[ 開発室・鉄道側面画研究(画像篇) ]


[ 他縮尺も描いてみて ]

鉄道側面画の世界には多種多様な縮尺があるが、大雑把に分ければ「大・中・小」の3つのサイズに分類されよう。
小サイズは日本の「TB」やアメリカの「TrainGif」、中サイズは「TK」、大サイズは「倍TK」や「LTC!」ということになる。ウェブ用に限らずスクリーンセーバまで範囲を広げれば、小サイズは「TSV30」、中サイズは「TSV60」やドイツの「MM&MM」、大サイズは「TSV120」と「LTC!セーバ」も含まれる。
おぱく堂はTK縮尺以外の鉄道側面画も描いている。その辺で感じたことなどを書いてみたい。
* TrainGif規格に関して、当サイトでは時に「TG」という日本式の短縮形で表現することがあるが、米国では短縮形が用いられることは殆どない。このページに関しては TGという短縮形を用いないことにする。
* 一方でドイツの「MM&MM」は逆に短縮形ばかりで、正式名称をウェブ上で見ることは少ない。長過ぎるからだろうが、その短縮形すら長いと感じられるのか、さらに「4M」と超短縮化されることもあるようだ。但し、当サイトでは「4M」という超短縮形は使わないことにする。……開発者サイトを見ると、いつのまにか「MM」と Mが2つに減っていて、もう一人の MM氏の名前が消えている。何かあったのだろうか。
* 各縮尺の詳細は「鉄道側面画各種規格」または「側面画比較 別表」参照。
* TKプログラムで他縮尺の鉄道シーンを作る方法は「半TK/倍TKの走らせ方」参照。

●小サイズ

多数派を最も標準的なサイズとするならば、小サイズが標準ということになろうか。
アメリカの某 TrainGifサイトに「TrainGifが標準で、MM&MMは高精細画像」といった記述があったが、それに従えば、MM&MMと同縮尺の TKは高精細画像ということになる。まぁ、日本人の感覚からすれば、高精細画像といえば大サイズのLTC!のようなものを指すのであろうから多少は異なるにしても、小サイズが多数派なのは世界共通ということであろう。

小サイズ画像は、面積が小さい(=総ピクセル数が少ない)ので、物理的に「描画の手間」が少ない。
それゆえ、これから側面画の世界に足を踏み込もうという人にとっては「ハードルが低い」メリットがあるし、描画に慣れた人にとっても心理的な気楽さはある。描画時間も実際、少なくて済む。


↑TrainGif規格の「EH10」/ 1px = 8.5inch (21.6cm)

小サイズで難しいのは「あるものを、ありのままに描けない」という事だ。
1pxが、TB規格でも約 15cm、TrainGif規格だと 21.6cmに相当する。たとえば、こんな太さの「手すり」など存在しないわけだから、手すり等はそのまま描けない。周囲の色と混合した色を使うことで擬似的に(=目の錯覚を利用して)細く見せるしかない。周囲が透過部分になってしまう「パンタグラフ」など色の混合すら不可能な個所もあり悩ましい。
* 半透明が使える 24bit-PNG形式なら、周囲が透過部分になっても、色ならぬ透明度の混合で細く見せることは可能ではある。

TK規格でも目の錯覚を利用するテクニックは時に必要だが、小サイズ画像では極めて重要な描画技術だ。
と同時に、表現の制約が大きいがゆえに、描画上、何かを捨てる決断力も必要となる。
* 厳密に言えば「捨てる決断」は小サイズに限った話ではない。ただ、小サイズではより多くの決断を求められる、ということだ。

【 TrainBanner と TrainGif 】
日本発と米国発の規格。同じ小サイズに分類はしたが、実際はかなり大きさの差がある。

米国の巨大な車輌を前提とした後者で日本の車輌を描くと、はっきり言って小さすぎる。
但し、雄大な風景の中を走る鉄道シーンを作るならば、車輌をかなり小さくしなければならないので、この米国規格も捨てがたいものがある。ちなみに、同じ面積で、画像規格によってどれだけ大きな風景が描けるかは、左上フレーム見本 No.470 参照。更に、このページ下方↓に TrainGif規格を使った走行シーンあり。
【上の画像の使用条件】
左の TrainBanner規格のものは「おまけ・TB車輌画像」で配布しているもの。使用条件はそちらのページを参照。
右の TrainGif規格のものも、英語版サイト扱いながら配布中(配布ページ直行)。TB規格と同一条件で使用可。

