雨あがる


金田鉄雄(2001年3月13日)
黒澤が監督しない黒澤作品であるが、作品全体に見られる「色」はまさに黒澤であったと思う。個人的に『赤ひげ』も大好きな作品なので安心して観ることができた。「性善説」に基づいた作品は本来好みではないのだが、黒澤&山本の作品は別格だと改めて認識した。
今回の日本アカデミー賞の大部分をさらったのもうなずける。
★★★★☆
とみい(2000年8月19日)
★★。
NHKで1時間ドラマでできそうな内容。
いい話なのだが、映画にするということのエネルギーを感じない
(パンちゃんの評を読んで、なるほどと思った。脚本にすべて負けている)。
演出には疑問が残りました。
宮崎美子のテーマともいえる台詞のあと、淡々と終わらせるか、ちゃんと殿様においつかせるか、どっちかにせんと。
すごく見ていてもどかしかった。
もう一つ、異論があるかもしれないが、宮崎美子と壇ふみがどちらも同じタイプの「良妻」にみえるとこが、すごく気持ち悪かった。
パンちゃん(★★)(2000年1月23日)
ああ、困ったなあ。なんて書けばいいのかなあ。
ここに描かれている人間は美しい。雨上がりの空を見るような爽やかな印象が残る。
そして、それが実にいやな気分なのだ。
黒沢明の残した脚本の領域を誰も超えていない。脚本を読んだわけではないからわからないが、たぶん脚本通りなのだろう。脚本を大切に大切に映画にしたという感じがあって、それはそれでとても美しい仕事なのだが、やはりいやだなあ、という思いが残る。
映画は脚本があって、監督がいて、役者がいて、(他にもいろいろな裏方さんがいるのだけれど……)、そこにいる人たちが大げさにいえば、一種の自己主張をしながら、共同作業をすることだと思う。
この映画では、その共同作業ということはよくわかるのだけれど、その過程での白熱した戦いのようなものが見えて来ない。
脚本は確かに自己主張しているが、監督も役者も自己主張していない。カメラも自己主張していない。
その結果……。
映画を見終わった時に、映画を見た、という気分ではなく、脚本を読んだ、という気持ちになってしまう。