ス ナッチ



監督 ガイ・リッチー 出演 ジェイソン・ステイサム、ビニー・ジョーンズ、ブラッド・ピット、ベネチオ・デル・トロ

NEK(2001年6月24日)

★★★☆-☆
 エー10人だか、20人だかのチャームでオマヌケな悪党が、大金目指して四苦八苦、七転八倒の大立ち回りをしたあげく、結局骨折り損のくたびれもうけ、 金は天下の回りものって事を教えてくれる『ロック・ストック〜』は、クセのある素材(=役者)を驚く程ぶち込みながらも歯ざわりも良く、喉ごしも滑らかな 麺(=展開)、後味爽やかなスープ(=バイオレンス描写)、そして小味の利いた具(=ユーモア)と3拍子揃って、そこらの高級料理(カンヌだのベネチアだ ので審査員特別賞などを添え物にして出されるヤツ)なんぞ及びでない位美味しいラーメン(エンターテイメント作品)でした。その年の私のベスト10に入れ たいくらいでしたよ。
 で、その美味しいラーメン屋の若き店長ガイ・リッチー、今回はベニチオ・デル・トロだの、デニス・ファリーナだのといったよりゴージャスな食材を、そし て隠し味にスター、ブラピの拳闘を加える事に成功。しかもハリウッド組に認められた事でゼータクなショバに丼まで手に入れました。
 これが「麿が作っているのは高貴なる御芸術であるぞよ」なんて気取った発言を客にのたまってその実「俺様チャンの作ったモノをアリガタク受け止めやが れ!」何て事ほざくアートかぶれの自惚れ系一発屋だったら、見た目綺麗で味サッパリなんて悲喜劇を招きがちです。しかし「お客様は神様です」的庶民の味 方、ガイ・リッチーにはそんな心配は無用のもの。早速小屋へと足を運びます。
 結構客が入ってます。しかも今度は今回はオンボロ火縄銃だかラッパ銃ではなく86カラットのダイヤなんて言う叶姉妹が泣いて喜びそうな味を提供してくれ るらしいじゃないですか!
 わくわくしながら箸を手に取り食べてみましょう。
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 相変わらずピリリと小味が利いたギャグをかましながら、テンポ良くスピーディーな展開です。個性的なキャラクターの紹介も簡明直截、これは期待がもてそ うです。
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 86カラットのダイヤが強奪された事を発端に、しがないボクサー斡旋屋の丹下・ターキッシュは弟と一儲け企みます。ところがドッコイ、主人公達の前に現 れたるは孤児院ならぬデンデン虫ハウスを根城にしているブラッド・矢吹。このブラッド・矢吹、既にパンチドランカー症状が相当来ている様で、何時も酔っ 払ってるわ、何言ってるかわからないわで丹下・ターキッシュも手を焼きますが、ファイトクラブで鍛えた拳の力は半端じゃない。マンモス西の偽者なんざ1パ ンチでKOし、目指すは世界チャンピオン…じゃなくて大金だ!
 ところがパンチドランカーのせいか、八百長試合をひっくり返しちゃうブラッド・矢吹。本人の代わりに家とおっ母さんが真っ白な灰にされてしまいます。こ こで引き下がったら漢がすたる。カウンター(及び闇討ち仲間と鉄砲)を武器にリターンマッチ、偉いぞ!いっその事トリプルクロスも狙ってくれ!!
 一方ダイヤはと言うと・・・それを飲み込んじゃったワンちゃんが、事態を混乱させちゃいます。更にワンちゃん狙ってブローカー、ロシア人、ボディーガー ド、飼い主兼チンピラ泥棒が銃撃戦にカーチェイスにと大忙し。
 結局なんやかんやで欲の皮が突っ張りすぎた連中は天罰を受けまして、一部昇天、一部が怖いお兄さん達にヤキを入れられるはめに陥りまして、ダイヤは収ま るべき所へ収まります。

