EVANGELION SHIFT WORLD

 

 夕食後、全員でお茶を飲んでいる時、ふとシンジは思い出した事をゲンドウに尋ねて
みた。
 
「父さん、そういえば弐号機パイロットってどんな人?」
「弐号機パイロットか。かなり美人な女の子だ。」
「じゃあ、あたしは美人じゃないのね・・・。」
 
 ゲンドウの言葉を聞いたレイは、悲しそうな顔をして言った。勿論演技であるが。
 
「あ・な・た!」
「い、いやレイ君もかなりの美人だ!」
 
 うつむき加減にしていたレイは、ゲンドウに見えない様に舌をぺろっと出すと、機嫌
が直ったふりをして、顔に満面の笑みを浮かべた。
 
「そ、それでなシンジ。弐号機パイロットの事だが。」
 
 一刻も早く話題を変えたいゲンドウがシンジに話を振った。シンジもやれやれといった
感じでゲンドウの話にに乗ることにした。
 
「うん。」
「惣流・アスカ・ラングレー君なのだ。」
「惣流・アスカ・ラングレー?」
 
 ゲンドウはさも知っている様に話したが、シンジは覚えがなかった。
 
「あらシンジ、覚えてないの?ほらお隣にいたアスカちゃん。よくいっしょに遊んだ
 じゃない?」
「アスカちゃん、ね。」
 
 シンジは懸命に思い出そうとしていた。さらにユイは続けた。
 
「赤い髪の毛で、頭に赤い髪留めを二つ着けていた女の子よ。よくシンジと一緒に泥だら
 けで帰って来たのを思い出すわ〜。そんな時は必ずシンジが泣いていたけど。」
「泣いていた・・・?」
 
 ユイは本当に懐かしそうにしていた。シンジは一寸の間考えていたが、突然目を大きく
開いた。その様子を見ていたゲンドウは、
 
「どうやら思い出したようだな、シンジ。」
 
 と言った。
 
 そうシンジは思い出していた。あの耐えがたきを耐えた日々のことを。
 
 水たまりに平気で転ばせる・砂遊びをして自分の出来が悪かったのが気に入らず、
シンジの作っていた物を瞬時に壊す・泥団子をシンジの口に押しつけ食べさせようと
する等々思い出したくもない事が次々に頭に蘇った。
 
「思い出したよ、小さい時苛めまくってくれたあのアスカか。」
「そうだったかした?でもアスカちゃんがドイツに行くときのシンジの宣言は忘れてない
 わよ。」
 
 それがあった!とシンジは思った。
 
 
 アスカ達がドイツに行く日、家族で別れの挨拶をしていた。その時シンジは自分が
弱くてすぐ泣くからアスカ達がドイツに行くと思っていた。
 
「もうなかないから、つよくなるからアスカいっちゃやだ!」
 
 顔面ぐしゃぐしゃにしながら何とか引き留めようとするシンジだった。
 
「パパとママといっしょにいかなきゃならないからだめなの。わかるわよねシンジ。」
 
 アスカは泣きたいのを我慢して、さらにこう言った。
 
「じゃあ、こんどあったときシンジがつよくなってたらアタシのおむこさんにして
 あげるわ!」
「ほんと?」
「ほんとよ!ゆびきりしましょ!」
「うん!ぼくつよくなってアスカをまもってあげるね。」
「やくそくよ!」
 
 結局この後二人ともわんわん泣き出してしまった。大人達の内、女性陣はこの様子を
見て目を潤ませていたが、男性陣の方は腕を組んでうんうん頷いてやっぱり男の子だと
思っていた。
 
