桁ニキシー管クロックの作成

2011.07.14  劣化カソードの復活について追記 
2010.10.02 IN-18の状況追記 
2010.08.22 Ver0.6プログラム修正
2008.02.07 Ver0.6プログラムおよび回路修正
2005.10.29 IN-18の作例追加
2005.07.29 Ver0.3プログラム、IN-14の作例追加
2005.07.17 公開

はじめに 2005.07.17

友人からニキシー管の時計を作って欲しいという依頼がありました。
私自身、真空管のたぐいはほとんど扱ったことがなかったので不安になって調べてみたところ、それほど難物でもなさそうでしたので、早速製作を行ってみました。

肝心のニキシー管については既に生産中止となっているようで、デッドストックや海外の物がかろうじて入手できる程度です。
また、ニキシー管向けの高耐圧BCD-10digitデコーダ74141も同様にディスコンで入手性は悪いと思われます。
こちらは無くても通常のBCDデコーダと高耐圧のトランジスタを組み合わせれば良いですが、部品が多くなるのと配線の面倒さを考えると74141が入手できるのであればそれを使ったほうが楽でしょう。
国内ではnixie-tube.comさんでこれら(主に露西亜製ですが)を扱っておられるので助かります。
※nixie-tube.comさんは2005年の9月25日をもって一時閉店となるそうです。貴重なニキシー管の入手がまた難しくなってしまいますが、いつか再開して頂けることを祈ります。(2005.9.22 追記)
※2006年中に、無事復活されたようです。デカトロンの扱いもあるようでで嬉しい限り。(2007.1 追記)
re electronicsさんでも貴重な真空管やニキシー管の様々な種類を扱っておられます。(2011.7 追記)



他にもパーツショップやジャンク店をまわったところ何種類かゲットすることができました。
左からロシア製IN-12B、IN-14、日立CD81、RODAN(岡谷)GR-116Pです。右の2つくらいのサイズの物は秋葉原でもまだ足で探すと見つかるようです。NEC製などがいくつかありました。
上のレールはデッドストックで入手したSN74141です。made in Japanでした。



IN-14を点灯させたところ。ほんわりと癒される光ですね。

回路

コントローラはPIC16F873(または876)を使用しました。
クロックは時計製作で定番の京セラKTXO-18S(12.8MHz)を使い、4倍プリスケーラ設定でTMR0の3125回割り込みをもって1秒を生成します。

今回、時計は6桁(HH:MM:SS)ダイナミック表示として、74141を1個でニキシーの10セグメント選択、6桁+コロン・小数点用の8個のフォトカプラで桁切り替えを行うこととしました。

回路図 修正版 (nxclk06.hex以降用 1600*1200 gif 38KB) 
回路図(1600*1200 gif 32KB) 旧版

ニキシー管は数mAの電流で点灯しますが、170V程度の直流が必要になります。商用電源の倍電圧整流や、DCDCコンバータ(冷陰極管用などの改造や自作)の利用がよさそうです。今回はnixie-tube.comさんの電源キットを使いました。
ACアダプタ等からDC12Vを入力すると、ロジック電源系の5Vと高圧系(140〜210V)の2系統を出力してくれるので重宝します。

ダイナミック点灯時において、フォトカプラのターンオン/オフ時間が長いような種類を使った場合は桁間の引きずりによってゴーストが出やすくなるので、桁切り替え時のデッドタイムを多めにするなどの調整が要るかもしれません。

管の電流値(表示の明るさ)はフォトカプラと+170V間の電流制限抵抗22kΩ(コロン表示は68kΩ)でだいたい決まります。使用するニキシー管の種類に合わせて、たとえば表示が暗すぎるならば抵抗値を低くして電流を増やすなどの調整は必要です。あまり気にする必要はないと思いますが、抵抗値を大きめにして電流を下げれば管も長持ちすると思います。
上記電源キットでは調整VRで出力電圧の調整ができるので、明るさの微調整も簡単ですね。

時計表示の「:」(コロン)はネオン球の中心に輪切りの収縮チューブを被せて2つの点に見えるようにしています。

その他、周囲の明るさに応じて減光するディマー回路と、温度表示のためのセンサ(LM35D)をアナログ入力にくっつけました。
温度は0〜51.1℃までの対応(内部9bitで処理)としています。センサー出力が10mV/℃なので、テスター等で計った数値と表示値が合うようにオペアンプのVRで調整します。
ディマーは入力電圧が2.3V以下でON(減光)、2.7V以上になるとOFF(通常輝度)です。切り替えの明るさしきい値はVRで調整します。
なお、ディマーのヒステリシスはソフトウェアで設定しています。

