母さんが挨拶している横で、父さんは山岸大使と談笑していた。

 

「碇君、こんばんは。」

「こんばんは山岸さん、そのドレスよく似合ってるよ。」

「ふふっ、有り難うございます。」

「昼間の意味はこういう事だったんだね。」

「ええ。」

 

 レイは僕と山岸さんが話している間、僕の後ろに何となく隠れるようにして立っていた。

山岸さんは損慣れを見つけ話し掛けた。

 

「レイさん、お久しぶりです。そのワンピースとても可愛いですね。」

「え、ええ。ありがと・・・。」

 

 突然話を振られて、多少とまどいを見せたが、レイはちゃんと受け答えをした。これに

は山岸さんもへえという感じみたいだった。

 

「レイさん、変わられましたね。何か明るくなられたみたい。」

「山岸さんもかなり明るくなったみたいだね。」

「自分でもそう思います。でもきっかけは碇君がくれましたわ。」

「僕が?」

「そうですよ。」

 

 そんな話をしていると、山岸大使が、

 

「そろそろレストランへ移動しましょう。」

 

 と言った。予約をした時間に近づいたようだった。

 

 僕らはぞろぞろと、最上階のフレンチレストランへ向かった。

 

 

 ディナーは滞り無く終わり、大人達はバーへ、子供の僕達はコーヒーハウスへと別れた。

 

 コーヒーハウスで、お互いの事を話していると、レイが目をしょぼしょぼさせ始めた。

さっきのワインが利き始めたようだ。

 

「レイ、大丈夫?」

「ちょっと辛そうですね。私の部屋で休まれては如何です?」

 

 レイは気を抜くとそのまま寝てしまいそうだったので、山岸さんの好意を受けることに

した。

 

 山岸さんが取ってある部屋に入ると、そこは広大なスウィートルームだった。ベッドル

ームだけで三部屋もあった。僕ははーっと溜息をついたが、レイを早く休ませる為、一番

手前のベッドルームにレイを連れて行って、ベッドに寝かせた。

 

「レイさん、少し寝た方がいいですよ。」

 

 山岸さんがそう言うと、レイは頷いて目を閉じた。途端にすーすーと寝息を立て始めて

しまった。

 

「そうとう眠かったみたいですね。」

「ごめんね、手間を掛けさせて。」

「いいえ、構いません。」

 

 僕と山岸さんは、レイの休みの邪魔にならないようにリビングへ移った。

 

「それにしても凄い部屋だね。」

「見栄で取らなければならない時があるんです。」

「そうなんだ。」

 

 山岸さんは少し寂しい表情をしていたが、ニッコリ笑うと僕に向き直った。

 

「碇君に見てもらいたい物があるんです。」

「何?」

「一番奥の部屋にあるんです。一緒に来て下さい。」

 

 僕は山岸さんと一緒に、奥の部屋へ入った。

 

 山岸さんは、そこで一冊の本を僕に渡した。

 

「これです。」

 

 その本は自作の絵本だった。

 

「山岸さん、とうとう書き上がったんだね。」

「ええ、碇君に見せるのはちょっと恥ずかしいけど・・・。」

 

 山岸さんは、僕と出会った頃、絵本を書き始めていたそうだ。ただ、本当に少しづつだ

ったので今まで掛かったそうだ。

 

「じゃあ読ませてもらうね。」

 

 僕はそう言って絵本を読み始めた。その内容は、心を閉ざしたお姫様が一人の若者の努

力で心を開き、若者と幸せに暮らしたというものだった。

 

 何か感じるものがあり、僕は山岸さんに聞いてみることにした。

 

「山岸さん、これって・・・。えっ!」

 

 僕が見てみると、山岸さんは下着姿になっていた。目を潤ませ、僕に近づいてきた。

 

「碇君は、私に勇気を見せてくれました。その時から碇君が好きになっていたみたいです。

 私を抱いて下さい!」

 

 間接照明に浮かび上がった山岸さんの姿は、とても綺麗だった。又、女としての色気とい

うものも十分にあった。

 

 僕は立ち上がり山岸さんに近づくと、彼女は目を閉じて顔を上に向けた。僕は唇ではな

く、おでこにキスをしてそのまま山岸さんを抱きしめた。

 

「ごめん、これが今僕が君に出来る最大限の事なんだ。」

 

 彼女はぽろぽろと涙を流し始めた。

 

「やっぱりそうじゃないかなと思ったんです。でも少しこのままでいいですか。」

「うん、いいよ。」

 

 僕はそう言って、そのまま山岸さんを抱きしめた。暫く彼女は声を上げずに泣いていた

が、落ち着いたのか、僕から離れて涙を拭きつつドレスを着始めた。当然、僕は着終わる

まで後ろを向いていた。

 

「碇君、有り難うございます。」

「ごめんね山岸さん、でも君の気持ちは受け取ったよ。」

「はい。」

 

 山岸さんは涙の残る目をニコッとさせた。その後、1時間程僕らは話をした。

 

そしてレイを起こし再会の約束をして、父さんと母さんとラウンジで合流し帰宅した。

 

 

 数日後、いつもの如く登校すると、教室内が騒がしかった。何でもうちのクラスに女子

の転校生が来るそうで、男子連中は期待で色々話し合っていた。

 

 ホームルームが始まり、先生が転校生の事を告げ、教室に入ってくる様に廊下に向かっ

て声を掛けた。

 

 入ってきた転校生は・・・、山岸さんだった!

 

 僕とアスカ、ヒカリが唖然としていると、山岸さんの自己紹介が始まった。

 

「皆さん初めまして、山岸マユミと言います。私をご存じの方もいらっしゃると思います

 が、少しの間だけ第一中学に在籍したことがあります。その時は引っ込み思案で暗かっ

 たのですが、ある方がきっかけをくれまして自分を変えることが出来ました。こんな私

 ですが、宜しくお願いします。」

 

 質問コーナーになり、男子の一人が恐る恐る質問した。

 

「ある人ってだれですか?」

 

 山岸さんはニコッと笑って答えた。

 

「それ以来私はその方を思い続けています。その方の名前は・・・碇シンジ君です。」

 

 まさか山岸さんがそこまで言うと思わなかった。男子は、

 

「また碇か!」

 

 と叫び、女子ははーっと溜息をついた。ライバルが増えた為だそうだ。

 

 教室内は騒然とし、アスカは一気に不機嫌になった。ヒカリは複雑そうな顔をしていた

が、僕と目が合うとニコッと笑った。

 

 僕はこの騒ぎの中で、これが学校中の騒動になる事を思って、頭を抱えて机に伏してい

た。放課後には、背中がモミジで一杯になっているだろう。

 

 

To be continud

 

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