黒猫・白猫


監督 エミール・クストリッツァ 出演 バイラム・セベルジャン、スルジャン・トドロビッチ、ブランカ・カティチ、フロリアン・アイディーニ

takoyan(2000年11月12日)
★★★★★
文句なしの傑作!今年の最高の作品!(になると思う)
前から観たかったのをやっとビデオで観ました。
ギラギラノ太陽の下で踊り狂い光り輝く人生のパレード。
果てしない命のパワーを感じました。
じいちゃんが両手を広げて、「人生はすばらしい!」と叫ぶシーン、 ヒマワリ畑を翔けるシーン、(このヒマワリがすごくよかった。
少し黄土色がかかっていて、土の香りがするような。)
ゴッドファーザーが車椅子(?)にのって銃を撃つシーン、 「カサブランカ」のラストを何度も見るシーン。
すべてのシーン、すべての人たちがとても好き。
日に焼けた黒い顔、これがまたいい。みんな、太陽の光を真正面から受けて取り込んでいる。
悪い人も善い人も、金持ちな人も貧乏な人も、草も木も、みんな生きているんですねえ。
うーん、この映画の魅力は書ききれない。
歓び、愛情、友情、その他もろもろの、人生のいろんな大切なものが詰まった、ギンギラギンで最高にエキセントリ ックな映画。
クストリッツァ監督万歳!!!
albino(★★★★★)(1999年10月4日)
ohh@pk.highway.ne.jp
パワー、エネルギーに圧倒されました。
カサブランカのラストシーンを繰り返し繰り返し見つづけるゴッドファーザー。アバの曲に合わせて踊り狂うダダン。呪文一つで死に、何故か生き返る祖父(ゴッドファーザーも!)。おまけに、尻で釘を抜く女まで現れる!?
登場人物の行動は、全て不条理。おまけにマンネリズム。
やってる内容は、まるでドリフ並みかもしれない。
それでも、最後には幸せ過ぎて涙が出てきました。
主人公ザーレとイダとの恋を軸に、登場人物たちが織り成す人間賛歌。不条理故の秩序、繰り返しの美学、それが当てはまるような、当てはまらないような・・・
いいのですよね、ただ、ニヤリと出来れば。理屈抜きに楽しいのだから。(ちなみに一番ニヤリとしたのは、最後の結婚式の戸籍官とのやりとりです)
パンちゃん(★★★★★+★)(1999年9月25日)
笑いから語るべきか、涙から語るべきか、猥雑さから語るべきか、純潔さから語るべきか、音楽から語るべきか、動物から語るべきか、不真面目から語るべきか、純愛から語るべきか、暴力から語るべきか、優しさから語るべきか、リアリティーから語るべきか、幻想性から語るべきか……。
うーん、迷ってしまいますねえ。どこから語り始めても、この映画の魅力は語り尽くせない。
うーん、うーん、うーん、と考えていたら、この映画は台無しになるし……。
気に入ったシーンはいくつもあるけれど、語りやすいのは『カサブランカ』のラストシーンを繰り返すところ。
「これが友情の始まり」という有名な台詞を何度も何度も「ゴッドファーザー」が見る。この何度も何度も好きな部分を楽しむ、というのがこの映画の登場人物の生き方なんだと思う。
負けても負けても、だまされてもだまされても、何度も何度もポーカーにうつつをぬかす父親。(ひとりでもポーカーをしている。)
何度も何度も何度も少女に会うためにオレンジジュースを飲みに行く少年。
何度も何度もテクノ音楽に合わせて踊り歌う男。
いつでもどこでも楽団(音楽)なしには生きてゆけないおじいさん。(これも繰り返しだよ)
そしていつまでもいつまでもいちゃつく黒猫と白猫……。(これも繰り返しだね)
何度も何度も、いつでもどこでも、そしてどこまでも、という行為があきないのは、その生が充実しているからだ。生の充実を登場人物がみんな楽しんでいるからだ。
同じ行為しか繰り返していないのにストリーが進んで行く、人生が進んで行くのはなぜか。
