もののけ姫


監督 宮崎駿 声 松田洋治 石田ゆり子 田中裕子ほか

ミワ(★★★★★)(2月26日)
miwa.f@infotopia.or.jp
いまごろもののけ姫なんて遅いですね。でも今日はじめてこのサイトに来たもので・・・。
私はこの映画見てすっごいうれしかったです(★★★★★)。日本をこんな風に見てる人がいる、と思って。(なんていうと宮崎監督に対してはなはだ僭越ですが。)室町とファンタジーって結びつかなかいようだけど(確かに違和感ありますね)、これは日本の神話だなー、と私は思ったんです。パンちゃんさんの「ギリシャ悲劇」という捉えかたにちょっと近いですね。
あのぐらいの時代だとまだまだ日常に起こるさまざまな現象が超自然的であり、神と人間の距離がごく近かったんだと思います。アシタカとサンは、自然と人間のぶつかり合うところで、出会うべくしてであったように思えます。
神話や民話として残っているものって、案外実話なんですよね。「スノー・ホワイト」(二重かっこが出ませんすいません)とかも、実は実際に起こってたことはあんな感じで、それが美しい物語として残ったり、はたまた鬼に食われて終わっちゃうような物語もあったり、という具合になるんでしょうね。そういう意味で、私には「もののけ姫」も、実際に起こり得た、日本人が経験してきた物語として胸に迫ってきました。日本の太古の自然ってああいう感じのものだろうなー、という私の想像ともかなりマッチして、すばらしかったです。
ここで関係ないことのグチになるんですが、日本の歴史教育は(言語教育もだけど)やっぱりおかしいと思う。歴史は経験であると同時に物語りでもある、といいうことがちっとも感じられないですよね、あれじゃあ(と、いい歴史の先生をもった少数の人以外は今までに受けた歴史の授業を思い出してみてください)。なんでこんなことをいきなり言い出すかって、「もののけ姫」のプログラムに解説を書いてた網野喜彦という人の「日本の歴史をよみなおす」っていう本が、私はとても好きなんです。「日本の〜」を手始めにいろいろ読んでいったら「日本」という国に対する私のイメージはどんどん変わっていって、「もののけ姫」も、より深く理解できたんじゃないかなぁと思います。
こういうものを書くのは慣れていないので、なんだかわかりにくいですね。すいません。ひとことで言います。
「もののけ姫」は実話だ。

