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腕時計、雑感

Apr.2016(追記/Mar.2018/Jun.2020/Jul.2020/Jan.2021/Oct.2021)

おぱく堂主人・白龍亭主


●序章 - 自分的 腕時計史

 自分が最初に腕時計を手にしたのは、小学2年生の時である。といっても、買ってもらったわけではない。
 当時、病気で2ヶ月ほど入院したのだが、隣のベッドが時計屋さんで、その人からもらったのだ。1960年代の病室は個々のベッドを仕切るカーテンはなく、親も週に2回ぐらいしか見舞いに来なかったので、必然、その時計屋さんが一番の話相手となった。その縁で、中古品をくれたのである。とはいえ、面倒な手巻き式である上、子供の生活に時計を必要とするような場面はない。だから、ほとんど使うことはなかった。
* ちなみに、その病院の看護婦さんから「赤ん坊は、お母さんの割れ目から生まれてくるんだよ」と教えてもらった。しかし、小学2年生である。そもそも「性器」という概念が理解できなかった。わからないことはしつこく質問する性格の子供だったから、何度も「割れ目って何?」と問いかけた記憶があるが、結局、それ以上は教えてもらえなかった。入院していたのは4階で、出入り口のある1階まで階段を下りる度に、2階の産科フロアの独特の匂いを嗅いでいた。その異様な匂いと「腹が割れる」という話がセットになって、出産というものが、おどろおどろしい恐怖のイメージをともなって心に刻まれた。
* その後、小学4年生の時に、親戚のお兄さんが「ちんちんを女性の穴に入れるんだよ」と教えてくれた。子供のちんちんには「排尿器」の機能しかないのだから、「性器」という機能をイメージするのに少し時間はかかったものの、男女の仕組みは理解できた。といっても、自分自身の中に「性欲」はまだなく、好奇心の対象も「おっぱい」ばかりで、下半身への興味は湧かなかった。その流れのまま大人になったので、今もって、女性を見る時の目線は上半身ばかりで、尻や太ももにはまるで目が行かない。まさに、おっぱい星人である。

XS S M L XL

moon DST UTC JST 00:00 :00 24 12 P A 12 6 3 9 10 0 + +
タイムゾーンを代表する都市等の名→ Tokyo ←日本時間(JST)は「東京」になる
腕時計の文字盤にある表記→ ( TYO ) ←IATA 都市コード(3文字)

協定世界時からの時差→ UTC+9:00 ←日本時間は+9時間
UTC JAPAN DST
▲本文の時計とは異なるが、 インライン SVG ( Scalable Vector Graphics ) で時計を作ってみた。
主時計はワールドタイム。−/+クリックで、他国の時間帯へ。サマータイム(DST)採用地域がある時間帯では、切替可。
0時の真下にあるのは、ムーンフェイズ。ただし、伝統的な機械時計的表示ではなく、実際の月相に近い表示。
小文字盤は、左=このページ表示の経過分針、下=主時計連動 24時間計、右=現在時刻。

 腕時計を常時、身に着けるようになったのは、高校時代からだ。
 当時はまだクオーツは高価で手が出なかったし、デジタル時計もなかったから、当然、アナログの機械式(自動巻)である。クオーツの方が機械式より安くなったのは、大学時代のことで、その頃からは、一貫してクオーツ式のアナログ時計を使っている。デジタル時計だと、経過時間や残り時間を頭の中で計算しなければいけないが、暗算は苦手なのでアナログは必須だ。
* 調べてみると、自分が高校に入学した時点で、デジタル腕時計というものは存在したらしい。だが、登場したばかりの黎明期で、あまりにも高価な存在だったようだ。それゆえか、小さな地方都市の時計屋には置いてなかったから、その存在すら知らなかった。
* 機械式というと、今は「高級品」のイメージだが、当時は別にそんな感じではなかった。これまた調べてみると、今でも、1万円以下の廉価な機械式腕時計は存在するようだ。今は、限られた需要しかなさそうだが。

