2列2段スタックの最適間隔は?! 
 

 「6M5のスタック間隔とパラ間隔を変えたときのゲインや打ち上げ角を知りたい」とあるOMより、
メールをいただきました。アンテナデータもいただきましたので早速(でもないですが、、)やってみました。



目次
1.まずは感触を見てみる
2.シングルアンテナ特性
3.上下スタック特性
4.左右スタック特性
5.左右間隔一定の上下スタック特性
6.上下間隔一定の左右スタック特性
7.2列2段の地上高による特性変化
8.結論

1.まずは感触を見てみる。

メールでのリクエストは、6M5を2列2段にするとき

 1)上下スタック間隔 3.9m と 6m でどうなるか?
 2)左右間隔        4.5m と 7m でどうなるか?
 3)また最も打ち上げ角の下がるスタック間隔は?

3)はなかなか難しい問題なので、とりあえず1)、2)についてシミュレーションしてみます。 

     ビームパターン    左右4.5m-上下3.9m(21mH)   左右7.0m-上下6.0m(21mH)

地上高は実現性のある21mに設定しています。ただし、スタックの中心までの高さです。
結果より判ることは、

1)一番間隔の狭い場合と広い場合では、Gainで1.6〜1.8dBの違いがある。
2)F/B比は大差なし。
3)打ち上げ角はすべて4°で同じ。

なんとなく、間隔が広い方がGainはよさそうです。でも打ち上げ角は高さで決まってしまいそうな感じです。
と、これだけでは推測の域を出ないので、もう少し順序だてて調べてみることにします。
さて、どうなるやら、、、、、

 


2.シングルアンテナの特性を見る。

  まず6M5シングルをフリースペースに置いたときの特性です。
CD社のCL6DX(6ele)がGain11.3dBi , F/B比19.5dBですから、Gain重視のアンテナと言えると思います。
その代わりF/Bが劣っています。        水平、垂直パターン   YOによるビームパターンと帯域



3.上下スタックの特性を見る。

 次に6M5を上下スタックにし、間隔を広げていったきのGain、F/B比の変化を見ます。
間隔は2.1m〜8.1mまで0.3mづつ広げます。
0.3m間隔にしたのは波長の整数分の1としただけで、深い意味はありません。
評価はフリースペースで行っています。     生データはこちら


                                       ↑                       ↑
       ビームパターン      3.6m                5.4m

この結果から解ることは
1)Gainは間隔が広がるにつれて大きくなる。
2)ただし、6.9m以上は飽和する。(シングルの3dBup)
3)F/B比は周期性を持ち、3.6mと5.4mにピークがある。
4)5.4m以上では、ほぼ10.5dBに収束する。

以上より、Gain重視かF/B比重視かでスタック間隔の設定が異なることになる。
 



4.左右スタックの特性を見る。

 こんどは6M5を左右スタックにし、間隔を広げていったきのGain、F/B比の変化を見ます。
間隔は3.3m〜9.01mまで0.3mづつ広げます。
評価はフリースペースで行っています。     生データはこちら


                                                      ↑          ↑
                             ビームパターン    5.7m   6.6m

この結果から解ることは
1)Gainは上下スタックと同様、間隔が広がるにつれて大きくなる。
2)ただし、8.1m以上は飽和する。
3)F/B比は6.6mにピークを持つ。

水平スタックも垂直スタック同様Gain重視、F/B比重視かで設定が変わりそうです。



5.左右間隔を一定で上下スタックの特性を見る。

 さて、本題の2列2段ですが、縦間隔、横間隔をマトリクスにして評価するとあまりに膨大な数になってしまいます。
そこで3,4項で調べた結果を基にあたりを付けてやってみます。
4.より左右間隔は6.6mが実現性とF/B比の関係でよさそうなので、左右は6.6mに固定し、上下間隔を例によって
変化させてみます。       生データはこちら


                                        ↑                       ↑
    ビームパターン        3.6m                   5.4m

この結果から解ることは
1)特性の変化は上下スタックのみの場合と同じである。
ということです。



6.上下間隔を一定で左右スタックの特性を見る。

 同様に上下間隔を一定にし、左右間隔を変化させて特性をみます。
3.より上下間隔はF/B比の最良点3.6mとします。            生データはこちら


                                                  ↑
        ビームパターン     5.4m
 

これもほぼ水平スタックの特性と同じですが、F/B比にピークが見られます。

ここまでくると、何がどうでどれが良いのか悪いのか、頭の中がピーマンになってきます。hi



7. 2列2段の地上高による特性変化

 さてさて、今度は2列2段に配置した6M5を地面から有限の高さに置いた場合の特性を見ます。
上下左右の設定は、上下5.4m、左右6.6mとしました。6項で上下3.6m一定としましたが、もともと
6M5がGain重視のアンテナなので2列2段にした場合もGain重視とする方が理にかなうだろうと
考えました。またこれぐらいの間隔なら例えば20mHighに上げても実現可能でしょう。

注1) 地上高はスタック中心高さで表現
注2) Gain、F/B比は打ち上げ角度方向の値。例えばtakeoff=5degならその方向のGain,F/Bを示す。

生データはこちら


                         [ 2列2段スタック  左右6.6m  上下5.4m ]

                  ビームパターン  左右6.6m-上下5.4m  24mH
 

結果から解ることは
1)地上高9m〜30mまでGain、F/B比共大きな変化はない。
2)打ち上げ角は地上高が高いほど下がるが、24mを超えると3degとなり30mまで同じ

6mのアンテナは24mhighが最もコストパフォーマンスがいいようです。



8.結論

 以上の検討結果より、独断と偏見で結論をだすと次のようになります。

6M5を2列2段に上げる場合、実現性を考え、かつGain重視とした場合の配置は

1)上下スタック間隔は 5.4m
2)左右スタック間隔は 6.6m
3)地上高は打ち上げ角が低くなる最低高さ 24mが良く、3degとなる。
4)Gainは    22.46dBi (14.63dBd)
5)F/B比は 12.56dB
6)上下、左右間隔誤差のGain、F/B比に与える割合は比較的ブロードで、アンテナを
  上げるときさほど神経質になる必要はない。といえる。
7)打ち上げ角はスタック間隔では変わらず、スタック中心の地上高で決まる。
    1項、7項のデータより

結論として断定するには、少し無理があると思いますが、当たらずとも遠からずじゃないでしょうか!
厳密にはブームの垂れ下がり、各アンテナの向きのバラツキ等誤差要因となるパラメータは多々
ありますが、そこを詰めてみたところでしんどい割には得るものが少ないように思います。

 Gain重視で考えてきましたが、左右6.6m-上下5.4mのビームパターンはサイドローブがやや大き
いのが気になります。これを改善するにはGainが少し犠牲になりますが左右間隔を狭くすると良い
ようです。試しに左右間隔を6.0mにしたビームパターンをシミュレーションしてみました。
左右6.0m-上下5.4m(24mH)のビームパターン、こっちのほうがパターンは綺麗です。hi

左右6.0m−上下4.0m(24mH)
左右6.0m−上下5.0m(24mH)
左右6.0m−上下6.0m(24mH)
 


Katsuhiko Ohmae/JF3IPR   April 4th 1999             EZNEC Ver2.0使用