写真入り・山日記

 

〜船形山系 花染山 1018m〜

  2009年03月01日  快晴 

 船形山は・・・晴れていた。
チョットした切っ掛けから団体での山行に、連れて行って貰う事になった。
昨年九月から山登りを始めて今日まで、21回の山行をしたのだけれども、全部独りだった。
一人が好きな訳でもなく・・・いや、基本的には一人は好きだが、登山道で行き会う和気あいあいのパーティーに、ちょっと惹かれていたのも事実だった。
そんな訳で、今回、とある山の会の世話役の方から山行の誘いを受け、またとないチャンスと喜んで参加させてもらった。
今回誘って頂いた会は登山がメインの会ではなく、船形山の自然全般を守る為に働いている人達の集まりであり、私のような、山に登れれば満足だと言う不埒な輩が顔を出すのは申し訳ない会であった。
うっかり団体に属してしまうと、守らなければならないルールが発生するのは必定で、そこの所が引っかかる。
しかし、山を守りたいと言う気持ちは私だって持っているので、協力できる事はしてみたいとも思うのだが・・・。
と、言う事で、いきなりの大所帯の山行に、はじめは戸惑い、身構え乍らも、皆さんの気遣いで終止楽しく歩かせて頂いた一日の顛末を記させて頂きます・・・。




 宮城県某町の「まほろばホール」の駐車場に七時半集合と言う事でありましたが、緊張の私は、七時ちょい過ぎにはスタンバイしていた訳であります。
すると、ボチボチと車が集まりまして、しかし当然知らない人ばかりなんでありますが、格好から察するに、たぶん山に行く人達であろうと言う事で取り敢えずご挨拶など・・・。
そうする内に世話人のB氏がやって来て、分乗して登山口の升沢へと移動であります。
車中B氏に、本日の予定のアラマしなどを伺いまして、心の準備など整えるのでありました。
で、内水面水産試験場に車を停めまして出発の準備などする訳でありますが、あまり細かい話しなども無く、リーダーとサブリーダーの紹介程度で、三々五々、それぞれに歩き出して小荒沢の林道へと入って行った訳であります。
うーん・・・思ったよりも緊張度の低い団体であるかも知れない、と、ちょっと緊張が解けたのであります。
それにしても、雪の林道を35名が一列縦隊で行進する姿は、なんと表現して良いやら、見方に拠っては一種異様であります。
もっとも、一寸道幅が広くなるとそれぞれ好きな所へ散って、顔見知りが集まって歩く訳ですが・・・。




 さて、35名のメンバーは・・・年齢的に私の下にはたぶん、2〜3名しか居ないようで、と言う事は、当年とって54歳の私が若手なのであります。
参加されている方々は、それぞれに、そう言う年齢な訳ですが、これが元気でありまして、まさかと思う程にしっかりと歩く訳です。
私がシルバー世代のパーティーに抱いていた思いは、相当に誤った認識であったと、本日素直に改めさせて頂いた次第であります。
もっとも、かなり高齢の方も居ますので、全体のスピードもそれなりに遅く、休憩も多いな、と思うんでありますが、登山のパーティーは一番弱い人に合わせて組むものでありますから、これが正しい訳です。
で、リーダーの方の休憩の入れ方が絶妙でありまして、良く最後尾まで目が届いており、馴れているなと感心する事しきりでありました。
しかも、休憩の合間に地形やら、樹木の話しやら、しょうもない駄洒落なども織り交ぜまして、最後尾を待っての休息である事を意識させないのは見事でありました。
私が先頭をとったらたぶん、年寄りはぶっちぎりで置いて来てしまう事でありましょう・・・気が付けば私独り、みたいな。




