日々の雑感 独り言 No.2
いつもとは違う 山の事
山に行って来たのだからそっちのページに書こうかと思ったんだけれども、しかし、自分の主体性が全くない山だったのでこっちに書く事にしました。
うーん・・・ナント言いますか、これは、いつもの山登りとは全く違うし、何よりも、一人では手も足も出ない訳で、登らせてもらっている状態なのがアレなもんですから、負い目と言いますか、威張って書けないのがちょっと辛い所でもある訳です。
いや、そうは言いましても、自分の手足で登っているのは間違いないんでありますよ。
だから、登ったと言っても嘘でも、間違いでもないんでありますが、まあ、ルール的に行くと、クリアーはしていないんで、登れていないと言う事になるらしいんであります。
前降り終わり。
ある日、ダイビング屋をやっていた時にお客さんだったHさんと、クライミングジムでばったりと出会って、うへぇー、どういう事なの?となりまして、以後、クライミングについて何かと面倒を見てもらう事になった訳であります。
で、Hさんに、外岩(そといわ、と言うらしい)に行こうよ、と誘われるようになりまして、何度かチャンスを窺ったんでありますが、雨やら台風やらで決行ならず、に終わっていたのでありました。
が、この度、御日柄は申し分無く、錦織りなす日本晴れの10月23日、いよいよ、おっさんはフリークライミング外岩に出向いたのでありました。
Hさんと仙山線の熊ヶ根駅で待ち合わせをし、車を一台にして山形県は天童市の山寺へ向かったのであります。
で、奥の細道で有名な立石寺を通過して二口林道に進み、二股から二口林道と別れて、いっそう細い林道に分け入ったんでぁりますが、場所は何となく分かるんでありますが、正確には分かりません。
で、程なくして結構な広場の駐車場に着いたんでありますが、貸し切りの様子でして、他に車は有りませんでした。
山寺の奥の岩山・・・駐車場からの眺め
さて、車を降りて山道を登って行くんでありますが、これが中々真っ当にきつい登山道な訳であります。
アプローチに30分程山道を歩くから、足下はそれなりにね、と言われていたので、トレールランニング用のスニーカーを履いて行ったんでありますが、いつものトレッキングシューズの方が良かったな、の山道でありました。
で、登って行きますと、小東岳へ至ると言う分岐があったんですが、荒れた道だぞ、と注意書きが有ったのであります。
ああ、これは、恐らく仙城岩の下を巻いて小東峠へ行くのであろう・・めと、すると、私が向かっているのは、地図で見ると甲岩の周りにあるギザギザの辺りか?と見当をつけたのでありますが、良くわかりません。
いや、Hさんに、なんて言う山に行くの?と聞いてみても、黒岩って言うらしいんだけど、皆は山寺って呼んでんだよね、と言う訳であります。
が、しかし、私の地図には黒岩、と言うのは乗っていないんであります。
登るべき岩の下から見上げて、ただ唖然・・・無理っすよー、これは。
そんな訳で、雲一つない晴天のもと、今が見頃の紅葉の道を グイグイと登って行くのでありますが、ホントーに急登でありました。
で、目指すのが岩場なんで当たり前なんですが、道も岩になってくる訳です・・・普通に登山道としてももの凄く楽しいルートですよ。
ふうふう言いながらHさんの後に着いて岩場に辿り着いて、吃驚仰天であります。
うへぇー・・・どひゃぁー・・・がびょーん、と、手持ちの感嘆詞を全部並べてもちょっと足りないくらいに驚きであります。
こんな高い所から落ちたら死んじゃうよぉ・・・垂直を通り越して反り返ってるよ、この壁はぁ・・・と、おっさんらしくも無く、泣きが入りました。
で、Hさんはさっさと準備を始めて、スタンバイ、でありまして「んじゃぁ、おっさん、手始めに5.10aの奥の細道をやりましょうか?と。
奥の細道とか言われましても、岩にしみ入る蝉の声も無い訳でして・・・どぎまぎしているとHさんが、先に登ってトップロープ掛けて来っから、と言うので、私はビレイに回った次第であります。
と、言う事で、Hさんにしてみれば5.10aなんてのは屁みたいなもんなんで、スルスルっと登って行ったんでありますが、しかし、あれれれっ?止まっちまったぞ、と言う場所に行き当たったんであります。
で、私には信じられないのが、足の引っ掛かる場所が無い、フリクション(靴底の摩擦抵抗)だけを頼りに登っている訳です・・・俺なら落ちる、な、と。
で、程なくして終了点にロープを掛けて降りて来た訳であります・・・次は、私、おっさんの番であります。
いや、第一歩、地面から離れるのが一苦労でありまして、足の置き場が無いんであります。
Hさんが、体重をかければ滑らないから、と言うんでありますが、へっぴり腰の及び腰で体重がかからない物ですから、滑る訳です・・・怖ぇぇぇぇ。
まず、ナントカ離陸したんでありますが、手で掴むモノが何も無いとか、足の引っ掛かる場所が無いとか、そう言う所を登るんでありますから、先祖の血筋に猿を持たない私は、落ちそうになる訳です。