●大サイズ

あえて書くまでもなく、何から何まで小サイズ画像と逆である。
描画の手間はかかるし描画時間も長い。心理的にも気楽ではなく、描画初心者にとってのハードルも高い。


↑倍TK(TSV120互換縮尺のGIF画像)の「EB10」/ 1px = 5cm

だが「あるものを、ありのままに描ける」のは、非常に気持ち良い。
1pxが、倍TKで約 5cm、LTC!規格だと 3.3cmに相当する。1px幅の直線をそのまま引くだけで何の不自然さもなく「手すり」になるし、「パンタグラフ」も描画に悩む要素はなく、特殊な描画テクニックを駆使する必要はない。

目の錯覚を利用する必要がないストレートな描画は良いのだが、逆に「ごまかし」も効かない。
これは、TK規格でも資料に苦しむ床下機器などは、かなり難儀なことになる。

余計なテクニックが不要な分、労力さえ惜しまなければ、ある意味で小サイズより「簡単」と言えなくもない。
だが、資料集めも含めた労力というか、努力というか、気合というか、覇気というか、精力というか、入魂というか、パワーというか、フォースというか、まぁ、何というか、そういったものがないと描けないのである。
* 精力を異性で消耗しているようでは大サイズ画像は描けないのである(うそ)。

おっと、労力以外にもう一点、難題があるのを書き忘れるところだった。
画像面積が広くなると、画像全体のバランスをとるのが難しくなる。箱型車体のようなシンプルなものなら難度もさほどではないが、流線形あたりだとかなり難しいのではないかと思う。ただ、大サイズで流線形を描いた経験がないので、どの程度の難度なのかは推測の域を出ず、確信を持って語れないのではあるが。
* 推測だけで言えば、複雑な面形状の最近の新幹線先頭車などは、相当な熟練がないと描けないのではないかと思う。形状把握もさることながら、陰影表現はかなりの難度に違いない。

【 倍TK(TSV120縮尺)と LTC! 】
TK縮尺画像の2倍(面積比4倍)と、3倍(面積比9倍)の大サイズ。

TK車輌の描画に慣れると2倍はさほど辛くはない。だが3倍はかなり大変。見た目以上に描画の手間の差は大きい。
だが、自分自身のことに限って言えば、一度 LTC! 画像を描いてしまったら、TSV120サイズを描く意欲がなくなってしまったのも事実。倍サイズには中サイズ的な要素が多少は残っており、TK車輌を描くのと似た感覚が多々あるが、LTC! ほどの大サイズとなると TKとは異世界である。どうせ違うものを描くなら全く異なる世界の方が面白い、と感じてしまったわけである。
【上の画像の使用条件】
左の倍TKのものは、TSVで使える画像形式に変換して TSV上で使用可。また、LTC!画像のTKプログラム上使用の場合に準じる(縮尺関連を読み替える)条件で、TKプログラム上での使用可とする。
右の LTC!規格のものは「おまけ・LTC!車輌画像」で配布しているもの。使用条件はそちらのページを参照。

* 更に大きな4倍TK縮尺ならば、LTC! どころではない細密ディテールが表現できる。軽便車輌ならこの縮尺でもそれほど大きくないので、意外と気楽に描ける。いや、軽便車輌の場合、TK縮尺では小さすぎて逆に表現が難しかったりする。しかし、通常車輌となると描画に求められる気合が並大抵のものではなく、おぱく堂は挑戦はしてみたものの挫折。ということで、当サイトでは語る言葉がないが、宇田惣郷さんの「一般型客車資料室」に、4倍TK縮尺の描画についての考察ページがあり、参考になる。

●中サイズ

TK縮尺である。
自分的には中庸でバランスがとれていて描きやすいサイズではあるが、人それぞれ、感覚は異なるだろう。

普段、小サイズを描き慣れている人から見れば、自分が大サイズに感じるのと同じような描画の手間やら画像バランスのとりにくさのようなものを、中サイズにも感じるかもしれない。
逆に、大サイズを主として描画している人にとっては、中小サイズ特有の「目の錯覚を利用するテクニック」を求められることを難儀に感じる可能性もなくはないと思う。
* サイズによる描画に求められる要素の違いについては確実にこうだと言えるが、それをどの程度強く感じるかは、十人十色。どの大きさの描画を最も楽しく感じるかも、個々それぞれであろう。
* TK縮尺と他縮尺の大きさ比較は、左上フレーム見本 No.613 参照。

●スケールエフェクト

模型の世界の用語ではあるが、側面画 CGにも必要である。
この言葉を知らない人もいるかもしれないので、一応、説明しておこう。模型の場合、実物と全く同じ色や、実物と完全相似の形状にしてしまうと、意外にも、かえってリアルには見えなくなる。リアルに見せるためには、色味や形状に補正効果を加える必要があるが、これをスケールエフェクトと言う。
* 鉄道模型は挫折したが、鉄道じゃない模型はそこそこハマっていた時期もあるので、模型に関して全く何も知らんというわけではない。スケールエフェクトについては、ミリタリーモデルマニアの知人に教えてもらった。その後、鉄道模型雑誌を見て、鉄道模型にもスケールエフェクトがあることを知った。
* 模型用語以外に、別のことを意味するパソコン用語もあるようだが、そちらの詳細は知らない。