 腕時計に何を求めるのかは、人それぞれだが、自分の場合は、機能美と精度である。
 ……などと偉そうに言ってはみたものの、予算の制約が一番大きく、理想の腕時計が買えるわけではない。
 黒+銀という好きな色にはこだわりつづけたものの、以後、シンプルなデザインのアナログ腕時計を選びつづけた。代替わりのたびに簡素化が進み、曜日表示がなくなり、日付表示もなくなり、ついに極限のシンプル 1000円の腕時計にまで 堕ちた たどりついた。
 だが、激安腕時計は意外なところから壊れた。歩行中にいきなりバックル(ベルトの金具)が折れて、腕時計がアスファルト地面に落下。本体は無事だったが、ベルト交換費用が時計そのものの値段より高いという虚しい現実を前に、ベルト交換か新品購入かで迷って決断がつかず、しばらくはそのまま懐中時計として使っていた。
* 貧乏くさい話である…。
 結局、新品購入することに決め、ネットで新たな腕時計を探したところ、理想に限りなく近い腕時計が、予算の範囲内に存在するのを発見した。
 税別定価2万円の「ソーラー電波アナログ・クロノグラフ、ワールドタイム付」が、税込実売1万円だったのだ。ポイント還元分も含めれば、実質1万円以下である。ソーラーも、電波も、クロノグラフも、ワールドタイムも、欲しいと思いつつ、以前は予算オーバーだった代物で、それがすべて揃って予算内というのは、嬉しい話である。
* こんなことを嬉しく思える自分っていったい…。
 こうして、半生のシンプル路線を外れ、人生初の多針多機能時計を手にすることになった。


●ソーラー電波は、ペットである

 ネット上では、ソーラー電波腕時計の評価は二分している。「最高」と言う人もいれば、「くそ使えねぇ」とこき下ろす人もいる。
 評価を決める価値基準は人それぞれだから、参考になるのは自分と似たような基準を持つ人の意見だけだが、誰が自分と似ているのかまでは分からない。結局、自分の勘を信じて買うしかない。よって、一応評価を読んだものの、ほとんど参考にすることなく、件の腕時計を手に入れた。
* ちなみに、選んだのは「CASIO Wave Ceptor WVQ-M410-1AJF」である。

 所有者として使ってみた結論をいきなり言えば、ソーラー電波は人を選ぶ。つまり、相性がある。
 合わない人が「最低」と思うのは当然であり、合う人にとってはベストな選択となる。評価が両極に振れるのは仕方がない。

 相性の問題は、「ソーラー」と「電波」を分けて見なければいけない。

 まずは「ソーラー」だ。
 室内灯でも充電するが、ぎりぎりであり、余裕ある充電のためには、太陽光が求められる。
 これが最大の問題で、外出しても長袖が充電の邪魔になる。休日には半袖でアウトドアライフを楽しむ、などというアクティブな人間なら問題ないが、自分のようなインドア派では、どうやって時計を太陽光にさらすかを考えなければならない。
 これが面倒だ、という人にはソーラーは不向きだろう。
* 昼夜逆転の生活をしている人ならば、就寝中に窓際に腕時計を置いて太陽光に当てるという方法が使える分、かえって昼間動いている人より有利かも。もっとも、昼夜逆転だと後述の電波受信に問題はあるが…。
 腕時計を、意識して太陽光の下に連れて行くのは、ペットの餌やりと同じ。毎日の餌やりが面倒だというなら、ペットは飼えない。
* 連れ出すという意味では「散歩」のイメージに近いが、目的はエネルギー補給だから、自分的には「餌やり」扱いしている。

 次に「電波」だ。
 電波時計用の電波は微弱で、自動受信する深夜から明け方にかけて、時計をどこに置くか、どういう形で置くかを考えなければならない。雑電波の多い昼間は受信しにくいから、深夜仕事だったり、夜遊びが激しい人には電波受信のチャンスが少なくてイライラする代物だろう。
* 日本の時計用電波は、福島と九州の2ヶ所に送信所にあるから、そこに近いほど有利ということはあるかもしれない。
* 高価な GPS衛星電波受信の腕時計なら、いつでもどこでも受信ができるので、このような問題はない。理想を言えば、「CASIO MT-G」とか「CITIZEN ATTESA」とか「SEIKO ASTRON」とかが欲しいところだが、予算オーバーすぎて手が出ない。羨ましい。
 これも、ペットと同じ。時計に、電波環境の良い快適な寝床を与えてやる必要がある。
 そこさえクリアすれば、時刻合わせをしなくても日々1秒以内の誤差しかないのだから、最高だ。これに慣れたら、いちいち時刻合わせをする生活には戻れない。


●クロノグラフは無駄か?

