[バレエに行こう]に戻る

 作品紹介 あらすじと見所

<クラシック>    <新しい物語バレエ> <モダン>
ジゼル
白鳥の湖
ラ・バヤデール
ドン・キホーテ
胡桃割り人形
眠りの森の美女
ライモンダ
海賊
パキータ
ロミオとジュリエット
マノン
シンデレラ
オネーギン
スパルタクス
ボレロ
春の祭典
放蕩息子
シンフォニック・バリエーション
バレエ・フォー・ライフ

ジゼル

初演は1841年、パリ・オペラ座にて。音楽アドルフ・アダン、振付ジュール・ぺロー。ロマン派の詩人ゴーティエが、ハイネの詩をヒントにウィリの伝説をバレエしようとして出来た作品です。結婚前に死んだ娘は、ウィリ(精霊)になって、森を通りかかった若い男を死ぬまで踊らせるという話がベースになっています。ジゼルの母ベルトが、1幕の途中で、娘たちに語って聞かせるマイムとしても取り入れられています。

1幕は、ドイツの農村の情景で始まります。村娘ジゼルは、向かいの家に住むロイスに恋をしてます。ロイスは本当は貴族で、名前をアルブレヒトといいますが、身分を偽ってジゼルと付き合っています。

森番のヒラリオンもジゼルに恋をしてますが、ジゼルはロイスに夢中で、ヒラリオンを冷たくあしらってしまいます。ヒラリオンは、ロイスの正体に疑問をもち、家に貴族の剣があるのを発見します。

そこに狩りを楽しむ大公クールランドと娘のバチルダの一行が現れ、ジゼルの家で休息することになります。バチルダは、実はアルブレヒトの婚約者です。ヒラリオンは、ロイスの家で見つけた剣をロイスに突き付け、彼の正体をばらしてしまいます。裏切られたことを知ったジゼルは、正気を失い死んでしまいます。(ジゼルはもともと病弱という設定になっている)

2幕は、森の奥、ジゼルが葬られた墓場が舞台になります。ウィリの女王であるミルタが現れ、今夜新しい仲間が加わることをウィリたちに告げ、ウィリたちの踊りが始まります。やがて、ウィリたちは、ジゼルの墓を訪れたヒラリオンを見つけ、取り囲んで殺してしまいます。

次に、アルブレヒトもウィリに捕まってしまいますが、ジゼルがミルタに彼の命乞いをします。しかし、ミルタはこれを受け入れず、2人に踊り続けるように命じます。しかし、やがて夜明けが訪れ、ウィリ達は消えていきます。ジゼルも彼に別れを告げます。

見所 やはり、2幕のジゼルとアルブレヒトのパ・ド・ドゥでしょうか。ヴィオラ(?)のソロで始まるアダージョは実に美しく幻想的です。精霊ですので、決して体重を感じさせないようにふわりと空気に舞うように踊らなくなくてはなりません。

あとは、1幕は純朴な村娘で、2幕は精霊というジゼルの役をどう演じ分るか、更に、1幕最後の狂乱のシーンの演じ方など、ジゼル役にはかなりの演技力が必要とされます。へたに演じると、まったく説得力がないばからしい話になってしまいます(わたしのジゼルの1幕の最初の印象がそうだったもんで...)。あとは、1幕でのジゼルのソロ、村人たちの踊り、2幕のウィリたちの群舞(舞台両側からアラベスクをしながら、交差するところ。必ず拍手が起る)などです。

【これまでにみた舞台】
一番印象に残っているのは、99年の松山バレエ、森下洋子さんのジゼルです。

Topへ


白鳥の湖

バレエと聞いてまず思い浮かぶのが、髪飾りをつけた白いチュチュのバレリーナ。それが「白鳥の湖」に登場する白鳥の姿です。あまりにもポピュラー過ぎますが、それに違わぬ名作です。

初演は1877年、音楽はチャイコフスキー。ボリジョイ劇場で初演された当時は、不評だったといわれています。その後プティパ、イワノフが振付をし、現在に残る名作となりました。今では、プティパ、イワノフの原振付を改訂したいろいろな版が上演されています。通常は4幕構成。

1幕は宮廷の庭で、王子ジークフリートの成人を祝う宴が催されています。そこに王妃が登場し、もう成人なのだから、明日の舞踏会で花嫁を選ぶように王子に告げます。それを聞いて気が重くなった王子は、気を紛らわそうと、王妃から贈られた弓矢をもって狩りに出かけます

2幕、湖畔。白鳥を射ようとした王子は、白鳥が美しい娘に変わる様子を目にします。王子に気がついた白鳥は、自分はオデット姫で、悪魔ロットバルトに白鳥の姿に変えられ、夜だけこうして人間に戻ることができると身の上を話します。そして、この呪いを解くには、誰にも愛を誓ったことがない青年が彼女に永遠の愛を誓うことだと...。これを聞いた王子は、彼女を救うことを誓います。

3幕、宮廷では舞踏会が催されています。王妃は、王子に各国の王女の中から花嫁を選ぶように言いますが、王子は昨夜のオデット姫を忘れらることができません。そこに、騎士に変装した悪魔が娘のオディール(黒鳥)を伴って登場します。オデットにそっくりなオディールを見て、王子は彼女を花嫁に選び、永遠の愛を誓ってしまいます。騙されたことを知った王子は、湖に向かいます。

4幕、湖畔では、裏切られたことを知ったオデット姫が嘆き悲しんでいる所に、王子がやってきて許しを乞います。そこに、ロットバルトが登場し、2人を引き裂きます。その後の結末は大きく分けて2つの版があります。ハッピーエンド版は、王子がロットバルトを倒し、呪いが解けて2人は結ばれるというもの。悲劇版は、オデットも王子も湖に身を投げて死ぬが、あの世で結ばれるというもの。オリジナルは悲劇の結末だったものを、ソ連の社会主義政策によりハッピーエンド版が作成されたとか。(最近は、片方だけ死ぬという救われない版もある)

