EVANGELION SHIFT WORLD

 

 一同はエレベーターなどを乗り継ぎ、5分あまりで第一ケージのドアの前に辿り着いた。
大きな金属製の頑丈そうなドアで、スライド式に左右に開くようになっている。右横にはカード
スロットがあり、LEDランプが赤く点灯している。
 
「ここだ、シンジ!」
 
とゲンドウは勢い良くカードをスロットに通した。すると、LEDがグリーンに変わると同時
に、ガコンとドアのロックが外れる音がした。そしてドアがゆっくりと左右に開き始めた。
 シンジは向こうからの明かりに目を細め、目が慣れるまで手をかざした。ドアが完全に開かれ
シンジも目が慣れると、巨大な空間を見ることが出来た。
 そこはオレンジ色の液体で満たされ、ちょっとした湖ぐらい見えた。その上に橋が架けられ
向こう側のドアに続いている。
 
「さあシンジ。入って。」
 
 ユイに急かされる様に言われると、シンジは多少躊躇していたが意を決するとドアの向こう
に入っていった。
 一歩中に入ると、左側に紫の角を生やした巨大な顔があって、シンジとミカを驚愕させた。
一同は橋の中央部まで進み停止したが、シンジとミカは一時も目を離すことが出来なかった。
 
「父さん、これは・・・ロボット!?」
 
 ミカは唖然としたままだが、シンジは唾を飲み込むとようやく疑問を口にした。その疑問に
答えたのはリツコであった。
 
「いいえ生物よ、人間といっていいわ。汎用人型決戦兵器・人造人間エヴァンゲリオン
 これはその初号機よ。」
「人造人間エヴァンゲリオン・・・。」
 
 シンジは呟くようにそう言ったが、その後は続かなかった。漫画やアニメではよく描かれて
いるが、現実に存在しているとは夢にも思わなかったからだ。
 
「そうだシンジ。お前がこれに乗るのだ。」
「ちょ、ちょっと待ってよ父さん。何で僕が乗らなきゃならないのさ?」
「それはお前しか乗れないからだ。」
 
 ゲンドウのさも当然とした口調に対し、シンジは慌てふためいていた。
 
「何言ってるか訳わかんないよ父さん!」
「そうか。」
「そうか、じゃないよ!」
「素直じゃないなシンジ。」
「そういう問題と違うだろ!」
「ちょっとあなた、禅問答しているんじゃないんだから、ちゃんと説明しないとシンジが
 混乱するだけでしょ!」
 
 さすがに訳が判らなくなってきたので、すかさずユイが口を出した。
 
「ねえシンジ。セカンドインパクトは知ってるわよね。」
「うん。世界の人口の三分の一が死んでしまった災害でしょ?」
 
 セカンドインパクト、西暦2000年に南極を起点とし全世界に影響を与え、地球の人口
のほぼ三分の一を死滅させた災害である。南極にて巨大な爆発があり、それに伴い地球上の
各地で地震・陥没・隆起などの地殻変動と、大津波が同時に発生した。その為、各国の
沿岸部や造山運動が起こっている場所・火山活動が活発な所などはかなり被害が大きかった。
その後海流の異常蛇行などで世界の気候は著しく変わり、日本は四季が無くなり亜熱帯に
近くなった。
もしこれでポールシフトでも起こっていたならば全人口の十分の一も生き残れなかっただ
ろうといわれている。
 
「そうよ、そして今こちらに向かっている物体、私たちは便宜上使徒と呼んでるんだけど、
 それがサードインパクトを起こそうとしているの。」
「サードインパクト!?」
「それが起きれば今度こそ人類は死滅するわ。」
「おばさま本当なの?」
「ええ本当よ。でなければ、こんな物は造らないわ。」
 
