よたよたと、山登り


    No.64

       

    鎌倉山

       グリグリでグリグリする・・・?

     5月27日 曇り/霧雨/晴れ

     とどまる所を知らない馬鹿おやじは、とうとう岩登りを独りで始めちまったのであります。
    これは、今更良い歳こいてチャレンジしなくても、と言うよりは、分別ある大人ならば大抵はやらないだろうと思う遊びであります。
    まっ、しかし、そこがおっさんの、おっさんたる所以な訳でして、なんて言う事は無い、筋金入りの馬鹿と言う事でありますね。
    しかし、これもアレです・・・ナント申しましょうか、失った時を取り戻す為の行為とでも言いましょうか、やり残した事は片付けないと冥土に行き難いと言うことで、避けては通れない不思議な縁を感じる訳であります。

     はいっ、前振り終わり
    ビンボーおやじが一年がかりで買い揃えた最低限度の武器

     まあ、おっさんの心境としてはほとんど自殺する覚悟で当たっている訳でありますが、レベルとしては入門クラスでして、本格的クライマーに見られたらちょっと赤面的なお遊びなんであります。
    しかし、アレです、誰だって最初は初心者なんですから、下手を恥じる事は無いのだと、勇躍鎌倉山へと乗り込んだ訳であります。
    もっとも、雨上がりのぐずついた天候で、しかも平日の木曜日、マイナーな鎌倉山に来る人はほとんど絶対と言える程に居ない訳で、おっさんの貸し切りでありました。
    で、おっさんがクライミングの手ほどきを受けているB`nutsにて鎌倉山でおっさんが登れそうな唯一のコース「初心者ルート」の説明を受け、書いてもらったルート図を元に場所を探した訳です。
    すると、ここしかないよなぁ、と言う見るからに難度の低い、そうですねぇb`nutsの壁で言ったら5.7でしょうか?そう言う壁とも言い難いようなスラブに当たった訳です。
    しかし、それはアレです・・・単独で、ハーケンを使って確保点を自分で作りながら登るとなると話しは違う訳です。
    なんたって、落ちられない登りをする訳でありますから、安全マージンを掛ければ今のおっさんにはこれが適正でありましょう。

    これは降りて来た所ですね。すでにロープがかかってますから。

     さて、ここを登るぞと決めてから、おっんさは段取りを考えました。
    ビレイヤー(下で確保してくれる人)が居ないのでありますからロープの末端をしっかりした物に縛り付けなければならない訳であります。
    その上で、グリグリと言う道具を使って登るのでありますが、それは上にはロープは伸びるけれども、万が一落ちてテンションが掛かった時には自動で停まると言う優れものなのであります。
    で、上のお写真で分かりますか?スリングを岩に回して二カ所から支点を取ってみた訳です・・・まっ、こんなもんだろうな、と。
    しかし、おっさんが落ちて大きな衝撃加重が掛かった際にこんな岩が転ぶと言う事は無いのだろうか?と、思わない事も無かったんですけれども、取り敢えず落ちない予定なので大丈夫だろうな、と、至って能天気であります。

    これもトップロープ出でますから二度目か三度目ですね

     さて、足場はしっかりしているし、傾斜も大した事無いので登るのはまるで梯子か階段を登るように上がれる訳であります。
    しかし、ある程度登ってしまって下を見ると、けっこう高い訳でありまして、怖くなっちまうのであります。
    うひゃぁー・・・仮にここから撤退となったとして、クライムダウンって言うのかな?・・・要するに降りるんですけど、絶対的に無理だよな、と。
    しかし、無理だとなると降りられない訳で、家に帰れないし・・・ドーする?これって、ピンチかぁ?
    昔々にもこんな事が何度もありました。
    一番壮絶だったのは、小学生くらいの時に八木山の竜の口に化石を採りに行って崖をよじ上っちまった訳ですが、登ったきり降りられなくなっちまった訳です・・・まあ、この時も一人だったんで、知恵を使ってなんとか降りたんでありますが、ドーやって降りたのか記憶に無いのであります。
    で、今回、物の見事に行き詰まったと思った時に、あの竜の口の崖を思い出したのであります。

    行き詰まったのはもっと上ですからね、ここなら薮を掴んで降りますから

     で、おっさんはピキーンと閃いた訳です・・・こう言う時こそハーケンの出番なんじゃないのか?と。
    おおそうだ、確保点を作ればロープで降りられるし、落ちてもここいらで引っ掛かる訳だから上に行けるなぁ、と。
    と言う事でおっさんは下で練習して来たハーケンを打つ事にした訳でありまして、塩梅の良さそうな岩の割れ目を探した訳であります。
    すると、おお、なんとぉー・・・やっぱし万人がここいらで一発支点を取りたい所のようでありまして、残置のハーケンが打ってある訳です。
    が、しかし、それは結構年期の入った代物でして、うーん、全面的に信頼できる相手ではないな、と言う感じの物でありました。
    おっさんは一応、一通り教科書を読んで来ましたので、型通りにハンマーでハーケンと回りの岩を叩いてみまして、キンキンと堅い音がするのを確かめた訳であります。
    まっ、落下して衝撃を掛けなければ、下降の支点には耐えるだろう、と言う事で、更なる上を目指したのであります。