見所まずは、2幕のオデットと王子のアダージョ。バレエで最も美しいアダージョと言われています。青白い情景の中で、緩やかなテンポで踊るオデットは、実に幻想的で美しい。

うって変わって、3幕のオディール(黒鳥)は、激しく魅惑的な踊りで王子を誘惑します。そして、極め付けは最後の32回転。誘惑の限りをつくし、王子を手中にした黒鳥は、勝利で高らか踊ります。また、オデット(白鳥)とオディール(黒鳥)は同じバレリーナが演じますが、この演じ分けも見所です。

その他、2幕の群舞も、白鳥たちが次々に描く幾何学模様が実に美しい。4人で踊る「小さい白鳥」、「大きい白鳥」の踊りなども見所です。3幕では、舞踏会を盛り上げるために踊られる、ナポリ、ハンガリー、ポーランド、スペインなどの踊りがあり、各国の特徴ある踊りが非常に楽しい。また、1幕では、王子もしくはその友人と女性2人で踊るパ・ト・トロワ(時に4人の場合もある)などは、将来有望なバレリーナが踊っていることが多く見所となってます。

【これまでにみた舞台】
99年のロイヤル来日公演や、キーロフ来日公演などなどいろいろ。
キーロフのロバートキナの白鳥はまた見たいです。

Topへ


ラ・バヤデール

初演は1877年、ロシアのマリインスキー劇場。音楽はレオン・ミンクス、振付マリウス・プティパ。バレエ・ファン以外には馴染みのない演目ですが、なかなか見所の多いバレエです。インドを舞台としているため、エキゾチックな雰囲気が楽しめます。

1幕。インドの戦士ソロルが、狩りから帰ってくるところから始まります。ソロルは、バヤデール(寺院の巫女で舞姫)のニキアと愛し合っています。大僧正も美しいニキアに目をつけ迫りますが、ニキアは大僧正を拒絶してしまいます。

2幕。領主ラジャは、勇敢な戦士であるソロルが気に入り、娘ガムザッティの婿にすることを申し出ます。ソロルは、名誉とガムザッティの美貌に目がくらみ、これを承諾してしまいます。これを知った大僧正は、ソロルを亡き者にしようと、ソロルがニキアと愛しあっていることをラジャにばらします。しかし、ラジャは、ソロルではなく、ニキアを始末することにします。 一方、ガムザッティは、ニキアを部屋に呼び、自分がソロルと婚約したこと告げます。ニキアは思わず剣をとりあげますが、召し使いに止められます。ガムザッティもニキアを始末するように召し使いに命令します。

3幕。ソロルとガムザッティの婚約の宴が催されます。ニキヤは、バヤデールとして踊るように命じられます。ニキアに花篭が贈られますが、そこには毒蛇がしくまれていて、ニキアは毒蛇にかまれてしまいます。そこで、大僧正が解毒剤を差し出し、自分の愛を受け入れるようにニキアに言います。しかし、ニキアはこれを拒絶して息絶えます。

4幕。悔恨に苦しむソロルに、下僕が阿片を差し出します。阿片をすったソロルは夢をみて、バヤデールの精霊たちの間にニキヤを発見します。ニキアを愛していることに気がついたソロルは、二度と裏切らないことを誓います。

5幕。寺院で、ソロルとガムザッティの結婚式が行われます。精霊となったニキヤが現れ、ソロルと踊ります。2人の結婚は神の怒りにふれ、寺院は崩壊し、全員が死んでしまいます。あの世で、ニキヤとソロルは永遠に結ばれます。

ロシアのバレエ団で上演される版は、この最後の幕がなく、影の王国といわれるソロルの夢の場面で終ります(これも社会主義政策のための改定らしい)。アメリカン・バレエ・シアター、英国ロイヤル・バレエなどで上演されるマカロワ版では、ストーリーに関係ない踊りを削除し、3幕構成でスピーディに最後の寺院の崩壊までを展開します。

見所 まずは、「影の王国」といわれるソロルの夢のシーンです。舞台上手から順々に登場する精霊たちのアラベスク・パンシェの繰り返しは非常に美しい。単純な動きの繰り返しですが、これは時間の永遠を表し、ソロルとニキアが白いスカーフを使って踊るシーンは、精神性の高さを表すと言われています。(でも、阿片で酔ってみた夢なんですが....)

この「影の王国」は、ここだけガラ・コンサートなどで上演される事も多く、非常に人気があります。

あとは、婚約の宴で、花篭をもって踊るニキアのソロ。ニキアの悲しみが表現されます。逆に、婚約の場で踊る、ガムザッティとソロルのパ・ド・ドゥ。ガムザッティは、富と美貌をもった非常に強い存在で、ニキアとの対比がおもしろい。また、ストーリーには関係ないですが、最後の結婚式の前に、全身金粉を塗ったブロンズ・アイドルの踊りがあります。短いパートですが、個性的な踊りで、技の見せ場です。

白いチュチュを来たバレエのシーン(影の王国)も見られるし、美しいけれど権力をバックにほしいものを手にいれようとするガムザッティの存在など、話の展開も結構おもしろいと思います。ちょっとマイナーだけど、意外と初心者にお薦めできる演目だと思います。

【これまでにみた舞台】
2003年3月パリ・オペラ座来日公演などいろいろ

Topへ


ドン・キホーテ

初演は1869年、ボリジョイ劇場にて。音楽はレオン・ミンクス。 原振付は、マリウス・プティパだが、現在上演されているドン・キホーテの多くは、 ゴルスキーによる改訂版をベースにしているものが多い。スペインの町を舞台にした 陽気なコメディ。

通常、プロローグ付全3幕。

プロローグはドン・キホーテの書斎。ドン・キホーテは本を読んで、現実の世界と区別が つかなくなり、ちょっと頭の弱いサンチョ・パンサをつれて、あこがれのドルシネア姫を探す 旅にでます。

第1幕、町の広場。町の人々が集まっているところに、床屋のバジルとその恋人キトリが登場。 町の仲間と陽気に踊ります。そこにキトリの父親が登場。キトリの父は、キトリを金持ちの ガマーシュと結婚させたがっていて、バジルとの仲を認めようとしません。 キトリはガマーシュなんて適当にあしらってしまいます。

