写真入り・山日記

    

   〜船形連峰 三峰山 1417m〜

  2010年02月24日  快晴 

 満を持しての泊まりの山行であります。
昨年の12月1日に右足首を捻挫をして以来、泊まりがけの山行は出来なくなり、悶々としてい訳ですが、この度、お日柄も良くそろそろ良かろうと言う事で計画したのが三峰山アタックであります。
足が本調子なら早朝出発で船形山まで行けるかとも思ったんでありますが、まあ、今回は久しぶりに重い荷物を背負って行くと言う事で、少し用心して三峰山までとしてみた次第であります。
24日、時間配分から考えて9時に歩き出せば十分と言う事で、泉ヶ岳スキー場の駐車場に8時55分着で、9時10分のスタートで有りました。
背中の荷物の大きさから「トレーニングですか?」とか「縦走ですか?」と声を掛けられるのでありますが、中途半端に三峰山までしか予定していないのに皆さん船形まで行くものと勝手に決めてアレコレ話す訳であります。 ちょっと三峰山までとは言い難くなり、ええ、まあ、えへへへ、と誤摩化しつつ軽荷の登山者にズンズンと追い越されるのでありました。
本日の背中の荷物は、テントと水を背負っている関係から19キロになっているのでありますが、まあ歩き始めはそれほど重いとも感じなかった訳です。

 なんだか途中から追いついて来た登山者が居たのですがこの人を先に行かそうとして私が止まると彼も立ち止まる訳です。
ラッセルなど無用の踏み固められた北泉までのルートで、何故に大荷物を背負ったおっさんにペースを合わせるのか不思議でした。
その内アレコレと話しかけて来て、いつの間にか連れ立って歩いている風になってしまった訳です。
しかし、この人、急登でもなんでも気楽に話しかけてくるもんですから、こっちは喘ぎながら、へぇ、とか、ふうと返事をするのもやっとな訳であります。
北泉岳、頂上手前のキツイ登りで話し掛けられ続けた時に完全に黙ってしまったのは、ほとんど怒りからでありました。

   




   北泉ヶ岳山頂到着は11時50分・・・2時間40分も掛かったのは荷物の重さが理由でありましょうか?
いやはや、こんなペースではとてもじゃ無いですが船形山なんぞ無理も良い所であります。
小屋泊まりを当てにしてテントを持たずに居たら焦るんですが、本日はしっかりとヤドカリな訳でして、何処ででも、嫌になった所が本日の終点と言う事で気楽なもんであります。
一応目標としては長倉沢が三峰山の尾根と出会う所の按部と言う事でありますが、まあ、何処に居ても3時になったらそこでお終いと言う事ですね。

 北泉ヶ岳から大倉尾根を下り始めて間もなく、雪に隠れていた木の枝に足を取られてひっくり返り頭から雪に突っ込んだのであります。
20キロ弱を背負って前のめりに倒れ込むとちょっとやそっとでは起き上がれないものであります。
手を突いて起き上がろうにも相手は雪ですからどーにもならない訳です。
無様だなぁ、と思いつつ、どうやったら起き上がれるか思案した結果ザックを外すのが良いと思ったんでありますがこれが簡単には脱げません。
ええい面倒くせえ、と、ストックをバッテンにしてそこへ手を置き、力任せに身体を持ち上げるとなんとか浮いたのであります。
すかさず膝を立てて、と思ったらスノーシューが雪に刺さって足が出ませんで又もや倒れ込んでしまいました・・・此処で死ぬのか?無様すぎるぞ・・・顔が雪に埋まって窒息死・・・雪崩でもないのに雪山で窒息し・・・無様すぎる、不名誉すぎる・・・全身の力を振り絞り、むぉぉぉーっと吠えながら立ち上がったんでありますが、本日のエネルギーは此処で使い果たしたのかも。

  写真・・・熊の平の先のピークから見た北泉ヶ岳・・・たぶん。

   




 まったく、雪山と言うのは油断のならない相手であります。
こんな暖かく快晴で地図もコンパスもGPSも無しで歩いて行ける程快適だと言うのに、ちょっと気を抜くと窒息死でありますから、ホントーに山は危ないもんです。

 地図的には三叉路の少し手前から尾根の際にそって水源方向に下ってみたんでありますが、すると、ワカンの足跡を発見しました。
へえーっ、暖かいとはいえ真冬の長倉尾根を単独で行く人が他にも居たんだ、と、ちょっと驚きであるとともに、足跡だけの登山者をアレコレ想像などして行くうちに熊の平の標識に出ました。
この足跡は熊の平の先のピークで戻っていたようであります。

