イン・アメリカ



監督 ジム・シェルダン 出演 サマンサ・モートン、バディ・コンシダン

パンちゃん(★★★★)(2004年1月15日)

2人の姉妹の演技が秀逸。
妹の方は姉と一緒なので、その安心感からか、役柄そのままの天真爛漫な感じが生きている。
姉役の少女は大変だっただろうなあ。
おそらく妹は役の意味をそんなに強く理解していない。姉は年上の分だけ役の意味を理解している。いわば橋渡し役だ。
まあ、そうした「橋渡し」的な要素がストーリー全体を貫いて姉におしかぶさっているのだけれど。

気に入ったシーンはいくつかあるが、その一つは、ET人形を手に入れるために、ボール投げにのめりこんでいくシーン。
金がないゆえにゲーム(賭け)にのめりこんでいく父親。
彼の苦しみを妻が、そして子供(姉)が理解しているところが切ない。

もう一つは、最後の方。
妹が父と姉のうそにあわせて、マティオがETのように自転車に乗って月を横切っていくのが見えるというシーン。
妹は、姉と父がうそをついていると理解して、そのうそに報いるためにうそをついたのか。
あるいは自分だけ見えないということを知られたくなくてうそをついたのか。 どっちだろう。
たぶん後者だろう。
自分にはわからない、見えない。(実際に見えるはずがない。)しかし、自分を救うために自分にうそをつく。
妹の場合、それは本能的なうそだけれど、そういううそが人間を救っていく。生きていく力となっている。
そのうそにつられるように、父も「グッドバイ・フランキー」と言わされる。 けっして「グッドバイ」などできない。けれど、自分にうそをついて「グッドバイ」と言う。
うその切なさ。うそだと知って、そのうその奥にある人間の哀しみを共有する。
人間を支えているのは、そういう哀しみの連帯かもしれない。