ら くだの涙




出演 母親らくだ、赤ちゃんらくだ、モンゴルの風
  
panchan(★★★)(2004年11月10日)
こういう映画を見ると世界を形作っているのはなんだろう、と思わず思ってしまう。
人間がいて、その人間には精神と感情があり、肉体があり、人間は地球に存在するものを利用して生きている。
他の生き物(植物や動物)は?
私にはよくわからないけれど、やはり人間と似たようなものだろう。何かを利用し、また互いに利用されながら生きている。
で、生きるということは?

この映画を見た後では、生きるということは、わからないものがあるということを実感することなのだと思う。そして、そのわからないものがあるということ を、私だけのものではなく、他の人に(あるいは他の生き物に)そのまま残しておくことなのだ、と思わずに入られない。

おなかを痛めて生んだ赤ちゃんらくだ。その赤ちゃんをどうしても好きになれずに、邪険にあつかってしまう母親らくだ。そのらくだが人間の歌う歌、楽器の音 を聞き、涙を流す。音楽を聴くことで、母親としての情感を取り戻す。
――なぜ、そうなるのか?
わからない。
わからないけれど、そういうことが実際に起きる。
これは、そういうことが起き得るということを知っているモンゴルの人々がいるからだ。モンゴルの風のなかには、そうしたスピリットのようなものが生きてい る。
それは目では見えない。耳でも聞こえないし、手で触ることもできない。
それをどうやって残していくか。私たちだけで「消費」してしまうのではなく、地球が存在するかぎり、今、ここにあるものとして残していくか。

たぶん、そういうことをこの映画は、問い掛けているのだろう。