ロスト・ハイウェイ

監督 デビッド・リンチ

ふじ(1月8日)
fujimoh@alpha.co.jp
ビデオで見たけど、意味がさっぱりわかんない。
誰か解説してちょうだい。
とかげ王(★★★★★)(1月15日)
lizard@osk2.3web.ne.jp
http://www2.osk.3web.ne.jp/~lizard/
subject: ロスト・ハイウェイ
では、お答えしましょう。
私は映画館で見たのですが、やはり前で見ていた男性が「なんのこっちゃんねん?さっぱりわかれへんわ。」と言いながら、出ていったのを今でも覚えています。
リンチの映画を見る「コツ」は、いちいち理屈で考えないことだと思います。考えれば考えるほど深みにはなるだけでしょう。
なんといっても彼は確信犯ですから(笑)。
まずデヴィッド・リンチが何を描きたかったのかということ。
突然送られて来る家の中を写したビデオテープ。
そしてそれはだんだんと家の中から寝室、つまりプライベートの踏み込んできて、ついに未来も映し出す。
妻は殺され自分(プルマン)が犯人にされる。そしていつのまにか別の人物と入れ替わり、そこに殺された筈の妻にそっくりな女性が現れて、狂気の道に誘う。ここまで観て、私は「ああ、この映画は”悪夢”を具現化しようとしてるんだな」と考えました。
ではこの話は夢の中の話かというと、それも違うと思います。
リンチは日常に潜む恐怖を描くことに長けた監督です。
ビデオテープを使った演出は、現代人特有の情報化社会の中でのプライバシー流出の恐怖を暗喩してるのだと思います。
最初のシーンで「・・・は死んだ」とインターホンから聞こえてくる声はB・プルマン自身のようですね。
もう一度観たら分かると思いますが。あの言葉のバックに微かにパトカーのサイレンの音が入ってます。
プロローグがつまり結末だったわけですね。
この映画の一番の恐怖は何も解決しないまま話が終わることですね。
つまり映画ではビル・プルマンが見ている悪夢が、映画が終わると今度は観客が悪夢を見る側になるわけです。何も解決しないというのは凄く後味が悪いですからね。リンチもひとが悪いですね(笑)。
「ツイン・ピークス」でも感じたことなんですが、リンチは近代合理主義に対して警笛を鳴らしてるんじゃないでしょうか?
人には寓話というか科学で説明出来ない物語が必要なんだと思います。
彼は映画という表現媒体を使って現代人に夢と恐怖を味わう機会を与えてるような気がします。
ここまで書いたら細かい説明は必要ないでしょう。
彼の映画の中では何でも起こり得るんです。いちいち理屈を付けずに彼特有の映像世界に身を委ねるのが正しい見方じゃないかと思います。
映画を見てる間は、彼が作り出す狂気の世界で自由に泳ぎ回るのが私の楽しみ方です。
まあ、とにかくこの映画は97年度の私のベストワンです。
前作から随分ブランクがありましたが、キ○ガイぶりが相変わらず健在でホッとしました(笑)。


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