 1時少し前・・・昼飯時だな、で、休憩タイムにしてみました。
ザックを下ろしメッシュポケットに差し込んであったお茶のテルモスを見ると、無いのであります。
ウヒャァ・・・先ほどの格闘の時に雪にかすめ取られたのは間違い無い訳です・・・ガァチョーン、と。

 お茶が無いとなるとお昼に予定していたおにぎりは食べたく無いな、と言う事で、カレーパンを一つ齧り、この度は始めて持ち込んだアミノ酸系のゼリー(ダルマ薬局で特売で安く売っている物)を一袋チュルチュルと吸い込みまして、昼飯は終了でありました。

 写真・・・本日のお宿 エアライズ1に冬用フライシートを被せてみました






   お茶のポットを無くしたのは痛手でありました。
何分にも携帯用の小さな水入れはアレしか無かった訳で明日の三峰山アタックの時の水はドーしようかと・・・。
幸いにも持参したビールが350ミリリットルのスクリューキャップなのでこれを代用した次第であります。
熊の平からはダラダラと緩い登りでありまして体力的には大したコースではないのでありますが、雪が良く無い訳です。
ずぶずぶに腐った雪が重く、しかし、積雪はたっぷり有るので踏み込めば沈む訳です。
踏み込んでスブっ、持ち上げると濡れ雪がズシッと来て、一歩一歩が重たいのであります。
歩きながら「ナニが船形山だよ、これじゃぁ今日中に三峰だって届きゃしねぇー」と自分を罵りながら歩くんですが、気温の高さも相まって全身汗だくでありました。

 3時ちょうど、三峰山への急な登りが始まる、地図では長倉尾根と長倉沢のぶつかる所、1160メートル地点に本日のお宿を設営であります。
今時のテントは設営が簡単でありまして、ホントーに独りで5分で立ちます。
まあ、雪面を踏みならしたり、風よけの雪の壁を形だけでもこしらえたり、特設トイレを儲けたりしているとあっと言う間に日没で、晩酌の時間となる訳でありますが・・・。

 写真・・・暇なので雪を溶かして無駄に水を作っている所・・・一見きれいに見えるけど






 いつもの事では有りますが、山で一人きりの夜と言うのは何もする事が無いのであります。
晩飯を食い終わったら、精々がラジオを聞きながら一杯やる程度が最大の楽しみで、この日もその予定でありました。
そんな訳で、携帯ラジオを取り出しまして、スイッチを入れますと、すぐにウンともスンとも言わなくなる訳です。
故障と言うには、一瞬音が出る訳で、これは電池が消耗し切ったのか?・・・昨夜点検してある訳で、荷物の中で何かの拍子にスイッチが入っちまって点けっ放しだったのか?と。
まず、ナンであれ、現実にラジオは鳴らない訳で、予備のバッテリーと言っても単四は持っていないし・・・ウヒョォー、閃いた。
ヘッドライトの乾電池が単四だったな・・・今夜は月夜で外はとても明るいし、手元を照らす懐中電灯はもう一つ有るし・・・で、試してみた訳です。
おお、ちゃんと鳴るじゃないかぁ・・・ああ良かった、と安心して焼酎が飲めたでありました。

 気温がとても高く決して寒くは無いのですが、本日は軽量化の為に敷物はエアーマット一枚でありました。
しかし、現代の最新装備のエアーマットですが、雪面でこれ一枚では下からの冷え込みが厳しい訳です。
ナンだかんだ言って昔ながらの銀マットの方が断熱効果には優れるようでありまして、ケツから腰の辺りだけが妙に冷える訳です。
寝る時にはケツの下にフリースのジャケットを敷いて凌いだのでありますが、これは今後要再考の懸案であります。

 写真・・・真東が北泉ヶ岳で、朝日が昇って来ました・・・6時過ぎ頃でした。

 




 2月25日 快晴

昨夜の就寝は8時で、今朝の一発目の目覚めは3時でありました・・・ちょっと早過ぎんな、と、再び寝る。
で、二発目に起きたら既に5時半でありました・・・まあ、急ぐ旅でもない訳だし、と、もそもそと朝飯の準備等始めました。

