茶 の味

panchan (★★★★)(2004年8月19日)

傑作。必見。

日常のもやもやした感じ。ひとりひとりがことばにならない感覚を抱いて生きている。ことばにならないけれど、あるいはことばにすると奇妙(変)としかいい ようがない感覚を抱いて生きている。それがしっかり映像化されていて、見ていて引き込まれる。

他人と共有できない感覚がある、他人には絶対にわからない感覚がある――それが個人というものだけれど、その他人にはわからない感覚がわからないまま映像 化され、それを共有した感じになる。
この、矛盾した感じでしか表現できない時間を一緒に味わう。
それが映画なのだなあ、とあらためて思った。

おじいさんが書き残したぱらぱらアニメには思わず涙が出る。
ことばではなく、「もの」として表現される愛というのは、見ていて本当にうれしくなる。
そのあとの少女の逆上がり、逆上がりの後の始めてみせる笑顔。
それにつづく夕焼け。

いいなあ。
同じもの(夕焼け)を、それぞれがそれぞれの思いで見つめている。
そこには、共通するものと、共通しないものがある。
この感じが、映画を映画館で見ている観客そのものの姿とも重なる。

同じものを見ても、同じ感じだけがあるのではない。
同じものと違ったものが一緒に存在する。
その同じと違いを語り合う――それが映画を語り合うおもしろさだと思う。