 ミカの顔色が心なしか青くなっていた。
 
「でも母さん、なぜ僕がパイロットなのさ?」
「大人達で試しても、反応が全然ないの。母さんや父さんも試したけどだめだったわ。」
「それだけじゃ納得出来ないよ。」
「判ってるわ、その後あらゆる年代の人を試した結果、何故かセカンドインパクトに生まれた
 子供に反応があったの。」
「それで僕って訳?」
「ちょっと聞いててねシンジ。それから今度は遺伝子レベルで相性とかのチェックを行った
 結果、シンジが選出されたの。」
「じゃあ、僕がこっちに呼ばれたのはこれの為に?」
「それもあることは否定しないわ。知っている者として、自分の息子だからという甘えは
 許されないの。」
 
 シンジは少しの間目を瞑り、決心したのか目を開けユイに向かい合った。
 
「わかった母さん。やってみるよ。」
「有り難うシンジ・・・。」
 
 ユイは目を潤ませながらシンジに抱きついた。それからミカの方に申し訳なさそうな顔を
向けた。
 
「ごめんねミカちゃん。こんな事に巻き込んで・・・。」
「いいえ叔母様、構いません。しーちゃんならきっと旨くやれますよ。」
 
 ミカはユイを元気付けるようにニコッと笑いながら答えた。
 
「ところで母さん、エヴァンゲリオンってこれだけ?」
「いいえ、ここにはあと零号機があるわ。ドイツには弐号機があってそれはこっちへ輸送
 中。」
「じゃあパイロットは他にもいるの?」
「ええ、シンジは三番目に選出されたからあと二人いるわ。一人はここネルフで待機して
 いて、もう一人は弐号機といっしょにこっちに向かっているわ。」
「ふーん。」
 
 丁度その時、シンジらが入ってきた反対側のドアが開き、誰かが入ってきた。シンジは
そちらに顔を向けると、一人の少女がこちらに向かって歩いてきた。
 
 その少女は制服(たぶん学校の制服であろう)を着ている。体つきは細身でまあこれから
といったところか。が、最大の特徴は顔から上であった。まず髪の毛がブルーシルバーの
ショートである。次に目の色が赤である。ただでさえはっとする美少女であるが、髪と目の
関係で何とも神秘的な雰囲気を醸し出している。
 シンジはその少女を見て、素直にかわいいと思った。ミカは同性であるが嫉妬は湧かず、
きれい・・・と思っていた。
 
 少女はゲンドウとユイの前に立つと、ニコッと笑いながら言った。
 
「ゲンドウ叔父様、ユイ叔母様たっだいま到着しました!」
 
 神秘的な雰囲気がこの一言で明るいものに変わってしまった。
 
「丁度良いタイミングで来たわねレイちゃん。紹介するわ。こっちが息子のシンジで、女の子
 がシンジの父方の従姉妹でミカちゃんよ。」
「綾波レイですっ!よろしくね。」
 
 レイはシンジに手を出した。シンジは顔を赤くしながら握手をして答えた。
 
「僕は碇シンジ。よろしく。」
「あたしは六分儀ミカよ。ミカって呼んでね〜。」
「あたしもレイで良いわ。シンちゃんもそう呼んでね。」
「シ、シンちゃん!?」
「シンジ君だからシンちゃん。他人行儀な言い方よりずっと良いでしょ?従姉妹なんだから。」
「「えっ!?」」
「レイちゃんはシンジにとって母さんの方の従姉妹になるの。」
「そうなんだ。」
「そゆこと。」
 
 母方の従姉妹もいるなんて不思議だと思うシンジであった。
 
「じゃ、改めてよろしく。レ、レイ。」
「しーちゃん、どもんないでよ〜。失礼だよ〜。」
「そうそう。まあ始めだからしかたないか。」
「ごめん。気を付けるよ。」
「でも良かった、かっこいい男の子で。」
「レイもやっぱそう思うんだ〜。学校でもすごかったよ。」
 
 これから楽しくなりそっと思うレイであった。
 
「でもシンちゃんと初めて会ったって気がしないね。」
「レイの性格のせいかも。すぐみんなと仲良くなれる方じゃない?」
「あたしもそう思うわ〜。」
「うーん、よろこんで良いのか悪いのか・・・。」
 