ひとつは色。
暗色の鉄道車輌を例にしてみよう。その色をそのまま画像にした場合、大サイズでは問題ないが、小サイズでは真っ暗に見えてしまう。同じ色の鉄道車輌でも、サイズによって色味を変えなければ、リアルな色は出ない。
* 模型は反射色だが、CGは発光色なので、想定している光(手っ取り早く言えば、車輌を走らせる風景の色調=環境光)によっても、色味を調整するのが理想である。エフェクトはスケールのみならず、というわけだ。
* ただ、CGの場合はモニタの調整による見え方の差がけっこう大きい。色に関して微妙なところまで気を使っても、見るモニタによっては何の効果にもならないこともある。悩ましい問題である。

次に形状。
小サイズほど多少の誇張を加えないとリアルにならないのも模型と同じである。
ただ、CGの場合は、小サイズになると1pxあたりの実車寸法が大きくなるため必然的に誇張的表現にならざるをえない。1pxという制約があるがゆえに、形状の効果に関しては、模型ほど意識する必要はなさそうである。

●ウェブ用とスクリーンセーバ用

スクリーンセーバはこの研究の対象範囲外だが、ウェブ用画像との比較のため、触れることにする。

TSVや、MM&MMといったスクリーンセーバ用の側面画は背景=黒である。
* CRTの画面焼けを防ぐためのものだから黒背景こそが本来の目的に適ったものではあるが、液晶モニタではそもそもスクリーン防護の意味はないだろうし、黒背景である必然性もなくなってしまったか…。

昔、TSVの世界では、この「黒」をどう扱うかという議論があった。
つまり、黒色に対して「夜」という意味を付与するか否か、である。といっても、好みの問題であるから何らかの結論が出たわけではないが、興味深い問題提起であったことは確かだ。
黒背景を一種の風景として扱えば当然「夜」ということになるし、車輌も夜を想定して描くことになる。こちらの流派のTSV画像は、床下機器がほとんど見えないほど暗色化している。一方、黒というものに風景としての意味を与えない一派は、実質、昼光下といった色調の車輌画像を描いている。
* 自分の知る範囲に限れば、MM&MM の世界には「黒=夜」という前提で車輌を描く画像作者はいないようだ。

おぱく堂は後者で TSV画像も明るい光を想定して描いたわけだが、それでも、その画像を通常の風景を前提とした TK規格に改造した時に「暗い…」と感じた。縮尺が同じであれば必要な描画テクニックに大差はないが、想定している背景が異なると、明度も含めた色に対する感覚が、無意識のうちに異なってしまうように思う。
* 背景が黒に固定されていると、形状修正などに「黒いマスクを上から乗せる」ような邪道な(=手間のかからない)手法が使えるので、描画テクニックにも多少の差はある。
* ちなみに、おぱく堂作 TSV画像の配布は、2011年 12月を以って終了した。

●走行用と装飾用

ウェブ用側面画といっても、大サイズの LTC! と中サイズの TK は走行用、小サイズの TB と TrainGif はウェブページの装飾を前提とした一般的なウェブ素材であり、目的が異なる。

走行用の場合、背景は「風景画像」が前提であり、暗色背景の場合、必然的に「夜」ということになる。
夜のシーンでは車輌も夜を想定した画像でなければ違和感はあり、その結果、通常の車輌画像はどうしても「昼」仕様とならざるをえない。それゆえに、背景色として想定される色を明るめとして車輌を描けば、ほぼ問題はない。
* とはいえ、背景色固定のスクリーンセーバ用と違い色の範囲がある程度はあることには違いはなく、それゆえに車輌描画色の選択に迷うことも多い。


ウェブページの装飾用の場合、背景色は白から黒まで色の全範囲、どういう色と組み合わされるかという可能性の幅が広すぎる。
そこそこの表現に留めておけば、どんな背景色でもさほど問題はないかもしれない。しかし陰影表現などでリアリティを追究しようとすると、背景色が無制限というのは困るのである。この問題に対して、実際の画像作者がどうしているか。
(1) 陰影表現などをそこそこに留めておく。
(2) 明色背景を前提として描き、暗色背景で使われる場合については考えない。
(3) 明色背景用と暗色背景用を別画像として描く。
* 厳密に言えば、もうひとつ「特に考えていない」というパターンもあろうが、それは結果的には (1) か (2) になっているはずである。
* ちなみに、おぱく堂は (2)。とはいえ、白のような極端な明度も想定していない。要するに走行用と同じ前提で描いている。
* (3) は、TrainGif規格を提唱した Dan Klitzing 氏などがいるが、少数派である。

