オー・ ブラザー



監督 コーエン兄弟 出演 ジョージ・クルーニー、ジョン・タトゥーロ、ティム・ブレイク・ネルソン、ホリー・ハンター

パンちゃん(★★★★★)(2001年11月3日)

人間の誠実さとでたらめさ、正直と嘘つき、愛と欲がバランスよくまじりあっていて、とてもおもし ろい。人間っていいなあ、と思う。こういう映画は大好きだ。
「ユリシーズ」の「盲目の預言者」「行く手をはばむ魔女」「魂を売った男」「ユリシーズを見破る(?)犬」などが、奇妙な具合にアレンジされていて、その 感じもおもしろい。
何より、ストーリーがあるのかないのか、というか、ストーリーとは関係ないようにして、突然あらわれる登場人物がおもしろい。そこから始まる関係がおもし ろい。
たとえば「行く手をはばむ魔女」の三人は、台詞もなく、ただ歌って主人公たちをまどわせる。ジョン・タトゥーロを賞金目当てに売ってしまう。これは、ス トーリーが展開したあとでわかることであって、三人の女と三人の男が、水辺でいちゃいちゃしている部分だけを見たら、何のことかわからない。なぜ、この シーンが?と思ってしまうかもしれない。
しかし、そんな疑問より前に、不思議な感じに飲み込まれる。女たちの歌の美しさ。その視線。三人がそれぞれの相手を選ぶ視線の不思議さ。森の美しさ。光の 美しさ。ぬれた女たちの服のおもしろさ・・・。
一瞬一瞬が充実している。どこまでいっても充実している。
音楽のつかい方もとてもおもしろい。ギリシャ悲劇の「コーラス」は、登場人物にかわって状況を説明するときがあるが、そんな感じで、登場人物たちの生きて いる世界の状態、その世界で起きていることがら、世界の状況を伝える役目を果たしている。
たとえば、河での洗礼のようなもの、KKKの儀式、などが歌声とともに浮き彫りになる。
この感じが、とてもおもしろい。
まあ、実際に、そうしたことが事実としてあったかどうかではなく、そうしたことがらがコーラス(歌)とともにあることによって、これは「現実」ではなく、 「映画」なのですよ、といっているようで、楽しい。
ここで描かれていることは、嘘、作り物、ということを明らかにしておいて、その嘘のなかにある真実というか、嘘にまみれてもけっして輝きをうしなわない人 間の美しさのようなものを伝えているのが、とてもいい。
予告編にもあった、洪水にのみこまれて犬が流されるシーン。犬が水中でぶくぶくと息をもらすシーンなどもいいなあ。
アメリカ南部のかわいた空気の色も、とてもいい。
アメリカ南部をさまよって見たい気持ちになる。


りょうこ(2002年2月23日)

素晴らしい。
色彩、音楽、背景、ものすごくいい。
古きよき時代をうまーく表現していると思いました。
そして、醜いことやひどいこと汚いことをしていてもそれには何らかの理由があり、それにいたる人物の心理描写。
とても上手だなと思いました。
イヤな気にさせるところがない。
★は5個で。
それにしてもジョージ・クルーニー、歌上手いんだ・・・。
せんしゅ(2001年11月 17日)
★★★★★
サントラを聞きながらメールを打っている。
コーエン兄弟の作品は毎回違った感じで、昔から大好き。
エコ贔屓じゃないけど、今回の新作は、話のひねり度は低い反面、とてもほのぼのとした感じで、ユニークなキャラクターや、すばらしい南部の風景(うまくデ ジタル処理されてるけど)に音楽に心癒された。どんな悪いことをしても、悪い奴でも、音楽は過去の罪を洗い流してくれる(^_^)。カンヌで賞をとった次 回作が早くも楽しみ。
Colles(2001年 10月29日)
☆☆☆☆
ブルーグラスを好きな人は、楽しめます。
keep on the sunny side of life.
It will be celebrate
if you keep on the sunny side of life
とかなんとか、いってました。
きっとそうだよね。
とおもわせてくれるようなところがあります。
なぜそうなのか。不思議なんですよ。
主人公達は、悪いことして脱獄してくるんですよ。
黒人は、差別をうけているし、あやしげな宗教団体は、でてくるし、友人はうらぎるし、不正な選挙活動はするし、正しくしていれば、幸せになれるなんて、社 会は、描かれていないのにね。
それでも、
keep on the sunny side of the life !!
すすめ〜。