     
    これはデジカメの動画機能をセットして登って撮ってキャプチャーしたものです。

     さて、岩は概ね乾いているんでありますが、所々にある草っ葉やらが濡れていてクライミングシューズの底を濡らすので、おっと思うと滑ったりする訳です。
    で、先ほどのハーケンから更に3メートル程登って、そろそろややトラバース気味に枯れ松に向おうかとした時に、足場にしていた岩がグラっと来たのであります。
    ウヒョォー・・・ヤベェヤベェ、と、足場を変えて足許を見ると・・・見なきゃ良かった・・・足がすくんじまった。
    これが思ったより相当高く見える訳でして、おっさんの本日のロープ、35メートルで足りるのかな?と心配になった訳です。
    で、またもやアレです・・・どこかに支点を取らないと、ここで撤退と言っても降りる事は出来ない訳です。
    よしっ、んじゃぁいよいよ自前のハーケンをぶち込んで確保であるな、と、闘志を燃やしつつ岩の割れ目を物色しますと・・・またもや残置ハーケンが。
    うーむ、これはアレだな、おっさんのクライミングセンスと言うのは相当に良いな、ヤバイと思った所には必ずやハーケンが打たれていると言う事は、感覚的には当たっていると言う事だな、と。
    しかも、こちらのハーケンは結構新し目でありまして、見た目からも信頼して良さそうな頼もしさを持っている訳であります。
    が、しかし、おっさんもだてに歳を喰っている訳ではないので見た目だけでは信じられませんから、ハンマーで叩いて音を聞く訳であります・・・良い音でした。

    よしっ、取り敢えずここから懸垂で降りて、気持ちを立て直してもう一度登ろうと、この残置ハーケンに命を預ける事にした訳であります。
    まあ、度胸を決めてぶら下がっちまえば降りるのは呆気ないもんでして、あっという間であります。

    さぁ、今度こそ終了点を目指して・・・行くドォー。

     お茶など飲んで一息入れてよっしゃぁ、今度は終了点まで行くからな、と、一人きりなのに声に出して行ってみる訳であります。
    で、さっきの支点まではトップロープな訳で、グリグリを手繰り上げつつ、適度にテンションを掛けながらあっと言う間に登っちまった訳です・・・いや、実際レベルは超低いんですから。
    で、さっきはあんなに怖かったのに、二度目と言うのはお気楽なのでありましょうか、遠くに見えた終了点が直ぐそこに見える訳です。
    これはもらったな、と言う事で、慎重に、しかし大胆に、おっかなびっくり登って行く訳であります。
    いや、最後の確保支点まで3メートル以上有りますから、落ちればそこそこの量になる訳で、それはまずいのであります。
    で、枯れ松に巻かれてある古びたスリングを掴んだ瞬間に、やったぁー、とガッツポーズであります・・・おい、手を離しちゃ危ないだろう、と。
    で、すぐさまヌンチャクで安全確保をして懸垂下降の準備であります。
    ATCもぶら下げて来たんでありますがグリグリで登って来たんだからこれで降りれば良いな、と言う事で、確実な支点を何処に取るか、と見回すと・・・あれまあ、立派なボルトが打ってあります。
    へぇー・・・練習用に作ってあるんだなぁ、と、前人の温かい心遣いに感謝しつつ、有り難く使わせて頂く事にした次第であります。
    まあ、こう言う一見確かに見える物が絶対に抜けないのかと言ったらそれは分からないのでありますが、そこまで心配すると切りがない訳で、バックアップは取らない事にしたのであります。

    これは国道から超望遠で撮った画像・・・凄い解像度です

     さて、初めて自分で全部やる訳で、手順を間違って落っこちても誰にも文句は言えない訳であります。
    で、支点は二つありまして、一つが枯れ松に巻かれている古いスリングであります。
    もう一つは、ボルトと両脇の古いカラビナに6ミリの細引きをダブルで掛けてある物、であります。
    うーん、悩ましいなぁ・・・どっちも信用ならない雰囲気があるなぁ、と言う事で、自前で支点を取る事に。
    一番良いのは残置ハーケンとボルトにスリングを通してカラビナを掛けてロープを通す、なのでありますが、これは結構な原価が掛かる訳で、ビンボーなおっさんとしてはロスは最小限にしたい訳です・・・いや、2000円ケチって命落とすのか?と言う声も有りましょうが、これがケチの真骨頂なんでありますよ。
    で、おっさんはボルトを信頼してこれにカラビナを掛けロープを通した訳であります・・・ブラックダイヤモンドの一番安い税込み945円を寄付であります。

    本日のお遊び場所の全体像はこんな感じです

     さて、ボルトを信用して体重を預けてスルスルと懸垂下降・・・じゃダメなんですよ。
    登りで使ったヌンチャクを2本回収しなくてはならない訳で、トップの支点から斜めに行かなくてはならない訳です・・・これが一番難しかったんでありますが、まあ、命綱がついている気楽さからスリルをタップリと楽しめたのでありますが。
    で、2個目のヌンチャクを回収したら、斜めに出ているロープに振られる訳であります。
    グリグリのロープを手繰ってギッチリとテンションを掛け、少しづつ垂直方向へズリズリと寄って行って、最後は気持ちよく、するりと下降であります。

     まあ、アレです・・・本格的なクライマーから見たら長いロープを着けた猿回しのように滑稽な姿だろうと思うんでありますが、おっさんはこれで精一杯で、しかも、十分に楽しいので、誰がナント言っても大満足なのであります。
     

          

     この話 完


    山の状況、情報は適当ですので、ご注意下さい・・・


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