鬼畜大宴会


石橋 尚平(★★★)(8月16日)
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この映画、感想を送ろうかどうかかなり迷いました。全国公開されるかどうか分からないけど、「ぴあ」ではとにかく騒いでいるし(97ぴあFFで準グランプリを獲った)、タオルミナ映画祭でグランプリ獲ったらしいし(映画館のポスターの速報)、多くの有名人の絶賛の声は確かにサクラじゃなさそうだし…。舞台は70年代で、左翼グループが内ゲバになってしまって、正視に耐えられない残酷シーンの雨あられって映画なんです。けど、巧い。認める。こういう奴がいるんだ…。とても23歳の初監督作品とは思えない。テクニックがあるし、ふてぶてしさがあるんですよ。出演者の顔も演技も素晴らしい。グランプリもうなづける。ただ、性的隠喩のあからさまな羅列がちょっと鼻につく。残酷シーンを冷静に描いているのは凄いと思うけど(自分の描く暴力に酔っていないんだコイツ、恐ろしいことに…)、暴力と性的隠喩(描写)が安易かつロジカルに結びつき過ぎている気がします。映画って元々「性的隠喩」の隠し絵みたいなものでしょ。ヒッチコックなんか分かりやすい例ですけど。こうも分かりやすく性的隠喩を続けると、深みがない。暴力だらけだから、深みがないのではなくて、映画専門学校的なロジックに寄り過ぎているような点が未熟。そこがやはりまだ素人だな、若いなってことで安心させます。ほーーーっ。暴力映画は別にいいんだけど、 『命の凶暴さ』(byパンちゃん)がないとね。『死』や『暴力』を描くことで『生』を浮き彫りにするのは映画の常套だけど、逆も言えるわけだし。23歳が70年代を選んだのも、どうもその逃げの気がする。でも末恐ろしいな、コイツ(熊切和嘉)。いつかこういう暴力映画を褒めなきゃならんのかな…。確かに衝撃的な作品でありました。