EVANGELION SHIFT WORLD

 

 実験を終えたシンジがエントリープラグから降りると、そこには大きなタオルを持った

レイとミカが立っていた。

 

「シンちゃんご苦労様!!」

「何かかっこよかったよ!!」

 

 レイから手渡されたタオルで頭を拭きながら、シンジは思いっきり照れていた。

 

「あ、ありがと二人とも。は〜、でも疲れたよ。」

「そりゃそうよ。あんなに乗ってたんじゃ。」

 

 レイがうんうんと頷きながらシンジに同意した。その時、ミカがはっと気付いたように

シンジに言った。

 

「そうそう、叔母様が上に来るように言ってたわ〜。」

「いけない、忘れてた。」

 

 もしかしてレイはうっかり者ではと思うシンジであった。

 

「そうなんだ、じゃ行こうか。」

 

 シンジ達はぺちゃくちゃ話しながら発令所に向かった。

 

 その途中で、シンジは実験の始めの方で感じた力について思い出していた。

 

(あの力は何だろう?さっきはちょっとしか触れられなかったけど、質的には人の気に

 似ていたようだけど・・・。意志はあるのかな?接触してみれば判るか。)

 

「・・・ちゃん。しーちゃん!」

「え、何?」

「ドア通り過ぎてるよ。」

「あっ。」

 

 シンジは考え事をしていたせいで、発令所入り口のドアを通りすぎていた。

 

「シンちゃん、しっかりしてよね。」

「ごめん。」

「しょうがないよ、しーちゃん考え始めるといつもこうだもん。」

 

 ぶーたれたレイに対して、さりげなくシンジのフォローをするミカであった。そこには

ささやかな牽制も含まれていた。

 

 シンジはばつが悪そうに頭をかくと、口喧嘩が始まりそうな二人を避けて発令所に入っ

て行った。レイとミカは、

 

「シンちゃん待ってよ。」

「先に入るなんてずるい!!」

 

と言って慌てて後を追った。

 

 

 シンジが発令所に入ると、ニコニコしたユイが駆け寄っていきなり抱きしめた。

 

「シンジご苦労様。母さん心配したわ!」

「ちょ、ちょっと母さん!」

 

 ユイが頬ずりし始めたので、シンジは離れようとした。が、ユイは当然離そうとせず

スリスリするのでシンジは真っ赤になりながら、ただ立ちつくしていた。

 

 それを見たレイとミカは、

 

(その手があったか〜!)

(う〜、いいな〜。)

 

と指をくわえてその様子を眺めていた。

 

 3分程して、ようやく満足したのかユイはシンジから離れた。すかさずレイとミカは

シンジの隣りに移動した。ユイは相変わらず微笑んでいた。

 

「みんな、今日はご苦労様。明日は本番だからもう帰って休みましょう。三人とも朝か

 らだったから疲れたでしょう。」

「あたし達は見ていただけだけど、シンちゃんは結構きてるんじゃない?」

「うん、横になったらすぐに寝ちゃうよ。」

 

 確かに操縦と長時間の精神の集中のせいで、シンジの体にかなりの負担が掛かってお

り、疲労もピークに達していた。

 

「そのようね。じゃあカフェテリアに集合してみんなで帰りましょう。シンジは早く着

 替えてくること。では解散します。」

「しーちゃん先に行ってるね。」

「うん、早く着替えてくるよ。」

 

 そう言って、シンジは更衣室へ、ミカとレイはカフェテリアに向かった。ユイも発令

所のスタッフに後は宜しくと言ってカフェテリアに向かったが、廊下に出たところで、

後を追ってきたリツコに捕まった。

 

「ユイ博士、ちょっと良いですか?」

「何、リッちゃん。」

 

 リツコが『ユイ博士』と言ったときには、決まって技術的な話を真面目にする時なの

で、ユイもちゃんと答える様にしていた。以前、からかい半分に答えた時、もの凄く怒

って『真面目に答えて下さい!!』と詰め寄られた為である。

 

「シンジ君のエヴァとのシンクロについて、予測していたのですか?」

「そうね、『ある程度』動かせるというのは予測していたけど、きちんと『操縦』出来

 る様になったというのは予測外よ。」

「やはり『相性』の結果でですか?」

「ええ。」

 

 そう言ってユイはちょっとの間考えてみて、意見がまとまったらしく話を続けた。

 

「でもシンクロ率の急激な上昇はこれと分けて考えた方がいいわね。」

「と言いますと?」

「あくまでも『相性』は先天的なものだけれども、あの『上昇』はシンジが深く集中し

 始めてから起こったものだからよ。たぶんシンジがやっている武道が関係してるんだ

 と思うわ。」

「じゃあシンジ君は気のコントロールでも出来るのかしら?」

 

 リツコはあまり気が進まない考えを口にした。到底信じられないからだ。

 

「まあそのあたりは、後日ミサトちゃんや保安部の人達と手合わせをさせて確かめて見

 ましょう。シンジの実力も知りたいし。」

「大丈夫ですか?保安部の連中はともかく、ミサトは格闘技でトップを貼ってたんです

 よ!」

 

 ユイはそれを聞いても別にという顔をしていた。

 

「うちのゲンちゃんも多少なりとも使うわ。その時は私の目の前でチンピラ三人をあっ

 という間に片づけたわ。」

「司令がですか!?」

「そうよ、格好良かったわ〜。」

 

 そう言ってユイはその時のことを思い出して、目を輝かせていた。

 

「ユイ博士!!」

「あ、ごめんなさいね。まあシンジは14歳だけどそれ以上と思ってくれて良いわ。」

「わかりました。」

 

