アントニア


監督 マルレーン・ゴリス 主演 ヴィレケ・ファン・アメーロイ

パンちゃん(★★★★★)
主演女優の迫力に圧倒される。がっしりした顔のつくり。その顔を支えるがっしりした体。何があってもへこたれない、という感じだ。途中で、農耕馬が出てくるが、それにそっくりである。競走馬に比べるとずんぐりむっくりしていて見栄えはしないが、頼もしく、命の力を感じる。ヴィレケ・ファン・アメーロイの体からも、命の力そのものを感じる
その彼女を中心に、様々な人が集まり、命が生まれ、死んで行く。彼女から始まる女性4代の話なのだが、そこで起きること全てを彼女の肉体の力が統一し、輝かせている印象がある。彼女に触れることによって、小さな村全体が変わって行く。その変化の感じがゆったりと、楽しい。
彼女の肉体を見ていると、生きるとは、他者を受け入れ、他者の力を育てて行くことだ、ということがよくわかる。農夫が種をまき、育て、収穫することと、それは似ている。そして、そのとき、育つのは野菜だけではない。それが根を張っている大地そのものも育っている。彼女に触れ、村人がこころを豊かにし、健やかに育って行くとき、大地である彼女自身も、より豊かに育って行く。栽培によって大地はやせるのではなく、栽培によって、大地である彼女自身も豊かになって行く。そんな感じが自然に出ている。
生きていることがうれしくなる映画だ。



PANCHAN world