ミュージック・オブ・ハート


監督 ウェス・クレイヴン 出演 メリル・ストリープ、アンジェラ・バセット、エイダン・クイン

(2000年9月28日)
http://www.d1.dion.ne.jp/~goronyan
もしかしたら 今年観た映画の中で、涙ぐむ回数が一番多かった映画かもしれません。
今の自分にちょうどハマった映画でした。
母親と娘 夫と妻 親と子 男と女・・・・・
それらのドラマの中の どのメルリ・ストリープにも自分を重ね合わせられ、そのつど涙ぐんでしまいました。
ネタばれです。
気持ち的にはこんな箇所でハマリました。
水辺のそばで子供と遊んだ日、恋人を問い詰め、二人の関係にキリをつけるところ。
長男が”ボクの生まれた日の事を話して・・”と言った後 父親を失ったわけを説明するところ。
コンサートのとき拍手をしながら母親が 隣の人に”私の娘なのよ・・”と話すところ。
それぞれ、女として 母親として 娘として 痛いほど気持ちがわかりつらかったです。
母をなくした私は ”私は母の自慢の娘ではなかったなぁ・・”と母を思いだし切なかった・・・・
自分に自信をもってヴァイオリンを教え続けるロベルタが とてもまぶしかった・・・
彼女自身 厳しいレッスンに耐えぬいてきたからこそ、自信を持って音楽を愛し その「心」を人に伝えれるのだ。
そして彼女がそこまでできたのは、子供たちの輝く顔があったから・・・
子どもたちがみんなよかった。
母と一緒にアンサンブルをし、雇用が成立した時の嬉しそうな顔。
禁止されていた授業に復帰できたときの、父親に誓約書を書いてもらえた時の、輝いた顔!
母親としても子供に自信をもたせることが いかに大きな力になるかをみせてもらいました。(怒鳴ってばかりじゃだめなんだよね・・)
音楽を愛するひとりとして、”音楽は最高!” 
また合唱の仲間に戻りたくなりました・・・・
★★★★
パンちゃん(★★★)(2000年9月15日)
音楽を媒介に子供のこころを育てる。自身を持たせる。しかし、行政の側からは、感情の教育に金をかける余裕はない。授業に金を出せない、という問題が持ち上がって……。
と、書くと『陽のあたる教室』(リチャード・ドレイファス主演)を思い出してしまう。
うーむ。
なぜ「音楽」だけが、映画の題材になるのだろうか。
たとえば「絵画」を媒介に子供たちの成長に努力した先生がいても不思議はないし、美術の授業が廃止になっても不思議はないと思うが、なぜか映画になるのは音楽の授業、音楽の先生だ。
これは、きっと相性の問題なのだと思う。
映画には音楽が不可欠だ。映像に、映像を超えた意味を、というか感情の動きをつけくわえるには音楽がとても効果的だ。ことばで説明するとなんだかうるさくなるが、悲しい響き、不安な響き、こころはずむ響きが映像に付け加わると、映像がとたんに輝いて見える時がある。
視覚と聴覚は、感覚のどこかでつながっていて、それが相互に影響しあうのかもしれない……。
と、いうことは、この映画とは関係ないことか。
しかし、なぜか、考えてしまった。
こんなことを考えてしまうのは、感動的な話ではあるし、実際に、子供たちが演奏会に到達するまでの過程には感動もしたし、パールマンの隣でバイオリンを弾いた少年の笑顔の輝きには涙が流れそうになったが、どこかで、何かが違うなあ、という思いが残ったからだろう。
何が疑問だったのか。
メリル・ストリープの演じる主役の女性が、音楽を教えることで、どんなふうに変わったのか、私にはよくわからなかった。
立派な先生であることはよくわかったが、どうもなじめない。
バイオリンなどさわったことのない子供に音楽を教えるという過程では、彼女自身の考え方、感じ方をまったく否定される瞬間があったと思う。教えるのではなく、子供から逆に教えられる瞬間があったと思う。
その瞬間が、私には、よくわからなかった。(足の不自由な少女との触れ合い、「死ね」と言った少年が死んでしまって悲しむ初年との触れ合い、自分の子供が勝手にだしたデートの手紙……など、それに類似したエピソードはあるにはあるが。)
これは、逆からいえば……。
たとえば、音楽の授業を続けるためにコンサートを開く、そこで子供たちに演奏させ、生きる自身を持たせる。同時に、その収益で、今バイオリンを引いている子供たちの後につづく子供たちのために教室を維持する。それは、あなた方の仕事なのだ、ということを子供に教える----そういうこころに、たとえば、パールマンやスターンは教えられたのではなかったか。
主人公の女性は、パールマンやスターンから見れば、優れた演奏家ではないだろう。しかし、彼女のしていることには教えられることがある。だから、協力したのだろう。
そうした関係、自分よりも「未熟」なものから教えられ、それを契機に彼女自身が変わる、という瞬間が感じられなかった。
それが不満だ。
これは、たぶん欲張りな注文なのだろうけれど。