 多針で多機能なクロノグラフには、ストップウォッチ、タイマー、アラームの機能が付いている。
 だが、実際のところ、ほとんど使わない。ウォーキングでストップウォッチを使ってみたが、健康目的のウォーキングに 1/20 秒単位の精度は不要。カップラーメンの3分にタイマーを使おうとしたら、使い方を忘れてすぐには使えず。大音量でも目覚めない自分には、小音量の腕時計アラーム程度では役に立たず。
 これって、無駄?
 ……まぁ、無駄だろうな。だが、無駄ではあるけど、この無駄が意外と楽しいし、無駄こそが文化なのだ。
* 言い訳がましい? そんなことはないぞ。

 使わない機能を無駄と言う人がいたら、反論する材料には事欠かない。世の中、無駄だらけだからだ。

 まず、低カロリー食品というのが無駄だ。
 食事の第一義は栄養補給なのだから、高カロリー食品を少なく摂取するのが、一番無駄のない食事というべきである。低カロリー食品を買っている人には、クロノグラフを不要と言う資格はない。
 さらに、化粧も無駄だろう。
 大化けしてすっぴんとの落差が激しい場合は効果ありと言えなくもないが、おおかたは、化粧したからといって美が増したりはしない。酷いのになると、すっぴんの方が美しいというメイクダウンもある。これを無駄と言わずして、何を無駄と言うのか。化粧品を買っている人には、クロノグラフを不要と言う資格はない。
 もうひとつ、宝飾品も無駄。
 美しいもので身を包んだところで、中身が…(以下、自粛)
* 真実を書きすぎると、敵を増やすから、やめておこう。

 無駄を否定したら、文化というものが成立しない。そして、クロノグラフは文化だ。


●アナログの皮を被ったデジタル

 他国の時間に簡単に切り替えられるのが、ワールドタイムだ。
 電波時計が「通常のアナログ時計ではない」からこその機能である。

 通常ではないって、どういう意味?

 通常のアナログ時計と、デジタル時計の違いは何か?
 針か、数字か。

 外見はそうだが、中身にも大きな違いがある。それは、時計が時刻を知っているか否か、だ。
 通常のアナログ時計は、正確な時間で運針する機能だけがあって、今、何時かというデータを時計の側が持ってはいない。人間が針の位置を竜頭で調整するだけで、それが何時を意味するのか、時計は知らないのだ。
 一方でデジタル時計は、時刻データが必須で、それを数字として表示する仕組みだ。
 自国の時刻を知らなければ、他国の時刻も分からない。ワールドタイム機能には、アナログ時計であっても、デジタル時計と同じ仕組みが必要なのである。それ以前に、電波時計である限り、時刻データを時計の側が持つ必要がある。電波時計とワールドタイムは、同じ土台の上に立っているのだ。
 いわば、アナログの皮を被ったデジタル時計だ。
* 自分が買ったアナログ・クロノグラフには、竜頭がない。中身がデジタルなのだから、そもそも不要なわけだ。高級なソーラー電波クロノグラフには竜頭があるが、あれも本来の竜頭ではない。竜頭の操作性に似せてはいるが、その正体はデジタルなスイッチだ。

 世の中、気づかないうちに、デジタルに侵食されているわけね。


●文字盤に謎あり

 ワールドタイム付腕時計は、文字盤周囲に、アルファベットの3文字が刻まれている。
 IATA(国際航空運送協会)の都市コードで、東京は「TYO」で記され、設定時にここに針を合わせると「日本時間(JST)」の表示になる。というか、日本の時計だから最初からここに設定されている。同様に、他国のタイムゾーン(時間帯)も、代表する都市名のコードが記されている。有名な都市のない地帯は、「それってどこ?」という無名の地名が代表で使われていて、時計の文字盤が謎めいている。



↑成田(NRT)を中心に世界を見る。
( Powered by Opaku's Train Kit )

 気になって、世界のタイムゾーンを調べてみたが、意外とややこしいことが分かった。
 時差というものが、1時間単位だとばかり思っていたが、30分単位や 15分単位の差まである。ただ、自分が選んだ廉価版の時計が対応しているのは 29タイムゾーンまでで、日本と3時間 15分差のあるネパール時間などには対応していない。それを含めて、世界全4039タイムゾーンに対応しているのは、高価な腕時計に限られるようだ。ヒマラヤ登山者や、完璧主義者は、出費がつらいところだろう。
* ちなみに、このページ上部にある SVG 時計は、39タイムゾーンすべてに対応している。なお、2018年 5月 5日に廃止された平壌時間にも対応したままのため、40タイムゾーン時代の時計。