繰り返し繰り返し繰り返しても繰り返しきれない命があるからなんだ。同じ行為のなかから、その行為を乗り越えて先へ先へとあふれて行くものがあるからだ。
そのあふれたものが、時間を輝かせ、人生を輝かせ、笑いをもたらし、「糞まみれ」の人間さえ、明るく輝かせる。「糞」のなかにさえ、不思議な清らかなものが見えて来る。(あひるの白、とか、水とか……)
ともかく全編が命の力に満ちあふれ、輝いている。汚い歯並びさえ、命の力の象徴のように思えて来る。
主役のひとりの少女もとても気に入ったなあ。はつらつとした色気がある。それも男に媚びていない色気がある。いまどき、こんな清潔な色気のある少女(女性)は日本にはいないなあ。(少なくとも俳優やタレントには。)
ドナウ川も自然に満ちあふれ美しいし、木々も草も泥も美しい。もちろん、そこで見られた夢はもっと美しい。愛らしい。まばゆい。
全部が全部、自分の命の力をむさぼりながら、自分の命をむさぼり、食い尽くすことで成長して行く。輝いて行く。喜びを増やして行く。幸せをつかんで行く。
見逃すと99年の不幸。見逃した人はノストラダムスの大魔王に直撃され、それに気づかなかった人だと思って下さい。(笑い)
*
あ、この映画を見ながら、私は中上健次の小説を思い出した。
エミール・クストリッツァに中上の小説を映画にしてもらいたいなあ。
「枯木灘」とか「千年の愉悦」とかね。
エネルギーが充満し、そのエネルギーゆえに破滅して行く人生だとか、時間がとまったような至福感、粘着力のある文体とか……うーん、見たいなあ。
しーくん(★★★★)(1999年9月6日)
kanpoh1@dus.sun-ip.or.jp
前評判が高かったので見に行ったのですが、正直なところ期待ハズレでした。但し“期待ハズレ”だったのは、自分が勝手に“アッハッハー”とめちゃくちゃ笑える作品を期待していたので、それがハズレだったという事です。思いっきりは笑えませんでしたが、2時間を越える上映時間が退屈だったということはありませんでした。ちょっと中だるみはあったのですが面白かったです。ヤクザのダダンがラジニカーントにとてもよく似ているような気がしました。以前『インディジョーンズ・魔宮の伝説』で「フィルム自体に魂があり呼吸している」という評価をしていた映画評論家の方がいたのですが、この作品もそれがあてはまると思います。ゴチャゴチャした作品だとは思うのですが、人間の魂がフィルムにに乗り移ったみたいで、ものすごいパワーを感じることが出来ます。ほとんど色気の無い男くさい映画なのですが、地平線の彼方まで続くひまわり畑は、どきっとするくらい美しいシーンですし、ダダンの妹が最後でかわいらしく見えた(彼女は身長がかなり低く、太めで、そばかすだらけの顔、気性も激しい)のは、この映画が持っているパワーのせいでしょうか?・・・さて、以前パンちゃんが「大阪の人は映画で笑わない」と書かれたことがありましたよね。私が最近見たコメディーだと『イン&アウト』『メリーに首ったけ』がありますが、両作品とも笑い声が響いていました。だから(そんなことは無いのに・・・)と思っていたのですが、この作品では、後半に少し笑い声が聞こえた程度で、前半なんかシーンとしていました。コメディ映画なのに笑いが無い・・・パンちゃんが言ってた事を目の当りに体験しました。まぁ、私自身も笑わなかったのですが・・・だから他の地域の反応がどうであったのか非常に興味があります。タイトルになっている黒猫と白猫、アヒルの軍団、でっかい黒豚等、動物が意味無さそでありそうな感じで時々出てくるのが何ともユーモラスです。但し、私には黒豚がガリガリと車をかじるシーンは何を意味しているのか解りませんでした(誰か教えて・・・)。ちなみに私が声を出して笑ったのは、最後でアヒルがダダンに***されるところです。私の笑うポイントなんてこんなものです。トホホ・・・