ビ レッジ


監督 ナイト・シャマラン 出演 ブライス・ダラス・ハワード、ホアキン・フェニックス、ウィリアム・ハート

panchan(★★★)(2004年9月19日)

ナイト・シャマラン監督というのは、虚構と現実が交錯する世界が好きなようですね。
「シックス・センス」「アンブレイカブル」「サイン」と比較すると、この作品がいちばん虚構についての思考が綿密にあらわれている。
人は現実に耐えられなくなると虚構に救いを求めることがある。虚構を現実に置き換えてしまうことがある。――「ヴィレッジ」の長老たちはそういう人たちの 集まり。
しかし、虚構は現実について細心の配慮をするが、現実は虚構のことなど配慮しない。
現実は虚構を裏切るものをつねに内包している。「無垢」に思えるものが、無垢ゆえに理性に制御されない(虚構の意思に見向きもしない)力を発揮する。
でも、この映画は、そうした人間性の深みへは降りてゆかない。
無垢も嘘をつく。無垢も欲望をもっており、無垢にはそれを制御するすべを知らない。
そして、そこにこそ本当の人間の愛と欲望が美しい形で結晶するのだが、この映画はそういう方向へは進んでいかない。
物語を飾る装飾にし、無垢を見殺しに、あるいは犠牲の子羊にしまって、「愛」という精神に逃げてしまう。すべてを精神の世界に置き換えてしまう。(これは 「シックスセンス」のころから同じ趣向ですが……。)
すべてを精神の問題に置き換えてからが一気につまらなくなる。
そうした精神を求めるひとだけに向かって切々と訴える映画になってしまう。
人間の肉体のもっている不思議さ、凶暴さ、凶暴さゆえの血のぬくもり(やさしさ)とは無縁の、「きれい」だけを目指した虚構、これは映画にすぎません、お 話にすぎません――という逃げの姿勢に終始する。
腰砕けですねえ。

ところで……ブライス・ダラス・ハワードという女優は新鮮。
乱れた髪まで演技している――という印象が残る。
ナイト・シャマランのようなストーリーの技工派の映画ではなく、もっと人間性の本質に迫る作品でぜひ見てみたい女優の一人です。