で、耐えて堪えて、そして、ダメになる訳であります。
ダメになったら、テンションと言って、下で支えている人にロープを張ってもらい、それに体重を預けて休むのであります。
が、しかし、一度お休みをいただくと、このルートを完登したとは言えない訳で、屁タレの烙印が着いてしまうのであります。
で、ありますが、屁タレは百も承知のおっさんでありますから、ここからまた続きをやる訳です。
で、やっぱし、Hさんが少し動きを止めた地点がいわゆる核心部、と言う所でありまして、私は怖くて、金弾が縮み上がって動きが取れないのであります。
ふぅーっ・・・下でビレイしてロープを張っているHさんも疲れる訳でありますから、ここは上下で休憩を入れたくなる訳です。
で、私は、通称ヌンチャク、正しくはクイックドローをビレイ用のボルト(スポーツクライミングのルートにはあらかじめ埋めてある)にそれをセットして、自分のハーネスに繋いで確保する訳です・・・これで下のHさんも手を休められる訳です。
で、余談でありますが、登る方も必死でありますが、下のビレイャーも同じだけ必死であります。
いつなん時突然落ちるかも知れないクライマーの落下を、ロープ一一本で止める体制を保持し続ける訳であります。
その為にはずーっと上を見上げる訳ですが、これが意外に辛いのでありました。
私はダイビングで首を痛めているので特に上向きで首の骨を圧迫すると気絶する程の痛みに襲われる事が有る訳で、これ、苦手でありました。
まず、散々時間をかけ、テンションを貰いまくって、なんとか終了点に到達した訳でありますが・・・もう帰ろうよ、の心境でありました。
とりあえず、これは、おっさん必死のチャレンジでありまして、死ぬ気でやってます。
んじゃぁ、次、ちょっと休憩して、夏の扉でもやってみっかい?と、絶好調のHさんでありまして、まだまだ始まったばかりだよん、と。
夏の扉でも、冬のリビエラでもなんでも良いです・・・どーせ落ちるんですから。
と、言う訳で、またもやHさんが先に登ってトップロープをセットしてくれて、おっさんが屁っぴり腰で取り付く訳であります。
で、結果から言うと、なんだぁー・・・こっちの方が簡単なんじゃないかぁ?俺らぁ初心者なんだから、一等簡単なのからやらせてくれよ、と、思ったんでありますが、何か特別な曰くや理由があるやも知れず、黙っていた次第であります。
がぁ、しかし、休憩のさなかにHさん・・・いやぁ、この壁見落として分かんなかったもんで、奥の細道やったけど、やっぱし、こっちが楽だわねぇ、と。
ふうっ・・・まっ、連れて来てもらっている身の上であります、何も言いますまいぞ・・・だけど、俺らぁ、初心者なんだからさぁ、と。
しかし、アレです・・・久しぶりに、37年ぶりにやった懸垂下降は、気持ち良かった、であります。
死ぬ気でぶら下がっているんですけど・・・もうダメ、で、セルフビレイして記念写真、と。
さて、フリークライミングに足を突っ込んで、苦節四ヶ月、たまにジムに通う程度の練習でホイホイと何処でも登っちまえるほど岩場は甘く無い訳でありまして、本日の所は、まず、様子見だからな、この次は勘弁しないからな、と、本日登りきれなかった奥の細道に挨拶をして引き上げる事になった訳であります。
で、そこで私が・・・ああっ、奥の細道に掛けっぱなしのヌンチャク回収しなくちゃダメですね、と言うと、Hさんが、そーだねぇ、んじゃぁ、もうひと頑張りだね、と、宣うではありませんか。
しょーがねぇ、自分の道具だからな、やっぱし、自分で回収しなくちゃな、と、登り始めた訳であります。
しかし、元気なうちにさえ満足に登れなかった壁を、ヘロヘロになった腕と足腰で登れるはずも無く、どうしても核心部が超えられず、ギブアップ。
結局はHさんに登ってもらい回収してもらうと言う不甲斐無い羽目に・・・ナニからナニまで、申し訳ない、と。
さて、日も西に傾いた午後四時、くたくたの足腰を引きずりながら下山して車に辿り着きまして、帰路へ、と。
いつもの山歩きとは全く異質な疲れが、身体の心からドドドぉーっと疲労しているのが分かるのであります・・・眠いし。
で、家について風呂に飛び込むと・・・いや、飛び込める程広い風呂ではないのですが、まず、風呂で膝とか腕とか見ますと、傷とあざがてんこ盛りな訳であります。
うーん、知らない間にぶつけているんですねぇ・・・いやいや、おっさんには向いてないかも知れない、岩登りの顛末でありました。
いや、何でこの歳でこんな事を始めたのかと言いますと・・・そりゃぁアレです、ヒマラヤ行くには必要な技でしょう、と。ハハハは、ハ。
ヒマラヤ遠征計画の為の第一歩ですよ・・・ずーっとこの一歩から進まなかったりしてね。
まずは、万里の道も一歩から、三歩進んで二歩下がり、二歩下がったら一歩前へ・・・進まねぇかな?
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