ダンテズ・ピーク


監督ロジャー・ドナルドソン 主演ピアーズ・ブロスナン リンダ・ハミルトン

とかげ王(★★)
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火山の噴火をいかに見せるかに気を取られて、人間を描く方がおろそかになってしまったようだ。
人物描写にしてもストーリーの伏線の張りかたにしても、非常に甘い為に、観ている方は少しも感情移入出来なかった。
まず、最初のエピソードがその後に生かされていない。恋人の死で心に傷を負っているというだけで、だからなんなんだという感じ。
例を挙げると、すっかりペシミズムに浸っていたが、この事件をきっかけに人間性を取り戻す、というような展開にするとか、いくらでも話に肉付けが出来ただろうに。
次に市長の母親がなぜ下山しないのか、理由が少しも描かれていない。おまけに足手まといとなると、もうこれは邪魔物以外の何者でもない。
残酷なようだが、彼女が死ぬ場面では「やっと死んでくれたか」としか思えなかった。
SFXはさすがに最新技術を駆使していて、迫力あるシーンの連続だった。特に高架道路が崩壊して車が次々と落ちていくシーンなどは、神戸で震災に遭われた人は恐くて見れなかったんじゃないかと思ったほど。
しかし、逆に言うとSFXを取ってしまうと何も残らないということ。SFXに依存した今のハリウッドは、いつになったらその体質から抜け出せるのだろうか。
映画が終わった後、後ろの席の女子高生風の二人組みが「あんなババア助けに行かんでもええやんか」「早よ死んでまえ!思うてたわ」と、延々悪口を言っていたが、こっちの方が映画よりよっぽど面白かった。

パンちゃん(★★★)
まるで二流映画の見本のような作りでした。
なんでもないカップルが犠牲になります。これが事件の兆候。
老人は死にます。ちょっと自己犠牲の精神を発揮して、子供たちを救って……。いやな上司もなぜか死にますねえ。
犬のせいで危険にさらされることにもなるのですが、なぜか犬は助かります。(私は犬が好きだから、犬には助かってもらいたいけれど、おいおい、そんなときに犬なんかにかまうなよ----というのが本当の気持ちです。)
子供はもちろん助かります。主役も助かりますねえ。
特撮自体は『ツイスター』と比べて悪いということもないのですが、なぜか夢中になれませんでした。
理由はただ一つ。『ダンテズ・ピーク』が二流映画の基本を全部押さえているからです。何もかもがいつか見た映画みたいな印象になってしまうからです。
『ツイスター』が面白かったのは、人間ドラマというよりも、「竜巻」にかける学者の愛のようなものが描かれていたからだと思う。
『ダンテズ・ピーク』も、本筋前に死んでしまう主人公ガールフレンドが「火山」そのものに夢中になるシーンが一瞬だけ描かれていたけれど、あとはなぜ火山に魅せられるのか、わからない映画でしたねえ。
ピアーズ・ブロスナンなど、ちっとも科学者らしくない。007のままでした。
★3個はおおまけの3個。コンピュータグラフィックスはそれなりに面白かったので……。


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