 さて、本日は快晴でありまして、冬山とは言えない状況で、気温も雪の状態も正しく春山でありました。
で、気温は高いんでありますが、歩くペースがとても遅いので私は体温が上がらない訳であります。
いつもと同じものを着ていて、しかもこれだけの晴天で日差しを浴びているのに薄ら寒いと言う、ちょっと困った状況でありました。
そこで気が付いたのは、山で行き会う人達の多くが、どんな天気でもストームジャケットを着込んでいるのですが、ゆっくり歩くと汗はかかない、と言う事であります。
成る程ぉ・・・山中に親の敵でも探しているような早足で駆けずり回る私のペースは、良く無いのでありますね、たぶん。
そんな訳で、もともと標高が低い割りに距離がありますから、傾斜は緩いのでありまして、登りで汗をかけない訳です。
私はウインドブレーカーを脱いでしまったので、冷えきらない様にと、急な斜面を見つけては無駄に急いで登って体温を上げるのでありました。




 本日目指している花染山には夏道の登山道はありませんで、積雪期限定の山であります。
と、言う事は、登山道も無く、案内やガイドブックも無い訳で、この様なチャンスが無ければなかなか取っ付けない山であります。
そう言う意味でも本日のお誘いは絶好の機会だった訳で、懐の深い船形山系を安全手軽に楽しめた訳であります。
もっとも、それ程複雑な山でもないし、標高が低いのでシルバー世代の多いパーティーでも難なく登れてしまう訳です。
面白かったのは参加者の装備であります・・・そのまんまヒマラヤへ行けるタイプから、長靴にワカン締めまで、千差万別でありました。
足元の登山靴も、どうみても雪山には無理っぽい物を履いていた人が見受けられたのですが、後で自己紹介のときのお話から、雪山が初めてと言う方がかなりの人数居たと言う事でありまして、納得であります。
立ち聞きなんですが、イタヤカエデの枝を曲げて自作でワカンを作ったと言う爺様が居りまして、歩いていて壊れやしないかと、一日中それが心配であったと話しておりました。
そして、35人中20人程はワカンを履いていた訳ですが、それの10本は、昔ながらの木製のワカンでありまして、人によっては麻ひもで絞めておりました。
これだけ高齢者が集まると、30年前なんて言うのは昨日の事でありまして、私なんぞはまだまだ若手なのであるなと、認識させられる訳であります。




 八時半に内水面水産試験場を出発しまして、山頂に到着したのは十一時半でありました。
3.6キロを3時間でありますから、相当なスローペースなんでありますが、これで予定通りだそうであります。
私は道々、今後の参考にと、船形山ベテランの人を捕まえては、あの尾根はどこへ出るとか、向こうの沢沿いはどうだと質問する訳です。
で、話している最中に驚いたのは、真冬でも船形山頂のアタックを日帰りでこなしていると言う事でありました。
うーん・・・往復15キロの雪山を日帰りで攻め落とせるものかどうか・・・3月からの話しではないのか?私の言う冬である1月〜2月の、いわゆる厳冬期はどんなもんなんだろう、と思ったのでありますが、黙ってました。
で、稜線には其れなりに雪屁なんかも張っていて、へぇー標高の割りに風が通るんでありますねぇ、と驚いたりして楽しいんでありますが、まず、天気が良くて良かったなぁ、であります。




 さて、山頂からちょっと下りまして、広い稜線の上で昼飯であります。
私の山行は、特急で攻めて下って、昼飯は温かいラーメンを車の中で喰うと言うパターンなので、普段の山行では、歩きながらおにぎりを齧ったりしている訳であります。
しかし、本日は、世話人のB氏やその他と輪になって座って昼食をとった訳であります。
で、B氏も他の人達も、中々立派な食いものを持参している訳でして、おにぎりをゴロンと2つ取り出した私は、何だか一寸格好悪かったんでありますが、まあ、こんな所もこれからは見栄はってみようかと、勉強になった次第であります。
それにしてもB氏は、水とコンパクトストーブを持って来ていまして・・・いや、缶ビールまで運び上げていまして、私も軽く一杯いただいた訳です。
で、コンパクトストーブでレトルトのシチューを食うのだとか、コーヒー入れるんだとか・・・まるで私のキャンプの晩飯のような昼食なんであります。
成る程なぁ・・・ここに参加の皆さんにとってこの山行は、相当な楽しみなのであるな、と気付いた訳であります。
私の様に始終暇で、だらしなく暇つぶしに山に登るのとは訳が違うんでありますね。
私と言えば、なにをやっても突っ走るようにしてのめり込んでは息切れするまで全力疾走な訳です。
程々に楽しむとか、こんなもんでしょう、と言うさじ加減が出来ないバカでありまして、そう言う意味では楽しみ方を知らない可愛そうな人なんでありますね。




