シンプル・プラン


監督 サム・ライミ 出演 ビル・パクストン、ビリー・ボブ・ソートン、ブリジット・フォンダ

タカキ(★★★★☆)(1999年10月8日)
TakakiMu@ma2.justnet.ne.jp
http://www2.justnet.ne.jp/~takakimu/WELCOME.htm/
どうも。久々の投稿です。
『シンプル・プラン』。
素直に感動してしまいました。
とある冬の日の田舎を舞台にしたサスペンスという点で、97年(96年だっけ?)のコーエン兄弟の『ファーゴ』を思い出さずにはいられないのですが、しかし『ファーゴ』とは対称的なところが多いです。複雑に絡み合い、錯綜する人物それぞれの思惑から一つの神話的な物語を編み込んでゆく(アメリカ人が好きそうだ・・)のが『シンプル・プラン』だとすれば、『ファーゴ』は、何も起こらない日常、何かが起こってもそれに対して過度に鈍感であり続ける現代人を、きわめて弛緩した映像で垂れ流す(こちらは日本人向きかな?)。
面白いのは、それぞれの映画全編を覆う真っ白な雪が、『ファーゴ』ではのっぺりしていて弛緩した空気を際だたせているのに対して、『シンプル・プラン』では緊張感を演出する重要な役割を果たしている、ということだと思うのですが、どちらもそれぞれに旨味があって、私は好きです。
個人的には『ファーゴ』の主題が好きなのだけど、しかし、映画の完成度としてはこの『シンプル・プラン』の方が断然、勝っていると思います。
ビリー・ボブ・ソーントンの、ああいう役回りには私はどうしても弱い。『スリング・ブレイド』も良かったけど、今回のジェイコブ役は、この映画の良心、というよりもなにか我々にモラルの問題を直に突きつけてくる、地上界に隠れ住む神、かと思いましたけれど。最後のシーンなんて、あれ、キリスト級(?)です。
私は、泣かずには居れなかった。
jean(1999年10月8日)
jean@pop21.odn.ne.jp
星3つ、ビリー・ボブ・ソーントンに。
この人ってスゴイ役者さんですね。この人の主演・助演映画、これを入れて4本は見てるけど、どんな顔してるのか、未だによく分からない。
今回は、泣けそうなくらい哀れっぽい、うらぶれた男の役だったけど、これがまた似合ってました。
なんか近寄ったら匂いが漂ってきそうな・・・煮しめたようなにおいが。こんな体臭まで表現できるなんて、やっぱりただ者じゃないなあ。
でも、あのラストは予想できなかった。実は兄貴が一番食えない奴で、気弱そうな素振りのかげで、悪知恵を懸命に働かせているんだとばかり思ってました。警察への自白のせりふを仲間にしゃべらせる場面での、あのとぼけっぷりは強烈だった。
あの場面はほんとにだまされました。弟への敵意をあらわにするのも、芝居とは思えなかったし。実際、芝居じゃなかったと思うなあ。
だから余計にあのラストはやりきれない。
弟も、あそこで引き金引くかなー。そうするのが当然なんて、見てる間は思ってた自分もこわい。
パンちゃん(★★)(1999年9月22日)
うーん、「オール読物」新人賞佳作、といったところでしょうか。
ストーリーに破綻はなく、それなりに加速というかずるずると不条理に落ち込んで行くんだけれど……。
味気ない。
視点が弟と兄との間を行ったり来たりするのも、奥行きをなくす原因だ。
それにねえ……。
雪の描写がつまらない。まるで書き割り。芝居の背景にすぎない。
『スウィート・ヒアアフター』や『デッド』『ルードウィッヒ』のような雪には本当に感心するが、背景の雪がこれだけ薄っぺらだと、そこでうごめく人間も薄っぺらにならざるをえない。
風景をとらえる目も人間を結局同じということか。
しーくん(★★★★)(1999年9月21日)
kanpoh1@dus.sun-ip.or.jp
『マトリックス』の2回目の鑑賞をと思って出かけたのですが、立ち見状態だったのでこちらを見ました。で、これが予想以上の拾い物でした。後味はちょっと悪いかもしれませんが、人間の“欲”の深さ、心境の変化を非常にうまく描いている作品だと思います。良かったと言うよりは、いろいろと考えさせられる映画ですね。ふとしたきっかけで、大金を見つけてしまった3人の男達。最初はごく冷静に対処法を考えますが(シンプル・プラン)、ある事件がきっかけで予想外の展開になってしまいます。封切り直後なのでこれ以上は書けませんが“普通の人間が一番怖い”というキャッチコピー通りの作品です。兄弟の兄を演じるビリー・ボブ・ソーントンがすごく良いです。おそらく、観客の誰もが彼を“うっとおしい存在”として最初は見るでしょう。しかし、ある事件がきっかけで彼の心境が変化します。ラストは彼に思いっきり感情移入しちゃいました。主人公の妻を演じるブリジット・フォンダも良いですねえ。彼女がほとんど無表情で冷静に考えるプラン(悪知恵?)には脱帽です。そして“普通の人間”を演じるビル・パクストンがこれまた良い。特にラストで兄を***する迫真の演技は思わず手に汗をにぎってしまいました。大金を見つけるのが大晦日というのが人生の転機を強調しているような感じがしました。全編にわたりカラスが不気味に描かれていて、このあたりはサム・ライミっぽいです。大金を手にしたら・・・誰もが1度は考えた事があるでしょうが、実際に大金を目の当たりにした人間の欲の深さは計り知れないものがあることを考えさせてくれる作品でした。
川島(1999年9月21日)
clara@muj.biglobe.ne.jp
うーっ、★★★。それ以上はどうも…つけられない。
『平凡でいることが人間にとって一番幸せなこと。わかっちゃいるけどそれが一番難しい。なぜなら人間には抑えてあまりある欲があるから。』
墜落した飛行機の中にあった440万ドルという現金を手にしてしまうことからこの映画の悲劇が始まるのだが、肝心のぎらぎらとしたこの「欲」をあまり感じられなかったのはなぜだろう。普段まったく普通に生活している人がなぜ犯罪を犯してしまったのか、その境界線はどこにあったのか、犯罪の領域につい一歩踏み入ってしまう瞬間の恐さ、これらがあまり描けていないように思えたのだ。
「お金」のせいなのは確かなんだけどそれだけじゃあないでしょう、その他もろもろの要因があってそれで、という描写がどうも物足りないなぁ。
みんなどことなくイイ人…にしか見えないし。あれよあれよと言う具合の芋蔓式の殺人もどうもあれではテンポが悪いよ。
ま、今現実の世界の方がすごいもんね。
保険金殺人とかお金をめぐる事件のいろいろが。事実が映画を越えちゃってるんだね、きっと。事実は映画より奇なり。
しかしブリジット・フォンダはかなりミスキャストだと思う。
この役に彼女では品が良すぎるのではない?