こ との終わり




Brownie(2002年1月3日)

★★★★
私は原作を読まずに、ニール・ジョーダンということで絶大な期待を持って見たので、古典的なストーリー展開が逆に意外だった。でもさすがはニール・ジョー ダン。
三角関係を織り成す男女それぞれの性格と心理を描き切っているし、いつもの事ながら、役者が完璧にはまっている。
ヒロインの宗教観は(これは原作のせい?) ”哲学的に考えるより無条件に受け容れる”という古典的なもので、現代人には少し単純すぎるかも知れない。例えば「パルプフィクション」のサミュエル・ L・ジャクソンがやった程度の哲学的な考察を加えてもらわないと、現代人の私としては共感できない。また主人公の小説家も「愛の重さを嫉妬の深さで測る」 という少しひねくれた男だが、それぞれの考え方、感情の現れ方、隠し方などが交差する様子は見応えがあった。
だが...やはりニール・ジョーダンは非日常的な状況に置かれた人間を描いた時に爆発的な力を発揮するように思う。そういう意味では「インタビュー・ウィ ズ・バンパイア」や「クライイング・ゲーム」に比べて地味だったかも知れない。
最後に気になった点を一つ。探偵の息子だが顔立ちがスティーブン・レイに似ているような...血縁者だとしたらちょっと手抜きだなぁ。
パンちゃん(★★★★)(2001年1月20日)
同じ映像が何度か出てくる。
一つは男の視点からとらえた世界。
もう一つは女の視点からとらえた世界。
それは同じ映像を装っているが違ったものなのか、本当に同じ映像なのか。
いや、それは単に映像の問題なのではなく、同じ世界なのかどうかと自問してみると、世界はもっと複雑になる。
夫が見つめる世界。私立探偵が見つめる世界。探偵の子供が見つめる世界。神父が見つめる世界。
さらには、こうした多様性を含んだ世界を、人間と神の視点の差異、と見つめなおすとどうなるだろうか。
一つの同じ世界なのだろうか、それともいくつかの違った世界が存在するが、私たちはその違いに気づくことはできなくて、取りかえしがつかなくなったとき に、世界がどこかで交錯し、ゆがんでしまっていて、自分のこころが迷子のようにさまよっていたことを知るのだろうか。
なんだか複雑な問題なのだが、こうした事柄を、恋愛と心理にからめて描き出したのがこの映画ですねえ。
男が女を受け止め、一歩ひいて演技している。女も一歩ひいて演技している。 この感じが大人の恋愛、という感じ、イギリスの恋愛という感じ。
これがフランスだと、男も女もわがまま言い放題の、ぎくしゃくした人間劇になってしまうなあ。
やはり「個人主義」はイギリスが発祥の地だ、と、飛躍して考えてしまう。
(なんだか、映画の感想ではなくなったようだ。)
NEK(2000年11 月1日)
★★★
『バトルフィールド・アース』と言い『ああ女神様!(←こんなの見るなよ イイ大人が…ってアタシか)』と言い余りにイッてしまった映画ばかり見たので口 直しに、IQの高そうの映画を見る事にした。
何たってインテリ系作家の代表グレアム・グリーン原作ですからな。きっとアタシの貧弱なオツムでは理解を超えた世界を展開し、トラボルタ星人で疲れきった アタシは夢の世界へ…って思ったら、これが意外と面白い!!
この映画、キリスト教的倫理・宗教観と心理ミステリーの融合と言う形をとっているので、本当の所はアタシには判りません。けど何て言うか上品って言うか大 人の味なんですよね、描き方が。それは多分50年代の古き良き英国の上流階級(貴族社会では無い)を舞台にしている事も一因なのでしょう。
でも一番の理由は登場人物の行動に関わる『存在(ネタばれになるので言いません)』なんですよね。主人公はそれを否定しようとし、ヒロインはそれを受け入 れようとする。そしてその両者を内包しようとする事で、自分とヒロインの関係を肯定しようとする男。
彼らの行動はとてもストイックだ。それが映画に古風な美しさを沿える事に成功し、心理ミステリを成立させている。
でここまでは良い事ずくめなんですけど、結局アタシにとっちゃー難解で冗長なのよねー。ヒロインもオバハンだし。ストイックの美しさを素直に感じ取れる 程、重厚な人生積み重ねてもいないしね。なーんか蚊屋の外の観が拭えなかったのも事実なのね。
こういう映画を自然体で受け止めらる様な大人になりたいわホント…。