 …て、なんか前に食べたヤツと全く同じ料理の様な気が…いや食材豪華になった割には前より薄口になったのでは?
 いや確かに都会人は淡白な味わいを好むって言います。真の寿司通はトロより白身を好むと言いますし。今度の料理が前回より格段にいいもん使ってるっての は判ります。味も美味しいです。
 けど貴方が今回作ったのは本当にラーメンなんですか?これ食った後何が一番の美味かったかて聞かれたら「食材一杯入ってゴージャス。だけど味はしつこく ない」って答えが出てきます。でもそれは私が望んだもんじゃありませんぜ。
 前のヤツは腰の太い麺(=主役4人)がなんだかんだで一番魅力的で、ちゃんとラーメンだと判るけど。今回ラーメンって看板(=ナレーション)がなかった ら誰が丹下・ターキッシュがメイン素材だって判りますか?
 なんかスープ単体、麺単体で食うと美味いんだけど全体の味をどーしても思い出せません。ダイヤ云々だって最後に「あ、これダイヤ争奪戦だったんだ」と思 い出しましたが、モウちょっと料理の工夫の仕方があったんじゃーないでしょうか?
とみい(2001年3月15日)
★★☆。
ブラピはたしかに主役じゃないけど、むちゃくちゃおいしい役ですね。
これならファンも納得するのでは。
実はロック・ストック…を見たときにも、どう表現しようかと感じていて結局書き込まなかったことなのだが、作品としての出来うんぬんではなく、ガイ・リッ チーと私とは、相性がよくない。
画作りとかキャラの設定とか、活かし方とかそれぞれ、面白いんだけど、見ていると途中でなんとなく、飽きてきてしまうのだ。
もしかすると、「緩急がない」ということが、その一因なのかもしれない。
それは相性のいい人であれば、同じテンションで突っ走って感じられる、ということなのかも。
そういう人なら、星四つくらいはつけるだろうな、という印象はある。
パンちゃん(★★★★)(2001年3月11日)
イギリス映画の不思議さは、下町、やくざ、チンピラを描いても、どこかに品があるところだなあ。
肉体の動き、肉体の距離のとり方に、不思議な感覚がある。そしてそれはそのまま精神の距離感と相似形にあるのだと思う。
なんというか……べったりしていない。
最初の方に主人公の一人が友達のことを紹介して、「こいつは俺の友達だが、いつもべったりくっついているわけじゃない。しかし、困った時は助ける」という ようなことを言う。
つかず、はなれず、という距離感。その感覚が、全編につらぬかれている。
アメリカ映画でも日本映画でも、悪になればなるほど、どこかで人間関係がべったりしているというか、奇妙な密着感があるけれど、イギリスにはない。そし て、その距離感のために生まれる「隙間」が不思議に拡大して行く。
そこに笑いがしのびこんでくる。「どじ」が、隙間をくすぐり、笑いが広がって行く。
いいなあ、こういうのって。
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ブラッド・ピットもいい感じだった。
重要な役所といえば重要な役所なのだけれど、話をややこしくするだけの馬鹿な役回りを、美男子にしかできない華やかさで演じている。
人間にはいろいろな華の種類があるが、ここではブラッド・ピットの華が生きている。
彼は、どうやら主役ではなく、重要なわき役というものの方があっているのだろう。
しほざむらい(★★★★★) (2001年2月25日)
 試写会でガイリッチー監督の新作「スナッチ」を観てきました。これはお薦めです。決して損はし ません。前作ロックストック&トウースモーキングバレルズよりも更に洗練されて面白くなっていました。キーパースンとなる登場人物もやたら多い割にはキャ ラの描き方がうまく、解りやすい作りとなっています。それからこれはブラットピットが主人公の映画ではありません。商業ベースにのせるためそのような宣伝 をするのでしょうが。
 しかしこのようなクライムムービーはクエンティンタランティーノ(QT)のようにあとが続かないのではないかと心配してしまいます。QTの最高傑作もレ ザボアドックスでしょうね。