女と女と井戸の中

監督:サマンサ・ラング、出演:パメラ・レイブ、ミランダ・オットー
石橋 尚平(★★★)(2月21日)
shohei@m4.people.or.jp
http://www.people.or.jp/~gokko/index.htm
映画として抜群のいい素材だと思うのだけれども、まだ若いからか鋭いと思わせるところと、退屈な自己満足に終わってしまっているところが混在していますね。『アイ・ウォント・ユー』と同様で、ブルーを基調とした映像が賛否両論だと思うけれども、これは『ブリーチ・バイパス』なる技法でコントラストを際立たせているらしい。私が気に入ったのは、キャスリンに逃げられたヘスターが銀食器を磨きながら、自分の顔を映すところと、最後に井戸の蓋として用いられる金属の鈍い光沢。心理劇に鏡はつきものですね。J・ロージーが好きな人は当然知っていることですが。
後、ブルーを基調とした中に、黄色い編み帽子や黒い鶏が出てくるのがいいですね。だけど、やはり私はこの映画については、ちょっとブルーがうるさすぎるというか、たいした表現になっているとは思わない。『ピアノ・レッスン』ほどの効果はないと思う。
まあ、女性監督の初めての作品で、こうも分かりやすい隠喩(メタファー)を堂々とそのままの素材にして、心理葛藤劇を作ったというのは、やはり図々しくて偉いというべきでしょうね。カンピオンよりも才能があるのかもしれない。
私はこの映画、前半が退屈だなどと野暮なことはいいません。というのは、この女性、あくまで二人の女性の関係を描きたかったわけだから、これでいいんだと思う。たしかに前半の流れがちょっと澱んでいる感もあるけれども、むしろ、後半の心理的葛藤劇が凡庸だと思うのだけれどもね。
私は基本的姿勢として、なるべく、観た映画のいい部分を強調して書こうとするのだけれども、たまにはきっぱり言わせてもらうと、どうもオーストラリア系(NZも含めて)、あるいは出身の映画って、どうもある種の繊細さを欠いている気がする。個人の強い思い入れ(ある女性監督)なり、田舎の社会派(今ハリウッドにいる人)なりの作品はあるけれども、その素朴さというか、退屈さというものがどこか変な勘違いされて珍重されている気がする。私に言わせるといずれも野暮ったくて大味なだけで、映画的な魅力がないんですけれどもね。実はちょっと期待している『トップレス』もなんかその暑苦しさが予告編にみなぎっているでしょ。


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