フェアリーテイル


しーくん(★★★★)(6月7日)
kanpoh1@dus.sun-ip.or.jp
一番うれしかったのが、信じれば大人でも妖精が見えるようになるということ。この作品では主人公の母がそうなのですが、子供を信じ、妖精の存在を信じるからこそ最後に見ることが出来るのです。私が一番感動したのがこの場面でした。だって『トトロ』のように(作品は好きですが)大人は見ることが出来ないなんてつまらないもんね。私もまだまだ子供の頃のピュアな気持を持ち続けている(つもり)ので見ることが出来るかな?(笑)。皆さんがコメントされているように、この作品は心を癒してくれる一服の清涼剤。特に“妖精の森”が良いですね、映像が本当に綺麗です。森の中を流れる清流は小さい頃を思い出させてくれます。私が在住する奈良県は海がないので、夏の遊び場と言えば近くの川でした。あの頃って裸足になり、膝まで水に浸かって取れもしないフナを必死で追いかけていたっけ・・・現状の川からは想像もできませんが確かに家の近くに清流は存在しました。この作品は私たち大人に対する警告と受け取ってもいいのではないでしょうか?・・・大人になるとピュアな気持ちが薄れると共に、どうしても生活に対して“守り”に入ってしまう。大人達よ!今一度子供の時のことを思い出しなさい・・・そんなメッセージが込められているような気がします。少しはずれましたが、主人公ふたりの女の子には、直ぐに感情移入してしまいます。特にフランシス役の子には、小さい時からこんなにカワイかったら将来はどうなるの?なんて、親でもないのに余計な心配をしてしまいます。脇役人も見事ですね。母親は最初に書きましたが、マジシャンで脱出王ハリー・フーディーニ(日本でいえば引田天功?)の存在がこの作品の重要なポイントとなっています。さて、良いことばかり書いてるのにどうして星が4つなのでしょう?まずは、イングマルさんが書かれているように、妖精を出しすぎ!出しすぎた影響で最後の感動場面が少々薄いものになってしまってます。あと“妖精の森”にどっと人がおし寄せて、妖精達が逃亡(引っ越し?)する場面が映し出されますが、あそこは(妖精を出すのなら)森の上から人を見下ろしてあざ笑うかのような場面にした方が良かったのではないかと思います。この作品もミニシアター系での上映。大阪ではもうすぐ上映が終了します。こんなに良い作品がたいして話題にならないなんて、悲しすぎます・・・。
タカキ(★★★★)(4月10日)
TakakiMu@ma2.justnet.ne.jp
クライマックスの三間生中継(?)が凄い。ハーヴェイ・カルテルの脱出マジックと、チェス・チャンピオンとの試合、そして、新聞記者の侵入が、高い緊張感をともなって同時進行する。そして、それぞれの結果がもたらすものは、とても気持ちの良いものだ。ヨークシャーの森も美しい。人々の表情も素敵・・・・いやはや、すっかり癒されてしまった・・・。二人の少女が二つの並んだベッドで対話するシーンをはじめとして、全体的に、私の大好きな『ミツバチのささやき』に似ているな、と思ったのですが、こっちの方がちょっと冗舌すぎるかな?しかし、小学生時代にドイルやトールキンの小説が大好きだった私にとって、この映画を観ている時間はあまりにも心地良かった。最近、映画のネタが失業者一本槍になっている「どん底」イギリス人にとっても、ものすごい「癒し」になったんじゃないかなぁ。
イングマル(3月25日)
furukawa@joy.ne.jp
昨年の英国映画祭で観た作品ですが、東京では27日から公開されるのでご紹介させていただきます。98分の間、本当にいい夢を見せてもらいました。実際にはあり得ない話でも、物語の背景を細部までしっかりと描いた、正にファンタジーとはかくあるべきという作品だと思います。
幼い少女が主人公で、しかも妖精が登場する映画と言うと、少女趣味的なイメージを持つ人も多いと思いますが、これはむしろ大人が癒される作品だと思います。“癒し”の映画なんてありきたりで芸のない表現ですが、ボキャボラリーの貧しい僕には、この映画の良さを他にどう形容していいのか分かりません。
第一次世界大戦中のイギリスで起こった“妖精事件”に基き、妖精を目撃した二人の少女を主人公に、この騒動に巻き込まれていく人々の人間模様が描かれています。子供の頃見た妖精の写真が撮られた背景がよく分かりました。
Fairytale-A True Storyつまり、おとぎばなしと実話という逆説的な原題の通り、戦争により荒廃した社会と妖精伝説というまったくミスマッチな題材が見事に調和した不思議な作品に仕上がっています。
妖精が存在するとか、存在しないというのは特に重要な問題ではなく、妖精の存在を信じることで癒されていく人々の姿こそが美しいのです。当然のことながら、そんなものを信じない人もたくさんいるし、妖精の写真はトリックだと決め付けて仕掛けを暴こうとする者もいます。この辺の社会背景や人間の描写が実にしっかりしているし、しかも映像がとにかく美しい。
“シャーロック・ホームズ”の生みの親として有名なコナン・ドイルが騒動の仕掛け人だったのは意外でしたが、、彼は妖精という奇跡を信じることで戦争で息子を失った悲しみを癒そうとしたんですね。久し振りにお目にかかる名優ピーター・オトゥールがコナン・ドイルを貫禄たっぷりに演じています。また、実在の手品師を演じたハーヴェイ・カイテルも決して出番は多くないのですが、さすがに存在感があります。脇役もみんな素晴らしかったけど、やはり主人公の二人の少女にはかないませんね。彼女たちの純粋さとヨークシャーの森の美しさには心が浄化される思いです。
一つ難を言えば、もっと妖精を出し惜しみした方がよかったような気がします。映像的に妖精が登場しなくても、映画としては充分成り立つと思うのですが・・・。
ところで、この映画のラストーシーンには、意外なビッグスターが登場します。チャールズ・スターリッジ監督曰く「少女の願いが叶えられるラストシーンに“彼”を登場させることでファンタジーとして完結させたかった」とのことです。一体誰が登場するのか、劇場でぜひご覧ください。
panchan world
Movie index(映画採点簿の採録)