広場には、闘牛士たち、町の踊り子などが登場し、陽気に踊ります。 そこに、サンチョ・パンサを伴ってドン・キホーテが登場します。 ドン・キホーテはキトリをあこがれのドルシネア姫だと思い込み、町の広場を舞踏会と思いこんで みんなで踊ります。そんな中、バジルとキトリは駆け落ちをしてしまいます。

第2幕第1場。駆け落ちしたキトリとバジルが居酒屋に隠れていると、キトリの父が探しにやっ てきます。そこで、バジルは狂言自殺をしてみせます。それを見たドン・キホーテは、 2人の仲を認めるようにキトリの父に言います。キトリの父が、しかたなく2人を許すと、 それを聞いたバジルは飛び起きて喜びます。

第2幕第2場、ジプシーのキャンプ。旅を続けるドン・キホーテは、ジプシーのキャンプの側を 通りかかります。そこで、ジプシーたちのダンスや人形劇を見せてもらいます。 人形劇をみたドン・キホーテは、それを現実の話と勘違いし、風車を悪者と間違えて突っ込んで いって気絶してしまいます。

第2幕第3場、夢のシーン。気を失ったドン・キホーテは、森の中であこがれのドルシネア姫や 森の女王、キューピッドたちが踊る夢を見ます。

第3幕、キトリとバジルの結婚式。2人の結婚式が行われ、キトリとバジルが華やかに踊ります。

版によって、第2幕の狂言自殺のシーンが、ドン・キホーテの夢のシーンの後になる場合があります。 また、キトリとバジルの結婚式も、気絶したドン・キホーテを助けた貴族の館で行われる場合と、 町の広場で行われる場合があります。 結婚式のシーンで行われるドン・キホーテの決闘も、版によっていろいろあります。ドルシネア姫の 魔法を解くためという名目で、ドン・キホーテと銀月の騎士(バジルが演じる)が決闘する場合や、 ガマーシュとの決闘の場合などがあります。

見所 なんといっても、第3幕のキトリ とバジルの結婚式で踊られるグラン・パ・ド・ドゥです。超絶技巧盛りだくさんで、華やかで 見ごたえがあり、コンサートでも人気の高いパ・ド・ドゥです。 全幕では、キトリの友人の踊りも交えて演じられます。

あとは、1幕もキトリのソロ。スペイン情緒あふれる踊りです。また、2幕でも狂言自殺のシーン は、いかにも狂言自殺であることをおもしろおかしく演じます。ここの演じ方の違いなどもダンサーが 工夫をこらすところです。

その他、第1幕のエスパーダと闘牛士たちがマントをあざやかにさばきながら踊る場面や、 町の踊り子の踊り、第2幕の居酒屋でのメルセデスの踊りなど、スペイン情緒あふれる踊りが 展開されます。

そして、第2幕の夢のシーンでは、一転してクラシックなバレエの世界が展開 されます。ここでのドルシネア姫はキトリを演じるバレリーナが演じますが、キトリの強気な 娘の雰囲気から夢の存在への切り替えが見所です。

話自体はたわいもない話ですが、テンポよくつぎつぎと楽しい踊りが展開されるので、 非常に楽しめます。

【これまでにみた舞台】
ロイヤルで見たコレーラのドン・キホーテなどいろいろ

Topへ


胡桃割り人形

音楽はチャイコフスキー。バレエを知らなくても、聞いたことがあるような有名な曲がたくさんあります。通常は全2幕。

1幕。クリスマスイブの夜、少女クララの家ではクリスマス・パーティーが開かれ、居間は大勢の招待客で賑わっています。人形使いのドロッセルマイヤーが、子供たちを集めて、いろんな人形の踊りを見せます。そして、ドロッセルマイヤーは、クララに醜いくるみ割り人形をプレゼントします。クララはこの人形を気に入りますが、弟フランツや他の子供たちは、この人形を笑います。

やがてパーティは終わり、夜も更けます。クララが目を覚ますと、クリスマス・ツリーがどんどん大きくなり(クララが小さくなった)、クララは胡桃割り人形とネズミの大群の戦いを目撃します。戦いが終わると、胡桃割人形は王子様に変身し、クララをおとぎの国(お菓子の国)に連れていきます。その途中で、雪の女王たちと出会います。

2幕。おとぎの国では、クララを歓迎して、いろんな踊りが披露されます。アラビアはコーヒーの踊り、スペインはチョコレートの踊り、中国はお茶の踊り、そしてロシアの踊り。最後に金平糖の精と王子が踊ります。ふと気がつくと、クララは自分の部屋で目を覚まし、すべてが夢だったことに気がつきます。

ストーリーにこれといった面白みはない上に、前半は踊りらしい踊りもないため、(個人的には)いまいち退屈になってしまいますが、有名な音楽多いため親しみやすいし、設定が子供むけで、クリスマスの設定ということもあって、12月の定番公演となって、子供連れをたくさん見かけます。

いくつかの版があって、主人公の少女の名前がマーシャとなる場合もあります。また、金ペイ糖の精をクララが大人になったという設定で、同じバレリーナが演じる場合もあります。

初演は1892年、ロシアのマリインスキー劇場。プティパが台本を書きましたが、上演の3ヶ月前に病気で倒れてしまい、弟子のイワノフが振り付けたそうです。当時も音楽は大好評でしたが、振り付けはプティパ自身気にいらなかったようです。その後、ワイノーネンが改定した版が一般的になりました。いろんな版がありますが、その中ではピーターライト版が評判がいいような気もします。(でも、そもそも話の設定がつまらないので無理がある)

見所 なんといっても、金平糖の精と王子のグラン・パ・ド・ドゥです。チェレスタを使った独特の音色にのって、2人が踊ります。その前に踊られる、アラビア、スペイン、中国、ロシアの踊り。どれも特徴があって印象的です。続いて、葦笛の踊り(いくつかのバリエーションがあるみたいですが)もなかなかおもしろい。そして、超有名曲の花のワルツ(でも振付はいまいちかも)。というわけで、ストーリーとは関係ないけど、2幕はいろんな踊りがみられてとても楽しい。

