ビッグ・リボウスキ

監督:コーエン兄弟 出演:ジェフ・ブリッジス、ジョン・グッドマン、スティーブ・ブシェミ、ジョン・タトゥーロ

ButaーGorila(4月20日)
aiko2@lime.ocn.ne.jp
コーエン兄弟7作目の監督作品。私は「未来は今」「ファーゴ」しか見ていないが、どっちも私にとってあまり面白くなかった。
前者は何か全体のストーリーが、安易で陳腐な感じがしたし、後者はなにか淡々としすぎててつまらなかった。
しかし、今作は、ジェフ・ブリッジズ演じるデュードおろか脇を固める登場人物のすばらしさ!ストーリーの間にちりばめられたユーモラスなセンス!最後、仲間のドニーが死んだというのに感動シーンは一切無し!!
とにかく面白い!!
麗奈(2月3日)
reina@osula.com
見てないんです。じゃあ採点書くなよ、って言われそうですが、ちょっと一言だけね。ファーゴの弁護。ファーゴはあまりの評判なのでバイオレントなのは嫌だなあと思いながら見たんですが、おもしろかったですねえ。とくに、あの訛り。あんな奇妙な話し方の人いませんって。(笑)私は婦警さんがよかったなあ。あんな大きなお腹して殺人現場によいしょよいしょって出ていくあたりがすごく良かった。実話らしく作ったつもりかもしれませんが、あんな実話ないですって(笑)。一応実話かもしれないなんて噂も出てましたけどね。まだリボウスキの方を見てないので、ファーゴの方がよいとはいえませんが、おもしろかったです。リボウスキはロスに住む私にとってどうでしょうね?今度ビデオ借りてきます。
石橋 尚平(2月2日)
shohei@m4.people.or.jp
http://www.people.or.jp/~gokko/index.htm
この映画のDVD(コーエン兄弟のインタビュー付き!)をアメリカから輸入して、年末の時間がある時にもう一度観たんですけれども、一言だけ付け加えておくと、R・チャンドラーの探偵小説もああいう感じですよね。探偵は錯綜するプロットに翻弄されながら、沢山の奇妙な登場人物に遭遇するでしょ。で、読んでて何が何だか分からなくなるでしょ。そして、探偵が殴られて気絶してしまうんですね・・・。ちゃんと、この映画、チャンドラーを下敷きにしているんですね。ニューズ・ウィークの評判は、『ごちゃごちゃ様々な要素を盛り込み過ぎ』ってものなんですけれども、記者の人は体調が良くなかったのかもしれません。そんさんの言う通り、『チャイニーズ・ブッキー』も嬉しいですね。まあ、ちょっと近々そのLAに遊びに言って来まっさ。
パンちゃん(★★★★)(2月1日)
この映画は、たぶん映画観によって評価が完全に分かれる作品だと思う。
映画はスートリーか描写か。
ストーリーと思って見る人には何のことか分からないと思う。分からないから「金返せ」と叫びたい映画だと思う。
描写と思う人間には、これは楽しい。描写を重視する人間には、ストーリーの破綻あるいは中途半端は、気にならない、というか、ストーリーは描写のためにあるのだから完結しなくても気にならない。
私はわりとストーリーを重視する方なのだけれど、ここまでストーリーを脇に押しやってしまうと、コーエン兄弟のやろうとしていることが明確になって気持ちがいい。
この兄弟は、人間存在の充実感を映像として定着させたいのだと思う。
ボウリングのボールのつや、レーンの色、ボウリングをする中年男の出っ張った腹の形、服装へのこだわり、そうしたものに表れる人間性が面白い。
ジェフ・ブリッジスの美意識・道徳観(?)、ジョン・グッドマンのベトナム戦争の引きずり方--ふたりの、けっして溶け合わないのに一緒に生きていくその生き方があらゆる描写のなかに定着している。
ジョン・グッドマンの想像(予想)が全部違っていることなんか、とても面白い。その全部違っているという部分の描写が何ともいえず面白い。間違っているジョン・グッドマンを受け入れるジェフ・ブリッジスの表情、からみあいが面白い。