 タイムゾーンを代表する都市名も気になるところだ。
 中国時間を代表する都市として、自分が買った腕時計は「HNG(香港)」だったが、他社製品は「BJS(北京)」が多い。心情的には「TPE(台北)」表記の腕時計が欲しかったが、ネット通販では見つけられなかった。微妙な問題を孕んでいるので、メーカーとしても悩ましいところなのだろう。

 廉価版腕時計は対応していないが、UTC+13:00 とか UTC+14:00 というタイムゾーンがあるのも、不思議。
 地球自転一周 24時間だから、UTC(協定世界時)−12時間から、UTC+12時間までの、24時間の範囲内に収まるのが、理屈だ。
 だが、その理屈どおりにすると、南太平洋にある東西に長いキリバスという国が日付変更線で二分されてしまう。世界時の基準であるイギリスから見て、地球の真裏にあることによる事態だが、キリバスにしてみれば「ふざけんな」ってことになる。国家を二分させないためには、日付変更線を曲げて、タイムゾーンも理屈から外れた設定にするしかなかったわけだが、どの国が基準線を決めても、その裏側の国は迷惑する。仮に日本が UTC の基準線を決めたとしたら、「ふざけんな」と怒るのは裏側のブラジルである。逆に言えば、ブラジルが UTC の基準線でなくて、日本は助かったとも言える。
* 基準線を巡って争ったのは、イギリスとフランスだから、仮にフランスが勝っていたとしても、キリバスが迷惑したことに変わりはない。
 もうひとつの不思議は、UTC+12:00 と UTC−12:00 というタイムゾーン。
 どちらもイギリスから地球ジャスト半周、時刻はまるっきり同じ。しかし、日付が違う。+12 の地域が新年を迎えた瞬間、すぐ近くの−12 では大晦日が始まるわけだ。前述の+13 +14 を含めて、日付変更線周辺はカレンダーが破綻している。
* ちなみに、時計が最も進んでいる UTC+14:00 の地域が新年を迎えた時、UTC-12:00 では 12月 30日。まだ大晦日にすらなっていない。ニューイヤーのカウントダウンも、地球全体で見ると、26時間にもまたがる冗長なイベントになる。

 腕時計の小さな文字盤の中に、世界の事情が隠れていて、面白い。


 ──初の多針多機能腕時計は、素晴らしいもので、選択に間違いはなかった。
* あえて欠点を挙げれば、廉価版ゆえに「充電量確認」ができないことか。充電が少なくなった時の警告機能はあるから、実質、問題はない。だが、「常に満タンにしておきたい」という欲求を持つ自分にとっては、モヤモヤが残るのである。ちなみに、若い頃、燃料計のないバイクで、ガス欠停止したことがあり、それ以後、燃料残量を減らすことが嫌なのだ。そのトラウマは、腕時計にも引き継がれている。
* ソーラーといえども、充電用二次電池に寿命がある以上、いつかは電池交換しなければならないし、ウレタンベルトも加水分解で劣化し、いつかは切れる。貧乏根性の自分にとっては、できるだけ長持ちさせ、交換時期を遅らせたいところだが、やれることは限られている。その辺は、諦めるしかなさそうだ。諸行無常である。


●充電不足になった件(Mar.2018 追記)

 2018年 3月某日、時計を見たら秒針が止まっていた。
 それだけではなく、曜日や日付もリセットされた状態で停止。時針と分針が動いているだけで、それ以外の全機能が停止していた。要は、充電不足に陥り、充電残量警告として省電力モードになってしまったのである。
* 高級機と違い、電池残量表示の機能がない。だからこそ注意深くあらねばならないのに……油断した。
 ソーラー充電だから、原因は光不足。
 光が盤面に当たらなかった主たる原因は、上着。
 冬は寒い。腕を覆いたい。時計が隠れる。でも、「夏の炎天下充電の余力があるから、室内光だけでも保つでしょ」と考えたのが、大間違い。確かに多少の余力はあったのだろうが、それが3月までは保持できなかった、という話。

 結局、太陽光下で腕を出すこと 30分。復活した。
 室内でも場所によって光の強弱はあるだろうし、強光の下ならばもう少し夏の余力で何とかなったのかもしれないが、結局のところ、太陽光には敵わない。アテン様々なのだ。
* 光に気を遣わなくても済む、という点では通常の電池式の方が良い。ただ、電波腕時計で電池式など、自分の知る範囲では見たことがない。おそらくは、電波受信にはかなりの電気が必要であり、それは充電式でないと賄えないのではないか? よくは分からないが、時刻合わせから解放される電波の楽さと、ソーラーの面倒くささを秤にかけて、どちらかを選ぶしかない。