●大中サイズの使い道

ここまでは「描く側」の視点で書いてきたが、以下「使う側」で考えてみる。

TKや LTC! は、使い方といっても「ウェブ走行」しかない。
* 開発者の描いた車輌の使用条件で他用途使用を禁止しているのだから、用途がひとつしかないのも当然。
それゆえに特に考える必要もないかもしれないが、TKプログラムにしても LTC!プログラムにしても、単に「使う」というレベルではなく、表現の道具として使う人の個性を押し出せる自由度がある。自由であるがゆえに場合によっては持て余すであろうが、自分を表現できるのは重要だろうと思う。
* これに関して言えば、開発者視点であって、第三者的な冷静な分析にはなっていないかも。
* 左上の小さな走行フレームで、大サイズだけを使った走行シーンあり。No.370No.612No.781No.1335No.1336No.1337No.1401No.1407No.1547No.1548 は 1px=5cm 縮尺。No.783No.1297 は 1px=3.3cm 縮尺。さらに拡大して、1px=1inch 縮尺が No.1402。1px=2.5cm 縮尺が No.1403。大サイズの場合、やはり、実車が小さなナロー車輌でないと、左上フレーム内には収まりきらない。ということで、No.1352 では、走行フレームそのものを拡張。
* 大サイズ各種比較は、No.946 参照。
* 大サイズを走行用に使うことに、ひとつだけジレンマがある。スポーク車輪の動き、ブレーキロッドの動き、空気バネの揺れなど、中小サイズでは気にならない部分が動かないことが、かえって気になるのだ。

●小サイズの使い道

一方、小サイズの TBや TrainGif は、特定の動作プログラムが前提ではなく「一般的なウェブ素材」という扱いだ。

最もポピュラーな使い方は「ウェブページの装飾として使う」ということであろう。
実際、TB画像を装飾として使用しているサイトはあれこれ見る。だが、同時にこの分野においては「鉄道正面画」が圧倒的な存在感を示しているのにも気付く。シェア的に「側面画」は「正面画」に負けている感じである。
* ウェブ装飾で使われている正面画の大半が Curokaさんの TrainFrontView だという事にも驚かされるが、同氏の作品のクォリティの高さを考えれば、当然の結果かなとも思う。
まぁ、何でもかんでも勝ち負けで考えるのは間違いであるし、趣味の問題にシェアなどという評価軸を持ちこんでも意味をなさないのではあるが、側面派の一人としていささか寂しい思いを抱かぬではない。もっとも、側面画が横長である限り、通常のアイコン的な使い道に制約があるのも確かであるし、これはこれで致し方ないのかもしれない。
* TBの正式名称 Train Banner が示しているとおり、そもそもアイコンではなくバナーであって、厳密にはジャンルが違う。比較するのが間違いだとも言える。ただ、ウェブページ上における、アイコンとバナーの境界が曖昧なのも事実。

米国の TrainGif に関しては「風景と組み合わせて Marqee で走らせる」という使い道をよく見る。
* Marqee等、走行手段の詳細は「鉄道側面画研究(走行手段篇)」参照。
個人的には TKプログラムを使って走らせて欲しいところではあるが、それはそれとして「ウェブ上に走行シーンを作る」というのは、走行派の自分から見れば、最も自然な使い道には見える。
* ちなみに、TrainGif派の方々は、背景画像に写真を使うことも多いようだ。

おぱく堂は走行派であるからして、小サイズ画像であっても、走行させることをお勧めしたい。
といっても、実際のところ、TrainGif のような走行シーンを、TB を使って表現している人は少数派だ。となると、走行させない多数派はどういう使い方をしているのだろうか。実のところ、よく知らない。


↑小サイズだと 100px高でも雄大なシーンが可能(TrainGif規格)

* 上と同じ砂漠の TrainGifsシーンが、左上フレーム見本 No.923 にあり。
* 上の砂漠の鉄道と、ほぼ同じシーンをTK縮尺で表現したものが、左上フレーム見本 No.623 にあり。
* 鉄道模型では「小さいゲージほどレイアウト向き」と言われているようだが、上のシーンを見れば、側面画でも「小サイズほど鉄道シーン作りに向いている」と言ってもよい気がする。但し、小サイズは全視界における車輌の面積比が小さい分、風景の重要度が高い。レイアウト作りならぬ風景描きに、より多くのものが求められる。
* 以下↓、小サイズ規格だけを使った走行シーンあれこれ。
* TrainGif規格 → No.778No.779No.784No.907No.908No.924No.925No.926No.1096No.1513.
* 半TK(TSV-30互換縮尺) → No.780No.864No.1119No.1198No.1248No.1275No.1366No.1367No.1413No.1487No.1488No.1503.
* TB規格 ↓
 ├ No.716No.772No.773No.774No.775No.785No.991No.1110No.1144No.1157No.1262No.1322No.1365No.1373No.1444
 └ No.1445No.1446No.1447No.1455No.1457No.1458No.1468No.1478No.1479No.1480No.1504No.1505No.1506.
* 中小サイズ各種比較は、No.944 参照。

