相続人

監督 ロバート・アルトマン 主演 ケネス・ブラナー、エンベス・デイビッツ、ロバート・ダウニーJr、ダリル・ハンナ、トム・ベレンジャー、ロバート・デュバル

パンちゃん(★)(10月31日)
豪華なメンバーですねえ。監督、出演もすごいけれど、この映画は、ジョン・グレシャムのオリジナルストーリーというじゃありませんか。
しかし、スタッフが豪華なだけですねえ。なぜ、こんなそうそうたるメンバーが必要だったのでしょうか。
何が一番いけないかと言って……伏線というのは、物語が進むに連れて、物語に奥行きを与え、リアリティーをつくるものなのに、この映画は逆。
物語が進めば進むほど、前半のいい加減さ、人間描写のいい加減さが露骨になって来る。
なんで父の遺産を狙っている女が、わざわざ弁護士のパーティーにもぐり込んで、雨の帰り道で「車を盗まれた」芝居をしなければならないのだ。その盗難を弁護士ひとりだけが目撃するなんていう偶然は、いったいどれくらいの確率であるんだろう。そして、なぜそんな芝居に、夫が「離婚」したふりまでして協力しなければならないのだ。それが可能なほど成功率の高い芝居だと、悪役の夫婦は本当に考えたのか。
協力してくれる保障もない弁護士なんかあてにせず、さっさと自分たちで父を銃殺するなり毒殺するなりした方が手っとり早いし、確実だろう。父は「異常者」で「浮浪者」という設定なんだから、殺されたとしても、だれも警察になんか届けないんじゃないかなあ。そう考えるのが普通であり、わざわざ弁護士を巻き込む必要はどこにある?
罠にはめられる弁護士というのは魅力的なストーリーではあるけれど、その罠のスタートがあまりにもいい加減。弁護士を罠にはめる「知恵」があるくらいなら、父をこそ、罠にはめればいい。その方がストレートに「悪女」の凄味が伝わって来るだろう。
ストーリーのだしに子供を使ったのも大失敗。ケネス・ブラナーは台詞をしゃべるのは好きなんだろうが(台詞もうまいんだろうが)、子供に対する愛情というものを顔で表現することができない。しぐさで表現することができない。まったくリアリティーがなく、見ていて嘘っぽいという印象しか残らない。
それにねえ……女と見れば誰にでも声をかけセックスしまくるような男が、本当に「子供が一番大切」なんて考えると思う?
ただ散漫なだけの映画でした。