 その後シンジが六分儀本家に預けられた時、武術を始めたのはこの事があったからで
ある。
 
 シンジはこれらの事を思い出したが、アスカが覚えてないことを切実に祈った。
 
「叔母様〜、しーちゃんの宣言って何ですか〜?」
「あ、あたしも知りたい!!」
 
 ミカとレイはユイから聞き出そうとした。ユイはふふっと笑ってシンジの方に向いた。
 
「ですって。どうするシンジ?」
「母さん駄目だよ、教えちゃ!」
「え〜、シンちゃんのケチ!!」
「ケチで結構!こればっかりは教えて上げられないよ!」
「「む〜っ・・・。」」
 
 レイとミカは不満そうだ。シンジはこのままではやばいと感じたのか話を逸らし始め
た。
 
「と、父さんここら辺に公園はある?」
 
 ゲンドウは先程の借りがあるため、素直に教えてやった。
 
「あるぞ。前の道を右の方に5分程行ったところだ。」
「ありがと父さん。じゃ行って来る!」
「シンジ鍛錬か?」
「うん。」
「あまり遅くなるんじゃないぞ。」
「判ってるよ。」
 
 シンジはあっという間に玄関から外へ行ってしまった。レイとミカはポカーンとして
いたが、はっと気づいた時には遅かった。
 
「シンちゃん逃げたな・・・。」
「あっという間だったね〜。」
「ユイ叔母様、教えてくれませんか?」
 
 レイは上目遣いでかわいくユイに尋ねた。男にはとてつもなく効くであろう攻撃だが
同性には効果がなかった。
 
「う〜ん、駄目ね。」
「どうしてです?」
「シンジが話したくなさそうだから。そのうちシンジから直接聞きなさい。」
「は〜い、判りました。」
 
 レイはこの場では諦めることにしたが、いつか絶対に聞いてやろうと思った。
 
「しょうがない、ねえミカ部屋の方で話しない?」
「いいわよ〜レイ。」
「じゃ行こ!」
 
 二人は二階へ上がっていった。その様子を見ていたユイはあらっといった感じで
ゲンドウに言った。
 
「もう名前で呼び合うようになったのね。」
「仲良くしてくれるに越したことはない。」
「そうね。ちょっとは心配していたんだけれど・・・。」
「レイ君は誰とでも仲良くなれるようだしな。」
「ミカちゃんもね。」
「そうだな。」
 
 二人してふふっと笑った後、ゲンドウは眼鏡を直しながら話を続けた。
 
「それにしても、もうすぐアレクの奴も日本に来るな。」
「ええ、また四人一緒になるわね。」
「騒がしくなるぞ、別の意味でもな。」
「ええ、判ってますわ。あなた。」
「シンジ達には辛い思いをさせねばならん。が、我々は修羅の道を歩まねば人類に明日
 は無い。」
「そうね、辛いけれど・・・。」
 
 ゲンドウとユイは悲しそうな顔で話を続けていた。
 
 
 一方公園に着いたシンジは、一人鍛錬を行っていた。その様子はただ立ちつくしている
様に見える。足を肩幅と同じくらい広げ、手は横にだらんと下げている。目を軽く瞑り
全身の力を抜いている。しかし、呼吸音が一定のリズムで有る事が判る。吐く息の時間が
吸い込むよりも何倍も掛かっている。呼吸自体も胸で行っているのでは無く腹部のみ動
いている。
 
 シンジは気を練りつつ、精神を周囲に広げているのであった。5分程行っていたであろ
うか、その内シンジは自分に向けられる視線を感じた。よく気配を消しているのが判る
が、広げた精神に引っかかったようだ。気づいた瞬間にその気配は闇に溶け込むように
消えてしまった。
 
