EVANGELION SHIFT WORLD

 

 シンジが魔族と対峙していた時間は思いの外長かったようで、玄関のドアを開けるとリ
ビングの方から楽しげな笑い声や話す声が聞こえてきた。それと同時にいい匂いも漂って
いた。
 
「ただいま〜。」
 
 シンジはそう挨拶してリビングに入ると、そこには色とりどりな沢山の料理と、ユイ・
レイ・ミカに加えてミサト・リツコ・マヤがテーブルを囲んでいた。
 
「あっ、帰ってきたわ。」
「おかえりしーちゃん。」
「おかえりシンちゃん。」
「「「おかえりなさい、シンジ君。」」」
 
 女性ばかりで(うっ)と一瞬ひいたシンジだったが、素早くシンジの両腕に組み付いた
レイとミカに連行される様に席に案内された。
 
「はい、シンちゃんはここに座って!」
 
 その席はレイとミカの間だった。まあいいかと思ってシンジが席に着くと、
 
「はい、シンジ君。」
 
 とマヤにグラスを渡されウーロン茶を注がれた。
 
「ありがとうございます。マヤさん。」
「どういたしまして。」
 
 シンジに名前を覚えてもらえていたので、途端に上機嫌となりニッコリとシンジに微笑
んだマヤだった。
 
 やさしいお姉さんという感じのマヤにシンジは好印象を持って、顔を赤くした。
 
 それを見た両サイドのレイとミカは、
 
「む〜〜〜っ。」
 
 と焼き餅を焼いていた。
 
 ミサトとリツコは小声でひそひそ話していた。
 
「やっぱマヤちゃん、ショタ入ってるわね。」
「そうね、前からそんな気はしていたけど。」
「リツコはどうなのよ?シンジ君の事結構気にしてるじゃない。」
「そ、そういうミサトはどうなのよ!シンジ君を見る目つきが危なかったわよ。」
「うっ・・・。」
 