 目覚めた時の感覚と言うのはかなり正直な訳で、相当に参っているなと言うのが起きた瞬間に感じ取れたのであります。 うーん、ドーすっかなぁ?ここまで来て登らないと言うのはちょっとなぁ・・・しかし、食欲も無いとはなぁ、と自問自答の朝で有りました。
問題なのは食欲の無さでありまして、これは由々しき事な訳です。
古い山の歌にも・・・「食わなきゃ死ぬぞとどやされる」と言うのが有る程に、山では食わないと持たないのであります。
さて、手持ちの食い物の中に食欲をそそるものは・・・余り無いな。
ミソラーメン?醤油ラーメン?鍋焼きうどん?牛丼?親子丼?カレー?・・・ああ、昨晩食っちまった「なっとくのクリームシチュウ」が食いたい・・・しかし、随分無駄に持ち歩いているもんですね、羅列して吃驚。
で、結局は鍋焼きうどんに餅を入れて食ってみたんでありますが、鰹のだしと言うのは食い始めれば良いもんでありますね。
ラーメンのように喉に引っ掛かって呑み込めない事も無く、つるつると入る訳です・・・これは強力な武器になるな、と新発見であります。






  そんな訳でアレコレしているうちに7時10分の出発で有りました。
持ち入りうどんとコーヒーで随分と心身ともに良くなった気がしたので、目の前の急登に取り掛かりであります。
地図では三峰山までの距離は1.2〜1.3キロと大した事は無く、三つのピークのうち最初さえ登ってしまえば後は眺望の良い快適な稜線ある気になるはずであります。
おっさんの余裕を持った時間割でも、山頂には8時半頃着く予定であります。
危ない所は特になし・・・強いて言えば最初のピークに雪庇が有れば多少要注意でありますが、吹雪じゃ有るまいし、快晴で丸見えの日に雪庇に近づくバカは、おっさんくらいしか居ない訳です・・・?。

 案の定、最初のピークを越えて二つ目に行く間の、夏道でも狭い稜線の間に雪庇が出ていましたが、ほとんど落ちた後で危険は有りませんでした。
しかし、この辺りは365度くらいの展望で、割と狭い稜線を行くので結構な高度感が有り楽しいルートであります。
ただし、これからは雪が溶けては凍るのを繰り返すと思いますからワカンやスノーシューだけでは厳しくなるとおっさんは思います。
3月からはアイゼンとピッケルをお手元にご用意の上行かれた方が身の為ではないかと思う次第であります。

 それにしてもこの暖かさは何だぁ、でありまして、2月の稜線上だと言うのに雪が凍っていないんであります。
パリパリにクラストした雪面をパリッ、ギュッと踏みしめながら高度を上げて稜線に出ると北西からの烈風に叩かれながらも歯を食いしばって山頂に立つはずでありました。
しかし、本日は心地よい南東の風が暖かく、締まらない雪面をスノーシューでズボズボとお散歩気分で上り詰めて行く訳であります。
厳冬期に登った意味が無くなっちまったよ、と。

 写真・・・上から見たらテント場は馬の背だったんでありますね・・・ドーリで風が通った訳だ。










  歩き始めからすぐ急登では有りますがずり落ちるようなものではなく、スノーシューの登坂機能を使うとちょうど良い按配の傾斜です。

三峰山の三つのピークの最初のピークの手前に、もう一つ、地図では目立たないけれどもピークがあって、そこからの北泉ヶ岳の眺めはけっこう好きです。



 写真・・・小ピークからの北泉ヶ岳・・・この下は4月でも雪渓だったような気がします。

 














  三峰山の山頂が見えて来ました。
望遠で引いてますので近く見えますが、まだ最初のピークを越えていません。
稜線に見える足跡はカモシカのものだけです。
ここから少し行くと真ん中のピークに邪魔されて見えなくなります。















第二ピークへ向う稜線上・・・たぶん。
ここが一番高度感が有りました。
最高の天気だった為に緊張感の欠片も無かったのでありますが、吹雪かれればそれなりに厳しいのでしょう。
当初の計画では船形山まで行く事も考えていたので、テント場は最低でもここまで前進する予定でした。
しかし、知らないと言うのは恐ろしいものであります。
こんな吹き曝しではとても幕営は無理でした
雪洞を掘ればと、言いますけど、今時の軽いジュラルミンの携帯スコッフで締まった雪に掘るのは至難の業です
 














