恋に落ちたシェークスピア

脚本:マーク・ノートン&トム・ストッパード、監督:ジョン・マッデン、出演:ジョゼフ・ファインズ、グウィネス・パルトロウ、ジェフリー・ラッシュ

モモ次郎U世のハハ(★★★★)(1999年7月28日)
keiko-fm@jc4.so-net.ne.jp
シェイクスピアの戯曲そのものを、多少なりとも原文で読まされた(英文学では大学では必修のはず)おかげで、この作品のセリフに、シェイクスピア的なウィット、エスプリが随所に感じられました。
シェイクスピアの時代の事実背景と虚構が映画の中では交錯していますが、ウソとホントをちゃんと見極めて、虚実遊びを楽しめました。
少年が女装をして娘役を演じていた事は事実ですが、この映画の中で女性が男装をして娘役を演じさせたストーリー手法は、シェイクスピアの作品の中で楽しめる騙しのテクニックとして良く使われています。
また劇中劇というのも、シェイクスピアの作品ではよくあり、劇の中の舞台劇のセリフを借りて、本音を吐露したり、普段なら無礼にあたるような真偽をも突き付ける事ができる恰好の場だったというようなディテールを、うまく利用していたと思いました。
グィネス・パルトロゥは、ユニセックスで、セリフ回しも、英国貴族的な美しいクイーンズ・イングリッシュで、 アメリカ人女優とは思えない気品があり、よかった。シェイクスピア役には、個人的趣味で兄のレイフ・ファイアンスにして欲しかった。彼はシェイクスピア舞台出身のはずで、現代ものの映画には似合わない大袈裟なセリフ回しがありますが、こういう時代劇には適役だと思うのですが・・・。つまり弟以上に”Very British!”な声、容姿、立居振舞い、を感じています。(「イングリッシュ・ペイシェント」(★★★★★)ではハンガリー人役ですが、物言い、ユーモアのセンス、人見知りする仕種は”Very British!”で「イギリス人の患者」とカルテに書かれても仕方なかった。)
シェイクスピアに通な人も、そうで無かった人達をも魅了した作品としてこの映画の功績は大きいと思います。
余談になりますが、随分以前にMR.ビーンのコメディTV番組をBBCで観た事があるのですが、エリザベス朝時代設定で、MR.ビーンがシェイクスピアが持ち込んだ作品に、編集長らしき机に座って、赤入れ校正をする場面がありました。「あー、君、君、ウィリアム君(シェイクスピアの名前)、ここん所、ダメだネー、ぜんぜんなってない。書き直しだ!!」とMR.ビーン扮する編集長が、有名なセリフをことごとく、平易な文章に書き直してしまうというストーリーを、何故か今思い出してしまいました。MR.ビーンの「BLACKADDER」というエリザベス朝時代を痛快なブラックユーモアで笑い飛ばした作品の一部だと思うのですが、定かではありません。ご存知の方いませんか?

みさきたまゑ(★★★★)(1999年7月4日)
misaki@ceres.dti.ne.jp
http://www.ceres.dti.ne.jp/~misaki
  
別に見たいとは思ってなかったんだが、金曜日は映画1000円。
13:00からの用事に間に合うのは、これしかないから見ただけなんだが、これは おもしろかった。もうけもの。
ひさびさに映画館にいる時間を堪能したといえる。今年に入って見た映画はどれも、 なんだかなあ? とか こんなことありかあ? とか思いながら見てたような気がす る。
ここでも、みなさんほめているのだが、あたしもほめる。
で、あたしが思うのは近松の心中モノさ。元禄の大坂の傾きかかった芝居小屋を近松 が救うんじゃなかったっけ? 