 お互い痛いところを突かれた二人は、とりあえず会話をストップさせた。
 
 皆の様子をニコニコ見ていたユイは、シンジが料理を気にしているのに気付くと、その
場を仕切った。
 
「さあさあ、料理が冷めるからそろそろ食べましょうね。」
「「「「は〜い。」」」」
 
 全員でいただきますをして、その場に並んだ料理を食べ始めた。
 
 ミカとレイ、マヤは自分の取った料理をシンジに食べさせようと、互いに牽制し始める
と、シンジは仕方なく三人から順番に食べさせてもらうことにした。
 
 ミサトはそれを見て、
 
「シンちゃん、もてるわね〜。」
 
 と言ってシンジをからかい、リツコに咎められていた。
 
 リツコはリツコで、シンジの方をちらちら見ながら食事をしていた。
 
 そんなこんなで大騒ぎの中、食事が終わった。シンジは(ゆっくり食べたかった。)と
しみじみ思ったが後の祭りである。
 
 
 食事が一段落して、各自食休みを取っていると、アルコールが入って酔っぱらっている
ミサトが、チョイチョイとシンジに手招きをした。
 
「シンちゃん、ちょっと。」
「なんです?ミサトさん。」
 
 シンジはミサトに近づいて行った。
 
「今日はよく頑張ったわね。」
「ありがとうございます、ミサトさん。」
「だからご褒美をあ・げ・る!」
「はい?」
 
 そう言うが早いか、ミサトはシンジを引き寄せ、自分の胸にシンジの顔が埋まるように
抱きしめた。
 
「?!」
 
 あまりの事にシンジは何も言うことが出来なかった。
 
 この咄嗟のミサトの行動に、他の女性達は呆気にとられて、ただ見ているしかなかった。
 
「ふっふ〜、シンちゃん気持ちいいでしょ!」
 
 その声に我に返ったレイとミカはシンジの両腕を、マヤはシンジの頭を抱き抱えるよう
にして、ミサトからシンジを引き離した。
 
「「「な、なんて事するんです!」」」
 
 シンジはミサトの胸の感触と、香水と混ざったミサトの体臭によってぽーっとなってい
た。14歳の少年にはちと強烈な攻撃である。
 
「いいじゃない。シンちゃんも気持ちよさそうだし。」
「不潔ですっ、葛城さん!」
「「そうよ!」」
 
 強く反論する三人であるが、今自分達がしている事に気が付いていなかった。
 
 シンジにとっては、両腕にミカとレイの胸の感触が、後頭部にはそれなりに主張してい
るマヤの胸の感触があり、先程にも劣らない攻撃であった。
 
 とうとうシンジはぽーっとなったままK.O.されてしまった。
 
「あっ、シンちゃんが・・・。」
 
 シンジは気持ちよさそうに気絶していた。
 
「あらあら、シンジにはまだ刺激が強すぎたみたいね。」
 
 ニコニコしながらユイは、三人にシンジをソファに運ぶよう指示すると、自分は上掛け
を持ってきてシンジに掛けてやった。
 
 しかし、まだまだ騒ぎは収まらなかった。
 
 ミサト対レイ・ミカ・マヤ連合軍でギャーギャー言い合いをしている間に、隙をついた
リツコが事もあろうか、シンジの寝ているソファに座ると、シンジの頭を自分の太股に乗
せたのだ。いわゆる膝枕である。
 
 いつものリツコなら決してしないであろうこの行為は、酔いに任せて行ったものである。
当然理性なんてぶっとんでるはずで、本音の行動である。やっぱリツコもショタが入って
いたのだ。
 
 リツコが気持ちよさそうにシンジの髪を撫でていると、それに気付いた四人がもの凄い
形相でリツコに詰め寄った。そりゃそうだろう。
 
「何してるのかな〜、リツコさんは?」
 
 顔を引きつらせながらミサトが尋ねた。こめかみに青筋が立っている。
 
「あら見て分からない?膝枕よ。」
 
 いけしゃあしゃあと答えたリツコだが、こちらも目が据わっている。
 
「ずるいです!先輩!!」
「「あたしも膝枕する!!」」
 
 どくのどかないのと、もうこうなっては収拾がつかなくなっている。全員引っこみがつ
かなくなっていたのだ。
 
 やはり、こんな時はこの人の出番だろう。
 
「あら、そういう事なら私もしたいわね。」
 
 洗い物が終わったユイが、皆に近づいてきた。
 
 
 ユイの提案で、一人5分間膝枕をする事になった。当然ユイ自身もちゃっかり膝枕をし
たのは言うまでもない。
 
 3周りしてようやく満足したのか、ミサト・リツコ・マヤは帰路へついた。
 
「さあ、今日はもう休みましょう。」
 
 シンジをそのままソファに寝かせておいて、ユイ・レイ・ミカは自分達の部屋に入って
行った。
 
 
 朝、シンジは雀の鳴き声と共に、ソファから一つ伸びをして起床した。
 
「うーん、何か首筋が痛いな・・・。」
 
 あれだけ何回も膝枕をされたのでは、当たり前である。
 
 シンジは昨晩の事を思い出し、顔を赤くしながら又ぽーっとなった。あれだけの武術の
腕前を持っていても、まだ14歳の健全な少年である。思い出すなというほうが無理だろ
う。
 
 時計を見るとまだ5時半を回ったところである。リュウドウの所では大体この時間に起
床していたので、完全に習慣化していた。
 
 ユイ達はまだ起きてくる気配はない。
 
 シンジは朝日を見ながら欠伸をした。
 
「朝食でも作ろう。」
 
 そう言って、台所に入っていった。
 
 
 それから1時間後、朝食を作ろうとリビングに来たユイは、テーブルの上に並んだシン
ジの料理を見ることになった。
 
「あ、母さんおはよう。」
 
 厚焼き卵をのせた皿を持ってきたシンジが、ユイに朝の挨拶をした。
 
「おはようシンジ。これ全部シンジが作ったの?」
「そうだけど、失敗してる?自分では結構うまくいったつもりなんだけど。」
 
 その朝食は和洋折衷だが、見栄えも考えて奇麗に盛りつけられていた。使った皿の選択
も結構なセンスをしていた。
 
「ちょっと味見させてね。」
 
 ユイはそう言って、シンジの料理を少しだけ味見した。
 
「どう?母さん。」
 
 シンジはどう評価されるのか、少し不安でもあり又期待をした。
 
 ユイはニッコリ笑って、
 
「とってもおいしいわ!」
 
 と素直にシンジへ感想を述べた。
 
「よかった。」
 
 シンジはユイにおいしいと言われ、嬉しくなった。やっぱり親に褒められるのはちょっ
と違うなとも思った。
 
「それにしても、よくこれだけ作れるわね。」
「うん、向こうで叔父さんに『男も料理が出来なければ駄目だ!』って言われて習ったん
 だ。」
「そうなの。」
「だから、毎朝交代で朝食を作ってたんだ。これからも作るよ母さん。」
「まあ・・・。」
 