山頂到着は8時35分でありました。
稜線に出てからの眺めは言葉では現せない絶景で有りました。
三光の宮は飾り物の金属が光って見え、特徴的な地形と相まって、初めてでしたが直ぐに分かりました。
船形山まではここから3キロ余りで、登りも大して無く、直ぐに行けそうであります。
しかし、本日は好天でありますから気軽に行けそうですが、一度崩れたら稜線上は厄介であります。
もしも行くのであれば、2泊3日で最後を旗坂に降りられたら最高なんですが・・・。















 真ん中のピークから最初のピークへ続く稜線とその先の長倉尾根、北泉ヶ岳と泉ヶ岳。














 三峰山から下山途中、振り返ってみたら稜線上に自分の足跡が残っていまして、ちょっと感激しました。

 ここからテントまで帰り着いたのが9時半でありました。
急いで帰る理由も無いのでのんびりと飯の支度などしつつ、寝袋や濡れたものを日干しにして乾かすなどしてみました。
しかし、おっさんは大して多くも無い冬山経験では有りますが、2月にこんな事は初めてであります。
なにしろ上半身裸でも寒く無いんでありますから驚きです。

 さて、ナンボゆっくりしていたくても帰らなくてはならない訳であります。
ボンカレーとピーナッツバターのパンと、練乳のたっぷり入った死ぬ程甘いコーヒーを飲みまして、テントを撤収し、11時に出発でありました。

 晴天の雪山で自分のトレースを辿るだけの道は楽チンであります。
特に水源まではほとんど緩い下り道でありまして、何事も無しでありました。
あっ、北泉の下で落とした水筒を拾って行かなくちゃな・・・あれが見つかったらお茶が飲めるぞ、と。
そんな事を考えながら熊の平のピークの手前まで来ると真新しいワカンの足跡が、どこへ行くつもりなのか長倉沢の方へと下って行くのが見えた訳です。
うーん・・・どー考えても最後は断崖みたいな坂を転がり降りないと氾濫原にも林道にも出られないと思うのだが、おっさんには見えないルートが有るのだろうか?不思議でありました。

 で、水源辺りで登りに入る前に少し腹ごしらえ、と言う事で、先日好調をもたらしたエネルギーチュウチュウと高カロリービスケットなどを食べて小休止でありました。

 緩いとは言え、ずーっと下って来た為か右足がかなり痛くなって来ており、時折角度に依って悲鳴を上げたくなる場面など出て来た訳であります・・・まだまだ本調子ではなく、極端に下りに弱いな、と。

 さて、最後の踏ん張りどころがここから大倉尾根までと、その先の北泉ヶ岳までの登りであります。
流石に二日目は疲労が溜まっているようで、足が重いのでありますが、下りの激痛に比べればまだ救われます。
で、予定通りにお茶の水筒を回収した訳でありますが、まだ薄らと暖かいお茶に口を付けた途端に封印していた喉の渇きが溢れ出し、一気に半分程も飲んでしまったのであります。
テント場から持参した煮沸した雪解け水は美味く無くて何となく飲みたく無いものでありました・・・練乳入れれば良かったな。

 北泉ヶ岳の山頂到着は2時でありました。
もう登山者の居る時刻ではないので静かでありますが、踏み固められた雪の状態から相当な人が登って来た事が窺える訳です。
と、言う事は、滅茶苦茶な踏み痕でスノーシューは相当に歩き難い事が想像できるのであります。
果たして、危惧は大正解でありまして、ズッポリハマった足跡やらワカンやらスノーシューが好き勝手に踏み固めて歩いたとレースは悲惨でありました。
おっさんは痛い右足を庇いながら、なるべく親切の上を拾って歩く訳ですが、時にグキっとやる訳であります。
ギャオーっと大きく一声吠えてから、涙など一筋流しつつ、それでも行かねばならない訳であります。
こう言う時にはおっさんの身体的特徴であります「自己修復機能」は便利であります。
腫れて痛くなった足首に秘密の呪文を掛けるとまた歩けるようになる訳であります。
ええっ、?秘伝の呪文を知りたいと?・・・教えましょう・・・「痛いの痛いの飛んでけぇー」と。

 やっと水神に出た時には全身ボロボロでありました。
ここからは踏み痕が堅いのでスノーシューをザックに括りつけたんでありますが、やっぱし良く滑る訳です。
おっかなびっくり、そろそろとストックに縋り付きながら降りて来まして、駐車場到着は午後4時ちょうどでありました。

 いやぁ、船形山までなんて冗談じゃない・・・やっぱし三峰山にして大正解でありました、と。



では、また。

では・・・また。

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