 こう子供達が会話をしているのを、ユイ・ミサト・リツコはニコニコしながら眺めていた。
一方一人蚊帳の外に置かれたゲンドウは内心は焦っていながら顔にはおくびにも出さずにこう
思っていた。
 
(司令の立場が〜。父親の威厳が〜。)
 
 魂の叫びであった。
 
 子供達の話が一段落付いたところで、ゲンドウはようやく口を出すことが出来た。
 
「シンジ、明日初号機の稼働テストを行う。いいな。」
「わかったよ父さん。」
「シンちゃんも乗るんだ?」
「もって、レイもパイロット?」
「そうよ。七ヶ月前からテストして、最近ようやく動かせる様になったんだ。」
「レイ君はファーストチルドレンだ。お前の先輩に当たるから色々レクチャーしてもらえ。」
「へっへっへっ、ビシビシいきますぜ、ダンナ!」
「お手柔らかに・・・。」
 
 ニヤリと笑ったレイを見て、シンジは思わず引いてしまった。
 
「でもこの間あたしの乗る零号機が壊れて、まだ修理中なの。」
「レイ君、壊れたではなく『壊した』ではないかな?」
「ゲンドウ叔父様〜、それは言わない約束でしょ?」
 
 頬を膨らませて文句を言うレイだが、ゲンドウは何処吹く風といった所ですましていた。
 
「そうだったかな?まああれは事故でもあるしな。」
「そうそう。」
「じゃあ、使徒には僕だけで対処するの?」
「そうだ。」
「不安だ・・・。」
 
 シンジの心配を無視し、レイはゲンドウに尋ねた。
 
「ゲンドウ叔父様、使徒はどのあたりにいるんですか?」
「うむ、葛城君使徒の動きはどうだ?」
 
 ゲンドウは眼鏡を人差し指で上げながら、ミサトの方に向いて尋ねた。
 
「はい、先ほど確認したところやはりこちらに真っ直ぐ向かっています。現状の速度から
 すると、二日後の午後に上陸します。」
「だそうだ。他には?」
「戦自が上陸予定地点に戦力を展開しています。」
「ふん、無駄な事だ。始めからこちらに任せれば良いものを。」
「まあまああなた。あちらもプライドがありますし。」
「プライドでは使徒は倒せんよ。」
「それよりもあなた、そろそろ・・・。」
「そうだな。赤城君、明日の稼働テストの準備を進めておいてくれたまえ。」
「わかりました。」
「葛城君、使徒と戦自の動向は逐一チェックしておいてくれ。」
「はい。」
 
 ゲンドウはミサト・リツコに用件を伝えるとシンジ達を呼んだ。
 
「そろそろ家に行くぞ!!」
「「「は〜い。」」」
「「えっ?」」
「レイちゃんも一緒に暮らすことになっているのよ。」
「そうなんだ。じゃあ今まで何処で寝泊まりしてたの?」
「ネルフの女子寮。つまらなかった〜。でも今日からは楽しそう。」
 
 レイの顔つきから本当につまらなかったんだなと思うシンジ達であった。
 
「じゃあ、行きましょうか。」
「「「はい。」」」
 
 シンジ達はミサト・リツコと別れ、新たに自宅となる所へ向かった。
 
 
 ゲンドウの運転するセダンが一軒の家に到着したのは、空が赤みがかり始めた頃であった。
ちなみに子供達は後部座席で、シンジを真ん中に右にレイ、左にミカが座っていた。シンジは
二人ととりとめなく話をしていたが、内心はうれしいやら恥ずかしいやらで気が気ではなか
った。
 子供達は車から降り、家の前に佇んでぼーっとしていた。
 
「ここ・・・だよね・・・。」
「この家しかないもんね・・・。」
「は〜っ・・・。」
 
 その家は豪邸といって良いほど大きかった。まるでハリウッドにあるムービースターの
邸宅みたいであった。リモコンで開閉する門・大型セダンが二台楽に止められるガレージ・
広い芝の庭にプールまで付いていた。家自体は二階建てだが、各部屋もかなり広そうであ
る。
 