 ユイは感激して、例のほっぺたスリスリをシンジにした。
 
「か、母さん。みそ汁が冷めちゃうよ。」
 
 放っておくと5分以上やっているので、シンジは一言口にした。
 
「そうね。じゃあレイ達を起こしてくるわね。折角ですもの、みんなで一緒にいただきま
 しょう。」
 
 そう言ってリビングを出ようとすると、ミカが入ってきた。当然身だしなみは整えてあ
る。
 
「おはようしーちゃん。おはようございます叔母様。」
「おはようミカ。」
「おはようミカちゃん。」
 
 三人はニッコリ笑って挨拶をした。
 
「あ、もしかして朝食しーちゃんが作ったの?」
「そうだよ。」
「やったあ!」
 
 ミカは好物の厚焼き卵があるのを見つけ喜んだ。シンジの作る中で一番のお気に入りだ
ったからだ。
 
「レイは未だ寝てるの?」
「そうみたい。」
「じゃあシンジ、レイちゃんを起こしてくるわね。」
「うん母さん。」
 
 ユイは二階へ上がっていった。
 
「まだ食べちゃ駄目だよ。」
「う〜っ、いけず〜。」
 
 いやんいやんするミカであった。
 
 すると、勢い良く階段を下りてくる音がリビングに響いた。
 
「レイだね。」
「うん。」
 
 その音は洗面所方面へ直行した。リビングにはユイが笑いながら入ってきた。
 
「レイちゃんたら、凄く慌てていたわ。」
「きっとミカに全部食べられると思ったんだよ。」
「そんなに食べないもん!でも厚焼き卵は別だけど・・・。」
 
 シンジがからかうと、ミカは頬を膨らませた。
 
 又ドタドタと足音がして、レイがリビングに入ってきた。
 
「おっはよ〜ん、シンちゃん、ミカ。」
「「おはようレイ。」」
 
 レイは挨拶をすると、素早くテーブルの上の料理を見回した。
 
「これがシンちゃんが作った料理ね!うーん、おいしそ!」
「はは・・・。」
 
 結局ゲンドウはネルフから戻ってこなかったので、これで全員が揃った。
 
「「「「いただきます!」」」」
 
 みんな一斉に食べ始めた。
 
「おいしい。シンちゃんの料理が食べられるなんて、し・あ・わ・せ。」
 
 レイがしみじみ言うと、厚焼き卵を頬ばっていたミカがうんうんと頷いた。
 
 そんなこんなで、シンジ作の朝食は全員のお腹の中に入ってしまった。
 
 
 食後のお茶を飲んでいると、ユイが三人に向かって言った。
 
「今日はみんな休日にして良いわ。駅前に買い物にでも出かけましょう。」
「「「やったあー!!」」」
 
 こうして四人は、10時頃になって駅前に出発した。
 
 

    N「うーん、シンジ君のモテモテぶりが本領発揮してきたような・・・。」 A「なによ!この展開は!」 N「機嫌が悪そうですね。」 A「あったりまえじゃない!このアタシを差し置いてあんな連中が!」 N「皆さんかなり積極的ですからね。」 A「しかもシンジの手料理を・・・。」 N「まあまあ、あなたが出てくればパワーバランスは一気に崩れると思うのですが。」 A「ま、まあそうよね!このアタシにかかればシンジなんかメロメロよ!」 N「それにしてもミサトさんやリツコさんまで・・・。」 A「あの二人には絶対好き勝手にさせないわ!」 R「・・・バーサンはいらないわ。」 A「あら、いたの?」 R「碇君の手料理を食べられるのは私だけだもの。」 A「・・・やっぱアンタ喧嘩売ってるでしょ?」 R「じゃ。」 A「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!『じゃ。』じゃないでしょ!」 N「いっちゃった・・・。」    

 

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