それに引きかえ、1幕は踊りらしい踊りはあまりありません。最後の雪の女王と雪の精の踊りぐらいです。あとは、おまけで、ドロッセルマイヤーの人形がみせる踊りの人形ぶりがおもしろかなというくらいでしょうか。(ネズミとおもちゃの兵隊の戦いなんか見ても面白くないし)

【これまでにみた舞台】
新国立劇場バレエなどなどいろいろ

Topへ


眠れる森の美女

音楽はチャイコフスキー、原振付はマリウス・プティパ。悪魔の呪いで眠りについた姫が、王子のキスで目覚めるという、みんなが知っている童話を元にしたバレエです。通常はプロローグ付3幕構成(とても長い)。

プロローグ。フロレスタン王の宮殿では、オーロラ姫の誕生の祝いの宴が開かれています。妖精たちが、「優しさ」「元気」「鷹揚」「勇気」「のんき」などの性格を授けるための踊り(パンくずやカナリヤといった名前の場合もあります)を踊ります。そこに、悪の精カラボスがやってきます。カラボスは自分が祝いの宴に招待されなかったことを怒り、オーロラ姫は16歳の誕生日に、糸紡ぎの針に刺されて死ぬだろうと予言します。そこで、リラの精が、姫は死ぬのではなく、眠るだけだと予言します。これを聞いた国王は、国中で糸紡ぎの針を使うことを禁止します。

1幕。オーロラ姫の16歳の誕生日。禁止されている糸紡ぎをしている村人が見つけられるが、王妃のとりなしで、許されます。そして、宴が始まり、オーロラ姫が登場します。オーロラ姫は、彼女に求婚する4人の王子と踊ります。そこに、老婆が登場し、オーロラ姫に花を渡します。オーロラ姫は喜んで踊りますが、そこには針が仕掛けてあり、オーロラ姫は針に刺されて倒れてしまいます。リラの精が登場し、城全体を眠りにつかせます。

2幕。100年の時が流れます。デジレ王子とその一行が森を訪れます。王子の前にリラの精の現われ,オーロラ姫の幻影を見せます。王子は幻影であるオーロラ姫と踊ります。オーロラ姫にひかれた王子は、リラの精に導かれ、眠りの森を訪れます。途中、カラボスを退治し、眠っているオーロラ姫にキスをすると、オーロラ姫が目覚め、周りの人々も眠りから覚めます。

3幕。オーロラ姫とデジレ王子の結婚式。フロリナ王女と青い鳥、長靴をはいた猫と白猫、赤頭巾ちゃんと狼などのおとぎ話しの主人公たちが次々と訪れ、2人を祝福します。さらに、金、銀、サファイヤ、ダイヤモンドの宝石の精たちが踊ります。そして、オーロラ姫とデジレ王子が踊ります。最後に、リラの精が登場し、悪に打ち勝った栄光で幕となります。

見所 なんといっても、1幕のオーロラ姫が4人の王子たちと踊る「ローズ・アダージョ」と呼ばれる踊り。恥じらいと初々しさをみせながら、オーロラ姫は4人の王子たちと踊ります。そして、トウシューズでたったままバランスをとりつづけて、王子から一人ずつバラを受けとる場面があります。ここは、非常に難しい技術が要求され、見ているほうも緊張します。更に、その前に、長いプロローグをへて、1幕でやっと登場した主人公オーロラ姫は、登場しただけでみんなを魅了するような華やかさが必要されます。

そして、最後に踊られるオーロラ姫とデジレ王子のグラン・パ・ド・ドゥ。こちらは、1幕の初々しさとは違って、もっと大人の女性の魅力をださないといけないそうです。

オーロラ姫とデジレ王子以外の踊りでは、プロローグで踊られる各気質の妖精たちの踊りや、3幕の宝石の精たちの踊り、フロリナ王女と青い鳥の踊りがあります。特に、青い鳥は、男性ダンサーの見せ場となる踊りです。

あと、意外と重要なのが、カラボス。あまり踊りませんが、この悪の存在が非常に重要。それと、バレエ団によっていろんな演出があって、どんなカラボスがでるかもちょっとした楽しみ。大きく分けると、女性ダンサーがが華やかに踊る場合と、男性が(おどろおどろしい老婆に扮して)女装して演じる場合があります。

また、オーロラが登場する前に、花篭を持っておどる「花のワルツ」もとっても華やかで見ごたえがあります。

【これまでにみた舞台】
キーロフ、ボリジョイ、新国立劇場などいろいろ

Topへ


ライモンダ

1898年、マリインスキー劇場で初演されました。振付はマリウス・プティパ、音楽はグラズノフ。数々の古典バレエを作り上げたプティパの晩年の作品です。舞台は中世のフランス、通常は3幕構成で上演されます。

1幕、伯爵夫人の姪ライモンダは、騎士ジャン・ド・ブリエンヌと婚約しているが、ジャンは十字軍に出征してしまっている。伯爵夫人の城では、ライモンダの誕生日を祝う宴が開かれ、そこに、サラセンの王アブダ・ラーマンが現れ、ライモンダに求愛する。

夜、ライモンダの夢の中にジャンが現れ、二人は踊る。そこにアブダ・ラーマンも登場し、ライモンダの心は揺れる(心惹かれるのか、不安になるだけなのか、いまいち不明。版によって解釈が違うみたい)。

2幕、ジャンの帰還を待つ城に、アブダ・ラーマンが手下を従えやってくる。アブダ・ラーマンはライモンダに激しく求愛し、宴の隙にライモンダを連れ去ろうとする。そこに、ジャンが登場し、二人は決闘する。

決闘に敗れたアブダ・ラーマンは、ライモンダへ求愛しつつ息絶える。

3幕、ライモンダとジャンの結婚式が盛大に行われる。

見所 結婚式のパ・ド・ドゥや、夢の場などが有名ですが、実は、アプデ・ラーマンが重要だったりします。なんせ、ジャンは、十字軍に行ってしまって、最初は登場しないわけですし、いまいち存在感がない(気がする)。その代わり、アブダ・ラーマンが、情熱的にライモンダに求愛する、その男性的な踊りの迫力がこのバレエのアクセントになってます。(2005年ABT来日公演では、ジャンは十字軍にいかない演出になってましたが)