 ゲンドウがニヤニヤしながら、シンジ達に尋ねた。
 
「どうだシンジ。尊敬したか。」
「すご過ぎるよ父さん!」
「そうだろう!やはり一軒家でなければ駄目だ!マンションはいかん!」
 
 実に鼻高々に自慢するゲンドウであった。これだけの家を建てれば誰でも自慢したくも
なるだろうが。
 
「さあこんな所にいないで、中へ入りましょ。」
「「「は〜い。」」」
 
 三人はユイに連れられて中に入っていった。中に入っても、さらに驚く三人であった。
 
「リビング広〜い!」
「ソファもふかふか〜。」
「この絨毯、幾らするんだろ?」
 
 中の家具類は落ち着いた感じでコーディネイトされ、一目で高級品とわかる物ばかりで
あった。もう三人は溜息しか出なくなっていた。
 
「どう、家具は母さんが選んだのだけれど・・。」
「すっごくいいですユイ叔母様!!」
「あたしこのソファがあれば幸せ〜。」
「どうやら気に入ったようね。シンジはどう?」
 
 あちこち見ていたシンジはユイの問いにこう答えた。
 
「当然気に入ったよ!でも大丈夫なの母さん?」
 
 これだけの家である。シンジの心配も当然であろう。
 
「あら心配してくれるの。安心しなさいなシンジ。母さん達結構特許を持ってるから、それ
 でね。」
「そうなんだ。」
 
 一安心したシンジは改めて周りを見だした。そこへガレージに車を入れたゲンドウが入って
来た。
 
「おいシンジ。」
「何父さん?」
「お前達の部屋を決めたらどうだ?二階のどの部屋でもいいぞ。」
「そうだね。じゃあ決めてくる。」
 
 シンジはミカとレイを誘うと二階に上がっていった。二階には部屋が五つあり、2部屋と
3部屋とに廊下を挟んで向かい合っていた。部屋自体の広さは皆同じだがそれぞれ10畳も
あった。
 シンジ達は3部屋の並びを使うことにし、真ん中の部屋をシンジ、左右をミカ・レイと
した。シンジは角部屋が良かったのだが、ミカとレイの
「「しーちゃん(シンちゃん)はここ!!」」
の一言で決められてしまい、二人の剣幕に押された形で頷くしかなかった。
 
 三人が二階から降りて来たのを見たゲンドウは、
 
「どうやら決まったな。さしずめシンジが真ん中の様だな。」
 
と言ったが、シンジがちょっと不満そうにしているのを見て当たったなと思った。
 
「さて、夕食の準備をしますか。腕によりをかけるから三人とも待っててね。」
「ユイ叔母様、手伝います!」
「あたしも!」
 
 ユイがそう言うと、シンジに無意識にアピールし始めた二人がすかさず答えたが、
 
「今日の所は私一人で作らせてね。明日からはお願いね。」
 
 とやんわり断られた。
 
 
 ユイの作った夕食は、かなりおいしかった。これを食べたミカとレイは
(これは教わるしかないわ!!)
と心の中で誓っていた。
 シンジは純粋に料理を楽しんだが、明日からの事を考えると少し憂鬱であった。
 
 


R「私の性格が違うわ・・・。」

N「学園エヴァの性格にしてみたんですよ。これでシンジ君に積極的にアタックかけられる

  でしょ?」

R「(ぽっ)」

N「それに本領発揮するのがこれからだし。」

R「(碇君とらぶらぶに・・・)」

N「あの〜聞いてます?」

R「なに?」

N「いえね、これからもシンジ君に近づく女の子がどんどん出てくるんですけど・・・。」

R「(すたすた)」

N「どこへ行くんです?」

R「・・・他の出演者を出られなくしに行くわ・・・。」

N「ちょっとマズイですよ。待ってくぐおっ。」

R「金ダライ攻撃。セカンドチルドレン今回は出られないと知って、こんな仕掛けを作って

  いたのね・・・。あなどれないわ。」

 

 

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