●充電から考える「次」の時計(Jun.2020 追記)

 2020年に入り、充電不足で省電力モードになってしまう回数が増えた。太陽光にさらす時間不足や、二次電池のへたりが原因だろう。
 こうなってくると、しみじみと思うのが「USBで充電できたらなぁ」ということだ。
 ということで検索してみると、USBから直接充電できるのはスマートウォッチばかりで、ソーラーとの両刀使いの時計はない
* これを書いた後「ソーラースマートウォッチ」なるジャンルがあると知った。が、少数派であり、選択肢が少なすぎる。さらに重要なのは、ソーラーパネルと液晶(又は有機EL)ディスプレイが両立しないので、スマートウォッチとしての機能に制約がありすぎる事。
* さらに追記。G-SHOCKシリーズの中に、両刀使い(ソーラー+USB充電)の「G-SQUAD(GBD-H1000)」なるモデルが存在するのを発見。しかし、デジタル表示+定価 5万円なので自分的には対象外。

 ソーラー腕時計をUSB充電しようとすると「ソーラー腕時計充電用LEDライト」なるものしか選択肢はない。なんというか、TV番組を直接録画するのではなく、番組放映中のTV画面をビデオ撮影する的な、退化したような手法である。方法が存在しないよりはいいが、太陽光より圧倒的に弱い光だから、充電に要する時間もかなり長いであろう。就寝時につけっぱなしにすればいいから、そこまで気にならないだろうとは思うが。
* 高級スマホ用のワイヤレス充電台みたいなもの、という風に考えれば、進化した手法に思えるのだろうか。

 今ある腕時計は、それしか選択肢がないから仕方ない。問題は「次」だ。

 ソーラーを諦めてスマートウォッチに乗り換える?
 スマートウォッチなら、スマホの通知に気づかない問題も解消されるし、太陽光を気にせず充電できて便利だ。多機能なものはフル充電でもすぐに消費してしまうらしいが、自分的にはそこまでの多機能はいらない(時刻が確認できて、スマホの通知が腕に振動で伝わればよい)から、電池持ちの良い機種を選べばよい。
* ここまでなら、スマートウォッチで決まり。しかし…。

 問題は日本が災害大国だということだ。
 災害時、充電は簡単にはできなくなる。ここまで想定すると、ソーラー腕時計が優位になる。
 そうなると、今と同じである。堂々巡りだ。

 ……などと迷う必要はないかもしれない。
 人間なら問題だが、物ならば二股をかけても問題はない。幸い、腕は二本ある。スマートウォッチとソーラー腕時計を両方身に付ければいいではないか!
* 発想がアホっぽい。
 しかし、腕時計を二つ揃えるのは金がかかる。

 ここまで考えれば、結論はひとつ。
 二股はそのままに、スマートウォッチをやめて、安いスマートバンドにすればよい。時刻確認とスマホの通知はスマートバンドでも可。重量も軽いので腕の負担も減る。
* スマートバンドはバッテリーが長持ちなので、充電ができない災害時でも強みがある。……そうなると、スマートバンドだけでも生活上困らないことになり、ソーラー腕時計は不要といえなくもない。まぁ、スマートバンドしか持っていないとフォーマルな場に行きにくかったりはするが、心頭滅却すれば、それもクリアできるだろう。
* スマートバンドでもスマートウォッチ並に高価なものがあるが、ここで想定しているのは Xiaomiとか Huaweiとかの実売価格5000円未満のやつである。


●スマホで充電(Jul.2020 追記)

 スマホで腕時計を充電するに至った前段階の話から入る。

 前章で「充電不足で省電力モードになってしまう」と書いたが、その続きである。
* ここで言う「省電力モード」とは、具体的にどうなるかといえば「時針と分針だけ動いて、他は停止する」のだ。
* ところが、マニュアルを見ると、こんな機能はないことになっている。充電切れ予告として「秒針が2秒ごとに運針する」か、パワーセービング機能として、レベル1「夜の暗い場所で秒針を止める」とレベル2「全針停止」があるだけ。自分の持っている個体が狂っているのか、マニュアルにあえて記述していないのか、マニュアルの不備なのか。……狂っているわけでもマニュアルの間違いでもないとすれば、「全針停止」から復帰する第1段階として「まず時針と分針だけ動かす」のではないか、と推測している。