プログラム

かなりキタナ〜いソースなので、公開はとりあえずHEXファイルでご勘弁。

nxclk06d.hex (16F876用 5KB) Ver0.6d (10/08/22版 ※1)
nxclk06c.hex (16F876用 5KB) Ver0.6c (08/02/07版 ※2)
nxclk03.hex (16F873用 5KB) Ver0.3 (05/7/29版 ※3)
nxclk02.hex (16F873用 5KB) Ver0.2 (05/7/17版)


教科書通り、タイマー割り込みで1秒をカウントしつつ、6桁の数値表示を行っています。
時計表示(24時間表示)、年月日表示、気温表示、オート(時刻表示の十数秒おきに年月日と気温を表示)の4モードをMODEスイッチで切り替えます。
SETスイッチで現在の年月日、時分を設定します。設定時はUPスイッチで設定値のアップ、SETスイッチで次の項目に移動、分設定後はSETスイッチ押下で00秒からの時計動作スタートです。
OCスイッチは押された時点で一番近い正時にリセットします。時報合わせですね。
秋月の電波時計には毎正秒・分・時・日にパルスを出力するオープンコレクタ出力があるので、毎正日(0時)あるいは正時(0分)の出力をここに接続しておけば時刻合わせ不要になります。
KTXO-18Sがかなり高精度なのでそこまでやらなくても良さそうですが(^^;

年月日カレンダー機能について、うるう年の計算は一応2001年〜2399年までの範囲で対応してます。

※1 Ver0.6d変更点
  ・温度表示のバグ修正と表示を3桁に変更
※2 Ver0.6c変更点
  ・PIC16F876用に変更(hexは873でもたぶんOK)
  ・RA4に正時パルス出力
  ・オートモードで表示切り替え時のちらつき修正
  ・温度表示を2桁に変更、小数点表示なし
  ・そのほかバグ修正
※3 Ver0.3変更点
  ・電源投入時に全管で0〜9までを順に点灯表示するチェック機能を追加しました。
  ・RA5ピンに1秒毎のパルス(幅100ms)を出力するようにしました。

写真

製作した基板。一番上が日立CD81用のニキシー管基板。
2番目が露IN-14用基板です。
一番下の2枚は時計メイン基板で5cm×9cm程度です。
CD81基板にて点灯確認中。まだ時刻のゼロサプレスなどをコーディングしていない状態です。

引き続き実験中。
左が電源基板。+12V入力で、+5Vと+160〜180V程度の2出力です。
中央が時計基板。
手前の銀色角パーツがKXTO
奥の白いパーツはフォトカプラです。4回路入りのパッケージにしたほうが小さくなることにあとで気付いたです・・・

で、現在30.3℃。。まだエアコンは我慢ですね。
時刻表示

コロンは…微妙?(笑
小さいネオンを二個ずつ使って':'の形にできるといいかも。
年月日表示はコロンなしです。

AUTOモードでは上の時刻表示中、毎10〜13秒と40〜43秒の間が年月日表示、25〜28秒と55〜58秒の間が下の温度表示に切り替わります
気温表示

最初、小数点に電流制限用の抵抗を余計に付けたのですが、ディマー(減光)時に消えてしまったので他のカソードと同じにしました。
完成。ケースはダイソーにて\105のアクリル製陳列ケースです。これより大きいサイズの物は\210以上になっていました。
IN-14用は\210のケースでうまく収まるかなー・・

手前のスイッチは表示切替用。

基板面がそのまま見えるのはどうかと思い、アクリルでカバーを作ってみました(下写真)。

これは回路やソフトの製作よりも、完成後にディスプレイするためのデザインのほうが大変じゃないですか。。。
光を反射する金属やガラス・アクリル系統の素材が見栄えも良さそうです。
木材で製作するのも落ち着いて渋いかもしれませんね。
後ろから。

右下は温度センサー、そこから左に向かってUP、SET、ZERO-Hスイッチと電源コネクタです。

一番右と2番目の管の間にちょっと顔を出しているのが光センサ(CdS)です。

作例その2 (IN-14使用)
IN-14を使った作例です。
ケースは丁度いいものが見つからなかったので、発泡塩ビ板で製作しました。
裏から見るとこんなんです(^^;