 さて、昼飯も食い終わった所で、声がかかり、参加者が輪になって、事務局の方々から、会の活動の説明やらがあり、また、参加者それぞれの自己紹介と本日の感想などを述べる事になった訳であります。
まあ、この程度の顔通しは必要な訳でありますが、自己紹介を聴いてちょっと驚きでありました。
幾人かの人達は、それなりに自然保護などの団体に所属されて、それなりの肩書きなどもあるようでして、立派なスピーチなどされる訳で、そう言う物に縁のない私は、何だかちょっと肩身が狭くなるのであります。
まあ、他人様と関わり合っている以上最低限のそれは必要なのは私だって分るんでありますが、でも、昼飯喰って伸び切った腹を抱えてでは、堅い話しは耳に入り難いんであります。
で、他人の名前を覚えられない私は、本日記憶できた方は、約3名だけでありました。









 帰り道と言うのがそうなのか、昼飯を喰うとそうなるのか分りませんが、参加者は相当に自由な雰囲気で帰り道を行く様になりまして、ばらばらに歩いて行く訳であります。
まあ、そう言う集まりなんであるな、と、言うのは先ほどの自己紹介からも伺えた訳でありますので、それで良いのでしょう。
私は、ふだんは滅多にみられない方向からの北泉ケ岳の勇姿に見とれつつ、独りのんびりと歩く訳であります。
すっかり春山の様相で雪が腐って滑らなくなった急斜面では、結構な年齢の方々が、まるで子供のように尻滑りをして転がって行くのが見えるのであります。
うーん・・・やっぱし皆様、環境保護にも自然の成り立ちにも興味は有ると思いますが、しかし、山で遊ぶのが好きなんだなぁ、と言う姿であります。
当然自分もシリセードをやるんでありますが、周りに人が居てやる雪遊びは、たった独りで滑り降りる時の何倍も楽しいのであります。
ここで、集合や解散や難しいお話はちょっとアレだし、難いルールなんかも私には向いていない、と思いつつも、この楽しみを味わう為に、必要な事なんだろうなぁ・・・と、団体志向に傾きつつ有る自分がニューッと現れたのであります。




 お前のホームグラウンドはどこだと問われれば、迷わず、北泉ヶ岳だと答える訳ですが、これの全体を眺められる所は少ない訳であります。
そして、どんな高い山でも、より高い山から見下ろされると小さく見えてしまうんでありますが、花染山の稜線から眺める北泉ヶ岳の姿は秀逸でありました。
この場所以外からは高すぎたり低すぎたり、他の山が邪魔になったりで、全体像を仰ぎ見る位置と言うのは無いだろうと思う訳です。
まあ、元々大した山でもないので、だからナンだと言われれば、はいそうですかと引っ込む訳ですが・・・。








そして、もう一つ、眺めて好きな山が薬莱山であります。
平野の中にのそっと現れた姿が、なんとなく好きなんであります。
しかし、加味富士と呼ばれるとか、名前の由来が天平の頃に薬師がどうのと言うのはちょっとナニでありますが、日本全国の山や温泉には、薬師様・弘法様はなんぼでも居る訳であります。
私は写真を撮りながら、ほとんど最後尾をだらだらと、木々など眺めながら付いて行く訳であります。
すると、夏道のない山らしく、太いブナの木には熊の木登りの爪痕があったりして、山の深さが伺えるのであります。
本日、ここに参加しなければ花染山はもっと遠かったろうと思うのであります・・・やっぱり、これからは、団体と個人を上手に使い分けでしょうか?
しかし、緊張感の欠片も無い雪山と言うのは、心底楽しいもんであります・・・まあ、強いて言えば、達成感は希薄ですけれども・・・。



  では、また。

では・・・また。


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