はたして、われわれは英語圏の人々がシェイクスピアを愛するように、近松を身近に 感じているだろうか? そんなこたあねえな。だが、蜷川演出の『近松心中物語』は 役者もずいぶん変わったが、やっぱりお客は入るものな。でも映画のようなブームに はならない。ま、それがいいのか。
パンちゃんとこの常連さんはこれを見てシェークスピアを読みたくなった人が多い。 あたしはこの映画を見て、やっぱり近松を読まねば……と思ったね。
それで篠田 正浩監督のモノクロ映画『曾根崎心中』岩下志麻(二役)&宇崎竜童なんかのことも 思いだしだりいたしました。
おんたけ(★★★★★)(5月29日)
t-gnp@mtj.biglobe.ne.jp
http://www2m.biglobe.ne.jp/~t-gnp/index.htm
お久しぶりです。カキコありがとうございました。
私の感想ですが、長いので、割愛していただいても結構です。
良いですねえ。この作品。お薦めです。この時期、下手なアクションものやサスペンスものを見るんだったら、この作品は多いに満足感を味わさせてくれるでしょう。
98年アカデミー作品賞をはじめ、主演女優賞(グウィネス・パルトロウ)、助演女優賞(ジュディ・デンチ)、オリジナル脚本賞、美術賞、衣装デザイン賞、作曲賞を勝ち取ったう〜ん、佳作ですね。
何と言っても良いのが、脚本でしょうか。マーク・ノーマンとトム・ストッパードという方々が書いていますが、特にトム・ストッパードはイギリス演劇会の大御所で、シェイクスピアではかなり有名な方らしいですね。私は演劇もシェイクスピアも詳しくはありませんが、この脚本の妙味は肌で感じることができました。実際に存在した人物と虚像の人物達が織り成す物語をうまく料理しています。とにかく、話のテンポが良いし、演出もこなれている。久しぶりに粗探しをせずに安心して見る事ができる映画です。
グウィネス・パルトロウは、ちょっと痩せ過ぎですが、虚像としての役柄をうまく演じています。男性役を演じているところなど、キュートで好感が持てますね。ジョセフ・ファインズのまなざしも良かった。彼は「アベンジャーズ」のレイフ・ファインズの弟さんなんですね。似ているような似ていないような。
「シャイン」のジェフリー・ラッシュ(冒頭で足を焼けどする劇場主ヘンズロー役)も良い味を出していますし、私が勝手に称しますが、エリザベス一世のジュディ・デンチはまるで“女水戸黄門”でしたね。
さらに、「アナザー・アカントリー」のルパート・エヴェレットが出ているのも驚いた。ただ、残念だったのは、ベン・アフレックでしょうか。良いところがなかったなあ。役柄的にもそうだったんだろうけれども。でもまあ、私生活ではグウィネス・パルトロウと恋仲だとか(蛇足ですね)
この作品、アカデミーを制したのが分るような気がします。実に、アカデミー会員うけしそうですもの。
というのも、実に分りやすいし、親しまれる作品に仕上がっていると思います。監督が技巧派ではあるものの、決してでしゃばる感じもしない。もちろん、お金や名声でアカデミーを制する人も多いですが、その逆に「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミのように会員から祝福と応援で勝ち取る監督もいますからね。そう言う意味では、ジョン・マッデンは監督賞こそ取れなかったものの、後者に部類する人でしょう。「プライベート・ライアン」のスピルバーグ。「シン・レッド・ライン」のテレンス・マリックには、残念ながら会員の賛同が得られなかった理由がこの作品を見ると分るような気がします。アカデミー賞授賞式で作品賞が決まったとき、多くのプロデューサー達が喜びの声をあげました。この作品が多くプロデューサーを要したこと。それだけに、大変な映画作りだったということの証明です。ヒット・メーカー足り得ない作品をここまでのものにした映画の情熱は、アカデミー作品賞を取った取らないとに関わらずこの作品の価値を下げるものではないような気がしますが、、、。
タカキ(★★★★)(5月15日)
TakakiMu@ma2.justnet.ne.jp
http://www2.justnet.ne.jp/~takakimu/WELCOME.htm
グウィネス・パルトロウの男装がとてもイイ!いや、男装というよりショートヘアがとてもイイ!うーん、思わぬところでマニア心をくすぐられてしまった・・いかん、いかん。