 多針多機能時計といえども、時針と分針さえ動いていれば、実用上は問題ない。
 ということで、「夜は全針停止し、太陽が昇って省電力モードで家を出て、いつの間にか全針動いて帰宅」という、充電状態ギリギリで浮き沈みする低空飛行を続けたまま、「次をどうするか」を考えただけで、充電不足を積極的に解消しようとはしなかった。

 転機は、前章を書いた後。
 ある朝、分針が6分遅れていたのだ。
* いっそ全針停止したままなら「じゃあ、スマホで時刻確認するか」で済むが、一応時計として動いているのに時分が狂っているのは、つい時計を見てしまうだけに厄介である。

 ソーラー電波時計が狂う原因は、ひとつは電波受信の失敗だが、その場合はいきなり6分も遅れたりはしない。
 こんなに狂うのは「基準位置がズレた」以外にない。
* 電波受信をして、たとえば「4時」というデータを時計が得た時に、基準位置(0時0分)から4時間分進めた位置に針を持ってゆくのがアナログ電波時計。だから基準位置がズレると、針の位置が正しくならなくなる。
 基準位置は「強い磁気や衝撃を受けた時にズレる」とのことで、マニュアルにその修正方法が書いてある。
 だが、正しく時刻表示していた前夜から、時刻表示が狂っていた朝にかけて、強い磁気の近くに置いていたわけではないし、衝撃も与えてはいない。

 ズレた理由がわからないまま、マニュアルに従って修正作業。
 修正モードにすると、針や日付が一旦、基準位置に移動。ここで0時0分(日付は1)に戻れば正常。戻らない個所を進めたり戻したりして修正。その後、時計表示に戻す、という流れである。

 時計表示に戻る時、全針が一気に現時刻表示になるのではなく、針ひとつひとつが順番に移動する。
 最後に日付が本日表示に戻る途中……行き詰った。途中で充電不足のせいで動かなくなり、そのまま日付が4日ズレた状態で固定してしまったのだ。基準位置ズレの原因は、磁気でも衝撃でもなく、充電不足だったのである。
* 針よりも日付文字盤の方が重い。これを動かす時にバッテリー負荷が大きいであろうことは明らかで、ここで行き詰ったのも当然か。
* とすると、最初になぜ軽い分針が6分ズレたのか? 電池消費が大きく充電不足で行き詰りそうなものは電波受信しかないが、正常なら受信時でも分針は動いているんだよなぁ。これは謎のままだ。
 つまり、充電不足を解消しない限り、基準位置がズレてしまう問題が何度も発生する、ということだ。

 ここに至って「充電不足を何とかしないとヤバい」と焦り始めた。
 時計の盤面が太陽光に積極的に当たるよう工夫するか、夜でも充電できるようにするか、あるいは両方か。真剣に考えざるを得なくなった。

■    ■    ■

 前章の段階では「ソーラー腕時計充電用LEDライト」という存在を知っただけで、それについて更に詳細に調べようとはしなかった。だが、こうなったら調べないわけにはいかない。
* ちなみに……検索しても、CREPHA製「ソーラーウォッチ用LED充電器」しか出てこないので、これが唯一か、あるいは他の製品も存在するものの人気薄なのか。
 量販店サイトでのコメントを見ると「意外と充電できる」という声があり★評価も高い。
 これを購入するのが最終的な解決策だろう。
 ただ、製品が届くまでの間はどうする? 手元にない緊急時はどうする?

 最初に考えたのは「普通の懐中電灯に腕時計をテープで固定して一晩中点灯させておく」というものだ。
* LEDが「意外と充電できる」のなら、同じLEDの懐中電灯でも活けるだろう、という安易な考えではある。
 ただ、わが家にある懐中電灯は乾電池式で、乾電池を使い切ってしまえば新たな電池を入れなければいけない。セコいので、そんなことで乾電池を交換したくない、という思いが生じてしまった。
* この時点でスマホに思いが至らなかったのは、写真撮影時にフラッシュを使うことが全くなく、懐中電灯機能もほぼ無縁なので、スマホにLEDが付いている事を忘れていたのだ。

