[ 開発室・鉄道模型挫折記 ](LA00走行見本付)


[ 走行見本が主役、内容は無駄話 ]

--- プロフィールに「昔、たった一輌だけ Nゲージ車輌を買ったことがあるが、それはスハフ12だった」と書いた。それは青春時代の話だが、実はさらに遡って小学生時代にも、ちょっと鉄道模型に手を出しかけたことがある。このページには、その辺のことを書いた。はっきり言って「挫折ネタ」であり、他の誰かにとって有益なヒントがあるわけでもない。要するに無駄話である。

つまるところ、このページは「LA00」というプログラムの使用例にすぎない。
LA00は、本文の間に「挿絵」のように、鉄道シーンを挿入するためのプログラム。簡単な挿絵解説文を表示する機能や、絵の切り替え、及びそれぞれの絵に合わせた走行位置(高さ)を変更可能な機能もある。


●それは小学5年の秋

男子児童というものは、たいてい乗り物好きであり、当然のごとくクラス内で鉄道が流行った。
そんな折、裕福な家庭のM君が「鉄道模型を手に入れたから見に来い」と言ったのだ。模型といっても現在と異なり、主流は16.5mmゲージ。決して安価ではない。つまりこれはちょっとした事件だった。
* はるか昔の話である。当時の16.5mm模型は一部製品を除いてディテールはあまりなく、今ほどは高価ではなかった。それでも、子供が所有するような代物でなかったことに変わりはない。

見てしまうと欲しくなる。
自分を含めて一緒に見に行った連中は皆、欲しくなってしまった。しかし、小学生である。資金力がない。親の力だけが頼りだ。
そんな中、欲しいものは何でも親が買ってくれていたK君が真っ先に脱落した。
さすがに鉄道模型ほど高価なものはダメだと言われたらしい。致命的だったのは、K君が「おこづかい制」でなかったことだ。親が認める限り欲しいものは際限なく手に入るが、自分の裁量で使える金がまったくない。結局、親にダメと言われてしまうとどうにもならなかったのだ。

A君、G君は「少しずつなら買ってやる」と親に言われたらしい。
が、その後の展開が異なった。
A君は最も安価だったカツミ製自由形EB電機を選んだので、まず動力車が手に入った。正直、模型というよりも玩具的であり、いささか不満もあるようだったが、とにかく「走る」車輛があるのは大きかった。
* 左上フレーム見本 No.37 にカツミ製自由形EB電機各種(16番)の走行シーンあり。
一方のG君は逆に、自由形ではなく実在形式車輛にこだわった。だが、実在形式の模型は高価だ。特に動力車が高い。その結果として、最初に買ってもらえたのは、線路とクハだけだった。結局、手で走らせるしかなかった。

●おぱく堂の選択

メンバーの中で、自分とT君は貧乏組。
T君の話は後述することにして、自分は親に「おこづかいでやりくりしろ」と言われた。
これでは自由形EB電機すら手が届かない。かといって手動の虚しさもG君の家で味わっている。どうにかして動力車を手に入れたい。
……結局、自作しか方法がないとの結論に到った。
車体はペーパーでなんとかするつもりだった。木板の台枠に、EF65用の台車を履き、無料でもらったスロットレーシングカー用の中古モーターを組んだ。上の鉄道シーンを見るとF級機ではなくD級機になっている。最も安い曲線線路は中間台車の横動範囲を超えるほどの急曲線。この上を走らせるため、やむをえず中間台車を省いた。いわばショーティである。
* ここまで到達するのにもかなりの時を要した。線路一周がつながるのに3ヶ月、その後しばらくは台車だけ。ようやく台枠にとりつけてウェイトを載せたところで行き詰まった。だが無料でモーターを得て壁を乗り越え、最大難関のパワーパックが……とか書いていて空しくなるなぁ。
* 実はフレキシブルレールも買った記憶がある。まともな車両がひとつもないのに無謀にもレイアウトを作ろうとしていたようだ。どんなものを作るつもりだったのかまでは、遠い昔のことなので記憶にない。

だが、それまでであった…。

●衝撃、そして終焉

ここまで読んできて「そんなに金がないなら何故 9mmゲージにしないんだ?」という疑問もあろう。
当時は、まだ 9mmは黎明期。近所の模型屋にも置いていなかったし、模型屋の頑固おやじも「あんなもんはオモチャだ」と否定的だった。当時の小学生の通常の行動半径は徒歩か自転車で行ける範囲しかなかったから、近所の模型屋しか知らない。そこで否定されれば、そんなもんかと素直に思ってしまう。だから、誰も 16.5mmゲージから外れることは考えもしなかった。
* 9mmゲージは漫画雑誌の広告写真でしか見た事がなかったわけだ…。
* 当時「Nゲージ」という言葉が存在したのか否かは記憶にないが、自分たちが「9mm」と呼んでいた記憶はある。
* 件の模型屋は転居後は行くこともなかったが、最期まで Nゲージは扱わなかったそうだ。頑固一徹、筋は通した、ということか。