そんなことはどうでもいい(ホントはよくないけど)として、やっぱり一番の見せ場は舞台のシーンですよね。演劇っていいなぁ・・。役者になりたい。今からじゃ遅いかなぁ。
いや、でもやる気次第だろう?アー、でも、やっぱ、顔がね・・。等、エンドロールもそこそこに、とりとめもない妄想に更けさせてしまう映画の力。陳腐な悲劇に終始していないところも良い。「王様は裸だ」的な役割を果たす少年の存在もすごくいい。ああいうのって、なんか小さい頃の学芸会とかを思い出してしまうんだよなぁ、ジェフリー・ラッシュのコテコテの道化っぷりとかね。演劇もいいよなぁ・・・ 。
Tamaki(5月14日)
ekm63941@biglobe.ne.jp
こんにちは、パンちゃん。この映画にとても感動したので、1年ぶりに投稿しています。
私はグウィネスの眉間に少し力を入れ、唇を薄く横に広げたようにして作る困った表情が何とも好きです。本当に困っているように見えます。あと少年のような体つきも何故か邪念が無さそうに見えてしまう。日本人(私は女性なんですが)には超ナイスバディのボン・キュッ・ボンッの女優さんが出てくるより馴染みやすいというか、感情移入しやすいというか・・・。自分の好きな事に一途に情熱を傾けて決断すべきところはパっと決断するような、情熱と潔さを併せ持ったヴァイオラは素敵でした。あと他人を信じる無邪気なところも。この映画を見ながら、彼女が『スライディング・ドア』で演じた女の子がシンクロしました。個人的にはばあやの役が優しいし物分かりが良くて大好きです。とりあえず続きが知りたくて、帰り道に本屋さんに寄ってシェイクスピアの『十二夜』(恥ずかしながら読んだことがありません)を買って家路に着きました。
ところで、新宿で16:10〜という時間から見たのですが、お客さんはパラパラっとしかいませんでした。平日の中途半端な時間だからかもしれませんが、もっと混んでいるかと想像して痴漢に遭わないように気合いを入れて1人で入ったのでズっこけてしまいました。それに見たところ女性客しかいなかった。ビジネスマンの男性が時間潰しに1人で見るにはこの映画ロマンチックすぎるのかしら?というもの以前平日の昼間に有楽町で『トゥルーマンショー』を見た時には、あっちこっちに時間潰してるセールスマンで客席は溢れかえってたんですが・・・。
しーくん(★★★★☆)(5月7日)
kanpoh1@dus.sun-ip.or.jp
私が最も苦手とするジャンルの作品です。しかしアカデミー賞を受賞したし、運良く5月5日は大阪府の映画の日という事で、1000円で観賞出来るとあっては、これは見るしかない!と言う感じで行きました。
久々に画面にのめり込みました。特に最後に演じられる「ロミオとジュリエット」は、映画の観客ではなくて、観劇する客の1人になりました。素晴らしい劇を見て、皆が声も出ないし、拍手することすら出来ない状態になります。私も同じ心境でした。やがて大喝采に包まれるのですが、同じように拍手したかった(誰かが拍手しないかと待っていたくらいです)。女優賞を受賞したグウィネス・パルトロウは、パンちゃんが書いたとおり青年に扮しているときの方が魅力的でしたね。ちょっと小憎たらしく書くと、彼女は時折”オバチャン”に見えるときがあるんですよ(ファンの方許して下さい)。シェイクスピアを演じたちょっぴりプリンス似?のジョゼフ・ファインズも良かったですね。特に自分がロミオを演じて毒を飲むシーンは圧巻でした。作曲賞を受賞した非常に美しいメロディも非常に印象的です。映画館を出ても余韻が残る素敵な作品でした。
かもめ(★★★★)(5月7日)
seagull@d1.dion.ne.jp
映画が終わって、何が一番心に残ったかと言えば、エリザベス女王を演じたジュディ・デンチにつきます!たった、8分(10分?)程度の出演で、どうしてオスカーがもらえるん だろう・・・と、とても疑問だったのですが、観て大いに納得しました!
冒頭のオバタリアン笑いや、威厳のある目の動き(単に衣裳が重かっただけ?)、 最高権力者なのに、「女のカンでわかるのよ」などと庶民的なことばが出てきたり。
収拾つかないまでドタバタしてしまった物語を、遠山の金サンか大岡越前とみまごうばかりの、見事なまでのお裁きでシメてくれた豪快(?)さ!ぬかるみのエピソードのおまけまでついて、かもめ的にはお気にいりのキャラクターです!
最初から最後まで印象がうすぼんやり(笑)していたウイル君(シェイクスピア)に比べて、脇役陣のにぎやかなこと!
