白龍亭・関八州の郡

目次 >> 地図(補図) >> 関八州の郡(1999年頃~/2021年 10月 地図を改訂して復活/2023年 6月 安蘇郡の郡域変更を追記)


▼関八州+甲信越


* 高精細+小画面(スマホ)は、地図の縮小表示可能。それ以外(PC)は、地図の拡大表示可能。


【國と郡】
 南総里見八犬伝には各国内の郡名も出てくる。それがどの辺なのかを理解するための地図。
* 郡名や郡境は、時代によって微妙に異なる。だが、南総里見八犬伝を読むための補助を目的とした地図であり、学術目的ではないので、細かい考証はしていない。よって、異なる時代の郡境が地図内に同居している可能性はある。
* 地図画像は、1990年代に公開していたものを修正+範囲拡大。
* 修正箇所:常陸国の郡名が間違っていたのを修正。
* 拡大範囲:以前の地図は、上野国・新田郡が北限、信濃国・佐久郡が西限。それより北と西が今回追加した拡大部分。南限・東限は変わらず。
* 変更点:以前は一部郡名を省略していたが、新しい地図では範囲内全郡名を表記。
* 地図内の漢字は旧字。よって「塩谷」は「鹽谷」、「小県」は「小縣」、「会津」は「會津」と表記している。そこだけは分かりにくいかも。
* 「上総国・夷隅郡」は、八犬伝の中では「夷灊郡」だが、現実の夷隅郡も、この字で書かれた実例があるらしい。詳細は知らず。

 馬琴が、郡名を間違えたのは目立つ所で三例ある。
* 細かく見れば、他にもあるはず。
 ひとつは、網苧(足尾)を「下野国・真壁郡」と書いた事。本来は「安蘇郡(後に都賀郡)」である。
* そもそも真壁郡は常陸国であり、どこでどう間違えたのか謎。
* 安蘇郡の郡域変更については後述。
 もう一例は、八王子を「武蔵国・都築郡」と書いた事。正しくは「多摩郡」である。
* 八王子は、江戸を守る千人同心が住んでいた場所。そんなに江戸に近くても、郡名を間違うのか、と思う。馬琴の間違いというより、馬琴が見た地図が間違ってたのではないか、と疑う。
 更に、小千谷を「越後国・苅羽郡(刈羽郡)」と書いた事。こちらは後の回に「魚沼郡」と訂正している。
* 小千谷は複数の郡境が交わる場所に存在するので、地元の地理勘がない江戸人の馬琴にとっては、地図を見たとしても間違いやすいのは確か。


【余談】
同じ名前の郡が、別の国にある。
「那珂郡」は武蔵国と常陸国にあり、「河内郡」は下野国と常陸国にあり、「埴生郡・海上郡」は下総国と上総国にある。最後のは、同じ千葉県になってしまったため、それぞれの郡名に上下をつけて区別した。広い郡を上下に分割する例は多々あるが、離れた場所にある同名の郡を上下に分ける例は珍しい。どちらも現在は郡名として残っていない。

八犬伝の舞台である千葉県に現在ある郡は、「武射郡」と「山辺郡」を統合して「山武郡」、「長柄郡」と「埴生郡」を統合して「長生郡」となっている。安房四郡も統合して「安房郡」となったが、大半が市になって郡から外れてしまい、本来は「平群郡」にある鋸南町だけが「安房郡」として残っている。

埼玉県、千葉県、茨城県、群馬県、山梨県は、郡名が県名に昇格している。
茨城県と埼玉県以外は、その国の中枢があった郡名が県名になっている。埼玉県の中枢である浦和や大宮は武蔵国足立郡なので、本来なら足立県になるべきところ。由緒正しき足立の名は東京の区名に奪われた。

八犬伝では割と重要な「下総国・葛飾郡」だが、東京都、埼玉県、千葉県により三分割されてしまった。……と思いきや、茨城県も含めて四分割だった。茨城県のものになったエリアは猿島郡に編入されたようだ。以前の地図は、猿島郡になってしまった後の郡境を描いていたが、馬琴の時代も八犬伝の舞台も、猿島郡編入以前なので地図上の郡境を修正した。
で、分断された東西ドイツは44年の時を経て再統一したが、葛飾の再統一は夢物語であろう。誰もそれを望んでいないし…。

【郡域変更】
 郡の範囲は時代によって異なる。
 ──という事は知っていたが、八犬伝にも影響があるとは 2023年 6月まで気づかなかった。

 具体的に言えば、赤岩庚申山だ。

「赤岩庚申山は下野州安蘇郡にあり」 (第五十九囘)
 現八が直前に立ち寄る茶店のある網苧(足尾)を「真壁郡」と間違えていたし、ちょっと調べただけだと足尾周辺は都賀郡なので、この記述も間違いだと思い込んでしまった。だが、「下野国安蘇郡足尾郷赤岩庚申山記」という地元北関東の人の手による書物が存在するというし、何か変だなぁとは思っていた。
 で、1996年の白龍亭開亭から 27年、2023年に至ってようやく「足尾周辺は元々安蘇郡だったが、後に郡域変更で都賀郡になった」という事実を知った。
 つまり馬琴の記述は、網苧の真壁郡以外、間違ってはいなかったわけだ。
* 足尾から庚申山を含む広大な範囲がごっそりと別の郡に移されたなんて、想像もできなかった。


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