白龍亭・八犬伝と三国演義

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 南総里見八犬伝が、水滸伝の影響を大きく受けているのは知られたことだが、三国志の影響も受けているという。
 中国古代、後漢滅亡から魏・呉・蜀の三国鼎立時代を舞台とした三国志には「正史(魏を正統とする立場で書かれた公式の歴史書)」と「演義(蜀に肩入れした歴史小説)」の二種類がある。八犬伝中には正史に言及した場面もあり、馬琴が正史も読んでいたのは確かではあるが、主たる典拠は演義の方らしい。

 ということで、毛宗崗本三国演義の翻訳である岩波文庫「完訳・三国志」(全八冊/小川環樹・金田純一郎訳)を読んで八犬伝に使われた場面を探し出した。

 なお、あくまでストーリー展開が三国演義典拠のものを調べただけ。
 三国演義に由来する故事引用部分までは含まない。そこまで調べるとなると、事前に八犬伝から故事を抜き出してリストアップする作業が必要となる。本当はそこまでやらないと八犬伝と三国演義の関係を調べたことにはならないのだろうが、考えただけでも気が遠くなる。
 正史に関しても気力が湧いたら調べるかもしれないが、かなり大変そうである。正史三国志は、あの「魏志倭人伝」を含むので、違う意味でも興味はあるのだが……。


・SPOILER・
* 八犬伝を知る人が三国演義を読んでいて、あるいは三国演義を知る人が八犬伝を読んでいて、その共通点を発見するのは楽しみである。以下の内容は、その発見の楽しみを妨げる。




[ 三國志通俗演義 ]


 三国演義は全百二十回。八犬伝に流用された話は、前半に多く後半に少ない。
 劉備・関羽・張飛の義兄弟死後の話となる三国演義後半は、軍師・諸葛亮の一人舞台。八犬伝の軍師・犬阪毛野の話に何か流用されているのではと思ったが、なし。更に諸葛亮死後、三国統一までの終盤には八犬伝と共通する話は全く見つからなかった。
 この終盤は、大物キャラクターが表舞台から去り統一へと至る一見事後処理的な話。南総里見八犬伝終盤も、関東大戦が終わり論功行賞だ何だと雑事が続き事後処理的である。だが、大きく広がった物語が静かに且つゆっくりと収束してゆく様は、大長編ならではのもの。三国演義と八犬伝。両者の読後感はその点で妙に似ている。


□ 関連 → 八犬伝と水滸伝
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