「謎だが」が口癖の、お調子者ヘンズロー。
非情な高利貸しフェニマン。
この二人の対比がとてもおもしろい。ヘンズローは「なりゆきまかせ」が信条で、どんな事態になっても変わらない。フェニマンは、始めは金さえ返してくれればいいだけだったのに、どんどんお芝居の世界にのめり込んでいき、「ロミオとジュリエット」上演に誰よりも尽力し、しまいには小さな役を与えられただけで有頂天になってしまう。イヤなオヤジが、かわいいオヤジになってくの(笑)。
バルコニーの場面の稽古中、シェイクスピアの書いたセリフに魅せられて、 役者全員が思わず静まり返ったシーンが、とても好きです。
これを境に、一気に「演劇」らしくなっていく。皆「役者」らしくなっていく。
・・何を隠そう、高校時代は演劇部だった私。イプセンにも、シェイクスピアにもお世話になりました(笑)。そして、あのくらいの規模のステージ、素人集団の寄せ集めの役者、女が男役をする、つぶされそうな劇場、全てが高校時代と重なって、めちゃくちゃ感情移入してしまった(当時、わが部は廃部寸前だったのです)。
あ、ウイル君の影が薄いと感じたのは、私が、彼の恋の行方より演劇の行方の方を気にしていたからなのか!ごめんなさい、ジョゼフ・ファインズ君(笑)。
本当いうと、物足りないところもあるのだ。欲ばりなのはわかってるんだけど(笑)。
ヴァイオラが、男と偽って本物の男の集団にいることから生じる、コメディ的な要素がすっかり抜け落ちてるところ。まさに「十二夜」的なシチュエーションなのに。
(売春宿のシーンで、ちょっとだけありましたけどね。)
お芝居好きのおっかけみたいな女が男装のヴァイオラに惚れちゃったりとか、 男と知りつつ、惚れちゃったゲイの役者仲間(笑)とかいたりしたらおもしろいのに。
そういうエピソードが入ってれば、お星さま5個なんだけど。
私も、「十二夜」が読みたくなってしまった(笑)。シェイクスピアでは一番好きな コメディなのです!あ、「十二夜」は、イムジェン・スタッブス主演のビデオが最近出ております。こちらも、おかしくせつない楽しい作品でした。ヘレナ・ボナム・カーターのめずらしいコミカルな演技が観れますよ あと、ナイジェル・ホーソーン演じる執事の 滑稽さ!!ナゼか道化役がベン・キングスレーだったりして、キャスティングはやたらと豪華なのです。お暇がありましたら、「恋に落ちた〜」の前後にお楽しみ下さい。これで2作品とも、5倍は楽しめるでしょう!
そん(5月7日)
sonda@excite.co.jp
念願かなって観てまいりました。もうどっぷりうっとり・・・。
ホントに脚本が良く練られている。ホンの良さが、お話の面白さ自体よりも作品の吸引力とでもいうべきものにダイレクトに貢献しています。
まあまあ長いけど、文字通りどっぷり浸らせてくれます。
でも、ちょっと軽過ぎると思う人もいるかもしれませんね。私は大好きだけど。
で、グゥイネス良いですねえ。
シェイクスピアと寝た翌朝に、乳母に「新しい1日ですよ。」と言われて「違うわ。新しい世界よ。」という時の表情がとっても素敵。(予告に出てきますね。)
ベッドの中で「芝居よりも素晴らしいものがあったなんて・・・。」とうっとりするのもカワイイ。・・・分かるよ、その気持ち(笑)。
どっちかというと乾いた感じの彼女が、あんなにも恋する女の子の色っぽさを出せるなんて正直驚きでした。
やはり人生は“詩と冒険と恋”ですね。
>設定も時代背景も今の自分とは関係のない遠い世界の話なのに
>人間というのは同じ心を持っている。
麗奈さんが書いていらっしゃることですが、まさにその通りです。
多分どんな映画も上記のようなことを志向していると思うのですが、この作品はそのことを描くための道具の使い方が絶妙!
だから二人の恋も、芝居の熱狂もまるで自分のことのようにのめりこむことが出来るのだと思います。
パンちゃん(★★★★★)(5月3日)
すばらしい脚本だ。脚本のできが、この映画の99%のできを支配している。
『ロミオとジュリエット』の台詞を現実と劇との両方に交錯させながら、煩雑にならず、逆にストーリーをとてもスピーディーに展開させている。
このスピード感が時代劇(コスチューム劇)なのに「時代」を感じさせない。現代の恋愛を見ているような楽しい気持ちにさせる。
同時にシェークスピアの恋愛というよりも、新解釈の『ロミオとジュリエット』を見ているような気分にもさせる。
少なくともレオナルド・ディカプリオが出た『ロミオとジュリエット』よりははるかに『ロミオとジュリエット』の魅力を伝えている。
普通のコスチューム劇なら重くなるダンスシーンも華麗にスピーディーに撮っている。これも素晴らしい。(ディカプリオの出た作品と比較すると雲泥の差がある。)
このあたりは演出とカメラの勝利といえるが、脚本のスピードに演出もカメラも乗せられているともいえる。
本当に楽しい。ここ最近、味わうことのできなかった楽しさだ。