ここで、超貧乏T君の話になる。
他人のことを「超貧乏」などと書くのは失礼である。しかし、その事がこの件に関して決定的に重要な意味を持つので、あえて書くことにする。

T君の家は工場住み込みで、非常に狭かった。いや、狭いというより細長いという方が正しく、言い方は悪いが「廊下に住んでいる」という感じだった。その細い部屋に家具があるわけで、とてもじゃないが 16.5mmゲージの線路を周回させるスペースがなかった。
* 天井の高い木造機械工場、側壁の二階部分に作り付けた部屋。こういう構造物を何と呼ぶのか正式名称は知らないが、一般的には「事務室」以外には使われないだろう。昭和40年代の話だからボロい家は多かったが、当時であっても、一家族が住む場所とは思えないような驚きがあった。
買ってもらえるか否か以前に、物理的に不可能だった。
* メンバーの中で最も半径の小さい曲線線路を持っていた自分が見て「これは無理だ」と思ったのだから、間違いない。

そんなT君がある日、鉄道模型を「一式」買ってもらったと言う。
そう、彼は空間的制約から 9mmゲージを選んだのだ。
写真でしか 9mmゲージを見たことがなかった皆は、T君宅を訪れた。そして知ってしまった……。
目の前を走っているそれは「おもちゃ」ではなく、まぎれもない「模型」だった。9mmゲージとはこんなにリアルなものだったのか!
* 他所様の家計を云々するのも失礼だが、9mmゲージといえども一式買ってもらえるような家には見えなかった。子供の目から見ても、無理したんじゃないかという気がした。それだけT君が「親に愛されていた」ということに後年気付いた。
* T君のは赤い電気機関車だったとだけ記憶している。日本の Nゲージ初の電機は KATO の EF70 だったらしいが、この時に見たのはそれだったのかも。→ No.1057 参照。

その日以来、鉄道模型熱が急速に冷めた。
なぜか?
それは「自分も 9mmにすれば良かった」と思ってしまったからだ。少ないお金をやりくりして、ようやく模型を手にしたわけだが、まともな車輛もないし結局は中途半端。もし 9mmゲージにしていれば、今までやりくりした金額で最低限ではあるが一式手に入ったのだ。それに気付いて、がっくり来てしまい、これ以上 16.5mmゲージ模型のために金を使う気力が失せてしまったのであった。
* 仮に自分が「車輛」単体が好きだったら、それでも 16.5mmを続けようとしたかもしれない。しかし、自分はレイアウト指向であったため、余計に挫折感が強かったのだろう。はるか後年、電車走行キットを作った時に、車輛だけでなく風景を必須と考えたのも、自分の心の内なるレイアウト指向の名残りと言える。

その後、自分は遠くへ転校して仲間もいなくなってしまい、模型から完全に離れてしまった。

●たった1両のスハフ12

時は流れ、成人指定映画も見られる年齢になった頃、あの時の「9mmにすればよかった…」という思いが蘇って無性に欲しくなった。最初に走らせる編成でイメージしていたのは機関車牽引列車。しかし、またまた動力車を購入する金がないまま模型屋に行ったため、スハフ12だけを買って帰ることになった。自分にとっては初の実在形式完成車輛である。
* 正確な記憶はないが、時期からして TOMIXの「初代」スハフ12だったと思われる。→ No.1058 参照。


そして、それっきりとなった。


おしまい。
…って、中途半端な終わり方のページだな。


----といった使い方ができるのが「LA00」である。
ページあたり一つの挿絵的走行シーンしか作れないし、姉妹プログラムである「RA00SL/TA00SL」と異なり蒸機を走らせることはできないが、それなりに使えるんじゃないかとは思う。

ただ、正しいHTML構造にしないと、一部ブラウザで走行シーンがあらぬ位置に行ってしまう問題はある。
具体的に言うと、本文がブロック要素タグ(<p>や<div>など)で挟まれている必要がある。それが正しいルールだから問題とは言えないかもしれないが、ホームページ作成ソフトの中にはこのルールを厳密に守らないものもある。そうなってしまった場合、正しいHTMLを学んで自らHTMLを書き換えねばならないことになる。

もっとも、他のプログラムであっても、インラインフレームを使えばこういうページを作ることは可能。
ということで、LA00の存在意義も揺らいでしまうわけだが、ま、LA00にしかない機能もあるから、それはそれで価値はあろう。ちなみに「挿絵(=風景)+鉄道車輛」だけ、というシンプルな構造ゆえに、電車走行キット全プログラム中、2番目に軽量(最も軽量なA00Zも、このLA00をベースに改造したもの)なのも特徴のひとつ。


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