Charging Solar Watch with Smartphone

 しばらくして「あ、そういえば、スマホにもLEDあるじゃん」と気づいた。
* 上の写真。ただ、途中で「新しいスマホのLEDは余り劣化させたくないな」と思い直し、今はSIM無しWi-Fi運用になっている旧スマホに切り替えた。

 一晩かけて、総計10時間弱、スマホのLEDを時計の盤面に当てて充電した。
 翌日、腕時計を一切太陽光に当てなかったが、夜になっても止まることはなく、電気を食う電波受信もスムーズにクリア。
 以後、充電残量ギリギリの低空飛行からは離脱できた。

 マニュアルによれば、満充電は、晴天の屋外でも 23時間必要だし、窓越しの曇天だと 138時間もかかるらしい。であるから、スマホのLEDごとき光量では満タンは無理だろう。それでも「充電不足で基準位置がズレる」などという厄介な事態を避けるには十分だ。


 結論:ソーラーウォッチの緊急充電器として、スマホのLEDは使える。
* 常用充電器としては、おすすめはしない。LEDも長時間使えば劣化して暗くなるし、そんなことでスマホのバッテリーを使って劣化させるのも勿体ない。LEDを常用するなら、専用の充電器を買うべきだろう。
* ……などと書いた後、2020年 7月の長雨による光量不足で、スマホLEDを使った充電を常用。ぶっちゃけ、旧スマホだから LEDが劣化しても困らない。現役スマホとは別に引退したスマホがある場合は、専用の充電器は必要なさそう。

 追記(Jan.2021)
 後に知ったが、スマホのスピーカーの磁気が、アナログ時計に影響を及ぼすらしい。
 自分のスマホはモノラルスピーカーだからスマホ下部にしか強い磁気はなく、LEDフラッシュのある上部には電話受話用の小さなスピーカーしかない。だから問題はなかったのだろう。ステレオスピーカー搭載の高級スマホは要注意かもしれない。
* iPhone 12以降 の「MagSafe」の磁気はもっとヤバそう。


●壊れた!(Jan.2021 追記)

 2021年正月、腕時計が壊れた。
 例によって(?)基準位置がズレたのだが、それを直す機能がまったく動作しなくなった。
 それなりに光に当てて充電不足ではない状態での作業で、ズレ直しのボタン操作に一切反応しないのだ。最初、ボタンが物理的に壊れたのかと疑ったが、全ボタンを使うストップウォッチ機能は正しく動作する。つまりボタン故障ではない。
* 前述した事の繰り返しになるが、ふつうのアナログ時計が竜頭操作なのに対し、電波時計は見た目がアナログでも中身がデジタルなので、4つのボタンで操作する。

 三が日明け早々、修理センターに問い合わせた所、症状から「内部部品の不具合が推測される」との事。
 CASIOはウェブから修理手続きができて便利なので、早速それを使って修理を……と思ったが、最初のステップ「修理費見積もり」で挫折。なぜなら、保証期間外料金「7000円+税」だったから。
* 分解して故障原因を探る作業を考えたら、7000円は決して高くはないのだけど……いや、分かっちゃいるけど。
 この時計は、家電量販店で税込 1万円で購入。ポイント還元分を含めて計算すれば実質 8000円台。
 で、修理費が税込 7700円。修理内容によってはもっと増える可能性もある。さらに、2次電池の寿命も近づいているから、それの交換を含めれば 1万を超える出費となる。
 つまり、同じものを新しく買った方が早い。
* 2021年1月時点で、量販店での値段は 9610円。年式の古いモデルだからか、自分が買った5年前よりも僅かに安くなっている。

■    ■    ■

 約5年間の総括。

 ●多機能:使わない。自己満足。

 ●電波時計:時刻合わせをしなくても常に正確、というのは超便利。時刻合わせを必要とする時計には戻れない。

 ●ソーラー充電:夏に半袖で太陽光下にいるアウトドア派なら充電不足に悩むことはないだろう。しかし、夏でも長袖だったり、太陽光下に外出する事が少ない人間には不便。特に2次電池がへたってくると、なかなかに厄介。自分的には次はソーラーは選ばない。
* 夏に十分に充電しておかないと、冬の長袖+上着という充電不足環境を乗り切れない。

 ●時刻データを持ったアナログ時計:データと実際の針位置が一致しなくなる「基本位置ズレ」が発生すると厄介。データを持たない普通のアナログ時計の方が便利だが、そうすると人間が時刻合わせをする必要がでてくる。
* 10万円を超えるような腕時計だと、基本位置ズレを自動検出して自動で補正してくれるものもある。そういう機種なら面倒なことはない。