3幕の結婚式は、結婚を祝って、さまざまな踊りが踊られ、最後に2人のパ・ド・ドゥとなり、見応えがあります。

その中でも、とくに有名なシーンが、結婚式のライモンダのソロ。哀愁を帯びた音楽にパドブレだけを繰り返す、印象的な振付で、本当に結婚式?ってくらい、なんか厳し〜い雰囲気で踊られます。ハンガリー風の哀愁を帯びた音楽も素敵です。

あとは、1幕の夢の中で、ライモンダとジャンが踊る部分。(アブダ・ラーマンもでてくるけど)

その他、2幕では、アブダ・ラーマンのお付の者たちが踊る民族舞踊や、アブダ・ラーマンの勇壮で情熱的な踊りなどが見所になります。

【これまでにみた舞台】
2003/7/23 ABT来日公演 

Topへ


海賊

ガラで踊られるパ・ド・ドゥが有名。但し、このパ・ド・ドゥは、全幕では、コンラッド、アリ、メドーラのパ・ド・トロワになっています。

初演は1856年、音楽はアドルフ・アダンで、後にドリゴなどの音楽が追加されています。日本でよく観られるのが、レニングラード・バレエ団の海賊。海外のバレエ団としては、正当派の海賊なら、キーロフ・バレエ、ちょっとコメディっぽい楽しい海賊ならアメリカン・バレエ・シアターで見ることができます。(更に、2007年5月にKバレエで上演予定です)

プロローグ。海賊達を乗せた船が嵐で難破。

1幕、海賊の頭領であるコンラッドと、部下であるビルバンド、奴隷のアリたちは、近くの海岸に流れつく。海賊達が倒れているところに、ギリシャの娘、メドーラやギュリナーラが登場。メドーラたちは海賊達を助けるが、メドーラとコンラッドは恋に落ちる。しかし、そこに奴隷商人であるランケデム達が現れ、メドーラたちを連れ去ってしまう。

場面が変わって、奴隷市場。ランケデムは、次々と娘達を競売にかける。メドーラに、トルコの総督パシャが大金を積んだところに、コンラッド達が現れ、メドーラ達を助ける。

2幕、海賊たちの隠れ家である洞窟。海賊達の勇猛な踊り。そして、メドーラ、コンラッド、アリのパ・ド・トロワ。メドーラといっしょにつれてきたギリシャ娘達は、故郷に帰りたがっており、コンラッドはそれを承諾する。部下のビルバントはこれに納得がいかず、謀反を企てる。奴隷商人ランゲデムのワル知恵で、眠り薬を花に振りかけ、コンラッドを眠らせている間に娘達を連れさそうと計画。

場面変わって、コンラッドの寝室。コンラッドとメドーラの幸せな踊り。そのあと、メドーラは謀反の計画としらず、渡された花束をコンラッドに渡してしまう。コンラッドが眠っている間に、ビルバントとランケデムはメドーラを連れ去ってしまう。コンラッドは、アリと共に、彼らを追う。

3幕、パシャの館。ランケデムはメドーラをパシャに高く売る。パシャの館には、市場で売られたメドーラの友人ギュリナーラもいる。メドーラはギュリナーラとの再会を喜ぶ。ハーレムでの華やかな宴になる。そこに、修行僧に扮したコンラッドとアリが現れ、パシャの館に入りこむ。メドーラたちを救いだす。

エピローグ。コンラッドとメドーラたちは、航海にでる。

見所まずは、2幕のメドーラ、コンラッド、アリのパ・ド・トロワ。主役はコンラッドとメドーラですが、ここの見せ場はアリ。アリは男性ダンサーの見せ場となる技巧が盛り込まれてて、盛り上がります。更に、アリは、主人に忠実に仕える奴隷という設定なので、メドーラに対してほのかな憧れと身分違いという叶わぬ思いを秘めながら踊っている、なんて解釈もできたりすると、ぐっと見応えがでてきます。

話は荒唐無稽で、ストーリーで感動するバレエではなくて、とにかく踊りを楽しむ作品。上記のパ・ド・トロワの他にも、1幕のギュリナーラとランケデムが踊るところとか、メドーラとコンラッドの寝室の甘いパ・ド・ドゥとか、さらに3幕のハーレムの夢のシーンなどが見所。

最近日本でみた海賊としては、毎年来日しているレニングラード・バレエ団や、2006年来日したキーロフ・バレエ、2002年に来日したアメリカン・バレエ・シアター(ABT)などがあります。ABTとキーロフの海賊はだいぶ赴きが違って、キーロフは正当派で、豪華なセットと踊りの競演が楽しく、ABTは、かなりコメディタッチでのりのりのエンターテイメント。

2007年5月には、Kバレエが新制作するとのことで、上演が楽しみ。

【これまでにみた舞台】
2006年キーロフバレエ来日公演
2003年レニングラードバレエ団来日公演
2002年アメリカン・バレエ・シアター来日公演

(2007/1/28記)

Topへ


ロミオとジュリエット

原作はシェークスピアの「ロミオとジュリエット」。幾つかの版がありますが、もっともよく上演されるのは、マクミラン版です。その他に有名な作品としては、クランコ版、ラブロフスキー版、ヌレエフ版などがあります。いずれも、音楽はプロコフィエフの「ロミオとジュリエット」を使っています。

「ロミオとジュリエット」を最初にバレエにしたのは、ロシアのラブロフスキーです。プロコフィエフに作曲を依頼し、1940年にキーロフでラブロフスキー版が初演されました。そして、その後ボリジョイ・バレエの海外公演で、世界的に高く評価されるようになったそうです。

