S.F.サムライフィクション


いぐち(10月22日)
iguchi@hirai.co.jp
10月18日(日)・18:55・京都みなみ会館・150人くらい 予告編で、谷啓の絶妙な間のタメ方に思わず「クスッ」ときたのは、映画館で僕以外にも少なからずいたけど、公開3週目の日曜の晩にこれだけお客さんが来てることにまずびっくり。 監督のことはこの映画で初めて知って、日本におけるミュージックビデオの監督の第一人者ということで、NHKの「トップランナー」て番組で見た感じでは無邪気な笑顔の道楽者って風で、映画そのものも、こういう映画が作りたかったんだ、って感じの出てる素直な映画でした。 ミュージックビデオの人だから、って決め付けは良くないんだけど、画作りは頑張ってて、広角使って、クレーン使ってと嫌味にならない程度に凝ってました。ヒロインの緒川環は、監督が個人的にファンだったみたいけど、女優をきれいに撮る、ということに気を使ってる感じがしました。クールでファンキーな時代劇、なので人物設定は漫画的に明快。(漫画的=単純というのも変か?)リアリティがないと言われればそれまでだけど、そればかりが映画じゃないし、確信的に嘘っぽいのは好き。主演は”日本最大のギタリスト”布袋寅泰(元BOOWY・音楽も担当)で、演技ということで言えば当然まぁアレなんだけど、その辺は監督も承知で、極力台詞を少なくし(流れ者の剣豪という設定)、存在感を上手く引き立てていると感じた。剣を交えることにしか生きる場所を見いだせない、不器用な男。江戸中期という太平な世の中では、たちすぎる剣の腕は必ずしも糧とはならず誤解や諍いの元となる。 剣の腕のたつ武士が取り立てられない世の中を恨み、思うに任せぬ己が人生に「なぜこうなる」とつぶやく。ラスト、野に埋もれる平和主義の剣豪・風間杜夫(強そうに見えないけど実はすごく強いという設定)に完敗することで、それまで癒されることの無かった乾きがようやく癒され、笑顔とともに「おぬしと出会えて良かった」と言い残し、自ら断崖に身を投げる。 たしかにクサい。しかしやはりカッコイイ。監督は次も撮りたがっている。商業的には回収できてそうなので撮れるだろう。期待と不安は半々だけど、もしかしたら、明快な娯楽映画をコンスタントに撮り続ける、大量動員は無理だけど製作費分は確実に取れる監督になるのかもしれないという淡い期待が優勢。ということで★★★★。 ちなみに吹越満って、ワハハ本舗のロボコップ漫談の人ですよね。劇団ぽい濃い演技も、この映画では笑いに直結して○。TVドラマ「殴る女」でガラの悪い中年ボクサー役で出てて、これも案外いい感じでした。(抑えた演技は出来なさそうだけど。)