 リツコはあの優しそうな美少年がそんなに強いとは思えなかった。

 

「もういいリッちゃん?カフェテリアに行かなきゃならないから。」

「あ、はい。有り難うございました。」

「あとはよろしくね。」

「ええ。」

 

 ユイはそのままカフェテリアへ行き、リツコは発令所に戻っていった。

 

 

 ユイがカフェテリアに入ると、レイとミカがケーキをぱくつきながらキャハハと笑い

合っていた。シンジはまだ来ていないようだ。自分もコーヒーを頼むと二人の話に入っ

ていった。

 

 三人で楽しく話をしている内に、着替えを済ませシャワーを浴びてきたシンジがカフェ

テリアに入って来た。レイはシンジを見つけると立ち上がって自分たちの方に呼んだ。

 

「シンちゃんこっちこっち!」

 

 呼ばれたシンジは三人の座っている席に近づくと、開いているミカの隣りに座り、

ようやく一息つける状態になった。長時間の訓練にはさすがに堪えたらしい。

 

「ふーっ、疲れた・・・。」

「しーちゃん何飲む?」

 

 目がしょぼしょぼしてきたシンジにミカが尋ねた。

 

「・・さっぱりしたものが良いから、レモンスカッシュをお願い・・。」

「わかった。」

 

 お冷やとお手拭きを持ってきたウェイトレスにミカはレモンスカッシュを頼むと、

シンジの顔を心配そうに覗き込んだ。もっとも、レイも同様に心配していたが。

 

「調子に乗って少しやり過ぎたみたいね。ごめんねシンジ。」

「でも、あれくらい動かせないと使徒を倒せないんでしょ?」

「シンちゃん・・・。」

「しーちゃん・・・。」

 

 すまなそうに謝ったユイに対して、シンジは事も無げに答えた。ユイ・レイ・ミカは

シンジを抱きしめたい衝動に駆られたが、三竦みの状態に陥っていた為出来なかった。

次の機会には!と心の中で誓う三人であった。

 

 運ばれてきたレモンスカッシュを一気に飲み干したシンジは、時間が経った為か少し

回復したようだ。それを感じ取ったユイは、そろそろ帰りましょうと言って伝票を持っ

て会計に行った。シンジ達三人は入り口でユイが出てくるのを待っていた。出てきた

ユイにお礼を言って、一緒に地上に向かった。

 

 

 四人が地上に出ると、そこは夕日に照らされて赤く染まった世界があった。あと5分

もすればさらに赤くなるだろう。少し幻想的な光景に皆感動していた。

 

「・・・遅かったな・・・。」

 

 今日も車で迎えに来ていたゲンドウが、不機嫌そうに言った。足下には数本のタバコ

の吸い殻が落ちていたので、結構待っていたようだ。だが、ユイはそんな事はどうでも

良いという風にゲンドウにつかつかと歩み寄った。

 

「シンジは疲れているんですよ!少し休ませてからでも良いじゃありませんか!」

 

 ユイの凄い剣幕と、後ろに控えているレイ&ミカの冷たい視線にやばいと悟ったゲン

ドウは、あれこれ言い訳をし始めた。一方シンジは疲れからか、ぽーっとしていた。

 

「お、落ち着けユイ。私も少し休んでるのかな〜と思って・・・。」

「さっきの言い方からすると、嘘ね!」

 

 ユイはゲンドウを睨むと一言こう言った。

 

「今晩はご飯抜きですから!」

「ユイ〜!」

 

 これがネルフの司令かと言われるくらいに情けない声を出して抗議したが、今の自分

の姿を思い浮かべ、はっとなってシンジの方を見た。こんな姿を息子に見られたら威厳

などありゃしないからだ。シンジはというと・・・立ったまま寝ていた!

 

「シンちゃん器用ね〜。」

「ほんと〜。」

 

 二人の少女がシンジが倒れないように両隣に寄り添っていた。この様子を見たゲンド

ウは見られずに済み少しほっとした。

 

「ほらあなた!早くエンジンをかけて帰りましょう!」

「は、はい・・・。」

 

 完全に尻に敷かれているゲンドウは、ユイに急かされるままエンジンをかけ、シンジ

達が乗り込むのを確認すると車をスタートさせた。

 

 車の中では、女性陣はぺちゃくちゃおしゃべりをし、シンジはくーくー寝ているしで

何となく理不尽さを感じない訳にはいかないゲンドウであった。

 

 

 自宅に戻ったシンジは、夕食もそこそこに早々と自室に引きこもった。レイとミカは

シンジがとっとと寝てしまったので、ミカの部屋でおしゃべりを楽しんだ後寝てしまっ

た(それでも23時ぐらいだったが)。

 

 

 そして、決戦の日がやって来た。


N「どうもすみません。遅くなりまして。」

R「さぼってたのね。」

N(ギクッ)「い、いや〜残業でなかなか時間が取れなくなりまして。」

R「嘘ね。ゲームばかりしていたのを知っているわ。」

N「そ、そんな事はありませ・・・。」

R「HEAVY GE○R・・・。」

N(ギクッ)

R「難しそうね・・・。」

N(ギクッ、ギクッ)

R「どこまで進んでるのかしら・・・。」

N「そ、そうですよ!HE○VY GEARやってましたよ!」

R「開き直ったのね。」

N「あらぬ方向へ行ったりして、なかなかミッションをクリア出来ないんです!」

R「そう、良かったわね。」

N「全然よくありませんよ!」

R「・・・じゃ・・。」

N「ちぃ〜っ、又Faildだ・・・。とほほ。」

 

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