シャンドライの恋


監督 ベルナルド・ベルトリッチ 出演サンディ・ニュートン、デビッド・シューリス

とみい(2000年6月26日)
私には、まったく理解できない。
なにかというと、不倫をする人の心理が、である(なぜなら、 そういう立場を経験したことがないから)。
実はこの映画、知人の間では、評がまっぷたつに割れていた。
結婚してる奴が、絶賛していたのは、意味深だったなあ。
そういう意味で期待と不安があったのだが。
この映画、一つひとつのカットが、綿密な計算のもとに撮られているというのが とにかく強く印象づけられた。
台詞ではほとんど説明がなくとも、シャンドライの置かれた立場、 彼女と彼女に魅かれる男の葛藤がなんと饒舌に、語られていることか。
「ロゼッタ」の映像が評価に値しない、その証明が、ここにある。
余韻のあるラストというのは、こういうものだ。
ただ、私には一方で冒頭の思いを払拭できないゆえ、高い点がつけづらい。
独身で旦那持ちに惚れたことのない現段階では、★★★☆で勘弁して。
Kaeru(2000年5月19日)
最近は手ぶれ風映像やCGがはやっていますが、映像の工夫をするというのはこういうことなんですね。
ストーリーもさることながら、随所随所に愛すべき部分がある映画です。
音楽、主人公の住むローマの町、骨董品、大学の授業風景、ピアノ、アフリカ音楽、らせん階段、中庭、子供たち。
主人公たちのセリフも、手紙に書かれる言葉も極端に少ないですが、同じ言葉の繰り返しにこんなに思いが込められるなんてすばらしい。
シャンドライが手紙を書いては捨て書いては捨て、最後にたった1行の手紙になる場面は忘れられないです。
ラストシーンもこれ以外に考えられないというくらいでした。
パンちゃん(★★★★★)(2000年5月8日)
ベルトリッチの作品は好きなのと嫌いなのと両極端にわかれてしまうが、これは好きだ。この監督の描く恋愛はいいなあ。
どんなふうに愛していいのかわからない。けれど愛したい。その、まさぐって、まさぐって、まさぐって、さらにまさぐって、という感じが揺れる映像の不安定さ、断片の映像の距離感の無さ、螺旋階段のつくりだす遠近感のなかでしだいに濃密になって行く。
音楽もいいなあ。女の知っているアフリカの音楽と、クラシックとの対比、落差、距離感。異質なものが出会って、これもまた、まさぐって、まさぐって、まさぐって、という感じで近づいて行く。
いやあ、すごい。愛というものは、ときには愛するもの、そのものさえも失ってもいい覚悟をすることなんだなあ。愛するものを失ってしまって、自分が自分でなくなって、そして新しい自分になってしまう。
この感情の深み、官能の深み……危険だなあ。溺れそうだなあ。
『シェルタリング・スカイ』と同じように、とても危険。臆病な人は見ない方がいいかも。