小サイズの使い道として、2010年から「走行させない静止風景画もありかな」と思うようになった。
そういう画像もあれこれ描いてみたが、これはこれで面白い。いや、描く方が面白くても、見る方が面白いかどうかは分からないのではあるが…。

* 詳細は「TBシーン画像」ページ参照。

小サイズ、2つの思想 - 海外型の走行に関して

小サイズ TB規格には 32pxという画像高規定がある。
これは、TK規格の 60px高とは意味が異なる。TK規格の場合、縮尺どおりに描いて 10px高しかない車輌であっても、60px高の画像ファイルにする。当然、50px分の何も描かれない無駄な空白ができるわけだが、それは問題にしない。
一方、TB規格ではどうか?
空白に関する規定は定められてはいない。だが、暗黙の了解として、できるだけ空白ができないように描くこととされている。なぜなら、極端な空白を許容すれば、ウェブ装飾として使いにくいものになるのは必定。32px高という規定が、ウェブ装飾の統一感のために決定的に重要な意味を持っているのだ。
結果として、画像高にあわせて車輌を描くことになり、極端にサイズの違う軽便車輌や海外車輌などは、日本型車輌とは異なる縮尺が必須となる。いわば「画像高優先」の思想である。
* Banner という名称からして、飾り罫線的な用途を想定しているのは確かであり、美意識を持ってそれを追究すれば、当然、画像高優先という考え方に到達する。
* 同じウェブ装飾用として登場したアメリカの TrainGif規格に画像高規定がないのは、単にそこまで考えが及んでいない、というだけのことと思われる。ちなみに、TrainGif規格は、当初、縮尺規定すらなかった。途中で縮尺を意識した時点で、既に描いたものが 1px=8.5inch だった、ということらしい。もっとも、画像高規定はないが 26px高で描かれることが多いらしい。換算すれば、5.6mであり、アメリカ型を描くにはちょうどいいサイズなのかもしれない。
* TK規格の黎明期に、60px高を TB規格同様、余白なしで描くべき寸法と、一部で誤解されたこともある。画像高優先の TBに馴染んでいた人々にとって、縮尺優先で余白を問題にしない TK規格の思想は未知なる領域だったのかもしれない。

だが、海外型車輌のなかには、車高 6mに達するものもあり、32pxという画像高に収めるとなると、縮尺の揺らぎの範囲を大幅に広げねばならない。
実例は下の表中の、カザフスタンのロシア製旧型電機。画像高優先で描くと 1px=19cmになる。このサイズは、1px=20cmの 半TKや 1px=21.6cm(8.5inch)の TrainGif規格に近い。ここまで縮尺が揺らぐと、1px=15cmぐらいの走行シーンを海外型では作れないことになってしまう。

* 例をもうひとつ挙げるならば、極端な背高車輌として知られる AUTO-MAX(No.299 参照)がある。TK縮尺でも 60pxに収まらないこれを TB規格の 32px高に収めるためには、1px=20cm縮尺が必要。これはもはや、半TK(TSV-30)と完全に同じ縮尺である。
ウェブ装飾用の「画像高優先」思想が、ここでは裏目に出ている。

解決策としては、TK規格同様の「縮尺優先」思想による小サイズ描画を考えるしかないであろう。
現状では、TB規格の日本型標準縮尺(1px=15cm)のまま、画像高を 39pxに拡張した Mission.Railroad specification という実例があるが、おぱく堂は 40px高の 2/3 TK という規格を提案しておく。
* Mission.Railroad specification については、仕様の詳細がアナウンスされていないため、正確なところは分からない。だが、TB Forum への投稿もあることから、規格提唱者は、あくまで TB規格の延長と考えているようだ。いわば「規格外TB」である。それが TB規格として許容範囲なのか、あるいは単なる黙認なのか、その辺の事情は分からない。
* おぱく堂提唱の 2/3 TK は、TK規格と同じ思想を 1px=15cm縮尺にしたもの。走行用であり、ウェブ装飾用としての統一性を一切考えていないため、TBの延長とは考えない。TB Forum への投稿もない。……まぁ、海外車輌の走行用に限定される話でもあり、この規格が普及することはないとは思うが。
* 2/3 TKを使った走行シーンの実例は、No.914No.915No.916No.917No.918No.919No.920No.1264 にあり。ちなみに、実例はすべて 8bit-PNG形式。TK規格の延長なので GIF限定ではない。
* 海外車輌でなくても、実車高が 5mに達する跨座式モノレールなどは 2/3TKの対象となる。No.1270 が、その例。
* 海外車輌でもなくモノレールでもないが、TB規格ではパンタグラフ高が足りないと感じる場合もあり、表現上 24bit-PNGを使いたいこともある。No.1449No.1450 が、その例。