女性が劇に出られなかったというような史実(本当は一部で出ていた)も利用している点も巧みだ。
ヒロインの名前に「ヴァイオラ」を使い、それを利用して『十二夜』へと話をつなげて終わらせるのもしゃれている。
見終わった後、シェークスピアを読み直したくなった。それも『ロミオとジュリエット』だけではなく、『十二夜』も『真夏の夜の夢』も『リア王』も……。そんな気持ちにさせるところも素晴らしい。
この映画は、映画を借りたシェークスピアの手引きであり、解説書でもある。
*
グウィネス・パルトロウは女性の役よりも、青年に扮しているときの方がなぜか輝いて見えた。
このファニー・フェイスはオードリー・ヘップバーンに通じる要素だ。
パルトロウがなぜ女性に人気があるのかわからなかったが、この映画で初めてわかった。
それも収穫だった。
reina(2月18日)
reina@osula.com
みましたよ。なかなかおもしろかったです。きれいなコメディでした。(汚いのはちょっと苦手--ジムキャリーのコメディとか、メアリーがどうのとかいう奴とか)ジョセフファインズもレイフとはまったく違った感じでいい味出してました。グイネスはアメリカ人なので、大丈夫かあ?と心配しておりましたが、なかなかのクゥイーンズイングリッシュを話してました。ベンアフレックの英語は置いておきましょう。ジェフリーラッシュの英語がちょっと気になったのは彼のオーストラリア訛が残ってたからなのか??コリンファース様はホントに嫌な奴を演じてくれて。相変わらず素晴しいクイーンズイングリッシュでございましたが、普通のおじさんになってしまって(涙)。でもジュディデンチ女史のエリザベスはかっこよかったです。見た目は不気味だけど。シェークスピアの時代ということで本当は時代劇なんだけどそういった違和感を感じさせないフレッシュな映画でした。シェークスピアもただの人ということをアピールしているのでしょう。それだけではなく、登場人物全員に対し、親近感を持てるんですよ。そうか、今気がついた。だからヒットするんですねえ。設定も時代背景も今の自分とは関係のない遠い世界の話なのに、人間というのは同じ心を持っている、そこをアピールしているのかあ。今ごろ気付いてすみません。だから「良い映画」なんですね。
石橋 尚平(in NY)(★★★★)(2月13日)
shohei@m4.people.or.jp
http://www.people.or.jp/~gokko/index.htm
NYの友達のアパートからです。いやー、NYは懐かしい。友達の自転車借りて、マ ンハッタンを動き回りました。おかげで夜眠くなって、オペラでちょっと寝てしまい ましたが。滞在期間短いのについつい映画も見てしまいました。
さて、この映画は『悲劇』を演じたくて演じたくて仕方がないのに、『悲劇』に至ら ない『悲劇』を描いた映画ですね。『悲劇』を演じたいがために、様々な障害を乗り 越えなければならないのですけれども、この障害を乗り越える様がことごとく滑稽に なってしまいます。『悲劇』はそう簡単に成就しません。『悲劇』は常に相対化され る運命にあるのですね。主人公のヴァイオラ(G・パルトロウ)がロメオを演じる男 装した俳優とエセックス公の許婚に分裂していることを聡明に語っているように。 シェークスピアもヴァイオラも、『悲劇』の主人公になることを希求しているのに、 常にシェークスピア的状況(『十二夜』的状況)が具現してしまう。
2人が邸宅の忍びの情事でめくるめく官能を味わうまもなく、エセックス公が部屋に 乗り込んできて、話は間男のファルス(喜劇)に転調してしまいます。ここで今度は シェークスピアが女装する羽目になる。第一、女人禁制の舞台にロミオ役を演じるた めに、つけ髭をつけて男装するヴァイオラだって滑稽さから逃れ得ません。鼠を背中 にいれられて、悲鳴を上げて長い金髪を現してしまうのは、滑稽な様でしかない。
シェークスピアは『ロミオとジュリエット』の名シーンを自ら先取りして、バルコ ニーから転落してしまうし、真剣な剣闘シーンでも間抜けに舞台から落下してしま う。楽屋の二人の情事もどこか滑稽。二人とも悲劇から見放されている、そこがこの 映画の最大の魅力だし、最後の『ロミオとジュリエット』上演のシーンで、ようやく 成就した『悲劇』が迫真の感動を生むわけですね。それはつまらない通俗的な『悲 劇』ではなく、この映画の『悲劇』は滑稽で一途な希求の果ての純化された『悲劇』 であるのですね。
滑稽さがどこまでもつきまとうということで、あのG・パルトロウのあの変な顔がう まく活きていると思います。正直言って、この人しかいないなと思った。シェークス ピアが学ぶものは、結局『十二夜』というファルスのモチーフというわけで、この芝 居を知っていたらよりよく楽しめます。
しかし、エリザベス女王は迫力があったな…。


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