グレー色の板で箱を組んで、表面はブルーメタリックで塗装しました。
(以前乗っていたRAV4のボデーペンの余りを使いました)
正面から。中央のネオンランプは一秒毎に点滅します。
Ver0.3でPICのRA5から秒パルスを出力するようにしたので、フォトカプラを経由してネオンを点灯させました。
後ろから。中央の白いのがCdS、右下が温度センサ
基板はこんな形で押し込んであります。。。
時刻表示

日本製の小型管が結構シャープに数字を表示するので、それと比較すると一回り大きいこちらはすこしボーっとした感じです。
ニキシーらしいと言えばそれらしく、ほんわり感はかなり良いですね。

作例その3 (IN-18使用)
IN-18をやっと入手しました。
直径が約3cm、管の高さが約7cmとかなり大型です。
そんなわけで基板も新規に製作しました。
80mm×250mmの両面基板です。
今回はサンハヤトのスルピンキットでスルーホールを作ってみました。
クロックのバックアップ用に電気二重層キャパシタを付けてみました。
長く(数分程度)放置すると電圧が下がってクロックが先に止まってしまう(それでもPICは正常動作していますが)のであまり役には立たないかも(^^;
消費電力の少ないC-MOSのRTCにでも変更するとよさそうですね。

5VレギュレータとスイッチングFETの放熱にはまず貼る一番ハードタイプを使っています。(写真の白く見える放熱板)
同サイズのアルミと比べて非常に効率の良い放熱ができるため、小型機器や密閉機器で利用するとより効果が高いと思います。
基板に管を取り付け。
コロンは小型のネオンを2ケづつアクリルチューブにおさめました。
最後に特注アクリルケースに入れて完成。
台座は発泡塩ビで自作です。台座には白色LEDを仕込んで、暗いところでは写真のように基板下面からぼんやり照らすようにしてみました。


2010.10.02 追記

IN-18の秒を表示している'6'セグの表示が不調になりました。下半分しか点灯しない状況です。
電流値を増やすとうまく全体が光るのですが、そうすると他の管の電流も同時に増えてしまうので"秒"と一桁目の"十時"の管を入れ替えました。
(一桁目は"0","1","2"しか点灯しないので)
他の管はどの数字もまだちゃんと点灯するので当分は大丈夫だと思います。2005年の10月からずっと使っているのでちょうど5年目になりますね。


2011.07.14 追記

某掲示板で、“カソードポイズニング”が話題になっていました。
点灯している電極(カソード)から他の電極に対して常に微少なスパッタリングが発生しているのですが、点灯頻度が低いカソードはスパッタされる一方なのでやがて絶縁箇所が出来てしまい、いざそのカソードを点灯させてみると放電しない所が出来てしまっているという現象だそうです。
これを防止するためにシャッフルして点灯させたり、いろいろ工夫されている方もいて、なるほどなぁと感心しました。
しかし既にポイズニングによって一部しか点灯しなくなったニキシー管はどうすればいいのか、と調べていると該当するカソードに多めの電流を流すことで復活するという記事を見つけました。
スパッタで出来た絶縁層の粒子を弾き飛ばすという理屈になるのかな?

IN-18の5桁目(十秒の桁)を調べてみると点灯頻度が低い6〜9の電極全てにポイズニングによる不点灯箇所が発生しています。
この桁の6〜9は全く使わない訳ではなく、温度表示の時の小数点以下一位の表示に使っていましたけど、点灯頻度はかなり低かったので仕方ないですね…
ちなみにこれまでの点灯時間は5年と9ヶ月ほどになります。
これが復活出来れば10年くらいは余裕でもつんじゃないか??ということで実験開始。

通常はダイナミック点灯していますが、今回は5桁目だけ実験用に単体でスタティック点灯させています。
約3mAで点灯したところ。
'6'の上三分の一ほどが点灯しません。 
電極全体が放電するくらいまで電流を上げます。
これでだいたい12mAくらい。
IN-16の定格が4〜8mA。あまり電流を多くするとそれはそれで劣化が加速しそうなので、2〜3倍くらいに抑えて様子を見るのがいいかもしれません。
点灯を続けていると、暗い斑になっていた部分がだんだん明るく均一になってきます。
2時間くらい連続点灯させた後、電流を3mAに戻してみると…

結構劇的に復活するものですね\(^^)/

もちろんダイナミック駆動に戻しても問題なく点灯します。
同様に'7'のBefore 
ベーキング中 
40分ほど経過したところでチェック。
もう一息です。
 
Before 
'8'は電極の面積が大きいので多めの電流が必要です。 
After

見事に復活しました。 素晴らしい^^


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