●あるいは「使わない」道

前項目では「使い道」について触れたが、そもそも「使う」という前提だけで考えるのが間違っているのだろう。

側面画は「使う」ためではなく、単に「集める」ためだけ、という一種のコレクターズアイテムとして扱われている可能性も考えられる。ローカルでの扱われ方はウェブ上には現れないから、その実態を知る術はないのであるが。
* おぱく堂自身、国鉄の機関車を TK規格で抜かりなく揃えようとしているが、中には「使う」ためというより、単に「揃える」ために描いているようなものもある。描く側にとっての「揃える」という事と、描かない人が「集める」という事の間には何かしらの違いがあるにせよ、一種のコレクションであることには違いはないのだろう。

仮に「使わない = 集めるだけ」を前提としたら、どうなるのだろうか。

車輌単体のコレクション的価値を考えると、より緻密な画像が求められよう。となると、大サイズが最適か。
だが、大サイズはそういった需要に対して、描画の大変さゆえに供給が追い付かないのではないか。「あらゆる形式を揃える」というコレクションの目的からすると、実質、中小サイズでしか、その需要を満たすのは難しかろう。
描く側の都合と、集める側の都合が必ずしも合致しないと思われるが、商売ならともかく、趣味でやっている以上、そのズレを埋めるのは難しい。
* 鉄道模型に置き換えて考えれば「モデラーとコレクターだけが存在してメーカーがない」のと同じ状況である。ただ、模型では 100人の需要に応えるために 100台作らねばならないが、側面画の場合はバーチャルだから、何人の需要があろうとも同じものを複数描く必要がない。そういう有利な面があるとしても、画像作者が需要に応えなければならない理由がない以上、ズレを埋めきれないことになる。もっとも、多く売れ残れば赤字が出る模型商売ではマイナーな需要の製品には躊躇せざるをえないが、側面画はその面での制約はない。だが、これとて、その形式を描きたいという画像作者が出てくるかどうかは神のみぞ知ることである。


↑コレクション向きの大サイズ 1px=2.5cm縮尺(4倍TK規格)

画像の仕様も問題になろう。
車輌本体と半透明窓が別画像だったり、機関車本体と動輪が別画像だったりする TK仕様は、プログラム上で走らせなければ本来の姿にならない。こういうのは、単なるコレクションとしては不便であるに違いない。
この点においては、TK以外の規格の方が、コレクター向けということにもなろうか。


↑車体動輪一体のコレクション仕様(TB規格)

パソコン内では「使わない」道? - 北米流・巨大側面線画の世界

北米大陸に超巨大サイズで描く人々がいる。
といっても、基本的に線路一体の絵なので走行を想定していないし、大きすぎてウェブ素材にもなりえない。しかも、大半が線画であって、車体色に塗られているものは少数。
* このページが研究対象とする日本で一般的な側面画とは根本的に異なるジャンルではある。だが、広く鉄道側面画の範疇にあるのは確かであり、改めて追記した。

つたない英語力をもって描いている人々のサイトの文章を読んだが、基本は「塗り絵を楽しんでくれ」とか「模型工作の資料のため」といった目的が語られている。といっても、画面上では大きすぎるのだから、パソコン内で完結させるのではなく「印刷」という形で、コンピュータの外に出すことを想定したものだろう。
* 彼らの使う縮尺表記は、72dpi(dot per inch)を基準としたものであり、1/72 が 1px=1inch となる。
* 主流は 1/75、1/55、1/25 といった縮尺であり、72の約数も倍数もない数値。日頃、インチを使い慣れているアメリカ人ですら縮尺計算がやりにくいはずだ。まして、メートル法に慣れた日本を含む米英以外の世界の住人にとっては、極めて分かりにくい。
* ちなみに、TK縮尺をこの方法で表すと、1/283.5 という中途半端な数値になる。
* 1/25より大きい 1/18や 1/14という縮尺もあるが、これは車輌全体ではなく、パーツの拡大図用。1/25 が、鉄道側面画の世界における事実上の最大サイズである。

↑軽便車輌(林野庁林業機械化センターに保存されている木曽森林ホイットコム7号機)ですらこの大きさである。にもかかわらず、この縮尺でアメリカの巨大な鉄道車輌を描くのだから驚く。とはいえ、ディテールをとことん描きこめるのは魅力かも。ちなみに、この 1/25 は、1px=0.882cm、約11.34倍TKとなる。面積比では TKの約 128.6倍。