それまで、古典的なバレエしか知らなかったヨーロッパに人たちは、この演劇的なバレエに刺激を受け、その後、まずクランコが、続いてマクミランが独自の振付で「ロミオとジュリエット」を製作しました。そのため、この3つの版は、各振付家の特徴を見せながらも、構成は非常に似ています。(以下の解説は、マクミラン版をもとにしてます)

1幕、モンタギュー家のロミオは、ロザラインに思いを寄せているが、相手にはされない。街では、モンタギュー家とキャピレット家の対立からケンカが起こり、ヴェローナ大公が両家に争いを止めるよう諭す。ロミオは、友人2人と、キャピレット家の舞踏会に忍び込む。ロミオとジュリエットは舞踏会で出会い、恋に落ちる。舞踏会が終わった後、ロミオはジュリエットの部屋のバルコニーに現れ、愛を打ち明ける。

2幕、ロミオとジュリエットは、密かに結婚を決意する。ロミオが街に戻ると、ロミオの友人たちとティボルトのケンカが始まり、マキューシオが殺されてしまう。それを見てカッとなったロミオは、ティボルトを殺してしまう。

3幕、ロミオは街を出ることになり、ジュリエットと最後の夜を過ごす。翌日、ジュリエットは、パリスと結婚することを強制され、神父に相談に行く。神父は、仮死状態になる薬を渡す。

死んだと思われたジュリエットは、墓に埋葬される。ロミオは、ジュリエットが死んだと思い、毒薬を飲んで自殺してしまう。ロミオが死んだ後、ジュリエットが目を覚ます。しかし、傍らで死んでいるロミオを見て、ナイフで自らの胸を刺し、後を追う。

見所 マクミラン版もっとも有名な場面は、なんといっても1幕のバルコニーシーン。若い二人の舞い上がるような思いが表現されています。

そして、ホンの子供だった無邪気な少女が、恋を知り、しだいに大人になっていくジュリエットの演技の変化がなかなか見応えあります。マクミラン版の主人公は完全にジュリエットです。

そして、最後、仮死状態となったジュリエットと踊るロミオ。この死体とのパ・ド・ドゥも非常に見応えがあります。あと、印象に残るのは、死ぬ前のマキューシオの断末魔の踊りや、ティボルトを殺されたキャピレット夫人の嘆きなど。

クランコ版は、マクミラン版よりロマンチックな感じがします。ラブロフスキー版は、更に踊りなどがおとなしめ。

マクミラン版がジュリエットを主人公にしているのに対し、ヌレエフ版は、両家の対立、因縁みたいなものまで描いている感じです。ティボルトの幽霊だの、死神がでてきたり、なんとなく全体におどろおどろしい感じがあります。

【これまでにみた舞台】
2003/11/27 キーロフバレエ来日公演 (ラブロフスキー版)
2003/12/6 キーロフバレエ来日公演 (ラブロフスキー版)
2002/2/6 シュツットガルト来日公演 (クランコ版)
2001/10/9〜 新国立劇場バレエ団 (マクミラン版)
1999/7/8 ABT来日公演 (マクミラン版)
1999/7/7 ABT来日公演 (マクミラン版)

Topへ


オネーギン

原作は、ロシアの詩人プーシキンの「エウゲニ・オネーギン」。振付はジョン・クランコ。1965年、シュツットガルト・バレエで初演されました。

クランコは、チャイコフスキーのオペラ曲「エウゲニ・オネーギン」を使わず、チャイコフスキーの『四季』などのピアノ曲を主に使用しています。

1幕、ロシアの田舎。タチアナが庭で本を読んでいると、妹のオルガとその恋人レンスキーが都会からの客人オネーギンをつれてきます。タチアナの友人たちは、タチアナに鏡で将来の結婚相手を占うようにいいます。そこにオネーギンがやってきて、鏡を覗き込みます。タチアナは、都会的な物腰のオネーギンに恋をします。

夜、タチアナがオネーギンへの恋文を書きながら眠ってしまうと、夢の中にオネーギンが現れ、タチアナと踊ります。タチアナは、乳母に手紙をオネーギンに届けさせます。

2幕、タチアナの誕生日パーティー。田舎暮らしにうんざりしているオネーギンは、タチアナの目の前でラブレターを破り捨てます。そして、オルガといちゃつき始めます。怒ったレンスキーはオネーギンに決闘を申し入れます。レンスキーは決闘で死んでしまいます。

3幕、グレーミン公の屋敷。舞踏会に現れたオネーギンは、グレーミン公の美しい夫人がタチアナであることを知ります。オネーギンは、タチアナへの思いを手紙にしたため、屋敷を訪れます。タチアナは、オネーギンの告白に心ゆれながらも、彼への思いを断ち切り、立ち去るように言います。

見所 音楽とともに、とっても文学的で、美しい舞台です。とくに、1幕の最後、夢に現れたオネーギンとタチアナのパ・ド・ドゥは非常に幻想的で美しい。そして、1幕では、文学少女で夢見がちな少女の思いが綴られ、3幕では、夫のため、彼を拒否する大人の女性の苦悩が踊りを通して表現されてます。

また、2幕は舞踏会シーンの華やかさと、その後の決闘による悲劇など、話自体も展開があって面白い上に、各シーンとも舞台がとても美しく構成されてます。

ただ、オネーギンという人間がいやなやつなので、ちょっと共感しにくいのが難点ですが、、、

【これまでにみた舞台】
 2002年7月 英国ロイヤルバレエ

Topへ


マノン

アベ・プレヴォの小説「マノン・レスコー」に、ケネス・マクミランが振付を行い、1974年に英国ロイヤルバレエで初演された。音楽は既存のオペラの曲を使わず、マスネの様々な楽曲から編成されている(一般的には、”マノン”といえば、プッチーニやマスネのオペラ曲のほうが有名)。

1幕、中庭。舞台は、18世紀パリ、マノンは修道院にいくため田舎からでてきた途中で、兄レスコーに会う。レスコーは、妹を使って金持ちから金を巻き上げようとたくらむ。しかし、マノンは、そこで神学生デ・グリューと出会い恋に落ちる。マノンとデ・グリューは、2人で駆け落ちする。

