CG Tips!


 時々「拝御さんのCGを描く技術みたいなものを書いて欲しい」みたいなことを言われます。ただ、自分としては技術としては全然人と違うようなテクを使っているとは思いません。どちらかといえばごくオーソドックなテクしか使っていません。

 もし手順を挙げていくなら

  1. 紙に鉛筆で下書きした原稿を作成する(レイヤーをわける場合は計画を立てておく)
  2. スキャナでPCに読み込む
  3. Painterの水彩筆で色を塗る
  4. PhotoShopで色調調整
  5. レイヤーが別れている場合は同じくPhotoShopで合成

 …それだけです。

 ただまぁ、そういったリクエストがあるのに何も書かないで要るのも失礼かな…ということで、とりあえずここでは私が今までCGを描く上で、テクニック以外に気をつけていることなんぞをば書いてみたいと思います。

 …アテにしないでね(^^;)。こんなんでいかがでしょうか、Manzo-chanさん?


レイアウトのやり方

まず絵を描く趣旨を決める

 例えば、貴方がとある高校の文化祭に足を運んだとします。そこで女子校生達のバトンダンス(…と言うの)が繰り広がられているとしましょう。彼女達の伸び伸びとした演技に感動し、思わず一枚の絵にしようと考えるのも必然だとします。(とりあえず、その文化祭での発表会が三年生にとって最後の舞台で、涙を流しながらの演技になってしまうとか、下級生達も涙を流しながら花束を渡しにいく、とかいう場面はさておく。)
 さて、私はその感動を胸に、思わず筆(原画用のシャーペンですけど)を手にして原稿を描いてしまうわけですが、もしこれが貴方なら、その絵をどのように描きたいと、“どこまで考え”、あるいは”どう考え”ますか?
 とりあえず妥当な線として、バストショットのバトンガールの女の子を適当な背景の上に一人描いてみましょう。そしてその時、レイアウト等に必然性を求めていますか?ここで決定したことが、後になって意外と絵の印象を大きく左右します。
 今回私は2つのサンプルを用意しました。“どこまで考え”るのかということと共に“どう考え”るということも示すためです。
 2つとも大体似たような絵ですが、ひとつはイラスト的(?)に描いたba_1_n.jpg。もうひとつはできるだけ写実的に描いたba_2_n.jpg。どちらも同じものを描いていますが、見た印象は全然違うものになっていると思います。

ba_1_n.jpg/66kB

イラスト感が主体なCG

 まずba_1_n.jpgはできるだけ“写真ならばこうなっていたはず”ということを考えずに、主題を前に置いて描いたものです。キャラクター主題なので背景から浮かした感じを持たせ、また存在感をよりアピールするためアオリぎみのアングルを取ってあります。手前の女の子がこちらに視線を向かせているのも彼女が主題であることを示しています。逆に背景の女の子がこちらから視線を外しているのは、もし目線をこちらに持ってきた場合、手前の女の子同様に存在を主張することになり、絵の中心があやふやになってしまうからと考えたからです。しかしそれでも手前の女の子同様の赤いコスチュームは目を引いてしまい、パースの消失点に近いこともあり、見ているものの視線をそちらに持っていきかねません。
 そこで彼女の上方に文字を配置し、レイアウトの安定を図っています。“ボカす”という手段もありますが、レイアウトのポイントを3つにし、それらを三角形に配置することでレイアウトの安定を図ることを優先させました。“ボカす”とポイントから外れてしまい、ただの背景となってしまうような気がしたからです。もっとも今回のこの場合、文字の色はコスチュームの色とタメをはれるものでなければならず、しかし文字の色が弱く印象の薄いものになってしまいました(;_;)(いい色が思い付かなかった)。
 背景の文字はただの飾りです。市販のスクリーントーンをスキャナで読み込んで流用しました。できるだけ背景の情報を取り除きたかったのですが、無さ過ぎるのもさびしいと思い、“無意味な情報”を織り込むことにしたわけです。

ba_2_n.jpg/68kB

より、写実的に…

 次にba_2_n.jpgですが、ba_1_n.jpgとは違い、“写真でこのシーンを撮ったらどうなるだろうか”ということを念頭に描いてみました。リアリティ重視、といったところでしょうか。
 まず描く舞台として屋外でのバトン演技を想定しています。テニスコートか何処かで観客を周りに配置して、その中で彼女らが演技するというわけです。この光景を描く自分もその観客の中にいるわけです。
 そして写真の場合、レンズのことを考えなくてはなりません。今回は望遠レンズを使い、“立った状態から自分より背の低い被写体にたいしてレンズを向ける”ことを想定したアングルになっています。必然的に俯瞰となり、望遠ですので被写角深度(被写体周辺にあうピントの有効範囲)が浅くなり、背景をボカす必要が出てきます。また、望遠レンズなので距離感をなくすために立体感を無くす必要があります。そのためキャラをできるだけ平面に描き、背景も例外ではありません。
 背景について解説すれば、パースを推し量るものは唯一、地面と観客達の足元の境を結ぶラインです。しかしそのラインを補助線に消失点を推測しても、それは画面のはるか外になるので奥行きを感じないようになっています。
 本当は前景と同じ密度(クオリティ)で描き、彩度等落として前景よりもトーンを落とし、ボカすような処理をするべきだったんだけど、今回は疲れてたのでそこらへんは手を抜いてしまいました(^^;)。また、臨場感(?)を出すためにキャラをできるだけ多く配置したいのですが、ba_1_n.jpg 同様キャラを複数配置した場合、人物のレイアウトが横一列になっていまい、単調になっています(パースつけるわけにいかないので)。そこで中心となる女の子のみを残し、他の人物をフレームの外に追い出すことにしました。ただ、先に述べたこともあったり、団体演技ということを意味するために、周りの人物の一部を見えるようにはしています。
 ともかく、パースが全然ついていない構図の中で、顔の見える人物を一人に絞ったことで絵の中心を決めることに成功しています(と、思う)。ただ目線に関してはわざと外してあります。このレイアウトでわざわざ目線をこちらの方に向けるとわざとらしくなってしまうと考えたからです。  私の場合、一応こういう風に考えて絵を描いています。こうまでして見る人に与える影響はどうか、というと正直言って私にはわかりません(^^;)。
 ただ、前述のように描き手が見る人に対して、この手法はどういう主旨で描いているかを考えて絵に取り組む必要があると思っています。

レイアウトが見るものに与える影響とは?

 …とまぁいったわけで、いかがでしょう。描いている内容は同じであっても、見るものに与える印象は大分異なっていると思います。たぶん「どちらがいい」ということはないでしょう。これは描き手側の判断一つ…というか、趣向によってどちらを選ぶかが決まると思います。また、その判断が見る側の批評もある程度決定してしまうのではないでしょうか。…ともなれば、こういったレイアウトもおろそかにはできないと思います。

 ああ、何が書きたいのか、あやふやになってるぅぅぅ(^^;)。あと絵も俺っぽくないなぁ…。やっぱ一度に2つ(それも別の方向のもの)となると色々と散漫になってしまうのかしら(^^;)。ってなわけで“こんな絵2枚でなにゴタク並べてんでぇぃ!”ってのは無しね(^^;;;;)。