フェイク

監督 マイク・???? 主演 ジョニー・ディップ、アル・パチーノ
パンちゃん(★★)(11月19日)
ゆるぎのない脚本、しっかりした人間描写。さらに非常に抑制がきき、陰影にとんだジョニー・ディップの演技。--とてもよく出来た映画だ。しかし私は大嫌いだ。
途中にジョニー・ディップ演じる潜入捜査官が妻に向かって言うこんな台詞がある。
「正義のためと思ってやっていた。だが、今はおまえの言うとおり、ただのやくざだ」
そう、これはただのやくざ映画だ。それを「友情」と「裏切り」と「悲しみ」で、ごちゃまぜにしたものだ。この、「友情」と「裏切り」と「悲しみ」というごちゃまぜが、私は嫌いだ。何が『心で泣く映画』だ。私は全く泣けなかった。薄汚いものを見た、という嫌悪感しか残らなかった。
「裏切り」と背中あわせでしか表現できない「友情」など「友情」であるはずがない。それを「悲しみ」で「こころ」に刻もうとするのは、薄気味悪い人間のすることだ。「友情」をだしにして、いつかは「相手」を裏切ろうとする人間のすることだ。そんなものを「男の友情」などと呼んでくれるな。
いったい、監督は、この「友情」で何を描きたかったのか。--それが私には全くわからない。「あんな友達がいれば、こころが支えられる」と、思うことのできない「友情」など、「友情」であるはずがない。
「人間性」というものが、この「友情」には全くないのだ。だから、その「裏切り」とともにある「悲しみ」も「人間」とはまったく関係ない。
この作品で唯一面白いのは、ジョニー・ディップと妻との関係である。「愛」からどんどん遠ざかってゆく夫に対して、妻は電話番号さえ変えて、連絡を断ち切ろうとする。その「悲しみ」を理解できずに、「悲しんでいるのは俺だ、苦しんでいるのは俺だ」と甘えるジョニー。
まあ、いい気なものである。久々に出てきた「甘えん坊男」の映画である。自分を中心に世界が回っている、皆は俺の周りをきちんと回るべきだ、と主張するアナクロ映画である。
これに比べると『スウィンガーズ』の6か月前に別れた女が忘れられないとナンパした女に相談する男の方がはるかに人間として成長している。彼は、自分の苦しみを、他人に共感してもらえる形で表現する方法を知っている。自分の苦しみを通して他人と連帯する力がある。ところが、ジョニー・ディップの演じた男にはそれがない。彼はただ、「男の俺は苦しんでいる、それをサポートするのが女である妻の仕事だ」という古い古い主張だ。
----こうしたことは、映画の「でき」とは関係ない。しかし、私は「映画」のプロではないので、自分の好みと違うものは「嫌い」で押し通す。アマチュアの気持ちを守り通す。
私はネコが大嫌い。それと同じように、この映画は「生理的に」大嫌い。
じゅんこ(★★★)(1月1日)
junko003@eis.or.jp
http://www.eis.or.jp/muse/junko003/index.htm
あけましておめでとうございます。大晦日イブにようやく『フェイク』を見たんで…
98年は見るべき映画?は早めに見ておこうと心に誓うほど今年の冬はとりあえず見たいと思う映画が多くて困ってます。もう少し均等に散らしてもらえると有難いんだけど…
それはともかく、見逃していた『フェイク』を見ました。で感想書いているということは、言いたいことがあるってことなんですが…。
オープニング・タイトル、かっこいいと思ったら、またもや『セブン』とか『ミッション・インポッシブル』のカイル・クーパーなんですね。ソール・バス以来の才能だなあ。下手すると本編よりオープニングの方が良かったりするのが困りものです。
で、本編なんですけど、パチーノが(とくにラストで金目のものを全部外していくシーンにはいままで情けなかっただけに涙)いいので、私の場合ジョニー・デップに同情できなかったんです…。今回ばかりはいつもと違う大人っぽいジョニーを期待していったのですが、いつもとあまり変わらなかった気もする。若いマフィアにしては狂暴さが足りない感じもする。カッコわるいマフィアの実情を描こうとした製作意図は分かるけど、カッコ悪いのはアル・パチーノとかマイケル・マドセンで充分。ジョニーはもっと虚勢を張った感じがあった方が説得力があったと思う。それに、もっとFBIの捜査の内容も具体的知りたいと思ったのは私だけ?お話がデップとパチーノの友情に絞られ過ぎていたと思います。もう少し欲張ってくれたら★もっとあげても良かったんですが。


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