場面が変わり、2人の寝室。デ・グリューは、手紙を書いている。マノンとデ・グリューは、二人で踊る(ここが有名な、寝室のパ・ド・ドゥ)。デ・グリューが出かけた隙に、レスコーが、金持ちのムッシューGMを連れてやってくる。GMは、マノンに宝石と毛皮を贈る。マノンは贅沢に目がくらみ、GMの元へ行く。

2幕、娼館に、娼婦たちや男たちが集まり、饗宴が開かれている。酔ったレスコーとデ・グリューもそこにやってくる。そして、GMがマノンを連れて登場する。

デ・グリューは、マノンに自分の元に戻るように懇願するが、マノンは、いかさま賭博でGMの金を巻き上げるようにデ・グリューをそそのかす。デ・グリューはいかさま賭博をしてしまうが、それがばれてしまい、マノン、デ・グリューはそこから逃げ出す。

場面が変わり、マノンとデ・グリューの部屋。荷造りをしていると、そこに、レスコーを捕らえたGMがやってくる。レスコーは殺され、マノンは捕らえられてしまう。

3幕、アメリカ。マノンは罪人としてアメリカに流刑になる。マノンを追って、デ・グリューもいっしょにアメリカに渡る。看守がマノンを陵辱しする。デ・グリューは、看守をナイフで刺してしまい、二人はアリゾナの沼地に逃げる。

沼地の逃亡で、マノンは力尽きてしまう。過去の幻影を観ながら、デ・グリューの腕の中で息絶える。

見所 とにかく、この物語性の濃さと、それを雄弁に語るマクミランの振付がこのバレエの魅力です。寝室のパ・ド・ドゥや、沼地のパ・ド・ドゥは、ガラなどでもよく踊られますが、全幕で観ないとこの良さは分かりません。そして、演じる人で、全く違う印象の舞台になるほど、演劇性の強い作品です。多くのバレリーナが、踊りたい作品としてマノンをあげるのもうなづけます。

マノンとデ・グリューのパ・ド・ドゥでの見所は、まずは、1幕中庭のマノンとデ・グリューの出会いのパ・ド・ドゥ、更に、すぐその後の官能的な寝室のパ・ド・ドゥ。そして、最後の沼地のパ・ド・ドゥでは、ボロボロになりながら、デ・グリューにすがるマノンの姿に泣けてきます。

その他、印象的なシーンは、1幕でのマノン、GM、レスコーで踊る、3人の思惑が絡みあうかのような振付。さらに、2幕の娼館で、男たちの間を、高く低くリフトされていくマノンは、彼女の人生そのもののようです。

あと人気が高いのは、2幕のレスコーと愛人の酔っ払いのパ・ド・ドゥ。酔ったように見せながら、きっちりと振付けをこなさないといけないののが、なかなか難しい。

【これまでにみた舞台】
1999/4/24〜 英国ロイヤルバレエ来日公演
2000/7/17 英国ロイヤルバレエ@ロンドン
2003/10/31〜 新国立劇場バレエ団
2005/7/16 英国ロイヤルバレエ来日公演
2005/7/15 英国ロイヤルバレエ来日公演

Topへ


春の祭典

ストラヴィンスキーが作曲した「春の祭典」は、20世紀の名曲として有名ですが、もともとは、ニジンスキー振付のバレエのために作曲された音楽です。それ以降、数多くの振付家がこの曲に魅力を感じ、バレエ作品を作っています。

有名どころとしては、鹿の発情にヒントを得て作成されたというベジャール版、舞台に本物の土を敷き裸足で踊るピナ・バウシュ版など。その他にも、マーサ・グレアム、マクミラン、プレルジョカージュなど、100以上の振付家が作品を作っているらしい。

原点ともいうべきニジンスキー版のバレエ初演は1913年のパリ。革新的な音楽と振付は、当時の観客に衝撃を与えたようです。

ニンジスキーの振付は、背中をまるめ、内股で歩くという、クラシックバレエの基本を無視したものだったとか。そして、ストラヴィンスキーの音楽は、これまで聴いたこともないような変拍子と不協和音。それまでの美しいバレエ、クラシック音楽しか知らなかった当時の観客たちは、この舞台に驚き、抗議する者、支持する者で、劇場は乱闘騒ぎまでおこるほどの大混乱になったといわれています。

その場に立ち会っていたストラヴィンスキーは、次のように回想しています。

「序奏の最初の数小節が始まっただけで嘲笑が湧いたので、私は憤慨のあまり席を立ってしまった。最初のうちは少なかったが、不愉快な極まる示威は次第に高まり、ついに会場を覆い尽くしてしまった。ところがそれに反対するヤジも多くなって、やがて恐るべき喧嘩に発展した」(ブーレーズ指揮「春の祭典」1969年-CDの解説書より)

これは、実は興行主ディアギレフの策略で、こうなることを予想して、保守的な貴族階級と、新進的な若者、芸術家たちの両方を招待していたとか。

このニジンスキー版は、その後、時代とともに忘れられていましたが、最近、いくつかのバレエ団で復刻上演されるようになってきました。

見所 有名なのは、やはり、ベジャール版。肌色のレオタードを着た男女がエネルギッシュに踊る舞台は、鹿の発情にヒントを得て振付けたというだけあって、原始的な性のエネルギーと力強さに圧倒されます。

最初は、男だけの群れが登場し、力強い動きを見せます。次に登場する女だけの群れは神秘的な感じ。そして、それぞれの群れから男女1名の生贄が選ばれます。生贄を取り囲むように踊る群舞は圧巻です。

実は、バレエを見るまで、この曲のよさが良く分かりませんでした。現代曲はよくわからない〜って感じで。

しかし、ベジャールのバレエをみて、一発でこの曲のもつ春の大地の目覚めや、狂気のイメージが理解できたような気がしました。それ以来、この曲を聞くだけでわくわくするようになり、今ではお気に入りの一曲です。