だが、プリンタの印刷解像度は最低でも 300dpi。通常は 600dpi以上で、高精細 2400dpiなんてのもあるらしい。72dpiを前提にした縮尺画像では、印刷しても想定したサイズより小さくなってしまう。あるいはプリンタの設定を 72dpiにして印刷すれば想定どおりのサイズになるものの、印刷品質は最低になる。
……GIFのようなビットマップ系(ドット絵)の画像は、語られている目的に合致しない。いや、合致した時代はあった。一般人が使うレベルのパソコンでベクトル画像を扱うのに難があり、プリンタの解像度が低く印刷の品質にそもそも期待できなかった頃。それは 1990年代だ。北米でこのような側面画がポピュラーになった時期がよくわからないが、当初は語られているとおりの目的はあったのかもしれない。
ただ、パソコンやプリンタの性能が上がった後から巨大側面画を描き始めたサイトもあるので、語られているような目的とは別のパッションがあるのかも。
* 1/87 といった明らかに HOスケールを意識して描かれたものも存在するが、主流の縮尺は前述のとおり。1/25 は、2番ゲージの範囲内にはある。1/75 は、OOゲージの 1/76.2 に近いが、こういうものは近似ではなく一致が必須だろう。さらに、一番多く見られる主流の中の主流 1/55 には模型との繋がりが見出せない。いや、無理矢理考えれば 1/55は、Zゲージの 1/220の四倍サイズではあるが、Zゲージのためだけに描く? 違和感ありだ。本当に模型工作の資料が主目的なのか疑問に感じる所以のひとつである。
* 上の 1/25 ホイットコムの線画には「塗り絵」も「模型工作の資料」もない。目的はなく、ただ「描いてみたい」という思いだけで描き始め、描いてみてこれはこれで楽しいと思った。これがパッションってやつだな。
* 上のホイットコムに着色した走行仕様も描き、No.1404 で走らせた。

他のページにも書いたことだが、鉄道側面画には、絵画と図面の両方の要素がある。
だが、線画は、ほぼ図面であって、絵画の要素はほとんどない。色を塗る時に初めてその要素が加わるのだ。
図面であって印刷精度を考えるとなると、CADデータか、Adobe Illustrator 等のベクトル画像しかない。もはや GIFや PNGを使う領域ではない。
……となると、こういう側面画を描きたい人は、2派に分離するはずである。
印刷を前提としてベクトル画像で描くか、GIFやPNGに留まってパソコンの画面で見ても問題のない縮尺にするかだ。Retinaディズプレイ等、パソコンの画面解像度も凄いことになっているので、後者でもかなり大きな画像で問題なし。とはいえ、1/55はともかく、1/25という巨大すぎる縮尺は、ビットマップ系では残らないのではないかと思う。上の絵のような実車が小さいものは別として。
* IE9以降、SVG というベクトル形式の画像をブラウザが表示できるようになった。CAD や Illustrator のデータも、SVG に変換することでブラウザ上で見られるものとなる。線画に最適なベクトル画像が、必ずしも印刷前提とは言えない時代になったわけだ。さらに、ビットマップ画像(GIF や PNG)では縮尺別に分類できるが、ベクトル画像は拡大してもギザギザにならないため、縮尺という物差では測れない。

……などと考えてしまうのは、日本人だからかも。
ドット絵特有のジャギーが見える程度の印刷品質でも問題ない。そう思う人間は、日本では稀少かもしれないが、世界は広い。そんなことにこだわらない人間は意外と多く存在するだろう。あるいは、パソコンの画面に収まらないサイズであることも問題とすら思わない可能性もある。この手の巨大側面線画規格がなぜ日本では生まれず、欧州にもなく、北米だけなのか。やはり、考え方や感性の違いがそこにあるのではないか。よく見れば、異文化がそこにあるのだ。
* 余談だが、男女関係も一種の異文化遭遇である。お互いに異文化への理解を深めようという姿勢がなければ、異国との関係もうまくいかないが、異性との関係もうまくはいかないのだ。まぁ、非友好的異性にはどのような努力も通じないだろうけどさ。いや、努力以前に俺がキモすぎるのか?(自虐)

●浮気者の道

視点を「描く側」に戻す。
あれこれと「使う側」について考えを巡らしてみたものの、結局のところ、おぱく堂は「描く側」の視点しか持ち得ない。これ以上、視点の異なる問題について考えても何かが見えてくるわけでもなさそうだ。

