ある貴婦人の肖像




パンちゃん(★★★★)
ジェーン・カンピオン監督は、女性の苦悩を非常に美しく描きますねえ。「ピアノレッスン」のセックスシーン(靴下の穴に指をつっこむシーンを含めて)のきれいさにはびっくりしました。女性には、セックスシーンがこんなふうに見えるのか、と息を飲んでしまいましたが、今度もすごいですねえ。
男が触れた顎、顎に触れた男の指の感触を思い出しながら、酔うようにして肉体の喜びと苦悩をさまよう時の、ベッドの上の房飾りで額やこめかみを無意識的に愛撫するシーンがみごとでしたねえ。のめり込んで見てしまいました。
女同志の嫉妬や苦悩のぶつけあいにも、男の監督では気づかないような、ぞっとする残酷さが、一種の喜びと一緒に表現されているところが、なんともいえず印象的です。なんとなく、「愛の嵐」(★★★★★)の、割れたガラスビンの上で手を踏みつけるシーンを思い出してしまいました。
最後の、苦悩と、喜びと、脅えのいりまじったシーンもすてきでした。
多少(あるいは、ずいぶんと)男が純粋に描かれている点が不思議でもあります。こんなに女の苦悩の美しさを描き出せる人間が、ほんとうに男を、こんなに単純な存在と見ているのかと思うと不思議になります。


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