コーリャ愛のプラハ


監督 ヤン・スビエラーク 主演 ズディニェク・スビエラーク、アンドレイ・ハリモン

くろちゃん(6月25日)
ikeda_y@sol.nichimen.co.jp
とても感動して涙がとまりませんでした。
ごっつい男とまだ幼いコーリャのツーショットを見ているだけでもじんときました。
子供が苦手そうな男が、コーリャの為に映画館のチケットを5枚買ったり、誕生日のわからないコーリャに誕生日を作ってあげて、誕生日会をしたり、バイオリンをプレゼントしてあげたりして、心を開いていく展開が、心を打たれました。男のことをパパと呼ぶようになったコーリャ、そして別れの時に「パパいつ迎えに来てくれるの?」というセリフが忘れられません。
パンちゃん(★★★★★)(7月25日)
時代の激動の中で出会ったチェコの50過ぎの男とロシア(当時はソ連か)の5歳の子供。子供に何の愛情も感じていなばかりか、わずらわしく思っていた男が、しだいに心を開いて親子になっていく。----よくある映画のパターンなのかもしれないが、感動してしまった。
子供が実に新鮮。ことばのわからないチェコに一人で放り出されて、どうしていいかわからない。目の前にいるのはロシア語を話さない頑固そうな男。ちっとも自分のことなどわかってくれそうにない男だ。その、ちっとも自分を愛してくれていないということを子供は敏感に察知する。道路を渡る最初のシーン。男がそっと手を出すが、子供はその手を握らない。背中に回してしまう。この寂しくて、しかし、頼らずに生きていくんだというような、けなげな感じがとても新鮮。子供は最初から男に甘えているわけではない。あくまで他人、という感じが魅力的だ。
子供だから駄々もこねる。さびしがりもする。ロシア語の映画(アニメ)を見たくて映画館の前で動かなくなったり、電話越しにロシア語の童話を聞いて眠ったり……といった、自分本位のところが、非常に自然にとらえられている。
男が葬式の伴奏をやっているので、子供はその仕事についていく。そこで棺桶が聖廟(というのかな)のなかへしまわれるのを見る。そして、棺桶の絵ばかりを描く。葬式ごっこをして遊んだりもする。子供は自分のおかれた状況をゲームにして自分自身の心の鬱屈を発散するものだが、その感じも非常によくでている。
また、男が秘密警察の尋問にあったとき、危険を察知して、男の側に立つのも、子供の本能のようなものだ。
どの描写にもむりがないために、本当に子供を見ている感じになる。子供が自然だから、男が次第次第に心を開いていくもの、ごく自然に感じられる。
最後に母親が迎えに来て、一瞬ためらいながらも、子供は母親のところへ帰っていく。「さよなら、パパ」----それが男に残されたものだ。
このハッピーエンドとは少し違った感じの終わり方も新鮮。
見ていて、見る先から涙が出てくるという映画ではなく、見終わって、何を見たのか思い出すとき、胸の奥から静かに涙がこみ上げてくる。そんな映画だ。
オメロ・アントヌッティそっくりの男もいい。頑固でスケベそうなところが、存在感がある。
スメタナの音楽もいいし、最後の最後に子供が口ずさむ葬式のときのつたないことばの感じもいい。
子供は耳で覚えたチェコの歌を、意味もわからず、ただ覚えたまま歌っているのだが、その意味もわからず、というところが、この映画のキーポイントなのだと、ここまで書いてきてわかった。
男も、子供を育てるということの意味などわからずに、ただ子供と交流していた。意味もわからず触れ合っているうちに、心を開くということを学び、成長していった。そのことが、本当に、見終わったあとになって、じっくりと実感できる。
上映している映画館は少ないようだが電車賃払ってでも、見に行きなさい。心に十分お釣りが来る映画です。


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