カリスマ


タカキ(★★★★★)(1999年7月5日)
TakakiMu@ma2.justnet.ne.jp
http://www2.justnet.ne.jp/~takakimu/WELCOME.htm
黒沢清監督の新作です。ぴあフィルムフェスティバルへ行って観てきました。劇場公開は来年の正月あたりだそうです。
結構先の話ですね・・。一応、感想を送ります。
上映後のパネルディスカッションで、黒沢監督は「個人と世界との関係」を私なりに描いてみた、というようなことを言っていました。私が観たところでは、まさに、そういった映画であり、それだけの映画とも言えるものであったとおもいます。そしてそれと同時に、ここには「映画」というものに必要なものが総てきっちりと揃えられていました。それは例えばゴダールの映画のように。全く意味のないもののように観ることもできるのと同様に、総ての可能性を孕んだ映画でもあるのです。この物語の中では、カリスマという木を巡って、一人の人間がもう一人の人間と、さらにもう一人と、またさらに・・・と、「関わ」っていくなかで、世界というものが、まるで永遠に回収されない粗大ゴミのように、ただ、ボテッと露呈しています。ただそれだけなのです。不可解で衝撃的なラストについても、監督は「クローネンバーグをやってみただけ」とうそぶいていましたが、本当にそんなものなのだろうか?
しかし深読みは自由です。例えば私には、後半に、役所広司が森の上方に幻視する巨木の形が、原爆のキノコ雲のように見えましたが、そのようなことも含めて、「個人と世界との関係」を考えるには当然、「国家」というものが避けて通れないものとして存在するわけであり(そういえば、劇中、「軍隊」という言葉も頻出していた)、アメリカと日本、世界と日本、日本と個人、等の関係にまで言及した大作だと見て取ることもできるかもしれません。或いは、冒頭のタイトルの回転する画が、ハーケンクロイツを連想させないこともないでしょう。(これらのことについて、質疑応答の時間に監督に質問しようと思ったのですが、できませんでした。緊張して・・。)
この映画で提示されたものは、結局のところ、何の回答にもなりえないかもしれません。ところが、これが一分の隙もない「映画」に仕上がっているのですから・・・・・・・何を書いているのかよく分からなくなってきました・・・・・・
・・なんなのだろう、この映画は?・・・。
劇場公開を期待して待ちましょう・・・・。