ピナ・バウシュ版も非常に人気が高いようですが、日本ではなかなか観るチャンスはないようです。パリ・オペラ座や、ピナが主催するヴッパタール舞踊団などで上演されます。

【これまでにみた舞台】
2003/11/2 東京バレエ団 奇跡の饗宴

Topへ


ボレロ

ラヴェル作曲のボレロは、2つの主題がいろいろな楽器のソロに引き継がれながら、しだいに曲全体がクレッシェンドしていくという非常にシンプルな曲。それでいて、それが聴いていて非常に盛り上がる曲です。

ボレロとは、もともとは3拍子のスペイン舞踊だそうです。ラベルは、バレエ用の曲として依頼されて、このボレロを作曲したそうですが、オリジナルのバレエはどんなものだったかあまり知られてはいません。

何人かの振付家がこのボレロに振付を行っていますが、もっとも有名なのが、ベジャール版です。映画「愛と哀しみのボレロ」のラストでジョルジュドンが踊ることでも知られるベジャール版のボレロは、ジョルジュ・ドンの名前とともに世界的に有名になりました。

見所 ベジャール版ボレロでは、舞台に置かれた赤い円卓の上で、一人のダンサーが何かに取り付かれたのように踊り、さらに、その彼に魅入られるかのどごくに周りのダンサーが一人、二人と踊り始めます。ボレロの音楽と同様に、同じような振付の繰り返しで、微妙に変化していくダンスが、音楽とともにしだいに激しさを増し、音楽とダンスが見事に一体化されています。

このバレエは、中央で踊る一人をメロディと呼び、周りを取り巻く群舞をリズムと呼びます。初演当時は、中央のメロディを女性が踊り、周りのリズムを男性が踊りました。一人の女に、周りの男たちが扇情されるという設定だったようです。

それが、ジョルジュドンがメロディを踊るようになり、中央を男性、周りを女性というパターンになり、更に、メロディもリズムも男性という形でも踊られるようになってきました。

ベジャールは、非常に自分のバレエを大事にしていて、彼のバレエを踊るダンサーを厳選しているため、ボレロのメロディを踊れるダンサーは非常に限られています。ジョルジュ・ドンが圧倒的に有名ですが、それ以外には、マイヤ・プリセツカヤ、パトリック・デュポン、シルヴィ・ギエムなど。日本では、高岸直樹、首藤康之、さらに最近では上野水香が踊るようになりました。

ベジャール版の他には、最近見たものでは、ローラン・プティが熊川哲也に振付してます。テレビで一度見ただけですが、振付の方は、どうしてもベジャール版のイメージから抜けられず、いまいち物足りない感じがしましたが、個人的には熊哲がなかなかよかったと思いました。(でも、その後あまり見かけないということは、いまいち評判がよくないのかな、、、)

【これまでにみた舞台】
2003/1/16 東京バレエ団 ベジャール・ガラ
2003/11/2 東京バレエ団 奇跡の饗宴

Topへ


放蕩息子  Prodigal Son  

振付はバランシン、音楽はプロコフィエフ。1929年初演、バレエリュス最後の作品。バランシン初期の作品で、彼の作品としては珍しく、ストーリーのある1幕バレエになっています。

この作品は、新約聖書にでてくる放蕩息子の挿話を下にしている。放蕩息子の話は以下のとおり。

<聖書にでてくる放蕩息子の話>
二人の兄弟がいて、弟は父親の財産を分けてもらい、家をでて遊蕩の限りを尽くす。そのあげく、食うに困るようになり、自分の過ちを悔い、自分には息子の資格はないが、召使としてでいいので家において貰おうと、家に戻る。父は、戻ってきた息子を見つけ、息子を喜んで迎え、死んだと思った息子が戻ったのだから祝宴をあげようと言った。まじめに父の仕事を手伝ってきた兄は、自分たちのためにはそんな贅沢なご馳走を出すことがなかったのに、放蕩息子が帰ったことで祝宴を挙げる父に不満を感じる。

聖書での話しは、父が神、息子が罪人、兄は聖職者や学者を表しているそうです。そして、どんな罪人でも、悔い改めれば許されると説いていて、かたや、どんな人間(ここでは兄のようなまじめな人間)でも、完全に正しい人間などはいないのであって、自分だけは正しいという思いは傲慢であるといういうような教えらしい。(2005年K-Ballet トリプル・ビルのプログラムより)

聖書の教えはともかく、バレエのほうですが、バレエでは、兄はでてきません。その代わりに姉2人がでてきますが、これはあまり重要な役回りにはなってません。

バレエの方は、3場の展開になります。1場は放蕩息子の家。放蕩息子は、父親の教えに従わず、好き勝手に振る舞い、お金をもらって、2人の従者をつれて家をでます。

2場、旅先。家を出た放蕩息子は、異国の男たちとセイレーン(誘惑者)に出会います。セイレーンの魅力に骨抜きにされ、酔ったところで、身ぐるみをはがれ、無一文になります。

3場、再び放蕩息子の家。ボロボロになった放蕩息子は、自分の罪を悔い、家に戻ります。放蕩息子を見つけた父は、彼を優しく迎えます。

見所は、この放蕩息子の1場から3場への変化でしょうか。1場のダイナミックな演技とジャンプ、それが一点して、3場ではまともに歩くこともできないくらいに落ちぶれ、悔い改める姿となるところ。そして、そんな彼を受け入れる父の姿はやはり感動的です。

更に、2場では、奇妙な雰囲気の異国の男たちと、セイレーンに誘惑される放蕩息子の絡みがなかなか面白い。

【これまでにみた舞台】
2005/8/29 熊川哲也K-Ballet Company トリプル・ビル

Topへ


シンフォニック・ヴァリエーションズ Symphonic Variations

アシュトンが振付けた1幕バレエで、1946年にサドラーズ・ウェルズ・バレエ(現英国ロイヤルバレエ)で初演される。音楽は、セザール・フランク「ピアノとオーケストラのための交響的変奏曲」。

物語のない抽象バレエで、3組のペアが登場する。クラシック・バレエの本質的な美しさを生かした繊細なバレエ。

(2005年K-Ballet トリプル・ビル プログラムより)

【これまでにみた舞台】
熊川哲也K-Ballet Companyで上演されてます。

Topへ