*
私の感想は、何を書いてあるかわからないと思う。
この映画は、ストーリーとは別のことろで存在するものなので、説明しようとすればするほどわからなくなる。
ある描写の仕方が好きか嫌いかだけが問題であるような映画だ。
こうした映画は体調が悪いときは見ない方がいいと思う。蛇足だけれど。体調が悪いと駄作に見える。体調がいいと傑作に見えると思う。モーツァルトの音楽のようなものだ。
そん(1月25日)
わははは・・・コーエン監督最高!
いいですよ、これは。本物の天才に対して私が色々解説するなんてもったいないっす。
一番ぐっときたシーンはラスト近くに遺灰を(誰のかはないしょ)海に撒くシーン。そうなのよー、生きていくって実はあんなふうにおまぬけそのものなのよー、てな感じです。
すっげえバカな映画なのにすっごく水準が高い。天才と同時代に生きる私はほんとに幸せ者(^_^)
石橋さんと同じく、J・タトゥーロは出番少ないけどそれだけで観る価値ありです。あと、ジャッキーの屋敷のシーンは「チャイニーズ・ブッキーを殺した男」を思い出して嬉しかった。
石橋 尚平(★★★★☆)(11月21日)
shohei@m4.people.or.jp
コーエン兄弟の作品って「ブラッド・シンプル」から全部観てますけれども、個人的にはこの作品が最高だと思います。だけど、この作品、受け付けない人も多い気がします。おっさん達がむさ苦しいし、何が何だかって混迷度が最も高いんだけれども、どこにも行き着かないわけですからね(『バートン・フィンク』は犯人がいたわけだけれども…)。バカバカしいと思う人もいるかもしれない。何が言いたいんだって怒られるかもしれない。だけれども、70年代をひきずった汚いおっさんが、ボウリングに興ずるという構図だけで、すでに映画的なのに、そこからの膨らまし方が凄い。監督本人も言うように、ああいうおっさん達がR・チャンドラー風のハード・ボイルド活劇の複雑で糸口も見つからないようなプロットの中で迷走するわけですね。このアイデアが凄いし、映画をみるとそれをさらに膨らまして演出させています。今までのコーエン兄弟の作品って、「策士、策に溺れる」という点が確かにあって、これまでも「狙い過ぎ!」ってところもあったんですけれども、今回は最初から溺れているというか、現実なんだけれども、何か変で癖の強い人々の世界にどっぷり漬かってみせているって感じがします。その点が最高にいい。同じ誘拐物の前作『ファーゴ』も味があったけれども、あれは実話に基づく形をとって、ドラマでみせようとしました。おかげでアカデミー候補なわけだけれども、私はいま一つ好きではないんです。この人の本領はこっちにあるんですね。奇妙な登場人物、粋なセリフ、そしてひねり、ひねり。このひねりがないと、コーエン兄弟じゃないという感じ。今回はそのひねりに味を添える、土着性というか『変なアメリカ』が、ノースダコタから、ロスの汚いおっさんたちに行ってさらに深まった感じがします。その分、とってもアクが強くなりましたけれども…。誰もが好きになる作品ではないですね。最近、C・イーストウッド(『真夜中のサバナ』)やR・アルトマン(『相続人』)が南部のサバナっていう町を舞台に、こういう味を狙おうとして失敗しているでしょ。この辺のところはなかなか真似できないんですね。『ガンモ』も予告編とそんさんの感想を読む限り、「嫌な感じ」だけって感じがする。俳優はジョン・タトゥーロ(彼のボウラーとしての登場シーンは見物!)、スティーブ・ブシェミ、ジョン・グッドマンなどの過去の出演者に加えて、ジェフ・ブリッジスも素晴らしく、本当にはまっています。彼の甲高目の声がいいですね。

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