パンちゃん(★★★★★)
この映画の魅力は野蛮である。抑制のきかない感情である。暴走する情念である。呪いであり、怨みである。過激さである。
ここには解決などない。ギリシャ悲劇と同じである。解決などないのが悲劇の本質であり、悲劇の感動の源である。
荒々しい感情は対立し、傷つけあい、滅ぶだけである。
しかし、それが美しい。なぜが。そこには純粋な命の輝きがあるからだ。ひたすら自分の信じるものに対してまっしぐらに突き進むものがあるからだ。
スクリーンからあふれだしてくるのは、その力だ。信念を生きる力だ。
誰が正しいとか、誰が間違っているとかは関係ない。人にはそれぞれ、自分の信じることが正しいと思う権利がある。そして、それを正しいと思う思い込みの強さこそが、何かしら不完全な感情(私たちのあいまいな感情)を励まし、育ててくれる。
そこには常に不可解なものが存在し、そして、不可解であるがゆえに、それはその人独自のものであると信じることもできる。
圧倒されるというのは、たぶん、こういうことをいうのだと思う。
不可解であるが、そこには確かに命がある。一つの感情の力がある、と感じること。その力を、わけもわからず、信じるしかなくなること。それが圧倒されるということだろう。
力にあふれた映像。コンピュータグラフィックス全盛の時代に、あえてぎごちない動きで荒々しさを表現した映像も非常に魅力的だ。
声優も素晴らしい。特に田中裕子がすごい。自然を破壊する立場、いわば悪役なのだが、虐げられた女や病人を救い、人間性豊かな社会を作ろうとする、その人間性がくっきりとあらわれる芯の強い響きの声が魅力的だった。人間性豊かな社会を作るためには自然を犠牲にしなければならないという苦悩さえ感じとれた。彼女の声がなければ、この映画は、もしかすると単純な勧善懲悪ものになってしまったかもしれない。彼女の声が、この映画を勧善懲悪の見え透いたストーリーではなく、複雑な叙事詩にしている。
とかげ王(★★★★)(8月7日)
lizard@osk2.threewebnet.or.jp
http://www2.osk.threewebnet.or.jp/~lizard/
「ナウシカ」に続いて「人類と自然は共存の道を見つけることが出来るのか」というテーマが貫かれている。
しかし、この作品でも結局はその回答は示されていない。依然観る者へ問い掛けるような形で物語は終結する。そして繰り返される「生きろ」という言葉。
人間が自然を破壊し続けるのは、種の保存の為の必要悪なのか、生きる為には他の何かを犠牲にする運命から逃れられないのか。それでも生き続けなければならないのか。宮崎監督は鋭くこの問いを胸に突き付けてくる。
少し気になったのは物語が複雑過ぎて、『もののけ姫』の存在理由が途中からやや曖昧になってしまっていることだ。「ナウシカ」は物語の原動力となって、周囲を巻き込んでぐいぐい話を引っ張っていってのに対し、サン、そしてアシタカは話の流れに寄り添うような形で存在する。その部分だけで批判するのは間違ってるとは思うのだが、物足りなさを感じたことは否めない。
だが、観終わったときは、もう一度観てみたいと思った。何重にも張り巡らされた話の構成をもう一度ゆっくりと確かめながら観てみたいものだ。
この作品は宮崎作品の集大成だと言っても過言ではないと思う。
自らを「老害」と呼び、アニメ制作に終止符を打った宮崎監督の人類、そしてすべての生物に向けた壮大な愛の賛歌である。
エローテ(★★★★★★★)
elote@tky.threewebnet.or.jp
http://www2.tky.threewebnet.or.jp/~elote
この映画でキーになるセリフは3つだと思う。1つ目は、タタラ場で客人としてもてなしを受けているアシタカの「女が元気な町はいい町だ」という言葉。2つ目は、「自然と人間が共存する方法はないのか?」。3つ目はジコ坊の「バカにはかなわねえ」。
私は、特に最後の「バカには……」が気に入っている(自分がバカだから?)。
桐田真輔(★★★★★)(8月13日)
kiri667@tky.threewebnet.or.jp
http://www.threeweb.ad.jp/~kiri667
迫力満点。登場する職能集団のカラフルさや、山や森に住む神々のカラフルさは、価値観を異にする様々な集団や民族が共存する、現代に通じます。問題意識に共感。
じゅんこ(★★★★)(9月4日)
junko003@eis.or.jp/
http://www.eis.or.jp/muse/junko003/index.htm
室町時代の日本とファンタジーの合体に始めは多いに戸惑ったが、それぞれの神の象徴するものや世界観がつかめてからは違和感が消えた。みなさん、賞賛されているので(私の意見もおおむね皆さんと同じ)気になったことを1つ2つ書くと、日本語のセリフがききとりづらいのって私だけ?
「もののけ」がというより、日本の役者はボソボソしゃべる。特に若い役者は。「誘拐」の長瀬正敏はハッキリしゃべってたけど。なんだか自分が外人になった気がするなあ。たぶん私ら日常的にあんなふうにしゃべっているのね。
それから、宮崎駿の描くキャラクター、どうも最近、顔が同じ。すぐに慣れるが始めはどのキャラが誰か、すこし混乱する。まあ、主要人物だけ覚えていればいいんだけど。
それから、最後がちょっとあっけない、いや、急いでしまった気がする。あと、もうちょっともったいぶって欲しかった。
アシタカとサンの関係ってなんなんだろう。なんか、その辺が淡泊。あの二人の愛憎にもう少し、あともう少し、書き込みが欲しかった。自然と人間の愛憎はもっと、なんというか、手に負えないハズだ。まあ宮崎アニメにドロドロした愛憎劇を求めるつもりはあんまりないけど、その点で、一番優れているのはコミックスの「ナウシカ」でしょう。読んでね。
それにしても、こういう構想も内容も壮大な作品をアメリカで公開(来年春)できて良かった。えっへん、と思う今日このごろ。
のはら(★★★★★)(10月19日)
oooo@kt.rim.or.jp
http://www.kt.rim.or.jp/~oooo
見終わった後、深い深い絶望感でどうしたらいいのかわからなくなってしまった。
でも何かしなければ!この映画はかすかな希望も残してはくれたから。
最後に現れた緑の風景(つまりは今の私たちの住む世界の)が以前の聖なる自然の風景とは違うのだということを認識するのはあまりにも悲しくてつらいことだった。
映画館から出たら騒がしい有楽町の町の真ん中で巨大なビル、たくさんの車。人間の欲望のままの町だった。
もしまだ豊かな森の戻る可能性があるのなら、いっそ今すぐ人に天罰がくだされてほろんでしまったほうがいいのでは???
なんてことも思ってしまった。でもやっぱり人間一人一人っておろかでとってもいとしい。
なんだかまだまとめられませんが、この映画には激しく魂ゆさぶられました。(かなり構えて見に行ったのだけど)
私に何ができるだろう?!!!
宮沢賢治の童話の中のある先生の、わたしたちはどんなことをしないではいられないだろう?・・・という言葉をふと思い出した。
この映画はたくさんの子供たちに見て欲しいと思う。この種を持って大きくなったら、将来きっといいと思う。


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