「今の気配、人じゃない。何だ?」
 
 あまりに瞬間的であった為、確認は出来なかった。監視してるようならいずれちょっ
かいを出してくるだろうなと思うシンジであった。
 
「何か邪魔された感じだな。今日はやめよう。」
 
 そう一人呟いて、シンジは家に戻った。しかしこの事は誰にも告げまいとも思って
いた。
 
 
 レイの部屋で、レイとミカが話をしていた。部屋の中はまだ荷物が片づいていなかった
が二人が座るスペースぐらい楽にあった。
 
「ねえミカ。気づいちゃった?」
「何、しーちゃんに一目惚れしちゃったこと?」
「やっぱ、わかっちゃうか。」
「はっきり言ってミエミエよ〜。」
 
 ニコニコしながら答えるミカであった。
 
「あれだけしーちゃんの側にいようとしてればね。」
「そういうミカはどうなのよ?」
 
 レイはミカの返答をドキドキしながら尋ねた。
 
「あたし?当然好きよ〜。もちろん恋愛感情としてね〜。」
 
 あっけらかんと答えるミカを見て、レイは少し安心した。
 
「う〜、という事はライバルか〜。」
「そ、うちのお姉ちゃんもね。」
「げ〜っ。」
 
 何となく今後さらにライバルが増えそうな予感がするレイだった。ミカはただニコニコ
していた。
 
「ミカ〜、心配じゃないの!シンちゃん誰かに取られるの。」
「大丈夫!しーちゃんの側にべったりくっついてれば、向こうが勘違いしてくれる
 わ〜。」
 
 以外に策士なミカであった。
 
「やるわねミカ。あたしもその手を使おう!」
「え〜。」
 
 レイとミカは顔を見合わせていたが、その内に二人して笑い出した。一頻り笑いあった
後、レイから話しかけた。
 
「で、ここに惣流さんって娘も来るのよね。」
「うん。」
「シンちゃんと何かありそうだと思わない?」
「うん思う。もう一人の幼なじみだし。」
「感動の再会って訳ね。それでシンちゃんに惚れ直したりして・・・。」
「しーちゃんも満更でなかったら・・・。」
 
 二人してしばらく考え込んでいたが、双方同時に顔を上げた。
 
「「邪魔してやる!!」」
 
 げに恐ろしきは女の嫉妬であった。
 
 
 国連艦隊所属、空母オーバー・ザ・レインボウの艦橋で一人の少女が水平線を見ながら
手を腰に当てたポーズで、でかい声を張り上げていた。
 
「バカシンジ待ってなさい!どんな男に成長したか、このアタシが見に行ったげるわ!」
 
 小さい頃の約束をこれっぽっちも忘れていない惣流・アスカ・ラングレーだった。
声自体は、戦闘機の発着訓練でかき消されて全然聞こえないが、少し離れた所から見て
いた惣流・アレクサンドル・ラングレーは、どうしてこんな風に育ったんだろう?と
頭を抱えていた。どうやら彼の理想は深窓の令嬢風に育てたかった様だが、後の祭りで
ある。
 
 こうしてアスカは着々と日本へ近づいていった。嵐の予感と共に。
 

  N「ちょっと短めだけど、これで第一章の終了です。」 A「アタシあれだけなの!」 N「ノーマルエヴァと学エヴァ混ぜるとこうなっちゃったんです。」 A「もっと書きようがあるでしょ!」 N「一応私の中ではこう、となっているんです。」 A「ふん、まあ出ないよりはましか。でもアンタ文才ないわね!」 N「うっ、そう来ましたか・・・。」 A「某先生と某先生の文体混ぜてんじゃないわよ!!」 N「え、影響と言って欲しいですな。お二方とも私にとっては学生の頃から愛読して   ますし。」 A「開き直ったわね!」 N「それにしても機嫌が悪いですね。」 A「アンタ文中に何書いたかわかってて言ってんの!?」 N「ライバルが既に3人いるってことですか?」 A「わかってんじゃない・・・。」 N「目が怖いんですけど。」 R「駄目よ、Nは壊させないわ。」 A「ちょっとファースト、どきなさいよ!」 R「私と碇君がらぶらぶになるのだから。」 A「なんですって〜!」 N「いや、まだそう決まったわけでは・・・。」 R「そう、じゃさよなら。」 A「覚悟は良い?」 N「ちょ、ちょっと待って!話せばわかる!」 A「問答無用!」 N「やめてくれ〜。」  

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