 以上の総括から、次の時計に関して考える事。

 自分にはソーラーは不向。
 → しかし電波時計はソーラーしかない。
 → 電波以外で「時刻合わせをしなくていい」時計とは、スマホと Bluetoothで連携する時計しかない。
 → 通常の腕時計でスマホ連携できるものは量販店で 1万4千円からあるが、気に入ったデザインのものを選ぼうとすると更に高価。
 → どうせデザイン的な満足を諦めるのであれば、4000円台で買えるスマートバンドで充分なのでは?
* アナログ時計好きなので、デジタル表示の時計(又はバンド)に自分が耐えられるかが問題。
* 一方で、時計側が時刻データを持っているアナログ時計は、基準位置ズレ(データ上の時刻と、針の位置の時刻のズレ)という問題が避けられない。これもウンザリするところであり、そういう問題のないデジタル時計の方がいいかも、とも思う。
* すべてを諦めて「時刻合わせ」を厭わないのであれば、1000円以下の時計でもいい。安っぽいが、おぱく堂本人も安っぽい人間だから問題ない。……とも思ったけど、やっぱり「時刻合わせ」は面倒だなぁ。


●おまけ/後継はスマートバンド(Oct.2021 追記)

 腕時計が壊れた後、どうしたのか?
 結局は、4000円台のスマートバンド(簡易型スマートウォッチ/活動量計)を選択した。

Smartband with digital face

 それを半年以上使った上での結論だけ、おまけとして記しておく。
* 本来は健康管理のためのフィットネス活動量計。なので心拍数測定などの機能がついてはいるが、自分には腕時計目的しかなく、フィットネス機能については評価の対象外とする。

 購入前の予想どおり、スマホ連携で時刻合わせをしなくてよいのは楽だし、USBでいつでもフル充電できるのは便利。
 スマホの通知が腕に振動で伝わるのは、スマホをカバンに入れている状態でも通知を見逃さないので極めて有効。しかも通知内容を腕で確認できるのは至便で、これがない世界には戻れない。
* 宝くじが当たって高額時計を買える身分になったとしても、スマホ通知のある高額なスマートウォッチを選択するだろうなぁ、と思う。
 購入後に初めて知ったメリットは二つ。
 ひとつは想像以上の軽さ。軽いのは分かっていたが、これほどとは体感してみないと分からない。購入した機種は、バンドを含まない本体だけで 12g。バンドの重さは不明だが、合わせても 20g台だろう。本来はフィットネス用品だから軽くする必要があるのだろうが、フィットネス無縁でも、この軽さに慣れたら、普通の腕時計が重すぎて辛い。
* 他社製品も同じように軽いので、スマートバンドというジャンルの製品なら、どれでもこのメリットは享受できそう。
 もうひとつは、タイマーの使いやすさ。カップ麺の 3分(あるいは 5分)の計測は、もはやこれ一択。
* お湯を入れた後に別の作業に集中すると、音のタイマーだと聞き逃すことがある。しかし、腕の振動は逃すことがない。

 デメリットは当然ある。
 元々アナログ時計派なのに、用意されているアナログのフェイスが見づらく、デジタル表示にせざるを得ない事。とはいえ、時刻確認ぐらいしかフェイスを見ないので、実用上はデジタルでも問題はない。
 もうひとつは、常時表示機能がないため、腕を手前にひねるか、盤面にタッチするかしないと時刻が表示されない事。腕を動かせる状態の時は問題ないが、重いものを持っていて腕をひねれない場合とか、腕から外してデスクに置いてある場合に時刻確認がすぐにできない。
* 8000円レベルのスマートバンドなら、アナログフェイスにも見やすいものがあり、常時表示機能もある。そのレベルだと、血中酸素飽和度測定ができたりするので、簡易型パルスオキシメーターにもなる。価格は倍だけど、そっちの方が一般的にはおすすめかも。


 腕時計に求められるのは、実用だけではない。
 ステータスだったり、美意識の表現ツール(=ファッションアイテム)だったり、人それぞれの付加価値がある。
 逆に、それらを一切排除して、実用に徹したらどうなるか?
 その答がこれだと思う。
* スマホとの連携が必須なので、スマホを持っていないガラケー派の人にとっては実用にならないが。
* 元来がフィットネス用品なので、スポーティなイメージを演出するファッションアイテムとしては機能すると思う。