誤解を招くといけないので書いておくが「小・中・大」の各サイズに優劣をつけようというのではない。
* 物事を垂直の評価軸(=上か下か)で理解しようとする傾向の人もいる。水平の視点で理解してほしい話であるが、こちらの言葉が不足すると垂直に理解をされてしまう可能性があるので、蛇足を承知で付け加えた。
もし優劣があったとしたら、優だけを描いて、劣は描いたりはしない。
だが、おぱく堂はあらゆる画像規格に手を出している。まぁ、見方によっては「浮気者」とも言える。
* 能年玲奈(No.1429 参照)や綾瀬はるかに激萌えだし、AKB系(元を含む)の横山由依、大島優子なんかもええのう。最近は、柏木由紀や込山榛香も妙に気になるし、西野未姫も面白いと思ってしまう。。KARAのスンヨン(No.1288 参照)も可愛い過ぎ♪ 更に、桐谷美玲もタイプ。過去に遡れば、香港のノラ・ミャオや西田ひかる、木村佳乃も好きだったし、上戸彩も夢に出てきたし、ソニン(No.57 参照)のファンだった。でも優劣はつけられないんだなぁ。そういうのを「浮気者」というのだとすれば、確かにそのとおりだ。どうでもいい話か。
* しつこく女性の話。基本「天然系」好きと言えるのだが、一方で「戦士系/野獣系」も好みかも。映画「ニーベルングの指環」における、Kristanna Loken 演ずるブリュンヒルデ(No.1266 参照)なんぞは、ゾクゾクしてたまらん。要するに、筋肉を鍛えた女性の肉体美に刺激されるというエロ心。
* 鉄道模型は挫折したが、仮に始めるとしたら「Nでレイアウトを作りたい」のと同時に「緻密な HO蒸機の動輪動作を堪能したい」という思いがあり、どちらか一方を選べと言われても困ると思う。宝くじが当たったらの話だが…。

ここは TK開発元サイトであるからして、このページを読んでいる人の多くが、中サイズに軸足を置いている人ではないかと思う。
中サイズをメインに描いていると、小サイズも、大サイズも、どちらにもすぐに対応できる。側面画の世界であれこれ「浮気」するには、いい位置かもしれない。
* 小サイズを主に描いている人にとっては大サイズを描くのは大変だろうし、大サイズをメインにしている人にとって小サイズの描画にはかなり戸惑うに違いない。どちらも一旦は中サイズの描画経験を経由しないと辛いのではないかと思う。
だからといって「浮気しろ」という話ではないが、「浮気もいいよ♪」ぐらいのニュアンスはある。
* TK規格開発元が「TK規格以外もいいよ」というのも変な話ではあるが、事実「いいよ」と思うのだから仕方あるまい。


……側面画「研究」などと大きく出たわりには、側面画の世界を俯瞰したに留まり、有益かつ具体的な記述には至らなかった。
正直に言って、絵に関することは言語化が難しすぎる。
とはいえ、多少以上の描画経験のある相手であれば、似た体感はしているだろうから、拙い言語でも共鳴によって伝わるものはあるかもしれない。そんなことに期待するというのは、文章がヘボいことを告白しているようなものだが。

結果として「他規格入門」といった内容なので、TK規格一筋の人には何の役にも立たないかもしれない。
もっとも、TK開発者が TK一筋じゃないからこそ書けたページでもあるわけで、そういう浮気者にとっては当り前に思っていることが、一筋の人にとっては意外な情報だったりする可能性もあろう。

それはともかくとして…。

鉄道側面画の世界は、このページで扱ったいくつかの規格でほぼ網羅されているが、将来的にも大きな変化はないのではないかと見ている。
少なくともメートル法を前提とした「縮尺計算が分かりやすい規格」は出揃ってしまっているので、新しい縮尺が普及する可能性は低いだろうと思うからだ。尤も、各種単位に関して世界の主流に逆らっているアメリカでは新しい縮尺の規格が生まれるかもしれない。だが、インチ換算の規格が日本でも普及するとも思えない。
更にウェブの可能性を考えれば、既存の規格とは根本的に異なる「ベクトル画像による側面画」といったものも出て来ないとは言えない。だが、描画難度は高いし、ブラウザ上でベクトル画像を扱える手段*も限られるので、これも趣味として普及するところまで行くのか疑問である。
* HTML 5 の時代になり、ブラウザだけで Flash と同等のアニメ表現が可能な「Canvas」や、ブラウザがベクトル画像をそのまま扱えるようになった「inline SVG」などの機能が追加された。両者とも、テキストで書いたものがブラウザ上で描画されるものだが、専用ソフトを使えば、通常の描画ソフトを扱う感覚で描けるようだ。これらが、鉄道シーンを表現する手法のひとつとして、受け入れられるものかどうかは未知数である。
* Canvas と inline SVG については「鉄道側面画研究(走行手段篇)」に、簡単な走行シーンの実例あり。

まぁ、予想外のこともあるやも知れず、鉄道側面画という趣味の世界の枠組に関して何がしかの変化があれば、このページの内容を更新する日も来よう。それまでは、このページはこのまま放ったらかしだ。


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