大いなる幻影



takoyan(★★★★☆)(2000年12月5日)

黒沢清の映画はいい。
なんといっても「絵」がすごい。
客観的な第三者的な視点で、遠くから人物の動きを捉えている。
淡々と公園でボールをけりつづけている「絵」 武田信二が窓の縁に腰掛けながら、段段と薄れていく「絵」がとても印象的だった。
淡い色使いもよかった。
なんとなく、ふらふらと浮遊するように生活している若者の日常を淡々と描いた作品。
全編を通して台詞はほとんど無い。ただ単調とした「絵」が延々と続いていく。
その「絵」が効果的に心情を表現していた。
本当にその場にいるのかいないのか、ふとすると消えてしまいそうな気がする不安。人間誰しもが 持っているものだと思う。
それを理性で封じ込めるのが大人であって、消えてしまいそうな中で必死に消えないように、存在を 確かめるように奔走するのが若い人。
その不安とあせりを、黒沢監督独特の世界の中で見事に捉えている。
☆が一個すくないのは武田信二の演技がよく分からなかったから。
かといって、この役ができるのは武田信二意外に思い浮かばないんやけど。